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 2022年9月



政府 vs. コミュニティー
2022年9月6日

 インタネットのデータ交換の仕様、例えばデータモデルや語彙の策定は欧米先進国では主にコミュニティーにより推進されます。筆者の想像ですが、ICTの共通仕様というものには以下の様な特性があるからだと思っています。

機動性 民間が主体となると、「早い者勝ち」という局面が現れ、各プレーヤーが速く策定を進めようと考えるため、策定は必要なモノからどんどん進められていきます。
進化と淘汰 民間は、策定が目的ではなく、自分のビジネスの成功が目的です。従って、古い規定を捨て去ることには躊躇しません。躊躇するとすれば、例えば古い顧客が困るなどのビジネスに悪影響がある場合だけです。しかし、ある企業が顧客からの要望に縛られ古い仕様にに拘っていると、競争者は新たな仕様に基づき新たなサービスを始めるかも知れません。そうすると、今まで古い仕様を希望していた顧客は、簡単に古い仕様を提供していた企業を見限り、新たなサービスに乗り換えます。これは、顧客企業も競争下にいるためで、常にみられる現象です。ベータのビデオテープは見捨てられ、勝者であるVHSもテープごと見捨てられました。
この様に、仕様はコミュニティーにより策定され、そして捨てられることが運命であり、進化の基本要素でもあります

 勿論、仕様策定に際しては政府の役割も大きいです。例えば、以下の様なものがあるでしょう。

流れに掉さす コミュニテイーが十分に形成されていない場合や分裂している場合、或いは特定の企業に牛耳られている場合は前記の特性が活かされません。そこで、政府が色々な手段を使ってコミュニテイーの形成を支援します。例えば、Fiware.orgがEUの肝いりで、膨大な予算をかけて形成された事は良く知られている事実です。EUは米国のGAFA支配や中国の攻勢を嫌って、コミュニティーの形成を戦略的に進めたという話をお聞きしたことがあります
みんなで使う 仕様は目的ではなく事業を進めるための手段ですから、単に策定されただけでは意味がありません。そこで、権威ある標準化団体などと標準をオーソライズしたり、自らの調達仕様に盛り込んだりして、普及の支援を行います。DSAが展開する「エリア・データ連携基盤」の推奨モジュールもその様な考え方だと思われます。

 話はちょっとずれますが、前記の様なICTの標準とは異なり、人の命に関わるような事や国民の生活を脅かす様な事項に関しては、政府自身が標準を定めます。医薬品の認証基準、建築物の基準、自動車の車検項目など、多くの標準があります。これらの標準は淘汰されたり無視されたりするものではなく、法律の裏付けをもって守らなくてはならない法令の一部を構成していると言っても良いのだと思います。つまり、民間のコミュニティーが定める標準は、守るかどうかはビジネス判断であるのに対し、政府の標準は守らなくてはならないものであるという点が全く異なります。

 さて、気になるのがデジ庁が自らデータ交換に関する仕様を決めると言っているという噂を耳にすることです。噂の真偽は分かりませんが、この噂が流れただけで民間では様子見というか忖度というかブレーキを踏む様な発言が聞かれます。政府が決める標準は守らなくてはならないもの、守らないと何らかのペナルティーを受けるというイメージがあるからでしょうか。勿論、政府の活動ですから、機動性に欠けるでしょうし、進化と淘汰を前提とはしにくいとも思います。ますます日本は遅れていくのかなと思います。
 もし可能であれば、この噂をデジ庁自身が否定してくれると有り難いのですが。。。。