(過去ログ14)
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北東エリアにてのライブ“celestia-Lite”を終了しました。
天上に星々は還り、
今宵の想いもまた共に届きますように‥‥
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 【《ステージ・オヴ・ドーン》。“Ｍｒ．サンドバック”不動忠誠が立ち去った後で】 「ご婦人？」 「……何か問題でも？」 まじまじと斎姫を眺める伊集院。 ジト目で返す斎姫。 … …… ……… 「一応聞いておくが、“女性だから”という理由で特別扱いされたいか？」 「絶対やだ」 「ま、お前の場合は心配いらないだろうけどな。 女とかなんとか言う以前の問題で……ガキだからな」 伊集院の足を思いっきり蹴る斎姫。 だが、足が痛かったのは、むしろ斎姫の方だった。[2002/07/07 20:19:01]
KABUKI●=KUGUTU=KABUTO◎/♂/AJ23/ 「正義感の強さ故に、許せないと言いたいかも知れない。 だが、先ずは当事者の言い分を聞くべきだろう」 影の中から歩み出て来た男が、出て来た瞬間、 不動の体中から冷たい汗が噴き出た。 プロのプロ。 そんな思考と本能的な圧倒的恐怖が身をすくませていた。 気付けなかった時点でボディーガードは刺客に負けることを意味するのだ。 警護対象を守るには二挙動必要なのに対し、 刺客には一挙動で十分なのだから。 現役時代の部長が止められなかったという輩とはこんな奴なのかもしれない 伝説のカゲ『夜叉』のストリート伝説を笑い飛ばしていたものだが、 いるのだ。この災厄の街にはこういう化け物が。 この男に害意があったなら、自分は死んでいた事を当然のごとく 口惜しさも感じずに受け入れる事が出来るほどの 圧倒的技量の差を持つ男の指摘は重かった。 しかも不思議な事に、紛い物ばかりのこの街で プラチナム並に貴重な相手への配慮が感じられた。 刺客に心配される護衛か。ふと、大声で笑いたくなる衝動を覚え、気付く。 「オレは何に対して怒りを感じていたのか？」 疑問が頭を冷やしていく。 落ち着いてみれば、伊集院が楽しそうに斎姫をからかっている。 それに対し斎姫は。 ジト目でにらんだり、頭から湯気吹いたり、瞳を輝かせて涎たらしたり 心を許した者へならではの反応でその表情をクルクル変えている。 それに伴い、ピリピリしていた空気は緩んでいった。 豊かな感情の表現で周りを活気つけずにはおかない、そんな女の子 昔の思い出に重なる。（アイツもあんな感じだったっけな） しかし、あくまで斎姫は斎姫で、他の誰でもない。 ふと、己の姿を省みる。ごつごつした大きな手。 大きな頑丈な体。 オレは大人になったのにアイツは大人になる事はなかった。 だから、オレの心の中ではアイツあんな年のままなのか… 視線を転じれば、金髪の男の子がお人形みたいな女の子に 手を差し伸べている。 傍から見れば微笑ましい所作(男の子の宣言が聞こえたなら別の反応があったのだろうが）胸の奥を刺す。 子供のやり取り。守ってやるといきがって、守れなかった約束。 その為に、その守れなかった約束の為に剛さを求めたはずではなかったか。 それなのに目の前のカゲには手も足も出ない。 約束を守れなかった己を赦す為に人の代わりに殴られるこの稼業を選んだはずだったのに。 それなのにもう逃げ出そうとしている。 子供の頃、親父にブン殴られたときのような衝撃が心を襲った。 あのときのオレが今の俺に怒っていたんだな 目の前の“不思議な”殺し屋を正面から見返す。 「そうだな、その通りだ。恥ずかしい勘違いをしてた。」 「あんたの忠告に感謝する。でも、あんたにはもう会いたくないな」「特に仕事場では」 いつか、この男からクライアントを守れるようになれるのだろうか。 自信は全く無い。ただそうならなければならないのだ。 カゲに背を向け、伊集院、そして斎姫に向き直る。 「あんたの予測通りとはな。まんまとしてやられた」 肩をすくめ、溜め息を一つ。 「ただ、ご婦人は手荒に扱うとあとが怖いぜ？」 「なあ、お嬢さん」にっこりと微笑む。 斎姫の注意がこちらに移ったのを確認してから 真面目な口調で続ける 「ちょっと怖い思いをさせて済まなかった。君が知り合いによく似ていてね」 「そのおかげで大切な事を思い出したよ。君は私の恩人だ」 懐からハンカチを出し、顔をぬぐって笑う。 「お礼に…そうだな、仮に“暴力トーキー”が慰謝料踏み倒そうと したら、取り立ての手伝いをさせていただこう」 ポケロンが鳴る。わずかな逡巡ののち、相手を確認して切る。 「どうやら、仕事らしい」 踵を返し、舞台を後にする。 その途上で、目に入った金髪の男の子の姿に向け、つぶやく。 「お前さんはその娘との約束を守ってやれよ」 「そいつがたった一つの冴えたアクションだぜ」 これから待つ部長のカミナリも望むところだった。 大切なものは何かを思い出したから[2002/07/07 11:09:45]
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 すべてが伊集院の予想通りだった。 完全に不意打ちだったはずの一撃目がかわされたことも、二撃目が撃てなかったことも、 ぬいぐるみが伊集院を直撃することも（笑） 「ま、見てのとおりだ。頑丈なガキでね、多少手荒に扱ったところでびくともしない」 彼らは気付いただろうか。伊集院は“邪魔”が入ったから二撃目を撃たなかったわけでは ない。完全に動きを封じられ、二撃目が撃てなかったのだ。 二撃目を放つまさにその瞬間、斎姫が半歩動いた。ただそれだけのことで、伊集院は二撃 目を撃つことができなかった。 間合いが微妙に崩れた。 虚をつくような動きだった。 理由はいくらでもつけることができる。 だが普通は、ただそれだけのことで動きを封じることなど不可能である。 それは、まるで妖精に呪いをかけられ、運命そのものを狂わされたような――。 「さて、物騒な話はここまでにしておくか。せっかく向こうで面白そうなことが始まって いるからな。見物しない手はない（笑）」 伊集院はいつのまにか、再びカメラを回していた。 被写体は当然、マッシュとラミレス。 いつものように生で流すのではなく、ただ記録としてカメラを回す。 後々、勘違いに気付いた二人がこの映像を見たら、果たしてどんな反応をするだろうか。 それはそれで面白そうである（笑） 「ところで、薫ちゃん。あれだけのことをしておいて、お詫びのひとつもないなんてこと、 ないよね〜」 不意に、斎姫が伊集院に話しかけた。 顔には微笑が浮かんでいるが、目はまったく笑っていない。 「いいだろう。『月庵』のケーキセットで手を打ってやる」 「む〜。食べ物なんかでごまかされないもん」 「特製・フルーツパフェをつけてもいいが？」 「う……た、食べ物なんかでごまかされない…もん」 考え込んだ時点で負けである。ってゆーか、よだれを拭きなさい、斎姫（笑） 漫才じみた掛け合い（交渉？）を終えた伊集院が舞台――マッシュとラミレスの方へと一歩 近づく。当然、カメラは構えたままだ。 「こ、こぷも？」 そして、カメラの上からはぬいぐるみ（頭の上から移動した）が、まるで映画監督のような 面持ちで二人を見つめていた。[2002/07/06 08:34:00]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 《ステージ・オヴ・ドーン》。 この場所に来てからの展開の速さは、とにかく凄かった。 えーと、少し状況を整理してみよう。 あたしが伊集院に拉致（笑）されて、投げ飛ばされたところまでは、ある意味いつも通り。 伊集院があたしを手荒に扱うことは、今や昔に始まったことじゃない。 ところがいつも通りじゃなかったのはそれ以降で、あたしが多少痛い思いをするのを覚悟 してたら、《アルビオン》で会ったおにーさんが助けに入ってくれたんだ。 それで、意外な展開にびっくりしているうちにお礼を言いそびれて、気付けばおにーさん は伊集院と口論（？）中。 ついでに女の子が転んで、勇者さんはすべてを破壊する……らしい。 あらためて周囲を見てみると、誰もが誰かと話をしていて、あたしひとりが場に残された ような感じになっている。なんとなく手持無沙汰。 とりあえず、伊集院と“Ｍｒ．サンドバック”さん（伊集院がおにーさんのことをそう呼 んでいた。呼ばれるほうとしては余りありがたくなさそうハンドルだね）の話が一段落つい たらお礼を言って、それからどうしようかなぁ。 あ、“Ｍｒ．サンドバック”さんと、背の高いおにーさんがこっちを見てる。 どうやら話は一段落ついたみたい。 「さっきは助けてくれてありがとう。怪我、大丈夫？」 その場には少し不穏な、というか、不服そうな、というか、そんな感じの空気が流れてい たけど、敢えて気にしないことにする。 まぁ、“Ｍｒ．サンドバック”さんは今回の唯一の被害者なわけだし、和気あいあいって わけにはいかないよね。 「あたしは斎姫。不本意ながら伊集院の知り合いなんてモノをやってま――」 不意に、背筋が凍りつくような寒気――殺気！？ 反射的に身体をひねった瞬間、伊集院の拳が、今まであたしがいた空間を引き裂いた。 並の人間なら、かすめただけでも病院送りになりそうな鋭い一撃。 これを見れば、先ほどの“必殺技”がいかに手加減されたものであるかが良くわかる。 さらに、なんとか一撃目をかわしたときには、伊集院は既に二撃目を放てる体勢に入って いる。あたしでも滅多にお目にかかったことがない、本気モードの伊集院。 ぽこん。 なにやら軽い音がして、そして二撃目が降ってくることはなかった。 ステージのほうから飛んできたぬいぐるみ（風のドロイド）が伊集院に直撃したからだ。 一気に場の緊張が緩む。 「ま、見てのとおりだ。頑丈なガキでね、多少手荒に扱ったところでびくともしない」 「こ、こぷもー……」 “ニヤリ”と笑みを浮かべる伊集院。でも…… 「薫ちゃん……ぬいぐるみを頭に乗っけたままだと、全然さまにならないよ（＾＾；」[2002/07/06 07:05:31]
カタナ● カゲ＝カゲ◎／M／33／削げ落ちた頬に鋭い目。まさにカゲ。そんな風体の長身痩躯の男。 【《ステージ・オブ・ドーン》】 そもそも、“シルヴァーウルフ”は闘争を好む。 生きている充実感。自分の存在が何処までも広がる開放感と、同時に一点 に交わっていく緊張感。その感覚を愛していた。 だが。 一応の膠着状態となったこの状況で、彼が取った行動は、以外にもコンフ リクトの解消だった。 或いは単に、状況を自分の理解しやすい方向へ持っていこうと思っている だけなのかも知れないが。 「そういきりたつものでも無いだろう」 薄い笑みを浮かべ、“Ｍｒ．サンドバック”へと歩を進めるキリー。 「口振りから察するに、“暴力トーキー”を知っているのだろう。 ならば、彼が只のレッガーかどうか、解る筈だ。 彼が大丈夫と言うのなら、大丈夫だったのだろう。 それに・・・・」 一旦言葉を切り、横目でマッシュとラミレスを一瞥する。 「…えーっと、勇者さんですか？」 「うん、僕は勇者ギア・マッシュ！ すべてを破壊する者」 何か間違っているような気もするが、取りあえずほのぼのと言えなくも無 いやり取り。シルヴァーウルフは苦笑を浮かべる。 「勇ましい言葉の応酬をするには、少々空気が緩んできたようだ。 そうは思わないか、“Ｍｒ．サンドバック”」 不動は渋い顔だ。 ならば。 「正義感の強さ故に、許せないと言いたいかも知れない。 だが、先ずは当事者の言い分を聞くべきだろう」 そう言い、展開の早さにかぼんやりしている斎姫・・・つまり、伊集院の 行為の直接の被害者を、キリーは目で指し示した。[2002/07/05 09:46:04]
（Chakra◎,Kabuto, Katana● 13/♂ 金髪碧眼の人なつっこい少年） 【《ステージ・オブ・ドーン》】 「…えーっと、勇者さんですか？」 えっ？ 差し伸べた手が途中で止まる。 倒れた女の子は突然、よくわからないことを言った。 ユウシャ…さん？ 誰、それ？ あ、もしかして、僕じゃない誰かのことを言ってるのかな？ 近くのＭｒ．サンドバックと、傍らの少女を見る。 ユウシャさんは…どっちかな？ それとも……伊集院とシルバーウルフの方を見る。 もしかしたら、２人のうちどっちかの本名が「ユウシャ」かも…。 倒れた少女に視線を戻すと、期待を込めた目をこちらに向けている。 もしかして、僕とユウシャさんって言う人を間違えてる… あ、ユウシャって…もしかしたら、ゲームとかに出てくる勇者のこと？ そっか、テレビなんだっけ！ 伊集院の方を再び見ると不敵な笑いを浮かべている。 �爐修Δ澄△いい勝▲泪奪轡絖瓩箸�言っているみたいだ。 ラミレスの暴走が伝染したマッシュは再び手を差し伸べ、元気よく答えた。 「うん、僕は勇者ギア・マッシュ！ すべてを破壊する者」 マッシュは勇者をどこか、勘違いしていた。 そして続けた。 「で、えーと…君は誰？」[2002/07/05 04:31:20]
