総アクセス数
一桁のビジネスマン《行動心理資料》より

【不可能を成し遂げる】

 至難と云われる「難しい仕事」を成し遂げた人を、あこがれるとか尊敬をして、心から立派な人だと思う気持ちを抱いたりするのは、「人間性」がもつ自然な姿です。

 実際に、日常の仕事を粘りづよくコツコツと続けることは、華々しい業績をあげるよりは、ずっと地味ですが大事なことです。
 今日では、グループやチームワークによる行動研究が盛んになり、実際の仕事にグループ行動を取り入れるケースも多くなっています。実験によると、一人の天才より、チームによる大きな発明や仕事を順調に成功させているようです。

しかし、それでも、我々一般人は、集団でなし遂げた業績より一人の「成功者物語=サクセスストリー」に、胸を躍らせることが多いのです。

 それに、同僚や上役の「人間性」が自分自身の大事な「出世の要因」ですから、他の同僚があえて「取りかかれない仕事」を、やり遂げることも指導者として大切なことだと思います。
 しかも、技能を第二の天性のように容易に扱うことのできる毎日の他に、殆ど不可能に見える問題がときたま起こりす。

たとえば、主要材料の供給業者の工場で、ストライキが起こって重要な原料の不足が生じたり、生産ラインの技術者が、出身地の台風災害のため、突然に退職してしまった。そのため、代替要員を育てるには、何ヵ月もかかるということであったり、生産能力の半数に近い出荷契約をしている商社が、突然の契約破棄を申し出たりすることがあるのです。

 このような緊急事態は、会社と自分の利益になるように、事態を改善する腕の見せどころになります。これは、二重の意味でのチャンスでもあるのです。一つには、自分がこれまでに十分学んできた種々の指導者としての資質を働かせるというチャンスでもあり、もう一つは、優れた手腕で敗北を勝利に転換できる才能を見せるチャンスでもあるのです。

 このような場合こそ、自信のある態度を見せて、問題のアウトラインを把握し、全ての要因をその重要度に従って配列し、それから、精神集中と、創意のテクニックを活躍させる絶好のときであると考えられます。

 これらの中での自信は、単に盲目的な自信ではありません。その仕事をやり遂げるのに必要な条件を、ことごとく備えていると認識している自信こそが、困難な情勢のときに一番大事な資質になります。第二次大戦において、アメリカ軍の前線部隊でとられた下記の戦時標語は、記憶に留めておくのに価する貴重なものです。
「困難は即時実行・不可能は時間がチョイとかかるだけ」

 標語を口ずさむだけでも活発な行動への刺激になります。
 さらに、悪いニュースを知らされると狼狽したり、落胆するのが」大方の、同僚仲間達の自然な姿ですから、毅然とした態度に表れる自信は、本人自身がその状況下で指揮をとる第一歩になります。

さて、自分はいま、事業の販売部にいるとしましょう。本人自身が当たる一番難しい問題は、顧客を失うこと、あるいは、顧客数の伸び悩みに関連する問題です。

 この種の問題に当たるには、先ず最初に「これを解くことは不可能だ」という考えを捨ててかからなければなりません。
次にその問題を各要素毎に分解して、それが、例えば個人同士の衝突というように、全体と関連のない問題であるのか、あるいは、会社の利害について、衝突を含むような一般問題であるのかを決定するのです。

その上で解決策、つまり、販売努力の強化、販売方法の変更、製品の改善等について検討するようになります。そして最後に、成功のチャンスの可能性と、それによる結果が費用をかけるに価するかどうかを決定するのです。

 最後の質問に対する自分の答が、「否」である場合もあります。そのときであれば実際目的にあわせると、その問題は「不可能」になります。
 それを認識するだけでも、犠牲の割合いに比較してたいした勝利にならないような結果を得るよりは、ずっと良いことなのです。

 つぎに、事業の技術部門を見てみます。最近、技術部門の中で技術と経営活動を結び付ける仕事をする人が増加しています。
 その人の問題は、大きな仕事を遂行するために大きな資金を獲得する事です。

色々な方々の趣向やニーズを満足するような製品を作り上げることですから、売れ足の遅い商品の包装を工夫するとか、さらに、これらの調査が、時間と資金の投資をする価値があることを、経営上層部に納得させることになります。

 その際、注意しなければならないのは、どのような場合でも、ビジネスには
@ 不可能という言葉を忘れる。
A 問題を一、二、三、の要素に整理する。
B 各要素に対して解決する方法を決定する。
C 結果が努力または、危険の甲斐があるかどうかを決定する。
等が、当てはまることは明かです。

 それぞれ各自の問題を試みてみるのは良い方法です。どの場合でも、確固たる決定に達したときは、それに固執する事が大事です。
答が「実際には不可能」であれば、その@を忘れることになります。かりそめにも、死んだ馬に鞭をあてるような愚なことを犯してはなりません。努力に価すると決定したなら、「成功」ということ以外は忘れて、大ばく進すべきものです。

backindexNEXT