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一桁のビジネスマン《行動心理資料》より

【リーダーとしての戒め】

 第一の戒めは、正々堂々と行動することです。
リーダーは、スパイでも警官でも番犬でもありません。
つまり、人からそんな風に見られるような態度や挙動は絶対に避けなければなりません。

 また、親切や親しみやすさと過度のなれなれしさの間には、はっきりと一線を画すべきです。
リーダーは確かに、祭り上げられてしまっても困ります。しかし、したがう者たちが仲間のうちで見せ合う種類のなれなれしさは、リーダーとしての地位の性質上、厳しくして態度に出すべきではありません。

尊大、高慢な態度のリーダーが嫌われるのと同程度に、自分達と全く同じで、どこにリーダーとしての値打ちがあるのかわからないと思われるようなリーダーも好かれません。

断固とした態度と思いやりとのバランスも、巧みに保たねばならないのです。
従属者は前者に期待する一方で、後者に感激するものです。

一は、はっきりした決断、揺るぎない目標の掌握を、
一は、各個人々々に対する心遣いを意味し、リーダーにとってはともに不可欠のものです。

良いリーダーは、人々を自分の素材として、自分の目的に利するために扱っているのではないと言うことを絶えず念頭に置かなければならないのです。

人々は常に彼ら自身が目標であり、彼ら自身の欲求する目的を持っています。リーダーシップとは、リーダーとリードされる者の目標の一致合体を意味するものです。

従属者が、人として、彼ら自身の目標を持つ権利があるものとして扱われるならば、彼らとリーダーとの間には、必然的に思いやりの空気が生まれるようになります。

 言うまでもなくリーダーの態度、行動に、えこひいきがあると思わせるようなことが、あってはならないのです。
しかし、これをうまくさばくのは、なかなか難しいものです。

と言うのは、リーダーは、どうしても幾人かの頼りになりそうな人物を周囲に引き寄せ、仕事が大きくなればなるほど、彼らを当てにすることも多くなってくるからです。私たちは、人間の常として、友人たちに信を置きます。ですから、自分の廻りに彼らを集めることになるのです。

 えこひいきとは、特定の人間を、その功績に関係なく取り立てることです。
それは、血縁、同郷、その他の縁故から、グループの中から特別に目をかけてやることを意味しています。こうした「えこひいき」は、グループの志気を低下させ、リーダーの公正を疑わせ、目標に対する熱意に水をさすものです。

 リーダーとして成功するには、グループ全員に、”自分は公平に扱われている”と、感じさせることがいかに大きい鍵になっているかを、知るべきです。

 ある会社の経営者は、つぎのように述べています。
「私の知っているある化学会社では、素晴らしく志気が高いのです。製油部門のある監督は有能な人物ですが、カッとしやすいたちで、あるとき一人の部員の失策に対して、腹立ち紛れにその男の腕をつかんだのです。

それがもとで、たちまち組んずほぐれずの立ち回りになってしまいました。製油部の責任者が監督を制止し、当の部員がもう良いと言っているのに関わらず、正式に謝罪させました。

 また、その部のある部門では、不注意な操作から、機械を故障させたある技師を、次長が追い出しました。
その上、当然後を継ぐべき地位にいた当人の弟も、順番から外されてしまったのです。

まるで兄の罪を弟にも償わせたようなこの処置が、職場に大きな憤激をもたらすことは必至に見えましたた。責任者は、直ちに次長の処置を却下しました。自分の大事な部下の管理者を一人失う危険を冒しながら、結果的にみて、この公平な処置は、健全な管理システムに欠かせぬものであったのです。」

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