カゼ◎ ハイランダー=ハイランダー● Female 十代前半？ １４９／？？ 金髪碧眼の白人風 名前以外完全な記憶喪失（しかし当人全く気にせず） コンちゃん（狐の縫い包み風ドロイド）とローラーヴィークルで好奇心のままに行動する 【《ステージ・オブ・ドーン》】 「うわぁ、すごーい！」 「こぷ、こぷもっ！」 《ステージ・オブ・ドーン》の中を見て、ラミレスがまず抱いたのが、スケールの壮大さに対しての 感想だった。 ステージの手前側の客席の、垂れ幕に包まれて右往左往しているひよこ君たち −きっと海を模しているのよね。 その真ん中では、あたかもモーゼのように海（垂れ幕）が割れて黒猫をだいた少女と、凛々しくステージに 向かって闘志をみなぎらせているぼろぼろの背広の男性が佇んでいる。 −うーん、騎士様というには、格好はともかく鼻血はいただけないね。お姫様はまずまずかな。 そのステージ上には、革ジャンを着て傲岸不遜に見下ろしている男性と、線の細い黒づくめの男性。 −魔王と、その側近の魔術師かなー？でも、魔王がカメラ持って撮影してるのって変だし、睨み合ってるって ことは、本当の魔王が名を騙られて…、 「って、えっ」 とラミレスの勘違い大暴走は、横からの衝撃とそれによる自身の転倒で途切れた。 …というか、周りはちゃんと見とけ、ラミレス。 幸いにもどこにも怪我はなかったが、コンちゃんが手から離れて放物線を描き、カメラを構えた魔王（おひ）に 向かって飛んでいくのが見えた。 「こっ、こぷもーーっ！！」 「コンちゃん？！」 そのとき、横から声が聞こえた。 「大丈夫？」 自分と同じ金髪碧眼、ほぼ同じくらいの年かと思われる少年が手をこちらに差し出していた。 −この少年も、役者さんの一人よね、となると、あいている役は… 「…えーっと、勇者さんですか？」[2002/07/04 22:49:24]
（Chakra◎,Kabuto, Katana● 13/♂ 金髪碧眼の人なつっこい少年） 【《ステージ・オブ・ドーン》】 「うん、終わったよ」 嬉しそうに、伊集院に近づいて行く 。 ちょっと待った。 伊集院のそばではなくて、あの額を割っている男（ひと）のところに行けば 僕もテレビに映るかも！ ピースぐらいしておこう！ あ、でも、ブロッカーは「プロは目立つな」とか言ってたっけ まあ、いいや テレビなんて、滅多に出られないしね。 路線変更、Ｍｒサンドバッグと少女の方に近づいて行く 「あ、僕も混ぜてよー！」 相変わらずニコニコしながら走って行く ふと、背筋に電流が走る。 振り向くと、伊集院の後ろにシルバーウルフが立っている。 殺気はない、だけど、隙がない。 そして…死神の臭い。 おも…しろい…。 血と破壊、そして殺戮への欲望がマッシュを満たす…。 あ、いけない！ テレビに出るんだった。 マッシュの中の�犇現鱈瓩� あっさりと�爛謄譽哭瓩箸いΧ�敵に負けた。 ドンッ 一瞬、考え事をしたのがいけなかった。 走る時は余所見をしてはいけません。 衝撃があって、目の前には金髪碧眼の女の子が倒れていた。 「あ、ゴメン」 そう言いつつも、思わずカメラ（伊集院付近）を見てしまう。 今のはちょっと、カッコ悪い、撮られたくない。 照れもあるので、Ｍｒ．サンドバックとそばの少女の方も見てしまう。 なぜか愛想笑い。 そして、やっとバツが悪そうに目の前の少女に再び声をかける。 「大丈夫？」[2002/07/04 01:59:54]
カタナ● カゲ＝カゲ◎／M／33／削げ落ちた頬に鋭い目。まさにカゲ。そんな風体の長身痩躯の男。 【《ステージ・オブ・ドーン》】 「成る程。確かに。 “暴力トーキー”に単なる競走を求めていたわけでは無いことは確かだ」 薄い笑みを消さず。横目で、あわてるひよこ君を見る。 しかし、もう少々派手にしても良かったんじゃないか。 折角の特別編だ。 そう言おうとしたキリーを遮ったのは、少女を救った男の怒声だった。 「ニューロエイジで最もHOTなソウルをもつ男のやることがこれか？」 「背中の『闘鬼威』が哭いてるぜ？」 しかし伊集院は動じない。 「確かに、アレが可憐な美少女ならば、もう少し扱いは変わっていただろう な。 だが、残念ながらと言うべきか、あいつはあの程度で怪我をするようなタ マじゃない。」 酷いいいようだが、彼が言うならそうなのだろう。 淡々と聞いていたキリーだが、次の言葉には少々驚かされた。 「あんたと同じでな……“Ｍｒ．サンドバック”」 ほう？ この男が、この惜し気もなく鼻血を垂らしながら口上を述べるカ ブトが、あの“Ｍｒ．サンドバック”、毎度毎度ぼろっぼろのぎっとぎとに なりつつも、何故か重傷扱いにはならず、怪物的な依頼達成率を誇るという 噂の、あの男。 イメージとは大分違った。 そして続く伊集院の言葉に、キリーは内心苦笑する。 助けるつもりなど、彼には毛頭無かったのだ。 やっぱり、人でなし。 睨み合う二人。 と、視界へ更に入る影。金髪碧眼の少女。 この状況に乱入する気満々な所から見て、明らかに「カタギ」では無い。 成る程な。 キリーは心の中で伊集院の言葉に再び頷く。 あの少年、あの少女、“Ｍｒ．サンドバック”に“暴力トーキー”。 後ろのひよこ君は置いておくとして・・・・此処からが本番、というこ とか。[2002/07/03 12:58:11]
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 【《ステージ・オヴ・ドーン》にて】 目を輝かせながら手を振る少年。 伊集院はすぐに彼に気付き、笑みを返した。 「よぉ、マッシュじゃねえか。その様子なら、首尾良く目的を果たせたみたいだな」 回していたカメラを止め、マッシュの方に一歩近づく。 その時だった。 「楽しみにしていたんだがな…両者ともコースアウトか。おいかけっこの勝者は誰だ？」 闇の中から声が響き、影から滲み出るように一人の男が現れる。 一見無防備にも見えるが、まったく隙のない動き。 獲物を狙う獣のような、鋭い眼光。 その男は、まさにカゲと呼ぶにふさわしかった。 「どう思う、“暴力トーキー”？」 そう問いかける男の真意は、薄く浮かんだ笑みの裏に完璧に隠されていた。 対する伊集院は、相変わらず、余裕さえ感じさせる笑み。 紡ぎ出される声にも、動揺は感じられない。 「そうだな…単純に速さを競うだけなら、マッシュの勝ちだろう。 だが、あんたはそんなモノが見たくて俺を尾けてきたわけじゃないだろう？」 まぁ、多少物足りない結果だっかかもしれないがな。 そう付け加えると、伊集院は改めて周囲を見回した。 ステージの近くては垂れ幕をかぶったままのひよこくんが右往左往しており、その近くでは 斎姫に手を差し伸べた体勢のまま固まっているカブトらしき男がいた。 その男は困惑したように視線をめぐらせ、そして、伊集院と視線が合うと、まさに噛み付か んばかりの勢いで一気にまくし立てはじめた。 「ニューロエイジで最もHOTなソウルをもつ男のやることがこれか？」 「背中の『闘鬼威』が哭いてるぜ？」 なるほど。良識的な意見だ。 それが、男の言葉に対する、伊集院の感想だった。 至極良識的な意見に、自然と笑みが浮かぶ。 「確かに、アレが可憐な美少女ならば、もう少し扱いは変わっていただろうな。 だが、残念ながらと言うべきか、あいつはあの程度で怪我をするようなタマじゃない。 あんたと同じでな……“Ｍｒ．サンドバック”」 「それと、もうひとつ。助けに入りそうな人間には事欠かなかったからな。遠慮なく投げて も問題ないと思ったんだが？」 伊集院は不動の顔を正面から見据え、ニヤリと笑みを浮かべた。[2002/07/03 02:06:24]
カゼ◎ ハイランダー=ハイランダー● Female 十代前半？ １４９／？？ 金髪碧眼の白人風 名前以外完全な記憶喪失（しかし当人全く気にせず） コンちゃん（狐の縫い包み風ドロイド）とローラーヴィークルで好奇心のままに行動する 【《ステージ・オブ・ドーン》前】 「ここは何もやってないっていってたけど…ひよこ君が一個大隊ぐらい入っていくってことは、 突発イベントてヤツかな？コンちゃん？」 「コン、こぷもー！」 いつも通りのかわいい(！？)鳴き声を聞きながら、ラミレスはこれまで見たことを思い返していた。 遊び疲れて垂れ幕の影で休んでいると、「闘鬼威」と書かれた革ジャンにカメラを持った男が 黒猫を連れた少女を軽々と小脇に抱えて中に入っていき、そのほんの少し後にマスコットキャラの ひよこ君たちがわらわらとそれに続いた。 その後、ぼろぼろの背広を着た（というより纏った）若い男が駆け込んでいくとほぼ同時に少女の悲鳴（というより怒号？）とひよこ君の（こちらは間違いなく）悲鳴が響き、 ものすごい衝撃音が聞こえた。 …どの部分を切り取っても、普通の遊園地ではまずお目にかからない光景であるのだが… 「うん、きっとそうだよね！となると、見逃したら大損てヤツだね。」 「こぷも、こんっ！！」 …悲しいかな、《好奇心》の三文字の前に、ラミレスの《常識》の二文字はオーサカMoonに宅急 便で飛ばされてしまったようだ。 かくして混沌の渦にまた一人、渦を加速するように加わるのであった。 「コン、コン、こぷもー！！」 …失礼、一人と一匹だった（笑）。[2002/07/03 01:56:41]
KABUKI●=KUGUTU=KABUTO◎/♂/AJ23/ 「大丈夫かい？お嬢さん」身を起こすと、尻餅をついた恰好になっている斎姫に髪をかきあげた後、手を伸ばす。 少女が手を伸ばさないので掌を確認すると、鮮血に染まっている。 「……ああ、これね。」しどろもどろになりつつ、慌てて反対の手を伸ばす。 不安がっていると思しき少女を安心させようと思い巡らし、出た言葉が。 「エーと、まぁつまり…これが…俺のォ…」 「仕事ですから。」 千早重工の金言であった。 雅之社長の命を狙って来た一流の殺人技術を持つサイバーサイコ相手にも 感じなかった危機感というか焦りのようなものが胸の奥を灼いていく。 「目の前の少女の反応」それだけが気がかりだった。 逃げるように視線をめぐらせ、八つ当たりのように視線の先にいた伊集院に 噛み付く。 「ニューロエイジで最もHOTなソウルをもつ男のやることがこれか？」 「背中の『闘鬼威』が哭いてるぜ？」 結構詳しい。 それもそのはず、深夜の不寝番を強いられることも稀ではない業種の 者にとって、伊集院の『殺多泥夜（サタデーナイト）』は 長い不毛な夜を短くする貴重な番組なのだから。 不動もそうした一人だった。[2002/07/02 23:57:20]
カタナ● カゲ＝カゲ◎／M／33／削げ落ちた頬に鋭い目。まさにカゲ。そんな風体の長身痩躯の男。 【《ステージ・オブ・ドーン》】 男は一部始終を見ていた。その上で、女性を助けもしなければ、伊集院へ 助力することも無かった。 何処からともなく表れ、派手に流血する男。待ちくたびれたのか現れたあ の少年。何やら混沌とした様相を呈している。 （ふむ・・・） 完全に影となり、その場を見守るのは無論“シルヴァーウルフ”だ。 この人でなし。 嬉しそうに手を振る少年を横目に、彼はとうとう姿を現した。 「楽しみにしていたんだがな…両者ともコースアウトか。 おいかけっこの勝者は誰だ？」 薄い笑みを浮かべ、それこそ影から抜け出るように気配を放つ。 「どう思う、“暴力トーキー”？」[2002/07/02 12:09:25]
（Chakra◎,Kabuto, Katana● 13/♂ 金髪碧眼の人なつっこい少年） 店には誰にもいなかった。 近くにいた人に聞いたら 「ああ、さっき店の前を勢いよく駆けて行ったよ」 との返事。 ついでに、伊集院薫と言う人が、テレビの人だということもわかった。 わぁ、芸能人だ。 それにしても、待ち合わせ場所を間違えたかな？ まあ、いいや、追いかけてみよう。 騒いでいるので、行った道はすぐにわかった。 それにしても早い。マッシュでも息が切れる。 【《ステージ・オヴ・ドーン》】 伊集院が見える。Ｈ◎Ｔなソウルを持つ男はなぜか女の子を連れている。 なんだろう。 ひよこくんたちが言うように人質というわけではないみたい。 だって、女の子も怯えてないし。 だけど伊集院は女の子を投げ上げた。 続いて、必殺技。 飛び出ようかと思った。 でも、近場から黒い影が飛び出している。 あ、撮影かも…。 女の子をかばうために飛び出た男は 激しくアクションをして、額を割っている。 オーバーなアクション…これは…やっぱり… 「すごいや、テレビ撮ってるんだ！」 マッシュは目を輝かせながら、伊集院に手を振った。[2002/07/01 14:16:30]
