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しつけの心構え

能力開発の基本
◆ 状況に呼応する
     リーダーによる診断能力の重要性は、いくら強調してもしすぎはありません。 「すぐれたマネジャーはすぐれた診断者であるとともに、探求心を尊ばねばならない。また、 部下の能力や動機は多様であるから、その相違をとり、そうした相違を知るだけの感受性と診 断能力を備えていなければならない」

     エドガー・シェインは、SL(シチュエーショナル・リーダーシップ)理論の中で指導 者は、診断能力が必要なことを指摘しています。
    確かに、状況の中から診断の手がかりとなるようなものを、正しくくみ取れるよう鋭敏な 感受性が必要です。しかし、いくらすぐれた診断技能を持っていても、教えを請うもの達 が何を欲しているのか、正しく指導するスタイルを適合させることができなければ、有効 な教え方はできなくなります。

    つまり、自分の行動を状況に対応させるには、必要な柔軟性と、幅の広い技能を備えてい る必要があります。部下あるいは子供達の欲求と動機が異なっているものと考えれば、そ れぞれ異なったように扱わなければなりません。

    このことは、「子供をだめにする法」として、

    1. 子供に不自由をさせるな。
    2. 個室を与えよ
    3. 幼児から塾
    4. 母親は徹底的に子供の世話をせよ
    5. 評論家的な父親(実際の教育より教育論)

    などが議論されるように、子供達にたいする保護者の過剰な対応は、条件反射による生活適応 の機能が鈍かったり、生活の状況変化に対応できない性格にそだつ大きい理由があります。

    けれども経過を抜きにして統計的な言い表し方をされますと、現実の状況をコントロール することにはあまり役立ちません。貴重な意見発表の目的を、研究者同士の間で、自己主 張する試みに感じられる誤解を生みます。

    かりに、研究の成果が理解できたとしても検討したい項目の環境変素が多すぎ、毎日の対 応に際して、これらの変素がどうのこうのというのは、あまり現実的な話ではなくなりま す。

    そこで、オハイオ大学のリーダーシップ研究センターでは、研究の対象をその場その場の 主要環境変素が何であるか、を、しめすための”考え方モデル”の開発に集中しました。 註(環境変素=リーダー・部下・上司・同僚・組織・職務・時間)

    これによって、マネジャー達――家庭においては親たち、現場においては監督者たち―― が、自分たちの日常の観察や感じにもとずいて、考えを整理するようにしました。

◆ SL(シチュエーショナル・リーダーシップ)理論の説明
     オハイオ州立大学の結論は、いろいろと検討された結果、「今後の<状況判断(および状況 予測)の研究に必要なことは「状況決定要素」の認識の仕方を考え出すことでなく、リーダー シップ行動(構造主導と配慮)と環境(状況)変素とを体系的に関連づけるための考え方を開 発することである」と判断されました。

     つまり、リーダーシップの行動は、構造主導(仕事指向行動)、配慮(対人間関係指向 行動)、と、他の変素との間の関係は、曲線的関係ではないかということになります。

     この理論では、効果的リーダーシップ・スタイルを部下のマチュリティ(成熟度)の程 度である、という関連で捉えて、理解の一助にしようとするものです。
    そのため、環境変素(リーダー・部下・上司・同僚・組織・職務・時間)は、すべて重要 ではありますが、SL理論では、とくに、部下との関係においてのリーダー行動に力点を 置いて考慮しています。

    そして、つぎに、部下は、リーダーの受け入れ、あるいは拒否ばかりでなく、リーダーの 発揮しうるパーソナル・パワーを決定するので、あらゆる場合に重要な変素に見ておりま す。

     ただ、リーダー(指導者)とフォローアー(追従者)の関係は、たいていの人が状況に よっては、リーダーなり、フォローアーになれるのであるから、階層関係のあるような響 きであっても、この理論の考え方は、部下、上司、同僚値友人、身内など、あらゆる相手 に通用するものとしています。

◆ フォローアーまたは集団のマチュリティ
     SL理論では、マチュリティ(成熟)を、できるだけ高い達成可能な点に、目標を設定する という、本人の基本的な姿勢(成就意欲)を重視します。しかも、それをやり遂げる意思と能 力が見込まれる、教育なり経験なりを持つ程度の相手、または集団を対象とすると定義しま す。

     要するに、本人のやる気とその能力、そして指導する側の対応は、全体的に、集団や個 人の成熟とか未成熟には関係がないというのです。特定の課業、任務、目標を取り上げれ ば、誰でも、大なり小なりは、マチュリテイがあります。それに関連した事務処理あるい は行動について、だらしなさがあるなら、ちゃんとできるようになるまで、細かく指導す るのを適切とされます。

    とくに、同一クラスの学生の場合のように、相互間の交渉・協力が必要な場合などに当て はまります。リーダーとしては、メンバーのマチュリティ・レベルを知ると同時に、全体 のマチュリティレベルを、知らなければ適切対応が不能になります。

