King Crimson
Red

曲目

  1. Red
  2. Fallen Angel
  3. One More Red Nightmare
  4. Providence
  5. Starless

演奏者

寸評

前回前々回に引き続き、キング・クリムゾン3連続ですが、前回の「暗黒の世界」の次の作品である「レッド」を今回は紹介します。このアルバムは一応「太陽と戦慄」以降のメンバーでのキング・クリムゾン最終作で、この後にいったんキング・クリムゾンは解散します。とりあえずこれらのことを予備知識として知っていて損はないと思いますので書いておきます。

さて、このアルバムではヴァイオリンのデイビッド・クロスが脱退し、3人になってしまった後のアルバムです。キング・クリムゾンの柔の部分を司っていたデイヴィッド・クロスの脱退によりこの「レッド」はより一層の硬質化したハードロックサウンドになり、剛の字一直線に進みます。しかし、ジャズロック色は無くなったわけではなく自身のロックの中にきちんと消化していきました。これ以上は小難しい話になってしまうので割愛させてもらうことにして次の段落で個々の曲の話をしてその辺を感じてもらおうと思います。

ということで、個々の曲の一口解説です。まず1曲目の「レッド」は「暗黒の世界」の「突破口」と同じ構築型の曲です。構築の具合は更に増し、一聴すると全く即興のない練り上げられた曲の印象を受けます。曲調はマイナー調の重く引きずるようなハードロックで、個人的にはあらゆるロックナンバーの中でこの曲よりヘビーな曲を知りません。2曲目の「堕天使」は、これまた思いハードロックですが、わざとジャジーな管楽器をかぶせて摩訶不思議な世界を作り上げています。また、ジョン・ウェットンの歌が一人で静と動を歌い分けるという離れ業を演じています。実は「太陽と戦慄」以降のキング・クリムゾンの曲の中では一、二を争うメロディアスな曲だったりします。3曲目の「再びの赤い悪夢」は、その後のジョン・ウェットンを暗示するようなポップでメロディアスで疾走感のあるハードロックです。しかしこのバンドはキング・クリムゾン、ひたすらヘビーだったり、間奏の手拍子と管楽器の絡みの部分などは妙にオカルト的で(元々「太陽と戦慄」以降のキング・クリムゾンはオカルト趣味が強いのですが・・・・・・)、一曲で二曲や三曲のアイデアが楽しめるというお得な曲になっています。4曲目の「神の導き」はライブの即興をスタジオで加工した曲で、3人になってからのライブパフォーマンスはなかったので、デイビッド・クロスがまだ在籍していた頃の音源を使っています(デイビッド・クロスがスタジオでの加工に参加したかどうかは不明。誰か知ってる人がいたら教えて下さい)。この曲は妙にフリージャズ気質が強く、アルバムの中では浮いた感じがないわけではないのですが、暗めのアルバムのトーンには妙に合っていて、次の曲へのプレリュード的な配置としてはまさに絶妙です。そして、最後の5曲目は「スターレス」ですが、この曲は最初メロディアスなバラードから入ってホットなフリーキーなジャズロックで終わるというまさにジャズロックバンドとしてのキング・クリムゾンが最後の最後で作ってきた最高のジャズロック曲です。リズム隊が緩やかなリズムを刻む中メロトロンがそれに併せて入ってきてその上にエレクトリックギターのメロディアスなフレーズが乗ります。このイントロは日本人の琴線に触れるようにわざと作ったのではないかと錯覚するほどの内容です。そして、ジョン・ウェットンにしか歌えない歌が入ってきて、コーラス間の間奏はアルトサックスが取ります。このボーカルとサックスの作り出すムーディーな世界にひとしきり酔いしれるまま歌の部分は終わりを告げます。そこから一気に曲調が替わりジャズロックパートに突入します。しばらくはギターとベースとパーカッションだけの静かな反復リフが繰り返されるのですが、テナーとアルトの2本のサックスが入ってきてからは、曲のテンポがアップし曲が跳ねます。歌メロのジャズロックバージョンを軸に壮絶なインプロ合戦が巻き起こりエンディングまで疾走し続けます。まさにあっという間の12分間でこのアルバムの、キング・クリムゾンの幕が閉じます。感動の瞬間が味わえて終わるのです。

以上が曲毎の解説ですが、見事なまでに脱フリー色があります。しかもジャズ味は忘れて無く、前の2枚に比べるとジャズロックからはかけ離れたハードロックアルバムであるモノの、ジャズロック無しには語れないアルバムになっています。そこがこのアルバムの面白味なんですね。


Created: 2002/08/18
Last update: 2003/12/02

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