・金沢の井ノ弥の海鮮ドンブリは本当に旨かった!・
先日、三郷の本屋さんに行こう!と思い立ったが、いまだに行けていない。仕事
やら何やらと忙しく、私の足は地元のバス停から都内、そして地方へと向かって
いたのだ。3ヶ月にいっぺん発行の全国に事業所を構える某企業の社内報の作成
に携わっているお陰で地方出張が増えた。そのほとんどが日帰りなのだが、今回
の金沢は帰りの飛行機に間に合うバスを待つ間に、3時間ほど自由な時間がもて
たので、カメラマンと二人で有名な近江町市場に行ってみた。取材先で「お昼が
まだであれば近江町市場の井ノ弥にいくと良いですよ」と教えてもらったのは1
時過ぎ。すでにお腹ペコペコ状態の私とカメラマンは「どうしようか?でもせっ
かくだから、近場で適当に間に合わせることもないか」と、バスに乗って足を運
ぶことにした。あああああああああああああああああああああああああああああ
市内を循環しているバスで3つめの武蔵ヶ辻で下車してすぐのところに近江町市
場のアーケードの入り口が見えた。これが噂に聞く近江町市場か!と勇んで足を
進める。すぐに私の目を引いたのはずらりとカニを陳列している店だった。店の
親父さんから「お客さん、取材か何か?」と声がかかる。それもそのはず、カメ
ラ機材の詰まった大きなバッグを2個もかついだカメラマンと一緒なのだから。
「ここの取材で来たわけじゃないんですけど・・・」と言うのを聞いているのか
いないのか、親父さんはけっこう話し好きらしく聞いてもいないのにおしゃべり
をはじめた。「最近、近江町市場の評判がおちてねぇ。うちは正真正銘、きっち
りした物しか売らないけど、一度間違った物を売ったら最後、近江町市場も落ち
たね〜なんて言われるんだから、困ったもんだよ。でも、食べてもらえればわか
るよ。うちのは本当に安くて美味しいんだから」。あああああああああああああ
フンフンと聞きながらアーケードの奥を覗くとまだまだカニのお店はズラリと軒
を並べている。そこで「ここのお店が一番安いの?」と聞いてみた。すると親父
さん「何をもって安いと言うかだね。だって、甘えび、ホタテ、ズイワガニ、う
に、なんでも詰めて1万円でどうだ!って言われたって、帰ってからフタを開け
てみて食べられない物だったらどうするの?そんなの真に受ける方がどうかして
いるってこっちは思うけど。」と三宅祐二にそっくりな声で話し続ける。そこま
で言うからには自信があるのだろうと見込んで「わかった。おじさん、決めた!
買うよ、ここで。それでどれがお薦めなの?」と聞くと特大のズワイガニ2ハイ
で1万円のコースだった。「う〜ん、うちは2人だからそんなのもてあましちゃ
うなぁ。もう少し小ぶりので5千円でどうかしら?」と言ってみた。結局その日
の朝、店で茹でたばかりのズワイガニを2ハイに甘えびをつけてもらって5千円
で手を打った。ここで買うことに決めたのは、実は前出のカメラマンのバッグを
預かってもらう計算もあった。どう見ても大きなカメラバッグを担いで歩けるよ
うな通路ではないと思ったわけだ。ついでに親父さんに海鮮ドンブリの店「井ノ
弥」までの行き方を教えてもらって我々は先へ進んだ。カニ屋の店先を通りかか
ると「お客さん、カニ、カニはどお?安くしとくよ!」と声がかかる。観光客と
地元の客との見分けをどこでつけているのか?声をかける相手とそうでない相手
をきちんと見分けているのだから、さすが、プロである。ああああああああああ
総菜屋、花屋、八百屋、などの値札を見ながら「ああ、安い」といちいち私が感
心するので、カメラマンは苦笑していた。そして目指す井ノ弥に到着。すでに3
組が店先に並んで順番を待っていた。店外のディスプレイを眺めて「どれにしよ
うか」悩むこと数十分。前の客3組が店内に入った後で、男の子が注文を取りに
やってきた。もう、ここで決めなければいけないのか、と焦りつつカメラマンは
特盛りのチラシ、私はウニイカ丼に決定。それから待つこと30分。我々の後ろ
にはすでに5組以上の客が並んでいる。胃は期待と空腹でグーグー鳴りっぱなし
であった。あああああああああああああああああああああああああああああああ
空港までのバスが到着するまであと1時間!という頃、やっと店内に入れてもら
えた。テーブルの数が4つ、あとはカウンターのみの小さな作り。カウンターの
向こうには親父さんが一人に年輩の女性が一人、そして女の子が3人に男の子1
人。もしかしたら家族でやっているの?という感じである。役割分担が決まって
いるらしく、年輩の女性は奥に入り姿が見えなくなったが、親父さんを筆頭にカ
ウンター内に一列に並んだ店員さんたちは、ドンブリにご飯をつぐ係、食器を下
げる係、洗う係、レジ係、注文を取る係と役割分担がされていておもしろい。し
かも悠長に先見話などをしながら仕事をしている。店の外にはズラリと殺気だっ
て客が並んでいるのに、1歩入ればかなりアットホームな雰囲気なのである。
まずは私のウニイカ丼が出来てきた。メインのドンブリの他にポツンとワサビが
乗っている小さな塗りの器がついてきた。「このワサビを出汁で溶いてドンブリ
にかけてお召し上がり下さい」と説明された。「はいはい、待ってました!」言
われたとおりにワサビを溶いてドンブリに回し入れ、ひと口いただく。う〜ん、
美味しい。ウニがこんなに甘くてふわりと柔らかいものだったのかと至上の思い
に浸った。生唾を飲み込むカメラマンを前に「美味しい!」を連発しながら先に
食べはじめた私であった(薄情物でしたね)。そして約5分後にカメラマンが注
文した特盛りチラシが到着。これもアッパレと叫びたくなるほどゴージャスで美
味しそうだ。お互いに言葉も少なく一粒のご飯も残さず平らげ大いに満足して店
を出たのだった。ああああああああああああああああああああああああああああ
帰りに注文しておいたカニと預けておいたカメラバッグを受け取った際に、カニ
屋の親父さんが話してくれたのは、井ノ弥の親父さんも中々の頑固者でチェーン
店は絶対に作らない方針なのだということ。だからあの味を堪能したければ再び
近江町市場に行かなければならないということになる。因みに私がカニを買った
店は「みなみ」という屋号で、家に帰ってその晩早速食べてみたが、カニ味噌が
ずっしり詰まり実のしまった甘味のある美味しさだった。甘えびも随分奮発して
もらったようでプリプリした大きなものが20匹以上も入っていた。「みなみ」
の親父さん、確かにあなたの言うとおり安い買い物をさせてもらったと感謝して
います。そして金沢にまた行くことがあったら絶対に「みなみ」でカニを買って
井ノ弥でドンブリを食べよう!と心に誓った。(1999.3.15)ああああああああ

左は江近町市場のむさし口。
右はむさし口を入ってすぐ左手に出店しているカニと甘えびの「みなみ」の店先。

この看板を目指してお腹を空かせた客が集まってくる。
そして店先のでディスプレーを眺めながら何を食べるのかを決めなければならない。

左が私のいただいたウニイカ丼。
右がカメラマンが注文した特盛りちらし。

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