≪あたしがどんなに叫ぼうとも、無情にも地面は迫ってくる。 そして……。≫ 男が飛び出した。 空中で少女を抱きとめ、勢いを殺しきれぬと知ると、 身に培った戦士の本能が少女と男の位置を入れ替え、 落下の勢いを少しでも減じるべく、地面を蹴らせる。 仕えるべき者の為に己をすり減らしてなお貫く魂が 襲いくる衝撃波に怯むことなく最善の位置取りを為さしめる。 ………そして、いつも笑いを忘れぬ運命が、二人を無事に導く。 迫ってきていたひよこさん達に足跡がつく勢いで踏まれた挙句に 何故かあった消火栓に頭をぶつけ、額を割ることが 男にとって「無事」といえる状態であるならば、であるが。 兎も角、少女はかすり傷一つ無い奇跡のような状態であった。 男はそれを確認するとうれしそうに、とてもうれしそうに笑った。 （この体、この特技≪わざ≫、この為のものだ） （俺はそれだけでいい）[2002/06/30 23:27:37]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 「……それで、どーして逃げてるの？」 伊集院から事情を聞きだしたあたしの第一声は、これだった。 わざと壊したわけでもなく、壊れるような使い方をしたのでもない。 本人の能力云々は別として、普通の遊び方で遊んでいたら機械が壊れた。 それって、素直に謝ればすむ問題でしょ？ 「なんだ、もう一度説明してほしいのか」 そう言った伊集院の顔には、からかうような笑み。 ………つまり、伊集院はすべて理解したうえで、それでも逃げてるわけね。 まぁ、いつものことだから予想していなかったわけじゃないけど。 「……薫ちゃんって、もしかしなくてもバカ？」 しばらく走った後、ふいに伊集院が立ち止まった。 余計な一言のせいでずきずきと痛む頭を押さえつつ、周囲を見回してみる。 この大きなステージは……確か《ステージ・オヴ・ドーン》とか言ったかな？ ステージの上にかかっているでっかい垂れ幕は、次のイベントの告知なのか、それとも 以前のイベントの名残なのか。 いまは特にイベントもないためか、全くと言って良いほど人気はない。 「ここが目的地？」 「いろいろと事情があってな。ここなら無関係な通行人を巻き込まずに済むだろう？」 ……無関係なあたしを巻き込んでおいて、いまさら何を言いますか。 でも、そんなことを言うとまた痛い目にあうことになるので、今回は口には出さない。 あたしは学習する女なのだ。 そうこうしているうちに、ひよこくんたちも追いついてきた。 少し離れたところで立ち止まり、こちらの様子を伺っている。 「おとなしく人質を解放して、お縄につくのだ〜〜」 あ、そうか。ひよこくんは、あたしが人質だと思ってるんだ。 「人質、ねぇ。ま、コレには用はないからな。遠慮なく受け取りな」 強引に連れ去っておいて、“コレ”呼ばわりですか。 って、あれ？？ 伊集院ってばいつの間にあんなに遠くにいったの？ ってゆーか、天地が逆さまになってるんですけど。 次の瞬間、いきなり強い風が吹いて、世界が回りだした。 いや、違う。回っているのはあたしのほうだ。 あたしは伊集院に放り投げられて、それで、続けざまに伊集院が放った例の“必殺技”に あおられたんだ。 伊集院の一撃は垂れ幕のひもを引きちぎり、垂れ幕はまるで狙ったかのようにあたしの上 に落ちてくる。 さらに、下にはあたしを受け止めようと集まってきたひよこくんたち。 つまり、伊集院はあたしごと、ひよこくんを一網打尽にするつもりなんだね（爽） … …… ……… 許すまじ、伊集院（￣_￣＃） 「生きてたら覚えてろ〜〜。ってゆーか、むしろ死んだら化けて出るっっ！！」 あたしがどんなに叫ぼうとも、無情にも地面は迫ってくる。 そして……。[2002/06/27 03:21:35]
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 「あの少年――確かマッシュとかいったな――奴のほうはうまくいったかな……？」 走りながらふとそんな言葉が漏れる。 あの少年の瞳は、ただ逃げ出す者の瞳ではなかった。おそらく、何かやりたいことがあった のだろう。 だから、マッシュが《アルビオン》とは別方向に走り出しても気にも留めなかった。 追いかけてくるスタッフも大半は引き受けた。 もっとも、同じ暴れるならば相手の数が多いほうが楽しいという理由もあったのだが（笑） 伊集院の脚には“韋駄天 IDA-10”が埋め込まれている。 どのみち、並の人間では追いつくことさえ難しい。 ……はずだったのだが。 当初の予想を裏切り、目的地の《アルビオン》を通り過ぎてもなお、逃走は続いていた。 「くそっ、あのひよこ、案外足が速いじゃねーか」 全力で走りながら、伊集院はちらりと後ろを振り返った。 一般の――生身のスタッフはすでに全員振り切った。 先回りして待ち構えていた人間も、軽く振り払って転ばせてやれば、もはや追いつくことは できなかった。 問題はこの遊園地のマスコット、“ひよこくん”である。 何度か振り切ったと思ったシーンもあったのだが、遊園地の地理に通じているためか、すぐ に追いついてくる。 「殴って壊すことができれば楽なんだがな……」 そう言ってみたものの、それができないことは伊集院自身良く解っていた。 このレースの終着地点は《アルビオン》。園内の店舗である。 現時点でも店に入れてもらえるかどうかは怪しいのだが、これ以上遊園地の備品を破壊したり すれば、確実に“ゴール”することはできないだろう。 今までも、スタッフたちに怪我をさせないように苦労しながら包囲を突破してきたのだ。 その苦労を水の泡にするのは何とか避けたいところである。 「ん、あいつは……」 その伊集院の視界に、不意に見慣れた人物が飛び込んできた。 黒猫を連れた、髪の長い少女。 自称の年齢はともかく、どう見ても１３〜１４歳くらいにしか見えないあの人物は…… 「……斎姫じゃねーか。丁度いい、ちょっと手伝いな」 通り過ぎざまに首根っこを引っつかんで連れ去る。 頑丈で、多少手荒に扱っても問題がないところはこのガキの長所（伊集院談）である。 「手伝えって……え？ えぇぇっ！？」 突然の展開に驚く斎姫の声は、これ以上ないくらいあっさりと無視された。 そして、 「人質をとるとは卑怯なのだ〜」 「ふはははは。俺様は手段のためなら目的を選ばない男なのだ」 その台詞は間違っていないか？ 思わずそう突っ込みたくなるような台詞をひよこくんにかえしつつ、伊集院は「ある場所」に 向かって走り出した。[2002/06/15 16:09:43]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《アルビオン》にて】 「いま、アルビオンの前を走り抜けていったひとって……薫ちゃん？」 連れの黒猫のほうを見ると、彼は同意のするように頷いた。 改めて外を見ると、薫ちゃん――“暴力トーキー”こと伊集院薫――を追いかけるひよこくん の姿も見える。 「……こんなところに来てまで、なにやってるのかなぁ、あのひとは（＾＾；」 思わず苦笑が浮かぶ。 長い付き合いだから、薫ちゃんにとって“こんなこと”は日常茶飯事だということはわかって いるんだけどね。 あ、いけない。少なくとも人前では薫ちゃんって呼ばないように言われてたっけ。 まぁ、それはともかく。 知り合いが暴れているのを見た以上は、放っておくわけにも行かないよね。 幸い茶飲み話も一区切りついたところだし、ここでお暇させていただきましょう。 「ごめんなさい。ちょっと用事ができちゃったので、失礼させていただきます」 連れの人たちにご挨拶。もちろん、食事代を支払うことも忘れない。 かお……伊集院のことだから、逃げるときの状況を中継している可能性は高いよね。 そう思ってポケットロンで検索をかけてみると、やっぱり思ったとおりだった。 「これなら追いかけるのも苦労しないね。みゃあ、行くよ」 あたしは、相棒（＝黒猫）に声をかけて走り出した。[2002/06/15 15:12:31]
（Chakra◎,Kabuto, Katana● 13/♂ 金髪碧眼の人なつっこい少年） 【《サ・レイヴユニバース》にて】 「マキシマムサイクロォォォォン！！！」 伊集院の叫びとともに、マッシュの横を暴風が駈ける。 吹き飛ばされるスタッフ。 気持ちがいい。伊集院さんのすることは。 痛快だし、風も気持ちいい。 心臓が破裂するくらいドキドキとワクワクしているよ。 マッシュは一直線に出口へ向かう。 「ありがとう！伊集院さん！」 全速力でいかないと！ 結局、スタッフの相手は 伊集院さんにまかせっきりだった。 もちろん数人は相手にしたけど 転ばしただけだった。 それよりもマッシュは ひたすら園の管理責任者のもとに走った。 【《アルビオン》前】 責任者に会って謝った。 以外にもすぐに笑って許してくれた。 これだったら、時間も経ってないから まだ間に合うかも…。 それとも、ずっと前に着いてて もう食事でもしているのかな？ マッシュはドキドキしながら 扉に近づいていく…。[2002/06/15 03:31:43]
カタナ● カゲ＝カゲ◎／M／33／削げ落ちた頬に鋭い目。まさにカゲ。そんな風体の長身痩躯の男。 【《ザ・レイヴユニバース》】 破天荒と言うしかない。よもや、こんな手段で脱出とは。 それは正しく“突破”だった。 （面白い） 横目で眺め、流石に慄然となる。 「おい、どこのチャンネルだ？」 「５４２で写ったぞ」 「それって、この間潰れたテレビ局の周波数じゃないか？」 「お、３６８チャンネルもだ」 「こんなときにもカメラを回すなんて……さすがは伊集院さんだ」 「せっかくの『殺多泥夜（サタデーナイト）』番外編だ。録画忘れるなよ」 耳に入る野次馬の声。 最早トーキーというよりカブキのような所業だが、らしいと言えば非常に らしい。 （だが・・・俺は、ライヴの方が好きでね） 静かに野次馬を後にする。 わたわたするスタッフ達を尻目に、出口から出ると―― 不意に、跳ねた。 脚部を換装した“Ｗ−ラビット”と、キリー自身の超人的な体術により、 男は考えられない距離を跳躍する。《レイヴ・ユニバース》の壁面を離れ、 様々なアトラクションの壁を蹴り、少年と伊集院を追う。 これだけのアクションをやらかしながら、キリーに気付いている者は殆ど 居なかった。影に溶け込む彼の技術を用いれば、この程度は造作も無い。 シネマハウス《ドリームラヴァーズ》の壁面に張り付き、二人を追う。カ ゲの表情は薄い笑みだったが――それでも見る者が見れば、楽しんでいる事 は察知できただろう。[2002/06/13 12:31:33]
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 【《サ・レイヴユニバース》アミューズメントビルにて】 ＞「僕の名前はギア・マッシュ」 ＞ニコッと笑いながら続ける。 ＞「アルビオンで待ち合わせはどうかな？美味しいよ」 「俺様は伊集院薫、３７歳。このニューロエイジで最もＨ◎Ｔなソウルを持つ男だ」 待ち合わせ場所に同意し、そして、いつもの自己紹介。 周囲を見ると包囲はほぼ完成したようで、スタッフたちは“誰が伊集院に話しかけるべき か”と視線を交し合っていた。 「さて、そろそろ始めるか……ガキどもぉ、俺の必殺技は何だ！？」 『マキシマムサイクロ〜〜ン！！』 伊集院の声に応えてギャラリーたちが歓声を上げ、同時に出口方面の者は大急ぎで道を あける。 「そうだ。いくぜ、ガキども。必殺……」 マッシュが囲みに向けて走り出し、そして、 「マキシマムサイクロォォォォン！！！」 拳圧が生み出した風――いや、風と呼ぶにはあまりにも暴力的な衝撃――がマッシュの 隣を通り過ぎ、出口へと吹き抜けた。 勝負は一瞬。 スタッフたちが誰も身動きが取れないその一瞬は、マッシュにとっても伊集院にとって も十分すぎる時間だった。 出口へと駆け抜け、一気に外へ。 さすがに外のスタッフには連絡がいっていないのだろう。突然駆け出してきたふたりに、 ひよこくんやドロイドの竜たちが驚いた視線を向けた。 が、外のスタッフに連絡が行くのも時間の問題かもしれない。 「さて、ここからがレースの本番だな」 伊集院はニヤリと、楽しそうに笑った。 一方、残されたギャラリーは…… 「おい、どこのチャンネルだ？」 「５４２で写ったぞ」 「それって、この間潰れたテレビ局の周波数じゃないか？」 「お、３６８チャンネルもだ」 「こんなときにもカメラを回すなんて……さすがは伊集院さんだ」 「せっかくの『殺多泥夜（サタデーナイト）』番外編だ。録画忘れるなよ」 ギャラリーはやはりギャラリーだった（笑）[2002/06/11 10:29:36]
（Chakra◎,Kabuto, Katana● 13/♂ 金髪碧眼の人なつっこい少年） 【《サ・レイヴユニバース》にて】 不思議と冷静だった。 群衆の中に見える、 鋭い視線…あれは、シルヴァーウルフ…だよね。 噂でしか知らないけど、多分、あの人だ。 そんなことを思えるぐらい冷静だった。 そのくせ、まだ先ほどの熱さが心を支配している。 冷静だけど、妙な非現実感。 「そういえば、少年、まだ名前を聞いてなかったな」 その言葉で、しっかりと現実に引き戻された。 横にいるおじさんが、周りを一瞥しながら話す。 「いまから、一瞬だけ隙をつくるから、その間に突破する。無事に突破できたら…… そうだな、どこかで落ち合うか？」 「ま、こういうことは俺様のほうが慣れているだろうからな。集合場所には先に辿り 着かせてもらうが」 そういえば、機械、壊しちゃったんだ。 謝らないと、シスターマリエンヌに怒られちゃう。 でも、まだ熱い思いが身体を満たしている。 おとなしく謝りに行くよりも、何かしたい。 決めた。 この囲いを割って、自分の足で謝りに行こう！ 「僕の名前はギア・マッシュ」 ニコッと笑いながら続ける。 「アルビオンで待ち合わせはどうかな？美味しいよ」 競争だ。楽しいな。 マッシュは囲みに向かって、軽く走り出した。[2002/06/08 03:48:40]
