総アクセス数
<行動科学の目で見る>
戦略経営組織論
 ビジネスマンの組織環境

一桁>経営組織論?

≪統制の経過≫

「統制の経過」
管理者の責任となる最終段階の役目は、統制(コントロール)の仕事です。
 これは、この組織論の最初の段階に説明した頭字語”PLORDICOCO”の最後の音節で現されている『統制の問題』です。
 統制の過程においての第一の目的は、組織活動の中で実際に起こっていることが、事業計画に沿って忠実に活動されているかどうか。『そのことについて』確認をするために行います。

 経営組織の統制(コントロール)というのは、業績を上げるための
(1) 行動(業績をあげるための業務)基準の設定、
(2) 行動(業績をあげるための業務)基準と実際の成果との比較、
(3) 矯正措置、
 などを、業務活動の過程において行うことです。

「業績基準の設定」
 業績基準はすべての管理者が、配下のメンバーに期待できることと、仕事の基準を達成した測定法が、正確に理解できるように設定します。
 ところで、この業績基準の設定には、深い理由があります。
それは、業務活動を行うためには人材に最適化した役割を分担させて、能力に応じた行動を合理的に行えばよいわけです。けれども、職務という役割は、組織の中の一人の個人が分担して責任をもつ性質のものですから、他の職務と重複することはありません。しかし、職能という仕事上に必要な能力については、同じ仕事のできる複数の人が存在することになります。

 業績基準の必要な理由は、野球試合の『お見合い』の例のように、二人の選手の間に、フライを落下させて、ヒットにするような、職能と役目の混同を防ぐためです。
 相手の能力を信じたり、自分の役目をないがしろにするところにあるボーダーレスは、組織のヨコのつながりである協調性に、境界をだぶらせたり、空間をつくるからです。

 それで、内容的に価値のある業績の基準を設定するには、つぎの十段階に達する項目のチェックを経てミスを防ぐように設定します。

1 まず最初に、業績基準作成の責任は、基準を守って仕事をする従業員と、その仕事を監督する管理者の、共同責任にします。

 技術革新が続き、仕事の専門化細分化が進みますと、一人の管理者が広範囲の仕事を管理することは難しくなりますから、職務権限の分散が行われます。ところが、人間行動は、決して論理的な行動を行うとは限りません。職務と責任は分権化しても、権限は委譲しないような不平等な行動をあえて行いたがります。
 ですからこのような場合、業績基準書の作成においては、管理責任は管理者に、担当者には担当責任つまり、管理者に対して役目上の報告の義務と責任を明確にしておきます。

2 基準の設定を行う場合には、管理者が
『これから設定する基準の対象となる従業員が、自分の義務を果たして、完全に満足できる業績を上げるとしたなら、期間終了時には仕事の内容がどんな状態になっていなければならないか』
 を書面にして、部下に質問するのに対して、同じように部下も書面にした上で
『自分と上司の管理者が満足できる程度に責任を果たすには、期間の終了時にはどのような状態になっておればいいのか』
といったことを、確認することから考えはじめるようにします。

 ようするに、この種の管理者による調整行為は、漢方薬による病気の予防や体力づくりに相当するものです。即効性においては劣りますが、体力をつけて弊害につよい耐性を持たせるためには、予防行為を避けることは出来ないと思います。

3 最終的な形では業績基準によって、まず従業員が個人的に責任を負う問題の最も重要な部分、簡単にいいますと、注意を集中しなければならない部分を、見分けがつかなければなりません。これは、ありのままの状況を述べ、それぞれの状況のもとで、一般的な目標を指し示すのに役立ちます。

 このような業績基準作成の機能仕様は、丁度、新幹線方式みたいなものです。
 つまり、新幹線では各車両毎にモーターを備え付け、その総和が画期的な安全と、スピードと快適性を、輸送にもたらしていますから、組織構成員一人々々が各車両に例えられます。

4 それから、管理者と部下は、それぞれの責任範囲を充分に果たし、期間内に早く目標を達成するため、実現しておかなければならない予定の最終の成果、ないしは、状態を詳細に書き記さなければなりません。結局、この最終成果が期待される業績基準になります。

 この項ではあたえられた仕事だけを進めればいいのか、それとも、組織の総体からに見て、役目上必要不可欠な手続を怠らないようにするなどの『責任と責任感』について、組織としての使命感を認識させます。

