◆ 情報力の差
企画作業で情報収集及び情報分析の占める割合は、全体の1/3といわれており、企画作業の中で重要な役割を占めています。
ですから、この情報収集・分析をコンピュータに頼るケースが非常に増えております。日常業務の中から、データ蓄積を、生産物流システム、あるいは、商品、地域、購買層などのマーケティングシステム、そして、消費者からの直接の声などまで広げ、一連の動きをキャッチするシステムは、一般化しております。
無駄な動きや不良在庫をなくすジャスト・イン・タイムのコンビニなどの小売業は非常に増えております。
もちろんこれらのシステムは、営業。マーケティング、商品開発といったセクションも、すべて市場情報を元にしてその目的、行動が決定されるようになっています。
コンピュータを使用する場合の情報量は、個人の持っている情報量と雲泥の差があります。また、高度な情報分析か高技術がない人でも、コンピュータソフトによって、端末の操作を覚えれば、簡単に分析結果を得られる利点があります。
また、図書館や書店などにわざわざ行かなくても、オフィスなどにいながらにして、必要な情報が得られるため、時間、労力の節約になります。
一昔前でしたなら、アイデアのトリガーは、経験やカンであり、企画やセンスの良さは、個人の能力でつくられているように思われていました。
それで、クリエイティブな仕事には、コンピュータは向かないという考えを持ってる方が多かったかもしれません。
しかし、個人の経験や情報量には、限界があります。
そこで限界を超えるには、企画作業のプロセス毎にさまざまな情報提供や分析機能を備えたコンピュータシステムがあれば、人間は、それらを元に創造力を働かせればよいことになります。
現在の消費者の行動は、バブル前のように、興味に目を向ければ即購買に結びつくようなことは致しません。消費者や市場の動向を綿密に情報収集・分析し、売れる商品、効果のある広告、面白く人気があり、環境に優しいなど、信頼のおけるブランドを求めております。
こうした時代ではコンピュータによる情報システムを持っていると強くなります。情報システムがあれば、企画作業のとき、ゼロから情報収集する必要はありません。時間的に余裕もでき、アイディアにじっくり時間をかけることができるようになります。
当然のことながら情報システムを構築するコストが心配になります。また、利用率や使用頻度などを考えますと、採算が気がかりになります。
しかし、パソコンの普及している現在では、ハード・ソフトを合わせても個人のツールのレベルまで価格が下がり、導入が容易になっております。しかも、個人レベルで質のいい情報収集体制をつくることができるくらいに利用が容易になっております。
一方でパソコンを利用しないまでも、規模が小さいながら独自に、質のいい情報を迅速に、そして、タイムリーに得られるような情報を収集している人もおります。
企画作業においては最低限として、ぜひ独自の収集体制を持ちたいと思います。
◆ 情報の集め方
情報の収集は「文献情報」と「調査情報」の2つの項目に分けました。情報の集め方には色々ありますが、スタートラインは皆同じです。
情報を集めるには、まずテーマを定めます。一つの企画ではいろいろな情報を集めなければなりません。そして、それぞれの情報には、テーマがあります。ですから、テーマに最適な情報の収集方法を決めてから情報収集を開始します。そのためには、いろいろな情報収集の方法を知っておく必要があります。
情報収集のルールは「短時間・低コスト・役に立つ」でなければなりません。そのためには、常日頃からわずかな資本で、質の高い情報を集めるトレーニングを積む必要があります。
トレーニングの基礎といえる「メモ」と「新聞雑誌記事の切り抜き」は有効です。名プランナーといわれる人たちは、これらの作業を大切にしながら、日々のトレーニング代わりにしています。
この「メモ・切り抜き作業」は、「自分の価値観で情報を選択」することに意義があります。自分の基準、あるいはテーマを持って情報に当たるという習性を身につける効果があります。
要は、情報に対する姿勢の問題になります。基本的に情報はすべての人に平等に公開されます。しかし、情報はその人が必要としたときはじめて生きてくるものです。情報力を伸ばすには、常に、さまざまなテーマを持って世の中にあふれる情報を眺め、自分のテーマに沿った情報を選択します。そして、その情報を元に自分の考えを日々構築するクセをつけることで能力が育ちます。
情報は、ファイルブックをつくるためだけに集めるのではありません。テーマがなければ、目の前に情報があっても気づかないものです。つまり、問題意識があれば情報は、自然に関知するようになります。細かいメモを取る必要があるわけではなく、記憶の引っかかりさえあれば、そこから、様々なことを思い出します。メモは、引っかかりになるヒントを書けばよいのです。
◆ 情報収集のテーマ
「オリエンテーション」においては「企画の前提条件を確認」し「解決しなければならない課題を得」「仮説」を立てました。
次に、仮説に基づいて出てきた「これを知りたい、あれを知りたい」といういくつかの情報センサーを検討して、類似情報の内容をグループ毎にまとめ、それぞれのグループ毎に情報テーマのタイトルを決めます。これで、情報収集の第一である「テーマ(主題)」を持つことができるわけです。
どんな情報を集めればよいかがわからない人には、ここでテーマの方向性が明らかになります。
ただ、ここで注意したいのは、テーマに直接関係しない情報であるからといって、どんどん切り捨てていくと、プラス・アルファの情報が得られなくなるおそれがあります。ユニークな情報や仮説とは関わりのない貧弱な収集になってしまいます。