カタナ● カゲ＝カゲ◎／M／33／削げ落ちた頬に鋭い目。まさにカゲ。そんな風体の長身痩躯の男。 【《ザ・レイヴユニバース》】 やれやれ。まぁパンチングマシーンではこんな物か。 苦笑し、周囲を見回す。 どうする、少年に“暴力トーキー”。 マシーンでの殴りあい等より、余程面白い事態だな。 やはり、此処は良い。 カゲは笑い、鎮静スティックを咥えると、火を付けた。 鋭い視線を、二人へ向ける。 見せてくれ。[2002/06/05 16:22:03]
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 【《サ・レイヴユニバース》アミューズメントビルにて】 グチっ。 少年がパンチングマシーンを殴った瞬間、なんとも奇妙な音が周囲に響いた。 「これ、壊れちゃった？」 どうやらそうらしい。 「……『ウォーカーが蹴っても壊れない』ハズじゃなかったのか、これ？」 とりあえずこの機械に貼られた宣伝文句に悪態をついてみる。 もっとも、この機械が本当にウォーカーが蹴っても壊れない様な代物であったとしても （身体改造をする人物も少なくないこのニューロエイジでは、それほど珍しい話ではない ……かも（笑））、熟練のカタナの業の前にはあっさりと敗れ去ったことだろうが。 「どちらにせよ、こうなったら勝負は無効だな」 言葉とは裏腹に、伊集院の顔には不敵な笑み。 その視線を追うと、彼らを取り囲むように（といってもそれほど多い人数ではないが） ひよこくんや遊園地のスタッフが配置されていることが確認できた。 遊園地の備品を破壊した人物を問答無用で拘束しようというわけではない。 ただ、その中心にいる人物を考えると、不測の事態に備える必要があるだけである（笑） その判断は実に的確だ。だが、すぐに集まる人数には、やはり限界があった。 「そういえば、少年、まだ名前を聞いてなかったな」 一瞬だけマッシュに視線を向け、再び周囲の動きに注意を向ける。 「いまから、一瞬だけ隙をつくるから、その間に突破する。無事に突破できたら…… そうだな、どこかで落ち合うか？」 「ま、こういうことは俺様のほうが慣れているだろうからな。集合場所には先に辿り 着かせてもらうが」[2002/06/05 01:36:10]
（Chakra◎,Kabuto, Katana● 13/♂ 金髪碧眼の人なつっこい少年） 【《サ・レイヴユニバース》にて】 熱くなった。 周囲の視線が、身体を熱くさせた。 その中から注がれる、ひとつの鋭い視線が頭を熱くさせた。 「一世一代の晴れ舞台ってやつには程遠いが…せっかくの舞台だ。上がってきな」 その言葉と瞳が、心を熱くさせた。 仕事の時の飢えとは違う、心地よい熱さが全身を支配する。 楽しい。 だから、笑顔で、大きく、うなずいた。 初めてやるパンチングマシーン、これを思い切り叩けばいいんだよね。 えーと、右手のアインハンダーはなしだから、左でやろっと。利き手だし。 腰をひねり、勢いをつけて、全身で力を送る。 上から下へ、打ち下ろす一撃。 グチっ 機械が奇妙な断末魔をあげる。 「あれ？」 横にいるおじさんに顔を向ける。 「これ、壊れちゃった？」[2002/06/04 10:42:05]
カタナ● カゲ＝カゲ◎／M／33／削げ落ちた頬に鋭い目。まさにカゲ。そんな風体の長身痩躯の男。 【《ザ・レイヴユニバース》】 自分が遊園地なんぞに来る柄に見えないのは知っている。 だが、良いものは良いのだ。 彼は此処の空気が好きだった。 ぶらぶらと歩く。 と。 「よぉし、ガキどもぉぉっ、殴ってるかぁぁぁぁぁっ？」 威勢の良い声、そして歓声が響いた。 アレは土曜だった気がするんだがな・・・そう思いつつも、足を向ける。 何やら、賭け試合のようなものをしているらしい。 「・・・“暴力トーキー”か」 彼がゆっくりとした足取りで現場に着いた時、伊集院は一人の少年に声をかけている所だった。 観衆の興奮気味の声で上手く聞こえないが、どうやら自分の相手にならないか、と言っているらしい。 その少年を見る。 （ほう） 成る程・・・伊集院が、暴力のセンスについては他の追随を許さないだろうあの男が、彼を選んだ理由。 それが、キリーにも何となく感じられた。上手く言えないが、解る奴は必ず解るだろう。 人ごみが割れる。“災厄”以前の宗教の伝説に有ったという「十戒」、その割れる海のように。 少年は結局、伊集院の誘いを受けるのだろうか。受けないのだろうか。 キリーは口の端を歪め、それを見守った。 これがマシーンを殴るのではなく、真剣勝負なら、もっと面白そうなのだが、と思いつつ――――[2002/05/31 12:53:04]
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 【《サ・レイヴユニバース》アミューズメントビルにて】 「『でも』は余計だな」 コインの心配をする少年に、伊集院はどこか楽しげな声で答えた。 「いいか、少年。障害ってやつは殴り飛ばすためだけに存在するんだ。少なくとも俺様はそうやって 生きてきた」 “コインが少ない”という状況をどうやって殴り飛ばすのだろうか。 現実問題としてはかなり無茶なことを言っているのだが、あまりにも自信たっぷりの口調で語られる と本当にできそうな気分になってしまうのがこの男の性質の悪さである。 「それに、こちらから指名したんだ。コインがどうとかせこい事を言うつもりも無いさ」 そんな訳で話は決りだな。伊集院のその言葉を合図にするように、一斉にギャラリー達が道を譲り、 マッシュと伊集院との間に一本の道が生まれた。 「一世一代の晴れ舞台ってやつには程遠いが…せっかくの舞台だ。上がってきな」[2002/05/25 11:59:16]
「どうだ、俺様とひと勝負してみる気はないか？」 ポケットを漁っていたマッシュ 周りの羨望ともいえる視線を受けて、初めて気がついた。 「僕？」 不適に笑っているおじさんを見る。 無言の肯定。 マッシュは元気に、そして嬉しそうに答える。 「うん、やるやる！」 それから、あ、と気付き、少し残念そうな顔をして 「あ、でも、コインがあと４枚しかないけど、いい？」[2002/05/20 00:37:45]
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 【《サ・レイヴユニバース》アミューズメントビルにて】 ３１連勝。 見掛け倒しのスキンヘッド男をあっさりとぶちのめし（と言っても本人を殴ったわけではないが）、 伊集院はあらためて周囲を見回した。 「次は俺がっ」とか、「いや、俺が」とかいう声がそこかしこから聞こえてくるが、どいつもこいつ も――いや、違う。 ひとりだけ、他とは違う“何か”を感じさせる人物がいる。 周囲の喧騒など気に留めた様子もなく、どこかのんびりとした様子の、人懐っこそうな少年。 （こいつは、案外面白いかもしれんな） ニヤリ。自然と笑みが浮かぶ。 「よぉ、そこの少年」 びっと指差すと、周囲の視線が一斉に、その少年に集まった。 「どうだ、俺様とひと勝負してみる気はないか？」 伊集院直々のご指名である。異を唱える者も、コインが…などと無粋なことを言いだす者もいない。 そこにあるのは、まるで時が止まったかのような緊張感。 そして、止まった“時”を動かす人物は、その少年以外にはありえなかった。[2002/05/18 18:01:19]
（Chakra◎,Kabuto, Katana● 13/♂ 金髪碧眼の人なつっこい少年） 【《サ・レイヴユニバース》にて】 今日のご飯はクリムゾン・ヒートでトマト料理。 味はもちろん大満足。 余った小遣いで、たまにはゲームでもしよう！ レイヴユニバースのゲームは難しそう 少なくともマッシュにとって、人をバラすよりもとっても難しそう。 どうせなら簡単な、もぐら叩きとかがいい。 もぐら叩きで、無難に最高得点を出し終える。 その時 「よぉし、ガキどもぉぉっ、殴ってるかぁぁぁぁぁっ？」 景気のいい声、そして喚声。 「パーティーの始まりだぜぇぇ」 パーティー？食べ放題？ 慌てて行ったマッシュの前には人だかり すり抜けて行くと、食事はなくて、ただのパンチングマシーン。 そしてコインの山。 あのゲームをするには、大量のコインが必要みたい。 でも、面白そう。 あのミラーシェードのおじさんがこのゲームの担当の人？ それともイベントおじさん？ とりあえず優しそうだな。 テレビを見ないマッシュには、有名人がよくわからない。 うーん、僕もやろうかな。 とりあえず、ポケットのコインを数えてみよう…。 周りの喧騒とはまったく違う のんびりとした少年がここにいる…。[2002/05/15 01:36:14]
Legger◎,Vasara,Talkie●/M/AJ37 【《サ・レイヴユニバース》アミューズメントビルにて】 「くたばれ伊集院ッッッ！」 バキィ！！ 拳が振り下ろされ、壮絶な音が響き渡る。 あまりの気迫にギャラリー達さえ静まり返るその状況で――男は、ニヤリと笑みを浮かべた。 「掛け声だけは立派だな」 余裕さえ感じられる声。ミラーシェードの奥に隠された瞳も、おそらく笑っているのだろう。 「だが……」 ややオーバーアクション気味に拳を引く。 翻った革ジャンには「闘鬼威」の文字が見えた。 「俺様に勝とうなんざ、１０万光年早いぜェェェ」 バキィィ！！ 振り下ろされる拳。 そして、“本日の最高記録”を知らせるファンファーレが鳴り響いた。 《ザ・レイヴユニバース》に位置するアミューズメントビル。 ゲームセンターとなっているこのビルには、新旧さまざまなゲームが揃っている。 その一角、“災厄”前からあるような、レトロなパンチングマシーン（標的を殴ってそのパワーを 競うやつだ）の前は、現在、異様な盛り上がりを見せていた。 それもそのはずだろう。 “暴力トーキー”伊集院薫。一部に熱狂的なファンを持つ異色のトーキーその人が、挑戦を受けて 立っているというのだから。 「これで３０連勝か……。ま、“このニューロエイジで最もＨ◎Ｔなソウルを持つ男”伊集院薫様、 ３７歳の実力を以ってすれば、これくらいは当然だがな」 （って言うか……いつの間に勝負になっているんだ？？ 俺様は適当にゲーセンで遊んでただけの ハズなんだが……） どこからともなく「いい気になってるんじゃねぇぞォ」とか言う声が上がり、スキンヘッドの若者 ――新たな挑戦者――が現れる。その手には、大量のコイン。 （そもそも、誰がコインを賭けるとか言い出したんだ？？） ふと視線を横に向けると、３０連勝の副産物、使いきれないほどのコインが目に入った。 売られた喧嘩は買ってこその“暴力トーキー”。だが、この状況ではそれは泥沼と言うべきだろう。 （――ま、コインの使い道は後で考えるとして、とりあえず楽しめれば上出来だな） 「よぉし、ガキどもぉぉっ、殴ってるかぁぁぁぁぁっ？」 伊集院の一言に、喚声を上げるギャラリー。 「勝負（パーティー）の始まりだぜぇぇ」[2002/05/14 03:45:26]
（JENDER:♂ AJ:? STYLE:Tatara◎,Kaze,Hailander●） 【ファウンテン・オヴ・スターズ】 “星の泉”その呼び名の通り、水底には数多の星々――黄昏の欠片が煌いている。 入園時に両替した貨幣を、白衣のポケットからひとつ探り出す。 出てきたのはカッパー相当の銅貨、しばし指で弄び泉に投げ入れる。 （家内安全・商売繁盛…こんなところで祈るコトじゃないな――ッと） しかし銅貨が泉に飛び込む水音は、元部の耳には届かなかった。 泉とは正反対の方向で、何かが崩れ落ちる様な音がしたからだ。 思わず振り向くと、少し離れた場所に赤い髪を乱した女性が倒れていた。 他の来客達はそれぞれの時間に没頭し、気付く様子はない。 それともフリをしているだけなのだろうか？ 周囲の様子を伺いつつ思う。 どちらにせよ彼女を気に掛けたは元部だけだった。 息が出来ないのか何処かが痛むのか、彼女は何かに耐えている様にも見える。 その時、元部は濃暗色のレンズ越しに彼女に重なり映る“何か”を視た。 それはキナ臭さとか剣呑な雰囲気ではなく、もっと異質な――。 彼女の内に宿る、もうひとつの意思とも言うべき“何か”。 正直、面倒臭いと思った。 「立てますか？」 歩み寄り、手を差し伸べ、声を掛ける。 我ながら柄でもないなと心の中で苦笑しながら…。 それでもこうしなければいけないような、そんな気がした。 それは善意でも、まして下心でもなく。 ――ただ、なんとなく。[2002/05/12 22:20:12]