5 最終成果を、抽象的なものにはしないようにします。
 最終成果は、完全に実施できる特定の、確定できる計画、はじめなければならない活動、定めること、あるいは改善しなければならない他の最終成果との関係、果たさなければならないことなどは、進歩でなければなりません。
 これらは量、質、経験、時間値サービスなどに亘って示されますから、期間終了時に計画が達成されたかどうかは、すぐに確かめられます。

 技術革新によって変化する経済環境には、日進月歩以上の反応スピードが要求されるようになりました。その結果、雇用環境も大きく変り、終身雇用制度も崩れております。
 業績評価や能力評価など能力アセスメントにおいても、日本古来の精神主義や縁故・信用などの人物本位から、能力、資格、実績重視等の欧米型に変化しています。とくに、長い不況から立ち直って好況を持続しているアメリカ経済界の企業は、不況時においては、徹底した実績評価主義を採用しています。この傾向は、不況に悩む現在の日本企業が大いに学んでいるところです。

6 最終成果はつぎのことを簡潔に指定します。
 とくに何をやらなければならないか。
 各職務をどの様に果たしたらよいか。
 仕事をどの様に分割すべきか。
 どの程度の仕事をしなければならないか。
 各職務を誰にやらせたらよいか
 各職務の開始と完了を何時にするか。

 人物本位の組織においては、こうした要項は不要かも知れません。しかし、特別な縁故採用を望まない今日では、誰がやっても仕事が同じように出来る組織の仕組みが必要になります。結局、組織の縦や横の関係は、人間のつながりでなく、仕事の役目に、切れのない緻密な仕組みにしないと、組織は活性化しませんから、要項を具体化する必要がでてきます。

7 業績基準は各社員の仕事の評価、貢献度の評価、実際に計画通りに行われたかどうかの判定に用いられますから、業績基準は慎重に考えて作ります。管理者、部下双方の同意を得なければなりません。

 人間行動には、誰にでも理解の出来る筋の通った『論理行動』、社会正義を社内で実現しようとする『非論理行動』、自分だけ分かって他人には理解の出来ない『非理性行動』の三様式があることは良く知られていますが、日常行動においては、多くの人が非論理行動をとることも広く知られています。

 つまり、多くの人々は行動に先立って、合理的行動をとろうとして、自分本位のエゴが優先するわけです。ですから組織メンバーとして成熟しない間は、義務、権利、責任などの測定分析が、至難であるにも関わらず、自分なりに平等化させて、自分との境界を明らかにする意識が強く働いています。
 ですから、事故を防ぐには、予防措置あるいは、OJT(オンザ・ジョブ・トレーニング)を通して、勤労の意識を高める必要があります。

8 管理できる範囲内で業績基準を守り、出来るだけ役立たせるようにするには、最終成果記述書を、検討中の期間内に、達成すべき最も重要な成果に限定して、作成しなければなりません。

 通常のルーチンワーク的なデータでは成果は求められません。
日常業務における連絡、報告などのコミュニケーションの、項目、内容要素、回数など調査分析技術が必要になります。パソコンなどの表計算を用いて、統計的手法を取り入れ予測推定等が行われております。

9 業績基準には、経費、生産、販売などの確定要素ばかりでなく、部下の養成、社員相互の関係改善、自己啓発などの不確定要素も含めます。

 組織においてコミュニケーションの欠如を調べた調査では、管理者側の部下からのコミュニケーションが絶対的に少ないとしている一方で、部下サイドの調べでは、管理者からのコミュニケーションは、殆どないに等しいというような相反した回答があります。
 目的や内容のハッキリしないもの、つまり情報の伝達テクニックに問題があると見られるケースが絶対的に多数を占めています。ですから、コミュニケーションには、情報伝達が理解収束へと進む、ノーマルな進行テクニックが必要になります。

10 最後に、測定の対象となる各領域における期間開始当初に見受けられた「ありのまま」の状況と予定した期間終了時の状況の比較をして見せなければならないでしょう。

 やる気がなければ、評価項目が電話帳のようになるかも知れません。しかし、責任感が芽生えて全体を見回し、自己の責務を果たすようになると、業績評価も重要項目に絞られてくるものだと考えられます。
 反省会や総括など、次回のための再認識は、進歩するためにはぜひ必要です。これらのまとめに等しいものがないと、やる気をなくしたり無責任性を植えつけます。反省会や総括は、管理責任として、計画、実行、責任の一要素になります。    <完>