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「自制心のないリーダー」は去れ!

 経営コンサルタントの船井幸夫氏は、事業成功の秘訣として、仕事に対する『責任、自信、やる気』の三要素の一致をあげています。
 この要素の中の責任とは、事業に自己の努力の及ばない「政治経済の環境条件の変化」が、成果に大きい影響を及ぼす時のことです。それには、まずいざというときに、自分の責任だけは、強い決意で自分一人で取るということです。その昔であれば、自決するなり、最低でも出家或いは蟄居するなどの性質のものになります。

 責任の取り方も、充分の対応処理が出来ないまま、放り出した後の自殺では、敵前逃亡の末、追いつめられて殺されたのと同じ理屈です。そのような責任の取り方は、あまり同情の余地はなく、必ずしも責任を取ったとは考え難いのです。このような責任の取れない人物は、リーダーとして、能力の欠如者であるといえます。
 それが、どんなに正直人間であり、努力家で清潔な人であっても有能だとは、いえないと思います。

 つぎに、リーダーに要請されるものに知識教養の問題があります。社外折衝に、また、社内の意見具申に、この高度知識産業時代では、理解できないことがはっきりすると、関係者に見下され恥をかくだけになります。
 ところで、その知性の問題です。各専門分野にわたって正確な知識を持つことは不可能です。なんらかの、近代的学問のひとつの専門を消化し自分の城を持ちながら、その習得体験と知識を軸とし、本分と末端を区別し乍ら専門外のことでも、本質を理解するいわば野外実験的能力が必要だと考えます。

 今までは頭が良く、全く専門外のことでも勘・直感で理解し得たから良かったかもしれません。けれども、一部では、常識など入らない、ただ柔軟な頭が必要で、専門家の陥り易い剛構造的な幅の狭い頭脳では駄目だといわれました。
 しかし、直感や、いわゆる世間知識、耳学問だけでは確実に駄目になったいま、理性による知識を基に、広い理解力を持つことが次世代のリーダーに不可欠だと言えます。

 つぎに取り上げたいリーダー資質は、向上心持続の心構えのことです。この向上心とは、世間一般に言われている自己修養とか自己鍛錬とは異質ものになります。
精神修養の類ではありません。講義を聞き、書斎に閉じ込もり、思索し読書に励むという、まさに、一学徒として思考力を進化させ、知識と情報を深めていくような自己努力のことです。そのような自己向上心を言うのです。生涯その努力をし続けることによって、始めて現在の急変化、急進展していく事態に対しての、複合的判断力をじっくりと身につけ、高い見識を備えるものと考えます。

 つぎはやる気の問題です。つまり、セルフコントロールの問題『自制心』の能力についてです。最近の事業内の気配には、やる気のある、突進型が、持てはやされています。確かに「やる気」も必要です。が、今日の複雑、不可測の社会の動きに、対応していくべきリーダーとしては、行方を定めず暴走したり、ややもすると走りすぎる「やる気」のある部下達の進むべき方向を規定し、そのことで努力を永く維持させるための、コントロール法などの技法を心得る方が重要です。

 また、自分個人としては、私的欲望を自制できる人間であることも必要です。
あらゆる面で、私的欲望を刺激増大させる物的人間的「装置」が、ひと昔ほど前とは比較にならないほど、大きく成りすぎています。今日の経営者は第三者が聞いたなら、気が遠くなりそうな、『へつらい、おべっか、ついしょう、お世辞』等々に包まれてしまっています。
 その基になる企業の悪いところは、全て見られない仕組みであり、経営者は、ののしりや、非難は勿論、本当の直言も忠言も耳に入れることの出来ない環境に閉じこめられております。

 それに浸っていると、どんな人であっても、ついには自分を過大評価しがちになります。そのため、たまたま、非日常的な会合や席で、そうした直言にあうと度を失ってしまいます。そして、逆上罵声での「狂って」の対応も、まが希ではありません。
 表面は平静でも、内実は「狂った」様な、状態は、常日頃部下に難しいことを厳命したり、難しい取引の交渉をやらせ、自分は、儀礼上の妥結の席につくだけの役目に終始しします。失敗があれば、その責任を部下に問うのもそうした習性からです。問題点は、こうした砂糖漬けに慣れると、刻刻と変化する内外の情報の変化に対しても内部と同じ様な「あげ、へつらい」の姿勢になり、世の中を見る目が曇ってしまうことになるからです。

 自制の具体的中身は、情に溺れず、血縁や友人部下と距離も必要になります。
 家庭や友情も大事ですが、私的資質能力を絶対「公的」場所に持ち出さないことも大事です。もう一つは、趣味娯楽、も気晴らしにはよいが、レクリエーションにするようではリーダーの資質に欠けることになります。社会的な仕事にこころざしを賭ける人物が、この向上心と自制心に欠けては、一般に言われる決断力、統率力などのリーダーの資質を備えていても、これからの"氷雪と混迷の時代"を乗り切っていくことは出来ません。途中崩壊の危険が多分にあるといえると思います。