(Mayakashi◎,Chakra,Katana●/♀/21/長い黒髪の巫女姿の女性) 【《エインシェント・メモリー》にて】 その女性が弁解を始めるのを見て、思わず苦笑してしまう。 「まあ、彼氏彼女がどうこうって話はいいんだけど」 遥は、落ち着いた場所が好きだったので、来るのはいつもこの場所だけだった。 だから、あまり他の場所に詳しくなかった。 「…あまり、他のとこには行った事がないから…どこがいいかしら？」 遥は、しばしの時間を、この女性と大量のコインを使って過ごす事に決めた。[2002/04/23 13:26:31]
＜カゼ◎カブト●ハイランダー／女／20代＞ 【《エインシェント・メモリー》にて】 「うん、あたしも一人だよ。 実はさ、コイン両替しすぎて。使い切れないし、遊園地で一人も寂しいから、一緒に回らない？」 にこっと笑ってそう言ってみる。 （ああ、本気で口説いてるみたいになってきたよ・・・） 周囲に人目がないのが救い。見られたら誤解されてもしょうがない。 いや、こっちにもその趣味はないのだが（ニューロエイジではよくある趣味だが） やろうとしていることはそこらのナンパ野郎とさして変わらない。 強いて言えばこっちにはシタゴコロがないだけである。 「時間制限は夜明けまで。もしくはこのコインがなくなるまで。 スポンサーになるから、一緒に回ろうって事なんだけど・・・どう？」 そして一応、付け加えて。 「多分誤解されてるけど、あたし彼女より彼氏が欲しい人だから（笑）」[2002/04/20 18:50:48]
(Mayakashi◎,Chakra,Katana●/♀/21/長い黒髪の巫女姿の女性) 【《エインシェント・メモリー》にて】 その女性がやって来ると同時に、柔らかな風が吹いた。 遥の腰までの長い黒髪と、身に纏った巫女装束が揺れる。 すみれ色の瞳から放たれた視線が、その女性を捉えた。 赤いライダースーツの足元には、どうひいき目に見てもミスマッチな、 重そうなひよこぬいぐるみのリュックサック。 思わず、口元がほころんだ。 「はじめまして、お姉さん。今、一人？」 そう声を掛けられて、一瞬対処に窮した。 （まさか、ナンパじゃないわよね…男ならともかく） もちろん、遥にはそちらの趣味は無い。 とりあえず、無難な返答をする事にした。 「…ええ、そうだけど。あなたも？」[2002/04/20 14:37:41]
〜記憶の園で〜 桜の下にどこか遠くを見る眼差しの女性が立っていた。 舞う花びらに黒髪を遊ばせる、巫女装束の女性。 偶然。 聖羅が何気なしに投げた視線と女性の視線が気恥ずかしくなるくらいばっちりと合う。 こうなるともう苦笑するしかないわけで。 （どうせ、一人じゃ使い切れないよなあ・・・） コインで重たいひよこリュックを足元に置いて、とりあえず声をかけてみる。 「はじめまして、お姉さん。今、一人？」[2002/04/19 21:32:52]
(Mayakashi◎,Chakra,Katana●/♀/21/巫女姿の女性) 【《エインシェント・メモリー》にて】 遥かなる星幽界を見渡し、意識を広げてゆく。 こうしてると、普段のBizで心に溜まっていた澱のような物が溶けていく。 星幽界絡みのBizをこなすのも、―それが人助けであっても、いや、 それだからこそ―楽ではないのだ。 只の斬った張ったのBizなら、他人に代わってもらう事も出来るが、 このBizにはそうそう代わりはいない。 堂々巡りに入りかけた思考を中断した時、視界の端に、人影が見えた。 ここに、他の人が入って来たのだろう。 さすがに人前で星幽界に意識を向けたままでは色々差し障りがあるので、 遥は現実世界に視界を戻した。 赤いライダースーツの女性が入って来るのが見えた。[2002/04/15 11:47:53]
＜カゼ◎カブト●ハイランダー／女／20代＞ 〜愚者の門より入りて東の賢者の太古の記憶へ〜 目の前を、ふわり。白いものがよぎった。 手のひらで受け止めようとすれば、それはそのまま手をすり抜けて消えていく。 ホログラフ。 この黄昏の遊園地の誇る技術。 白い欠片は、雪。それが徐々に赤味を増し・・・紅の花びらが渦を巻く。 重く枝垂れた桜の、自らの重みに耐え兼ねて落として逝く。 回廊。 桜の花びらの。 ゆるりと風が、聖羅の前に桜の道を分けた。 開かれたゲートは、エインシェント・メモリー。 遥かなる記憶と銘打たれた皮肉に、微かに苦笑して。 「・・・桜も、もう終わりかな・・・」 そのまま、微かに花の香匂う園に足を踏み入れた。[2002/04/14 02:33:05]
（Talkie◎,Kage-Musya,Kage●/Male/二十代/平凡な容姿の日系人） 【マジシャン・オヴ・ザ・ウェストにて】 「…あーあ。どいつもこいつも、浮かれちゃって」 カッパーのコインを指先で弄びながら、つまらなそうに青年は呟いた。 ろくに仕事も入らず、暇を持て余していた退屈な日。 ふと、先日の仕事先から貰った招待券があるのを思い出し、暇潰しにと来てみた遊園地。 …まぁ、確かに暇潰しにはなったのだ。 色とりどりの光に彩られたアトラクションには、見ていて退屈しないだけの魅力があった。 が。 「…男が独りで来ても、虚しくなるだけだよなぁ」 そう、それが根本的な問題だった。 四方八方どちらを見ても、恋人達の姿が目に入る。 遊園地そのものを純粋に楽しめるだけの童心か、いっそ此処で出会いを探そうとする下心か、 そのどちらかを備えていない限り、遊園地というのは、独り身の男にはそう楽しめるものではない。 そして悪いことに、彼には、そのどちらも無かった。 両替してしまった以上は使わねば勿体無いコインの使い道を、ぶらぶらと歩きながら探す。 先程通った庭園の星々の泉とやらに、願いでもかければ良かったかも知れない。 …実際、泉の周囲がカップルで溢れ返ってさえいなければ、彼はそうしていただろう。 ふと彼の視線を捉えたのは、道の傍らにあるボックス状の機械。 『ますこっと・めーかー』…そんな風に、可愛らしい飾り文字で記されている。 彼は、唇の端を僅かに吊り上げる。 悪戯っぽい微笑みでボックスに近付くと、そっと、足を踏み入れた。 …数分後。 手の上の人形を歩きながら眺めて、彼は、複雑な表情だった。 「面白くない。…別に面白くなんてないね」 結構面白い、と思ってしまっているのを、認めたくないような面持ちである。 「…そうだよ。こんな格好で作ったって面白くない。損したね」 人形を乗せた掌を、顔の前まで差し上げる。 少し笑って、問い掛けた。 「なぁ。お前、誰の姿を真似してるんだい？」 答えが、返る筈も無い。 くすくすと笑って…彼は、自分の顔をした人形を投げ捨てた。[2002/04/09 10:54:56]
（Chakra◎,Kabuto, Katana● 13/♂ 金髪碧眼の人なつっこい少年） 【《アルビオン》にて】 報酬はさっき貰った。 １ゴールド、大金だ。 もちろん、ほとんどは教会に寄付する。 これでシスター・マリアンヌも喜んでくれるハズだ。 でも、１カッパーぐらい、使ってもいいよね。 マッシュは嬉しそうに、アルビオンのメニューを片っ端から注文していく。 ただ、アルコールは飲まない。まだ、大人じゃないからね。 目の前に積み上げられていく皿を見て、客が目を丸くしている。 マッシュのもうひとつのハンドル、�爍孱錚蕋筺無�無〕�瓩遼槊糧�揮である。 アルビオンは美味しいものがたくさんある。嬉しいな。 永遠に続くと思われる幸福の時も、やがて終わりを告げる。 K-TAIのコール、そろそろ次の仕事、また狩りの時間だ。 名残惜しそうに皿を見つめたあと、ウェイトレスに向かってニッコリと微笑む。 「ごちそうさま、美味しかった、また来るよ！」[2002/03/28 01:16:19]
(Mayakashi◎,Chakra,Katana●/♀/AJ:21) 【《エインシェント・メモリー》にて】 降り出した雪を眺めていた遥だったが、それはすぐに止んでしまった。 辺りを見渡せば、冬景色も終わり、春めいた景色へゆっくりと変わって行く。 「そうか、もうそんな季節だもんね…でも、もう少し見たかったな…」 名残惜しそうに景色を眺めてそう呟くと、遥は星幽界へと視界を切り替えた。 この魔法の遊園地に張り巡らされた結界によって、星幽界に侵入する物は無い。 おかげで、遥は仕事の時にうっかり見てしまう様な形容しがたい物などを見る事なく、 清々しい星幽界の眺めを楽しんでいた。 遥がここをしばしば訪れる理由の一つだった。[2002/03/16 18:38:07]
KABUKI●=KUGUTU=KABUTO◎/♂/AJ23/ ドリフの爆発オチ後の様な背広を着たクグツ 【≪バー・アルビオン≫にて】 男が店内に入った途端、落ち着いた静かなバーは別の意味で静まり返った。 そう、緊張の糸がピーンと張った音がその場にいる全ての者に聞こえたのだ。 ・・・当事者であるその男を除いて・・・ 彼は後にこう語ったという。 「いやぁ、あの時はまるで俺が大佐かうちの若社長みたいにすっと人波が引いていってたよ」 「あれはちょっとしたVIP待遇だったね」 ・・・空気の読めんヤツ・・・ 「そんな中で俺をまっすぐに見返している真摯な視線に気づいたんだ」 いや、偶然目が合っただけらしいが。 （無視）「俺が彼女に気づくと彼女は微笑んだのさ」←彼の脳内映像では。 動物が笑うのは緊張状態の緩和のためって何処かで聞いたなぁ。 「所謂、ボーイ・ミーツ・ガールってヤツだったんだな、それが」 ・・・あんまり相手に迷惑かけて、千早（うち）の恥さらすなよ。 （後日、同僚との会話にて） 男は店内をまっすぐ横切って、目を見開く娘の方へとためらい無く歩を進める。途上で、 「ギブソンをくれ。あちらの女性には今飲んでいるものと同じ物を」 カウンターの中でさりげなく距離をとっている老バーテンに言い捨てながら。 （あのお嬢さんは黒猫のミルクしか頼んでないんだが） 可哀想な老人は困惑していた。[2002/03/16 02:29:09]
Hiruko●、Kage◎、Mayakashi／♀／１９歳 赤毛、藍色の瞳 【ファウンテン・オヴ・スターズ】付近 「…………、……っ」 苦しい。 セシリアは乱れる呼吸を整えようとするが、身体を蝕む苦痛がそれをさせない。 『また』だ。これでもう何度目だろう。 「……く……」 背中が疼くように痛む。何かが生まれ出てきそうな感覚。 （……駄目よ……。こんな場所で……） 本来ならセシリアのような存在が入っていい場所ではないはずだった。それだけ、 ここは平和すぎる。しかし、だからこそ黄昏の地に惹かれたのだろう。 （駄目……！） “ALiCE”──彼女の肉体に“発現”した生命。あらゆる機器に反応せず、 ただ在ることだけが確認された、『生命』にして『装置』。 セシリアにも制御できない力。 視界が開けた先で、水の流れる音が聞こえた。 「……ここ、は……」 あてもなく歩いていたせいで、彼女は自分が何処にいるか分かっていなかった。 が、彼女の気力もここまでだった。 足から力が抜け、セシリアはその場に崩れ落ちる。 「──？」 水の音。その傍にいるのは──白衣の男、だろうか？ 次第に霞んでいきそうになる意識の片隅で、彼女はかつて自分を閉じ込めていた 連中の姿を思い出していた。 そうだ。 あの白衣──私に“ALiCE”を与えた、あいつらと同じ……。 痛みが、また駆け巡った。[2002/03/16 02:13:07]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《アルビオン》にて】 風が、吹いた。 そう表現するのが的確かどうかは判らないが、斎姫は“それ”をそう感じていた。 “世界”の変革。 “それ”は、“世界”そのものが「以前からそうであった」と再定義されることである。 “物語”の“登場人物”たる彼女たちがそのことに気付くはずもない。 だが、斎姫の内に眠る“血”は確かに“それ”を感じていた。 雪と戯れるのをやめて、ゆっくりと瞳を閉じる。 “自己”と“世界”とはたしかにそこに存在していた。 当たり前である。“この世界”は“なにも変わっていない”のだから――。 男が《アルビオン》に現れたのはちょうどそんな時だった。 男が《アルビオン》の門をくぐった直後、店内に動揺が走った。 焼け焦げ、ぼろぼろになったスーツ姿の男は、明らかに遊園地には不似合いで、異様だった。 その風体は、誰もがその男を“異端者”と感じさせるのに十分だった――例えそれが、常人ならば 数回死んでおつりがくるような経緯を経てできたものであると気付かなかったとしてもだ。 男は、そんな店内の様子など気にすることなくバーカウンターへと歩を進めた。 斎姫は、店内の雰囲気が変わったことを感じ取り、今しがた入ってきた人物に目を向ける。 期せずして、ふたりの視線が交差する。 （……えーと、幽霊じゃ、ないよね） それが、最初に斎姫がいだいた感想だった。[2002/03/10 23:34:41]