企画における情報の役割は「意志決定のための判断材料」や「アイディアのトリガー(引き金)」と主張しましたが、仮説実証のように一方づいては、情報による価値の創造やアイディアが生まれなくなり、人間味に欠けてしまいます。
もし、情報の収集中にどれかのテーマに分類できるわけではありませんが、ふと、目に留まる情報があれば「!」マークをつけてストックしておきます。オリエンテーションを終え、仮説を立て、企画立案に向けて構造ができつつある思考の過程に、無意識ながら引っかかる情報なのだから役に立つ可能性は大きいかもしれません。
情報収集は必ずしもこのステップで終わらせなければならない、ということはありません。
企画作業を進める過程で情報が足りなくなればそのステップ毎に情報を集めます。企画をはじめる初期には能率の良い情報収集は望めません。むだな動きや無断情報が多くなります。しかし、経験を積む内に必要な情報があるところがわかるようになります。とにかく自分で動いてみる」これが重要です。
◆ ▲食品の課題例
問題点を書いた多くのラベルを互いに似たものにまとめた結果、ラベルは4つのグループにまとめられました。
- 商品の問題――商品開発
- 顧客の問題――顧客開発
- 流通の問題――ルート開発
- 販促の問題――SP開発
つまり、プロジェクトメンバーの情報収集の結果、問題は4つの開発テーマに分かれていることがわかりました。
- 商品開発に関わる内容では、
商品に対する価値の付与、品揃えの問題、価格設定などが問題の中心になります。
たとえば、商品価値の面では商品本来の品質・機能の問題から、商品価値を高めるためのパッケージやネーミングの問題が含まれます。また、品揃えの問題では、顧客ニーズとの対応が追求されます。価格の点は、商品の値打ち(効用)とのバランスがとれているかどうかが研究の対象です。
- 顧客開発の問題項目は、
不況下における顧客行動パターンの変化に目を向けます。購買パターン、選択パターン、使用パターンの変化を、また、ニューライフスタイルの対等による顧客ニーズの変化を読みとる作業が中心テーマになると思います。節約感の影響がどの程度でるか。洋風化の進展が食生活にどの程度現実化しているかなど十分把握しておくことは、市場開発の面から重要なテーマになります。
- ルート開発の問題
自社製品の取扱店がどれくらいカバーしているか、また、店頭での自社製品の陳列スペースがどれくらい占めているか、等がまず問題となります。ブランド商品のような場合、消費者の購買チャンスをできるだけ幅広く与えておいた方がよく、また、店頭でよく目立つ位置を確保した方がよいわけです。
既存のルート維持拡大とともに、新規ルートの開発というテーマも生まれます。訪問販売や予約セール、会員制販売といった方法も検討の中に入ってくるでしょう。
- SPの課題
広告問題から景品販売まで、幅広いです。セールスプロモーション活動では、投入量の問題が基本的にありますが、多くは「質」の問題で、アイディアの問題になります。
市場開発という課題を4つのテーマグループに分けて、その一端を説明しましたが、たいていの場合、4つのテーマは密接な関係を持ってますから、切り離はなすことはできません。しかし、メインとなる企画の方針をどこにおいたなら良いのか、ハッキリさせておく必要があります。
たとえば、今回とり上げた食品メーカーの場合、ルートの弱さが大きな問題とされ、スーパー対策に戦略を集中する方針がとられました。そして、戦略商品として、子供のおやつ製品が新しく開発され、販売促進策もスーパー店頭を軸とした方策がとられました。その理由としては、次のようなものが上げられます。
- スーパーでの販売ウェートが著しく低い
▲社は、精肉店のウェートが50%を越えている。競合他社に比して、スーパーでの販売ウェートが低い。精肉店中心では、今後の販売増は望めない。スーパー重点に移行させたほうがよい。
- 食肉製品分野で、子供のおやつ需要が伸びている。
▲社にもそれに対応する製品はあるがあまり販売されていない。この分野での製品強が必要。
- おやつ製品の販売には、精肉店では十分な販売効果は、期待できない。
この点からも、スーパー対策が急務。
- おやつ用として、冷蔵を要しないレトルトもののソーセージがよく売れている。
レトルトによるおやつソーセージの開発を考えるべきである。このような製品があれば、スーパーのお菓子コーナーでも販売できる。
もちろん、ルートの問題にしても、方向付けを行っただけですべてが解決するわけではありません。スーパーでの比重を高めるには、それなりの販売努力が必要になります。おやつ製品を強化する場合にはまた、それなりの開発努力を必要とします。
そのため、▲社の場合も以上の方向づけがすべてでなく、順調にいったということではありません。いわゆる、現場努力が必死にカバーしたことはいうまでもありませんが、焦点の合ってないところでの努力は、無駄以外のなにものでもありません。
何はおいても、しっかりした経営方針や企画の方向づけになり、戦略を確立し未来を見つめるビジョンが大事になります。
◎現在の市場の特性は、飽和市場に消費不況を加えた過密市場の様相を呈しています。このような時期における市場開発はいっそう困難さを増している現状ですが、では、企業はこの課題にどう対応していけばよいでしょうか。
▲食品では、その後プロジェクト・チーム管理による徹底した調査活動が実施されております。
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