もし、トップがリーダーでなければ、仕事をするグループは、精神的なつながりを持たない勝手気ままな、個々の、仕事の寄せ集めに過ぎないことになります。
誰もが、自分がグループに属して、グループのために行動しているということを忘れてしまうのです。リーダーシップは、このバラバラな動きを、グループの単位に纏めて、プライドと協調精神を、自覚させるためのものです。

　驚くことに、組織で働く多くの人々が、真のリーダーシップに接したことがあまりにも少ないのです。彼らは、ただ、自然に、協同体の中で働いているに過ぎません。彼らは、仲間との連帯感が高まり強い協調意識を持ったことなど、殆どないのです。

　この連帯感は、単にグループにとって価値あることばかりではありません。それは、グループ内で働く人、一人一人が感じている最も基礎的な欠くことの出来ない要求でもあるのです。やりがいのある仕事をなし遂げたという気持ちは、全ての人にとって最も望ましいものです。

それは、芸術家のように、孤独の作業によって得られる場合もありますが、その他の殆ど全ての人は、社会的な協同作業によってしか得られないのが通常です。現代社会においての個性の社会的表現は、グループへの参加とグループ活動によってしかなされないのです。

　この様に、リーダーの努力の大部分は、グループを通じて、各人に自己の表現を可能にさせることでもあるのです。このことは、可能なばかりでなく、個性の限界を押し広げて、各自の自己表現を要求されるのと同じ幅に拡大するために、是非とも必要なことです。

　しかし、この連帯感は、自然に生まれるものではありません。それは、各メンバーがリーダーに導かれて、だんだんと成長していくものです。個人の側からみれば、そのようにリードされることは道徳的な権利となりますし、リーダーとしての見地に立てば、このリードすることは道徳的な義務となるのです。

「人は良く導かれることを渇望する」というのは真理です。管理職者に、このリードする責任を持たせることによって、この渇望を満たさせるように努めなければならないと思います。

　要するに、組織は命令と管理指令に加えて、リーダーシップを必要としているのです。リーダーは部下のエネルギーを発露させ、彼らが自分達には、到底出来るとは考えても見なかったレベルの達成を、促進するように要求します。

　問題は、リーダーの役割に対する自分が持っている現在の先入観です。自分達が、如何にすれば、リーダーになれるかではありません。リーダーとして、どのように直面する事態に対処するかという点です。

しかも、リーダーシップを効果的に発揮して、可能な限りの力を発揮させて、成功をもたらすことが出来るかという点にあります。リーダーに、これ以下の役目しか与えないのは、彼を軽んじることであり、リーダーとしての地位とリーダーシップそのものに対する観念を軽視する結果になるということになります。