（KABUKI●=KUGUTU=KABUTO◎ 【シネマハウス≪ドリームラヴァ−ズ≫内】 館内に照明がつく。出口に向かうまばらな足音。 「ああ、よく寝た。最近、仕事続きで眠ってなかったからなぁ」 社宅であるマンションには帰っていない。 呼び出されて、研修という名のシゴキが待っているから。 というのも、前回の仕事に問題があったのだ。 護衛対象は無事に守り通したものの、 「技量の未熟さから不要な危険に護衛対象を晒した」 という見解が報告書を通して原田部長に伝えられたのだ。 「こちとら、ウォーカーに蜂の巣にされたってのに」 でも生きていた。 「その上、轢かれて、36回ローンで買ったスーツも台無しだし」 それでも生きている。 愚痴る男をよそに新しいシネマウェアがスクリーンに映し出された。 焼け焦げ穴だらけのジェントリーを着た男の周囲に座るものはいない。 (↑当然、本人は気づいていない） 怪しいクグツの青年を置き去りにしてスクリーンの中の物語は進んでいく。 スクリーンにヒーローが身を呈して守る美しいヒロインが映し出される。 「護衛対象は脂ぎった親父しかもわがままなやつばっか！」 ヒロインの腕の中で息絶える二枚目俳優。 悪漢の放った駆風ピストルが胸を貫いたのだ。 「それぐらいで死ぬもんか」 ボロボロスーツの青年は口をへの字に曲げて立ち上がり、出口に向う。 何処からとも無く、安堵の溜め息が聞こえてくる。 ちなみに、普通は死ぬんだが。 ・・・・・・ 小石を蹴りながら、西の方へ道なりに進む。 「帰らなきゃ、ヤバイのはわかってるんだけどねぇ」 ふと周りを見渡すと≪アルビオン≫の看板が目に入る。 「一杯、引っかけて部長に呑まれるまえに飲んでいくか」 厭なことを振り払うように頭を振った後、ドアをくぐる。 静かなバーカウンターの向う側に黒猫と戯れる少女の姿があった。 かくして運命の輪が回り始め・・・るのか？[2002/03/04 00:14:53]
（ＳＴＹＬＥｚ：Ａｒａｓｈｉ●、Ｋａｂｕｔｏ，Ｋａｂｕｔｏ−ｗａｒｉ◎、ＡＪ：２８、ＪＥＮＤＥＲ：♂） ≪ザ・レイヴユニバース≫ 「ウォーカーの訓練？そうだなぁ、ｔｗｉＬｉｔｅなんてどうだい？」 その言葉を鵜呑みにした馬鹿が、ここにいた。モニターに大きく映し出されるＧＡＭＥ ＯＶＥＲの文字。 計器類にもたれかかる俺は何にも接続されていない。ため息をつき、俺は筐体を離れた。 「繋がなきゃ勝てない、か……」 虚しい言葉。ウォーカーどころか、四輪ヴィークルもろくに操縦できない男の言い訳に過ぎない。 周囲にはＩＡＮＵＳ――自殺志願者がつける装備だ――を埋め込んだニューロキッズが戯れている。 笑い、語り合っている。これで３０連勝だの、新型機体に乗り換えられるだの。 挫折を知らぬ若者らしい活き活きとした、楽しそうな瞳をしている。 黒革のコートをはじめ、黒い服を纏った３０手前のくたびれた男はただそれだけで浮いていたが、 俺はそれだけではない、彼等との間にある深すぎる溝を感じ、早々にこの場所から立ち去ることにした。 ≪メモリー・オブ・エンプレス≫ 喧騒を避け、あてどなく歩くうちに公園のような場所へ来た。 娑婆より戦場が長いと、娑婆にいることが耐え難い苦痛になる、という話を聞いたことがある。 どうやら、その病に冒されかかっているようだ。だが、そのことに焦りは感じない。感情を喪失してきている証拠だ。 「やれやれ……」 大きくかぶりをふった時、ミラーシェイドの端で少年を捉えた。木にもたれかかり、何かをぼんやりと見つめ佇んでいる。 特に目立つ出で立ちをしている訳ではなかったが、何かが気にかかった。 少年の瞳。そこらにいるニューロキッズとは一線を画す、年不相応な瞳。少年については何も知らないが、 瞳はどこかで見た記憶がある。一体どこでだったか、頻繁に見たことがあるような……。 記憶の糸をうまく辿れずに考えているうちに、少年は自分が見られていることに気づいたようだ。 首を傾げ、俺を見ている。この仕草にはすぐに思い至った。この少年は奴の知り合いか。近づいてみれば反応が得られる筈だ。 「……Ｅ・Ｄ兄ちゃん？」 案の定、少年はそう聞いてきた。 「いや、違う。凌……凌鋭一だ。奴の兄さ」 少年と面と向かい合ったその時、やっとどこで見たのか思い出した。 なんだ……。１０年前、鏡の中にいた奴じゃないか……。[2002/03/03 10:34:09]
〜Foll‘ｚ Gate・・・ピース・オヴ・トワイライト〜 「あ〜あ。どうしようか」 ざらざらとコインを吐き出す両替機の前に苦笑する女性が一人。 どうやらクレッド・クリスの金額を確かめず、無造作に突っ込んだ結果らしい。 数枚手にとって重みを確かめる。 「・・・重いな。ちゃんと金属なんだ。さて、困った」 ライダースーツのポケットには、入りきらない。 そこらを見回し、見つけたひよこに助けを求めた。 赤いライダースーツに、可愛いひよこぬいぐるみのリュックが映える。 ひよこが進めてくれた大きなお財布代わりだ。 持ちなれないコインは重いだろうと配慮してくれた結果らしいが、二十歳過ぎてこれはやや恥ずかしい。 「・・・まあ、いいか。遊園地なんだし」 ついでにパーク内の地図も買う。 黒い円盤に、夜空の星。そこにホログラフのパークが浮かぶ。 （銀河鉄道の夜、だったか。こんな地図が出てきたな） そんなことを思いながら、足の向くままパークに入っていく。 ３Ｄスクリーンを見ようか。夜景を見ようか。それとも何か食べようか。 「We'll have Manhattan The Bronx and Staten Island too・・・♪」 お気に入りのジャズを口ずさみながら。[2002/02/11 22:29:19]
(Mayakashi◎,Chakra,Katana●/♀/AJ:20） 【《エインシェント・メモリー》にて】 「ふう…こういうのも、たまにはいいわね…」 ベンチに腰掛けてホログラフの冬景色を眺めながら、遥はつかの間の休息を楽しんでいた。 仕事―神社での普段の仕事とは別の、彼女の持つ星幽界に対する力を頼っての公に出来ない仕事― の疲れを癒すために、彼女はしばしばここを訪れていた。もっとも、仕事とは関係ないこの場にも、 白衣、緋袴、千早のいわゆる巫女装束で来ているのは、もはや習い性と言うしかないだろう。 「しばらく何もなければいいんだけど…」 そうつぶやくと、ベンチにもたれかかりながら空を見上げる。 「あ…」 彼女が空を見上げるのを待っていたかのように、ホログラフの雪が舞い始めた。[2002/02/10 22:17:22]
（JENDER:♂ AJ:? STYLE:Tatara◎,Kaze,Hailander●） 【薄霧に包まれた一角、または此処ではない何処か】 「…さて、どうしたものかな」 丸い黒眼鏡のイマイチ冴えない青年――元部は歩みを止め、辺りを見回し独りごちた。 自らの所在を確認しようと試みるが、気紛れにふらふらと歩いて来た為、見当がつかない。 辺りは薄霧に包まれ、人気が全く無かった。それは何処までも続いている様にさえ思える。 ふと、目の前を舞い落ちる、白い結晶に焦点が合う。 白き霧の中に在ってもなお白く輝く結晶は、差し伸べる掌に触れ、融けること無く消え逝く。 それはこのＮ◎ＶＡに居を構えた矢先に起きた異常気象を、記憶の奥底に眠らせていた 故郷の冬を思い起こさせるには十分だった。 「良く出来たホロ――いや、黄昏の魔法…か」 身に纏う白衣ですら取り巻く霧、舞い散る雪に融け入り、霞んで見えた。 彼の周囲は常に騒々しい。スラムでジャンク屋をやっていれば、嫌でもトラブルは舞い込んで来る。 その上、ある意味剣呑な常連客や居候たちは、彼を仲間外れにしたりしない。 ヤバそうなヤマ、怪しいブツを持って、壊[イカ]れタタラの下に集まって来る。 年中お祭り騒ぎと言っても、決して過言ではないのだ。もっともそれは、彼自身が望んでの事でもあるのだが……。 そんな中、ふと独りに成ってみたかったのかもしれない。 孤高を気取ったところで、孤独からは逃れられないコトなど知っているのに。 twiLiteには特に目的が在って来たわけではなかった。ただ、何と無くである。 そう、コネのニューロに薦められて、と言う以外に理由は無かった。 「こんな事なら、アレを連れて来るべきだったか」 置いてきた店番の顔を思い浮かべる。設定した歳相応の表情、仕草をする魂魄在る人形の少女を……。 ひとりで来た事を悔いてみても、状況は好転などしやしない。 此処が何処であるかは問題では無く、此処から何処へ行くかが大切なのだから。 ふたりで来る時の下見だと思い、適当に見て廻ることにする。 元部は人気の在るところに向かい、再び歩き始めた。 静かに踏み出した一歩は、より良き未来に向けて……。[2002/02/10 11:11:26]
Ayakashi◎●/karisma/mayakashi AJ:NoData/♂/淡青の軍服姿の青年 月のきれいな夜。 魔天より淡青の軍服の青年がひとり、無数の眷属たちと共に 【マジシャン・オヴ・ザ・ウェスト】にあるレンガ作りの一角 へ舞い降りた。 蒼白く透き通った肌と血潮のように紅い瞳。口元から覗く米粒 大の小さな犬歯。そして背中から大きく夜空へと広げられた漆 黒の翼。 そのひとつひとつが霧の中にたたずむ青年の正体を物語ってい た。青年は眷属であるコウモリたちに一言二言声をかけると、 ひとり霧の中へと足を踏み入れた。 「雰囲気は悪くないですね。留学先の倫敦を思い出します」 倫敦の、魔法の薬品の臭いや合成生物たちの叫びをかき消す霧 とは違ったがそれに近い香りが辺りを包んでいた。人口の霧と はいえ霧にはそういった雰囲気をかもし出す魔力があるという のだろうか。 「羽根休めというわけではないですが、最近はこれといった事 件もないので朝までゆっくりとさせていただきますか」[2002/02/09 17:08:01]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《アルビオン》にて】 昔のことははっきりと思い出せないけれど、雪はとても懐かしい感じがした。 だから、触れることができないのは少し残念だった。 ……雪かきをしなくていいのは便利かもしれないけど。 黄昏の遊園地を覆うホログラフの雪。 ゆっくりと息を吸い込むと、その“匂い”は雪の日のそれとよく似ていた。 アルビオンのテラスで、斎姫は飽きることなく空を眺めていた。 ゆっくりと舞い落ちる雪。 その雪に触れようと何度も手を伸ばすが、そのたびに雪は微かな残光を残して消えてしまう。 当たり前である。その雪は幻像なのだから。 当たり前である。それは、できるはずのないことなのだから。 「みゃあ、ちょっと手伝って」 主の無茶な要求に、みゃあ――黒猫のサザンウッド――は呆れたような視線で答えた。 一体どんな手伝いをすればホログラフを捕まえることができるのだろうか。 「“見える”ってことは“存在してる”ってことだよ。それなら“触れない”ってのは嘘だと思わない？」 それは無知が生み出す妄想だろうか。それとも世界の真理だろうか。 「それにさ、最初から『できないかもしれない』なんて考えるよりは、『できるかもしれない』って思って 試してみるほうが楽しいよ。やってみたら案外簡単かもしれないし」 彼女は知らないのだろうか。 立場、プライド、先入観……人間はさまざまなもので己自身を縛りつけるものなのだということを。 天上には星々が瞬き、人の子が辿るべき運命を示していた。 しかし、その“運命”が人を縛るものなのか、それとも導くものなのか。 それは、知る由もないことだった。[2002/02/03 10:43:26]
【南西エリア“Memory of Empress”にて】 その場所には人気がほとんどなく、静寂が木々を優しく包み込んでいた。 南西エリア、“Memory of Empress”──黄昏の地で最も安らぎに満ちた場所。 喧騒に疲れた人々が訪れる領域。 「……」 少年は大樹の一つにもたれかかりながら、幻想的な輝きを宿す夜空を見上げていた。 まだ幼さが残る顔立ちには、しかし憔悴の色が濃い。 今、彼の心に浮かぶのはかつての思い出。 「……ジャン……」 以前このアミューズメント・パークを訪れた時に出会った、少年奇術師の顔を 思い出し、わずかに笑みがこぼれる。 だが、“ロビンフット”の二つ名をもつ彼と会うことはできない。 「……今のオレじゃ……迷惑だよな」 “嵐童子”という二つ名とそれまでの生活を捨て、以前と同じ死の領域に還った 自分を、彼は許しはしないだろう。たとえ、どんな理由があったとしても。 そのことが少し寂しい。 少年──フェイが黄昏の地へ再び訪れたのは、今一度元の世界へ帰る決意を 固めたことがきっかけだった。 命令通り標的の生命を奪う日々。確かに戦闘能力は格段に向上したが、少年の 望む“強さ”は得られなかった。むしろ悩みは深まり、自分の弱さや愚かさを 思い知るだけ。 どうすればいいのか、それさえも分からず苦しみ続けた。 だから……かつて大切な経験をもたらしてくれたこの黄昏の地で、フェイは 考えることにした。静寂が、こんな時はありがたかった。 「……オレ、戻れるのかな……？」 軽業師として充実していた日々に。知り合いの大人たちに囲まれ、幸せだった 日々に。 「…………戻りたいよ……」 膝に顔を埋めるフェイ。 彼の行くべき道を指し示すかのように、星が一層強く瞬いたが──。 そのことを、フェイは知らない。 今は、まだ。[2002/01/14 02:12:21]
