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一桁のビジネスマン《行動心理資料》より

【褒めることの意義】

 善い行いは必ず褒めることです。
人間は、絶えざる批判よりも、時たまの賞賛によって、ずっと善く仕事に励むことが出来ます。それは大抵の人にとって、強壮剤の働きをします。

 人々は皆自分の上にリーダーの関心をひきたがっているのです。
褒められることによって、目標にも協調し、仕事にも精を出すようになります。

 度々学生にテストした結果からも、賞賛と励ましを得たとき、勉強の量、質ともに、ぐんと高くなることが証明されています。同じようにグループの機能も状態も、努力が認められたと知ることによって、刺激を受け促進されるのです。

 真のリーダーになれない者の最大の弱点は、「はっきり褒めること」が出来ないことです。多くの管理者は、元々、「良くやった」とは、なかなか言えないものの様です。褒めるとつけ上がると思いこんでいるようですが、実際は、その正反対の効果を生むのです。

「褒めること」を恐れてはなりません。賞賛の及ぼす効果が消えないくらいの間隔で褒めることです。ある重役は、”一回尻をどやしつける間に、二回肩をポンとたたく”ことだといっています。

 的確に褒めるには、二つの付帯条件が必要です。つまり、リーダーは賞賛が効き目を表すタイミングを悟ることです。それには、仕事の水準を決めて、個人とグループの成績を記録しておくことが必要です。評定評価の仕方が客観的で、明快であればあるほど、賞賛は、公平で当を得たものになります。

科学的で、良い組織であれば、リーダーは、この水準と勤務状態の記録を持つことが出来るはずです。様々な方法を用いて、一定機関毎の仕事の成績を評定し、良い成績をあげれば認められ報いられることを、人々に知らせることは効果をあげます。

とくに、大きいグループにおいて、「褒められるなんて、滅多にあるものか」と半ば諦めている気風を、組織的方法で、翻意させることは、良いリーダーのもっとも大事で重要なつとめであるのです。しかし、実際に褒めるときは、自然であり人間らしさも必要です。

 つぎに、リーダーは、褒めて効果の上がる人物と、そうでないものとを識別する事が肝要です。
自己中心的な人間の中には、褒められることを、リーダーの自分に対する個人的な特別な好意であると勘違いしてしまうものもいます。

そうした手合いを褒めると、自惚れて、仲間達にリーダーの”後光”をひけらかす行動をとるようになります。これではよい効果が上がらないばかりか、リーダーは痛くない腹を探られることになります。

 叱るのは内々で、個人的に与えた方がよいのと反対に、賞賛は公然と、あるいは、成績が認められたことを、グループに周知するように、何らかの方法で与えた方が効果的です。

 敬愛するリーダーの賞賛で嬉しいのは、仲間からの賞賛です。
良いリーダーは、グループ全員の賞賛が、それに価する人物には必ず与えられるということを知っていなければなりません。個人あるいはグループの成績に対する褒賞を巧みに公表することは、志気を高揚させる大きな要因となります。

 産業界において、近年、立派な業績を公表する場合、心理的に効果のある方法がとられるようになってきました。公表することによって、優れた仲間に対する認識と尊敬が生まれるからです。

 もっとも、乱発や無批判な賞賛は、刺激としての効果を失いますから、良い判断と良識が必要になります。
 しかし、人々は、自分がグループにとって、価値ある存在であることをしることによって、自信を得たがっていることは、決して忘れてはならないことです。


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