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 『面接カウンセリング技法』

◆概要
 面接カウンセリング技法は、組織メンバーから相談面接(個人的問題)と指導面接(業務上の問題)に よって、管理者がカウンセラーとして潜在的・顕在的に直面している能力開発問題を把握して、教育するこ とを目的にする技法です。
 このことからも明らかなように、被面接者と面接者の間に信頼関係を築く非指示的カウンセリング技術に 依存する特徴があります。

◆技法の背景とその特色
 まず、ここで行われる面接カウンセリングは、管理者が部下との面接を通して、問題の解決を図ることを 指しております。世間で行われている職業カウンセラー心理療法などと異なっていることをお断りしておき ます。
 最近の企業組織では、上司と部下との面接の機会を出来るだけ多くするという企業施策を採るところが増 えています。例えば、目標管理のプロセスの中で、目標設定と結果検討のときにおいて、上司と部下の話し 合いや、また人事考課の際の面接、自己申告のときの面接などがあります。

   その目標とするところは、いずれも上司と部下との一対一の話し合いの中で、相互のコミュニケー ションを図って、管理者と部下との間に生ずるお互いの理解のずれをなくしていこうとするものです。 特に、管理指導者に求められるのは、これらの面接を通して、部下の抱えている問題や部下の気持ちを くみ取り、どのようにしたならそれを上司として受け止め、解決できるかと言うところにあります。
 そこで要求されるのが、管理者としてのカウンセリング・マインドと面接技術です。

 「カウンセリング・マインド」その姿勢
 カウンセリングで有名なアメリカのカール・ロジャース博士は、カウンセリング・マインドとその姿 勢について、三つの条件をあげています。

  1. 自己一致――相手を自分の既成の概念にとらわれずに見る姿勢を持つこと。これを自己一致と 言います。
  2. 肯定的な受容――相手に自分の考えや発言が肯定的に受け入れられたとき、人間は、はじめて 心を開いて話をします。
  3. 共感的理解――相手の立場になり、相手の話からその気持ちを積極的に理解していこうとする 姿勢、これを積極的傾聴といいます。
図1  ロジャースは、さらに効き方テクニックではなく、それを聞こうとする心構えが大切なのだとしていま す。
 積極的傾聴の具体的方法として、図1に示すやり方を提唱しています。この四つの項目が積極的傾聴の技 法ともいえます。

 【評価的に聞かない】
 相手の発言を聞きながら、それは正しいとか正しくないと判断することを、してはいけないことです。
 評価的に聞いたのでは、相手は聞いて欲しいと思っていること、あるいは、伝えたいと考えていることを 引っ込めてしまいますから、相手の感情や気持ちをほとんど理解しないことになります。実際問題として、 多くの人が自分の話をよく聞いていないことに気づいてないことです。しかも、自分では正しいことを当た り前にやっていると信じ、いとも簡単に他人の話を評価的に判断して排除していることです。この事にまず 気づくことが面接技法の実践の第一歩になります。

【忠告を避ける】
 自分では大いに反省した積もりになって、伝え手の価値判断で、お前は「こうすべきだ」と言ったと ころで、受け手がその気にならない限り、言葉はマイナスに作用します。「お前のためだぞ」という多 くの忠告の真実は、伝え手が言いたいと思っていることに過ぎません。聞き手の本当に置かれている立 場に適した忠告でないことの鵬が多くあります。

【全体の意味を聞く】
 発言内容には、それ自体の意味があります。しかし、発言した内容とは別に、本旨とも言うべきこと を言葉以外の媒体で伝えてくることがあります。発言のトーン、表情、目線、息づかい、手のふるえ、 等によって感情を読みとることが出来ます。  「理解しました」という表現とは裏腹に、明らかに緊張した表情には「心ならずも判りましたと言っ てるのです。あなたの命令には逆らえませんから」と言う本音を表情やボデイ・ランゲージで伝えてる かもしれません。
 よい聞き手であったなら、言葉に対してではなく、動態処するかは別にして、言外の言葉に応えるか もしれません。そうしなければ伝えられた側の実行への打ち込みなどは期待できないからです。

【フィード・バックする】
 聞き手の口から、自分が伝えたいと思っていることが言葉になって帰ってきます。これほど、相手が よく聞いてくれている証拠は他にありません。しかも、本音までもフィード・バックされたとしたらな おさらです。
 伝えての発言内容のフィード・バックが傾聴のハイライトです。

◆管理者研修適用のポイント
 面接カウンセリング技法を管理者に習得させるには、面接斜視被面接者の役割を決め、ロールプ レイングで、実際の場面を想定して演習をすると効果的です。この際大切なのは、第三者の観察者 を配置した上、対話の終了後必ずその評価をすることを取り入れるようにします。また、この種の 視聴覚教材を併用していくのも効果があります。

 そして話が終わったなら、今度はその話を受信者(聞き手)役が相手にいま聞いたことを、自分なり の表現で相手に戻すのです。この間発信者(話し手)は、一言もしゃべらないで相手の言うことに耳を 傾けます。さらに、自分の言った真意、相手に伝えたい気持ちがその通り帰ってくればイエスを表示し ます。

 しかし、それがわずかでもずれていると感じたならノーを表示します。この際、どこがどう違うと か、と言う説明をしないのがルールになります。そして、イエスが出た場合は、受信者役だった人が今 度は発信者となり、三分間話、前の発信者役が受信者役となって耳を傾け同様のことを繰り返します。 仮に、ノーが出た場合には、受信者や区会エスがとれるまで難解でも話を相手役に戻します。つまり フィードバックをすると言うわけです。

一見、この何でもないようなやり方を繰り返してみると、どうして相手の云わんとすることや、相手の 気持ちをくみ取っていないかがよくわかります。この二人のやりとりに、さらに観察者を一人おいてみ ると、そのずれがどこで起きているかが良く判るのです。このような訓練方法をとれ入れることもお奨 めいたします。




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