【《Fountain of Starz》付近】 「１年ちょっとぶり、かしらね。」 この前来たのがクリスマスか‥‥‥。 ツインテールは自嘲気味な笑みを浮かべた。 ここに来るときはいつもそうだ。 普段は慌ただしい日常も、ふとした瞬間に暇になる時がある。 そんなときは決まってセンチメンタルな気分になるものだ。 しばらく感傷に浸っていたツインテールだが、 思い出したかのようにポケットを探り、１枚のコインを取り出した。 先ほどゲート前で両替しておいたものである。 （フフ‥‥１カッパーっていうあたり、わたしの性格が出てるのかもね。） そしてそのコインを泉に向かって投げ込む。 「A Happy New Year. 元気してるかしら？」 左腕に巻いたバンダナを撫でながら、どこにいるとも、生きているかどうか すら知れぬ“誰かさん”に向かって挨拶をする。 「わたしはこの通り元気よ。 目標の１００万プラチナムにはまだまだ遠いけど、 １歩１歩着実に歩いてるわ。 ‥‥あなたの無事を、信じてるから。」 それだけ言うと、彼女はくるりと反対を向き、 真っ直ぐ出口に向かって歩き始めた。 （また新しい仕事を探さなくっちゃね。今年も忙しい年になりそう。） 黄昏の庭園の空の下、 魔法の泉に願いを込めて。 思いは彼に伝わっただろうか。[2002/01/12 21:44:00]
【魔法使いめいた長衣から金色の髪を覗かせた女性と、脇に控える背広の男性が、 白き夜を見渡している】 黄昏の遊園地を白の衣が覆った。手を触れることのできない魔法の雪は暗い空のどこからか 現れ、twiLiteに満ちる万色の光を照り返しながらゆっくりと地上に降ってくる。 仕掛けられたホログラフの照明、そして彼女の技と強い力を蓄えたオリュンポスの錫杖の 魔力が生み出した幻像だ――だが、それだけではない。この遊園地を訪れた人々の残して いった様々な想いが蓄えられ、力となり、赤道直下のこの災いの都の中に奇跡を起こしたのだ。 「万事異常なしですね。街でも、真教やキリスト教の教会ではイベントの準備が進んでいるようです」 彼女は杖の先端に光を灯し、長衣を翻して振り返った。鼻の上の銀縁の眼鏡をちょこんと 直している青年がそこにいた。その眼鏡の奥の銀色の輝きが人のものでないことを、彼女は知っている。 「貴方は聖夜を祝う習慣が伝わってくる前からいたのではなくて？ 気分はどう」 「よしてくださいよ。今さら」 琳叡貴部長は自国の習慣ではなく‥‥肩を竦めると続けた。 「ロンドンは今頃本物の雪の中でしょうね。パラディスでも神の子の生誕を祝って セレモニーが準備中とのことです。それと、エリクシオンから連絡がありました。 神の御声によりて予言がなされたと」 広報部長の目が光った。「おそらく、AXYZのオフリシオン老からもいずれ」 「そうね。星辰の巡りは既にそのしるしを示しているわ」 アルティシオンは束の間考えこんだ。ルテチアはおそらく特殊環境委員会が既に星を 詠んでいるだろう。他の列強各社もいずれ。次なる年、世界にはまた変化が起こる。 ニューロエイジ世界は常に混迷の只中にあるが、そこにまた何かが起こるのだ。 「とはいえ、明日は安らぎのうちに聖夜を祝える日となるはず。今はただ、それをよしとしましょう」 彼女は杖を一振りし、中空に光を振りまいた。光は小さな翼で空を舞う天使たちの幻像 へと姿を変じ、魔法の遊園地の四方へと飛んでいった。 赤い衣装に身を包んだひよこくんのドロイドたちが道行く客にプレゼントを配っている。 広場では機械仕掛けの子竜たちが子供たちと戯れていた。あの中の本物もきっと楽しんで いることだろう。煉瓦造りの喫茶店のテラスでは、席についた客たちが天からの思わぬ 贈り物に上を見上げ、手すりの上で妖精たちが戯れている。 こんな世界でも人は生き、様々な想いを持って未来へと歩んでいるのだ。その想いが 力となり、また奇跡を起こしたのだ。 「星幽門の力場は安定してきたようね。道の座標分布は確定できた？」 「ええ。技術局も調査を進めています。慣れた者が旅の先導を務め、条件が整えば―― あるいは別世界までも到達できるかもしれません」 「あら」強い魔力を持った魔術師は微笑んだ。 「では運営広報部長である貴方を、探検隊の隊長に任命しようかしら」 「やれやれ。いくら主の命とあっても、それは承服しかねます」 困ったような顔をすると、琳叡貴部長は降参したように両手を挙げた。 「龍の類いは昔から悪者と相場が決まっています。英雄達に追い回されて、退治されるのは御免ですよ」 触ることのできない雪はゆっくりとtwiLiteを染め上げていた。 地上の明かりは百万の灯火となって、天からの贈り物を照らし出していた。[2001/12/23 21:51:58]
【中央噴水庭園に、黒スーツにブラックグラスの３つの影が蠢いている】 工作員C「あ！ホログラフが変わりましたね。いいなー。雰囲気が出ますよねー」 工作員B「まあ、クリスマスなんてのは元は西洋世界の習慣だがね。 今はN◎VAより東になってしまったが」 工作員C「あー先輩そんなこと言って、プレゼント配ってるのが和服の女の人 だったらガゼン許しちゃうんでしょ？このっ！」 工作員B「‥‥Σ(￣口￣;)」 工作員A「はっはっは。ひよこくんたちも頑張っているねえ。さて、今日は帰ろうじゃないか。 年末にも１件調査が控えているし、来年は１四半期目に大きな変革が起こることを 各勢力が既に予測している。我々の力がきっと必要になるからね」 工作員B「また新たな革命が起こるのか、それとも別のことが起こるのか‥‥ 動静は正確に見極めないといけませんね」 工作員A「ことによると別世界にも偵察の手を伸ばすことになりそうだからね。 またこの遊園地の“門”を使わせてもらうことになるかもしれん。まあお得意様 とは良好な関係を続けようじゃあないかね」 工作員C「また旅行できますね！ 世界のメガロポリスはもうほとんど巡ったから、 今度はお城とか、深い森とか、雰囲気あるところがいいなぁ‥‥(ぽわぽわ〜ん)」 工作員A「ところで‥‥ちょっと買い物をしていきたいんだが‥‥どの辺りの店がいいのかね‥‥」 工作員B「？？ プレゼントですか？」 工作員A「いやね、娘にはケーキを買っておいたんだが、ワイフの分を忘れていてね‥‥ハハハッ」 工作員B&C「班長‥‥それ‥‥マズイですよ‥‥」 (影たちは幻像の雪降る夜の中を消えていった‥‥)[2001/12/23 21:46:47]
【南西エリア《BAIO-PEN2》にて】 「……」 丁寧なカブトの言葉をルミナは半分も聞いてはいなかった。考えていたことは、 …ひよこ君、かわいいよう、抱きしめてみたいよう。でも、飛びついていいのかなあ？ と、ヒカクの出した鳩に向かって猛然とダッシュ…しているようだがとてとてと 歩いているようにしか見えない…ひよこ君２匹（？）のことだった。完全にプロの狙撃手としての 自覚・警戒心が吹き飛んでおり、年不相応の幼さ・無邪気さが内心を占めていた。 いや、ある意味では年相応だったのである。ルミナはこんな風に遊園地に来て楽しんだことが なかったのだから…。 そうこうしているうちに、カブトの方もルミナの視線の先に気付いて、後ろを振り返り、そして 硬直した。 …ひょっとしたら、彼（鳴瀬）は硬直するのが性分なの？ ルミナが見当違いのことを考えていると、やっと…まさしくやっと…二匹のひよこ君たちがこちらに着いた。 相当な重労働だったらしく、片方は肩（？）で息をしている…ように見えた。もう一匹の方は そのようなことはなく、こちらに（特にヒカクの方を見ながら）しゃべり始めた。 『ここではどーぶつを勝手にだしてはいけないのだ〜。困ったことがあるときは…』 その可愛らしいしぐさと声に、ルミナはついに自制心を手放して、行動に移った。 「ひよこ君、かわいいー！！」[2001/12/12 15:35:12]
【南西エリア《BAIO-PEN2》付近 「あ、ちょ‥‥待っ‥‥」 上総の機関銃のような喋りに割り込むことができず、鳴瀬は１人オロオロしていた。 ――あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ‥‥ 違う、そうじゃないんです、聞き込みというのは。 それとなく教育しようとしていたんですが、 やはり彼は先天的にクグツに向いていないんじゃぁ‥‥―― 頭を抱えて座り込みたくなる衝動を抑えるので精一杯だった。 と、 刹那の殺気を感じて鳴瀬ははっとした。 殺気の主は鳴瀬が話しかけた女性である。 ――この女性も私と同じ、 危険な世界に生きているということですか―― とはいっても、今はそんなことを詮索しても仕方がない。 とりあえず、今はこの場を納めなければ。 「失礼しました。まぁ、彼（上総）のことは気にしないでください（苦笑）。 私ですか？私は鳴瀬といいます。 あなたに話しかけたのは別にパフォーマンスがしたいためではなく、実は少々道を尋ねたいのです。 あの、この公園にあるはずのトマト料理専門店へはどう行ったらよいのでしょう？」[2001/12/10 11:46:20]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《マジシャン・オヴ・ザ・ウェスト》にて】 “災厄”前の西洋を思わせる建築物。 溶けたバターとバニラの甘い香り。 子供たちに風船を配るピエロと、色とりどりの、しかし何者をも傷付けることのない炎を吐き出す竜 ――クローデット工房製のドロイドだ。 アゼルに負けず劣らず、いや、それ以上に周囲の光景に目を奪われていた斎姫が最も遅れて《アルビ オン》に到着したのはある意味当然のことだった。 《アルビオン》に着いてからも嬉しそうに周囲を見回す斎姫の姿は、母親に手を引かれて歩いてゆく 子供たちと大差ない……外見も、下手をすれば小学生に見られるような外見なのだが。 「ではっ、ひよこサンのお招きにあずかり」 ぽふ アゼルの言葉とともに手に広がるのは柔らかな羽毛の感触。 平常心を装おうとするものの、自然と表情が緩んでいくのがわかった。 にゃ〜〜。 “あれだけ子供じみた真似をしておいて、今更そんなこと気にしてどうするのさ”とでも言いたげな サザンウッドの声。 その声にひと睨みして答えると、黒猫は“やれやれ”といった表情で店のなかへと入っていった。 一度だけひよこくんをぎゅっと抱きしめると、斎姫もそれに続く。 どこか古風な店内。その窓からは中央区に聳えるアーコロジーが一望できる。 アンバランスな組み合わせだがそのアンバランスさがいっそう不思議な気持ちをかきたてた。 ……ここから見える夜景は、きっとすごく綺麗なんだろうな…… だが、そんな想いも次の瞬間には地平線の彼方にまで消えてしまっていた。 なぜなら 「じゃあ、ひよこくんの予言に従って、ここでお茶にしましょうか」 と、メニューが差し出されたから。 何か言いたげな視線の黒猫をもう一度睨む――こういうときの黒猫の台詞はたいてい予想がつく。お そらく、「色気より食い気」だ――と、斎姫は熱心にメニューを眺めた。[2001/12/02 11:17:33]
katana,cyakura◎,hiruko● Male 年齢不詳 「ふぅ・・・・・。」 N◎VAに来るのも久しぶりだったが、こんな所にこんな施設があるなんて 知らなかった。 「悪くねぇな・・・・。」 思わず呟いてみたが、確かに悪くない。 この薄暗さと、濃い霧に安心感さえ覚える。 「所詮、変異体(ヒルコ）は変異体ってことか。」 今夜はここで過ごすか。 ここなら、己の細胞一つ一つにまで刻み込まれた"猛毒"のことを 一時だけでも忘れることができそうだ・・・・・・。[2001/11/21 00:31:09]
(Kugutsu◎, Kabuki, Mayakashi● 22/♀ twiLiteの受付嬢) 【マジシャン・オヴ・ザ・ウェストを歩きながら】 「あ、いたいた‥‥。こちらですよ」 白金色のポニーテールを頭の上で揺らしながら先行していた琴音は、小さな ひよこくんが手招きしているのを認めた。背後のアゼルと斎姫を促す。 twiLiteの園内は入場者が幻想世界に迷い込んできたかと思わせるように設計 されており、ランダムに発生する霧やその他の仕掛けがそれに拍車を掛けている。 琴音自身も運営側の一員となった頃は迷子になりかけたことがあった。それに 今も、客には内緒だが、ディティールを完全に把握しているわけではない。 あの二人にはちゃんとした職員に見えているのかしらと内心思いながら、彼女は 西方の魔術師通りへと入った。 小さい頃GEB連合王国で育った琴音も、この通りには親近感を覚える。西方 世界を題材にとった様々な建築や、占い道具の店や、歩き疲れた客をひきつける 軽食店の数々。穏やかに音楽が流れ、香ばしい香りが漂ってくる。振り返ると 紅茶色の髪の少年は、心底関心したように周りの光景に目を奪われていた。 ――わたしも本当は貴方とあまり変わらないのだけれど、何か得るものがあってくれると嬉しいな。 琴音がそんなことを考えていると、ひよこくんが足元で待っていた。黒猫の サザンウッドもすぐに駆け寄ってくる。 「AXYZの未来の大魔術師とお茶なのだ〜」 「えっ？ 大‥‥魔術師‥‥？？」 伝説のマーリンもかくやの大予言に琴音が深緑の目をぱちくりしていると、 未だその片鱗しか見せない若者が走ってきて、小さな預言者の頭を掴んだ。 「ではっ、ひよこサンのお招きにあずかり」 斎姫の手の中にぽんと収まると、予言者はもう何も喋らなかった。３人と２匹 で《アルビオン》の門をくぐる。 琴音が黄金の獅子に社名の光るミリオン・ライトの社章を見せると、案内に 来たウェイトレスはすぐに訳知り顔で微笑み、一行を通りに向かって見晴らしの よいテラスの席へ案内してくれた。ひよこくんとサザンウッドは机の上の端に ちょこんと座った。 店内にはお茶の香りと穏やかな空気が満ちていた。 「じゃあ、ひよこくんの予言に従って、ここでお茶にしましょうか」 琴音は微笑み、二人にメニューを勧めた。[2001/11/18 23:41:32]