    教師の場合でいえば、特定の問題について、学生全体のマチュリティ・レベルが、ある点 のレベルであるとしても、学生一人一人のマチュリティレベルは、いろいろと違ったレベ ルにあることもあるわけです。

    ですから、クラス全体を相手にした場合と、学生一人一人と対する場合では、やり方を変 えなければなりません。実際に学生がマチュリティ・レベルにあることは教師は体験して いるはずです。

    たとえば、勉強を決まったとおりやらず、レポートを書かせても、きちんとした学生らし いレポートを出さないといった学生がおります。この場合、教師としては学習方法を、構 造化をして指示したり、細部に及んだ指導をして教えなければなりません。

    しかし、勉強はできるけれども、恥ずかしがりや自信のない学生の場合、学業(仕事)指 向行動上の指示は少ないのですが、支持的(社会連帯的)対応を行って、意志の疎通に気 配りします。そして、クラス仲間とうまくやれるように元気づけてやる必要があります。

    また、心理的にはマチュリティが高く、学業においても優秀な学生に対しては、放ってお いても差し支えないはずです。
    このようにリーダーは、グループ・メンバーの一人一人に当たるときには、全体を相手と するときとは違って、一人一人に異なった対応をしなければならないことを理解すべきで す。

◆ マチュリティを構成する要素
     マチュリティ(成熟)という概念は、状況判断の際、便利に使える概念です。
    けれども、他の環境変素、たとえば上司のスタイル(上司のそばで働いている場合)、緊急事 態や時間的な制約による拘束、仕事の性質などが、マチュリティ以上にといわないまでも、マ チュリティと同じくらいに重要な変素であることがよくあります。

    しかし、マチュリティが特定の場合においては、個人または集団に対応する適切なリー ダーシップ・スタイルを選択する上、非常に有用な基準であることに変わりはありませ ん。

    そして、マチュリティに関するいま一つの観点は、インマチュリティ(未熟)からマチュ リティ(成熟)への連続を考えるものです。

    ここでは、人間は受動状態から能動状態へ、依存から自立へ、等々へ、マチュリティの一 つの要素と考えられますが、このSL理論におけるマチュリティとは直接の関係はないも のとします。研究者達は、暦上の年齢よりも、精神年齢を問題にしています。

    1. ところで、マチュリティの構成要素を検討しようとすると、仕事の達成意欲の高 い人たちには共通した特徴のあることがわかります。

      つまり、達成可能だけれども、さらにできる限り高い目標を設定しようとする姿 勢があります。

      そして、成功の報酬よりも、達成の喜びを求める気持ちを強く持っています。そ の上、態度に関したフィードバック(どの程度自分を好ましく思ってくれている か)よりも、仕事に関したフィードバック(どの程度自分が仕事をよくやってい ると思われているのか)を、知りたいなどの欲望を持っています。

      状況対応をベターにする研究者達は、当面の仕事に関連したマチュリティが重要 と考えますが、その観点から見て、これら三つの特徴の中、最も重要な特徴は、 できる限り高い目標を設定しようとする姿勢です。

      その理由は、この姿勢が進取の気性・態度に関係するからです。
      そのため、成就意欲の高い人たちは、妥当なレベルのリスクを好みますが、その 理由は妥当なレベルのリスクしか含まぬ状況であるなら、自分たちの努力や、能 力であっても、結果に影響を及ぼすことができると考えるからです。

    2. つぎに、責任という観点から見た場合です。
       成就意欲という概念は、二つの概念の混ぜ合わせるもの――つまり、積極的意志 (動機)と技量(能力)――と考えられます。

      もちろん、これら二つの概念からつぎの四つの組み合わせを考えることができま す。すなわち、

      @責任を負う気持ちもなければ、能力にも欠けている人。
      A責任を負うことには積極的ではあるが、能力に欠ける人。
      B能力は十分にあるが、責任を負うとしない人、
      C責任を負うことには積極的であり、かつ能力も十分にある
       が、その四つの組み合わせです。

      個人または集団についてもっとも高いマチュリティといえば四番目の組み合わせ を指しているわけであり、最低のマチュリティといえば、一番目の組み合わせと いうことになります。

    3. 三番目は、教育と経験に関していえば、この二つの間には、本質的意味において 相違はないと考えます。

      仕事に関連したマチュリティは教育〜経験、または、その両者を経て、体得する ものです。この二つのあいだの唯一の相違は、教育が、学校での経験を指してお り、経験が個人的もしくは仕事上の学習を指すことになります。

    4. 課題関連マチュリティに関して注意すべき第4の点は、マチュリティの一般概念 にはつぎの二つの要素が含まれていることです。つまり、

      @仕事に対するマチュリティ――課業を遂行する能力および技術的知識、
      A心理的マチュリティ――個人としての自信と自尊心です。

      課題関連マチュリティの高い人は、単に課題達成能力と必要知識を備えているだ けでなく、同時に自信を持ち、自分自身を肯定する気持ちを持っています。他 方、マチュリティの低い人は課題関連マチュリティ、および心理的マチュリティ の両方に欠けているように思われます。