【南西エリア《BAIO-PEN2》にて】 「……えーっと？」 滑らかに硬直すること数瞬、そして慣れた動作で駆風を抜きポイントするのを瞬き一つの 間に行って、そして今の状況を思い出して駆風を元に戻す。この間０.０２秒。 そして、咄嗟に状況が判らないふりをして、相手の話を聞いてみる。 …要するに、道に迷っているクグツのパフォーマー? ルミナは上総ヒカクの言葉を心の中で一刀両断していた。けれど、そんな事は おくびにも出さずに、微笑みながら応える。 「別に、構いませんけど？…ところで、そちらの方のお名前は？」 もうひとりの男の方を観察してみる。…カブト、腕はそこそこといった感じがした。 …先手を取れればほぼ確実にこちらの… つい習慣的に、相手への対処法を考えているのに気付き、微かに苦笑する。 やはり、完全にはオフを楽しみきれてない自分に。 そして、カブトの人がこちらに話そうとした時に、ルミナは２体のひよこくんが、こちらに 猛スピードで向かってくるのに気付いた。 …何だろう？……ひょっとして？ ２体のひよこくんの瞳に映っているのは、ヒカクがさっき出した大量の鳩だった。[2001/11/15 03:07:42]
Manikin◎,Talkie●,Myakashi/18歳/♂/紅茶色の髪の少年 琴音に案内されつつ、斎姫主従と一路、 【マジシャン・オヴ・ザ・ウェスト】へ 黄色いひよこのマスコットは確かにダッシュしていたが、その歩幅は当然 人間とは比べるべくもなかったので、彼を追いかけなくては、と思い直した 斎姫たちが歩みを早めれば、また彼の丸くて小さな背中が見えてきた。 琴音・フェンデルはこのテーマパークの全体図とディティールを完全に把 握しているみたいで……そうだよ、案内スタッフなんだから当然だけど、 これだけ入り組んだ形に配されたアトラクション類を全て頭に入れるのは それなりにホネが折れたに違いない、とアゼルは思う……不慣れなアゼルと、 何かと楽しそうなものに気を取られがちな斎姫、ふたりが困らないくらいの 歩速で、ひよこに追いついてくれたのだった。 まぁサザンウッドは琴音と同じくらい、簡単にひよこを追って行けそうだったけど。 場所は中央噴水公園から、twiLiteの北西ゲート【エンペラーズ・ゲート】 に至る大通りに移っていた. その名も、西方の魔術師通り。この長いストリートの入り口からも、絶妙 のバランスで配されたアーケードの、数々の店…その様式の取り合わせが 見て取れ、アゼルの心は踊った。最高の絵の道具を収めた絵の具箱。描く画 風は季節と心に会わせ自由自在。そんな印象。こういうところで働けたら、 いいなあと心底思う。しかし、そういうのは分かりやすい憧れで、ニューロキ ッズなら誰もが思うことだ。客としてここで時間を過ごしていくことと、其 処の流儀を全て身につけて、終の職場とすることは全く違う。お調子者の少 年にもそれは分かっていたので、自分が辿り着く場所と、今の知識との落差 を埋めるために、少しでも多くの情報を吸収しようと、五感をのびのびと解 放することにした。 ……まずは……。ああ、何て良い香り。カフェから漂ってくる珈琲豆やお 茶の香りに、ウインドーを飾る焼き菓子類のバタークリームやフルーツの香り。 まずは、お腹の虫をなだめて、この遊園地を楽しみに来た斎姫の話を聞 くのがいいかな。 「……なのだ」 前方に機影を捕捉、もとい、やっと駆け寄って抱き上げられるくらいの距 離にまで近づいたひよこのマスコットが、くるりと振り返って一行を待っ た。彼が何か言ったようだったが、先の方を歩いていた琴音とサザンウッド にしか聞こえなかっただろう。 アゼルはひよこが手羽の先で示しているものに目をやった。 アルビオン…建物には今はE&Bと呼ばれ、かつてはアゼルと琴音の家系の 遙かな先祖が住まう土地だった島の古い名前がついていた。アゼルは一度も 実物を見たことがないのに、その名から、白い岩壁にうち寄せる海の中にそ びえる古ブリテンの姿が瞼に浮かぶように思う。 「ではっ、ひよこサンのお招きにあずかり」 アゼルは手を伸ばして、マスコットを掴むと、側にいた斎姫の手にぽんと 乗せて言った。時間に拘束される受付の仕事が段落したので、という琴音の 了承を得て、三人でアルビオンのドアをくぐった。ふんわりと良いお茶の香 りが、紅茶色の髪の少年たちを包んで迎えた。[2001/11/13 23:34:33]
【南西エリア《BAIO-PEN2》にて】 自らの失態をちょっとばかり高い棚にあげておき（二度ととらない） 場の雰囲気の悪さを明るい笑顔と愛想だけで突破しようと、 アルカイックスマイルのままぺんぎん達に手をふっているところに 全てを解決する神の御言葉が聞こえた。 「・・・・・情報収集はクグツの基本能力の１つですから」 情報収集。 クグツ。 うっとりと別世界に飛び立つこと２秒。 「そう！！まさしく、それ。 いいですね、情報収集。よいですね、聞込操作。 なんて素敵な響きなんでしょう。 ではまず整形からはじめて、名刺をかえ、服を変え・・・・ そうそう、なんといってもID、これをかえなくてはいけませんよね？！」 嬉々として話しかける上総になんの返事をすることもなく、 鳴瀬はそっとその肩を目の前の女性にむかって押す。 「だめです、まだ偽装工作を何一つしておりません。 しかも妙齢の女性に話しかけるのに薔薇ひとつ用意してはいないのです！！」 悲痛な叫びをあげながらも、つい、目前に人が迫ると声をかけたくなる性。 「失礼、レディ。少しおたずねしたいことがあるのですが」 口元に「いい男微笑み」（雑誌の特集より）を浮かべ、声をかける。 完全に決まった、と内心でガッツポーズを決めた上総にかけられた言葉は 「〜パフォーマーさん？」 （゜゜）（・・ ）（・・）（ ・・）（ ゜゜） パフォーマーと呼ばれてそのまま引き下がっては男が廃る。 薔薇は用意していないが商談で必要なこともあろうかといつも用意しているものがある。 名刺を探すのには時間がかかるが、あれならすぐだ。 ごそごそと上着の内側を探り・・・＼（-_-）／ 用意していただけの鳩を盛大に公園に放つ（一部違法） 「と、いうわけでして。私、一介のクグツ。 上総ヒカクと申します。決して怪しい者ではありません。 誰がなんと云おうと怪しくはありません。ええ、全然です。 これっぽっちもあやしくありません。 ちなみに彼（鳴瀬）も怪しくありません。 まだ調査をしておりませんので１００パーセント信用できるかどうか、といわれましたら・・・ まぁ、そういうわけでして。怪しくないものが二人。 そしてあなた。これはもう何かの縁です。ええそうに決まっています。 そういうわけでお茶でもご一緒いたしませんか。 決して道に迷ったので喫茶店の場所を聞くついでに、な〜んてそんなことを考えて お声をかけたわけではありません。ええ決して」 頭上に鳩（らしきもの）を乗せたままの男が笑顔をみせた。[2001/11/07 21:40:12]
「ん……。」邪摩仁はふっと目を開ける。どうやらいつのまにか眠ってしまっていたらしい。 「居眠りしちまうような生活してなかったのにな…。」かすかに苦笑する。 邪摩仁が脇に置いていたヘルメットバッグがごそごそと動く。 「おなかすいたでし。」何かの声が聞こえる。 「ああ、そうか…。そんな時間か…。」邪摩仁はバッグに話しかける。 「そんな時間でし。」バッグの中からひょっこり顔を出したのは大きなハムスターのような生き物であった。 ドロイドだろうか？それにしては妙に生々しい。 「じゃあ、戻るか…。」邪摩仁は立ち上がってバッグを持ち上げる。 「はむん。」生き物は再度バッグにもぐりこむ。 邪摩仁は歩き出す前に一度だけ上を向く。そこにはあいかわらず星空がひろがっていた。[2001/11/07 00:19:26]
（マヤカシ◎●／F／21／黒いコートと帽子と手袋） 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 星の泉は今も変わることなく輝いている。 収束して吹き上がるひかりの流れ。 引き寄せられるように噴水へ歩み寄り、きらめき舞い上がる水を見上げれば、 その先には満天の星。 休息を求めて目を瞑り、深呼吸をひとつする。 「あれ？」 そして地上に目を戻せば、思い思いに広場で過ごす人々の中に知った顔がい くつかいるような気がする。 目があったかどうか、わからないけれど・・・。 瑞穂はぼんやりと微笑みをうかべ、軽く会釈して挨拶を送った。 「さーてーとー。・・・【マジシャン・オヴ・ザ・ウェスト】はどっちかな・・・」[2001/11/06 00:21:28]
【南西エリア《BAIO-PEN2》にて】 「…あの、なにか？」 ペンギンを飽くことなく見ていたルミナは、いきなり声をかけられ、それが 自分に向けてのものだと気付くのに数瞬を要した。…こんな近くに寄られるま で認識していなかったなんて！普段では考えられなかった。認識し損なったら すぐに死神の抱擁を受けざるを得ない狙撃手として、あってはならない事である。 すぐに気を取り直し、何者かと認識した瞬間、どこかで見た顔のような気が した。確か、さっきから同じ所をぐるぐる歩いていたような気がする。情報誌 を持って硬直していた男…あっ向こうにいるようだが普通に戻っている…と一 緒に新手のパフォーマンスでもやっているのかと思っていたが。だから警戒し ていなかったのかもしれない。それにここは『濡れ仕事』が『決して起こらな い』場所であったことをようやく思い出し、ルミナは心の中で苦笑した。 …職業病、ここに極まれり、か。 もっとも、普段より浮かれていて警戒心が鈍っているのには気付いていない ようだが…。 とにかく、何の用なのか聞いて見る事にする。仕事の時にも役立ってくれる 微笑を浮かべて、そのクグツさんに続けて声をかけた。 「何か御用ですか、パフォーマーさん？」 ルミナは自分に正直だった。[2001/10/28 22:46:08]
【南西エリアからトマト料理専門店へ移動中】 「どうしました？」 がっくりと膝をついた上総に対し、鳴瀬が言葉をかける。 「ははぁなるほど。倒れるほどお腹が空いていたのならそう言って下さればよかったのに。 さぁ、善は急げです。早速そのトマト料理専門店とやらに行ってみましょう。」 上総が突っ伏している理由を完全に勘違いしたまま、鳴瀬は上総の手をグイとつかんで歩き出した。 ――１０分後。 「おや？おかしいですね（汗）。元の場所に戻ってきてしまいました（大汗）。」 どうやら道を間違えたらしい。 ２人の目の前には先ほど立ち去ったはずのBAIO-PEN2のペンギン達の姿があった。 すると突然元気を取り戻した上総が 「そうです！こんな時こそこの公園マップの出番なのです！ わたくしにお任せ下さい。店までの道案内をして差し上げますよ。」 ――そしてさらに１０分後。 「えっと、ここの突き当りを左に曲がると‥‥ほら、ここです！」 と上総の指さす方向にはペンギン達の愛らしい姿が‥‥ 「‥‥‥おや？」 「‥‥‥また戻ってきたみたいですね。」 「‥‥‥」 「‥‥‥」 気まずい沈黙。 それを最初に打ち破ったのは鳴瀬の方だった。 「ハハ、まぁこうこともたまにはあるでしょう。いい社会勉強になったと思えば。 勉強ついでに、あそこにいる人に道を尋ねてみるというのはどうでしょう？ 情報収集はクグツの基本能力の１つですから。」 多少こじつけではあるが、このまま道に迷ったままよりはましだろう。[2001/10/27 22:44:55]
【南西エリア《BAIO-PEN2》にて】 「…ここはどこかしら」 見るもの全てが珍しく新鮮だったので、位置の把握を全然していなかった事に、 唐突に気づいて苦笑する。 「ペンギンがいるって事は、南西ブロックなんだろうけど…」 別に人と待ち合わせたり、特別に見たいものがあるわけではないが、周りの 状況を分かっていない事につい不安になって、把握しようとする。 しかし、自覚は無いものの子供のように舞い上がっているルミナに、その作業は 著しく困難だった。 「…えーと、案内ボードはっと…」 最初の目的を忘れ、乗り物のチェックをしているのに気づいて、ルミナは再び苦笑を浮かべた。[2001/10/07 04:23:55]
【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 「見て！アンリ、星がこんなに！」 レースと革素材でつくられたといってもいいような黒いドレスに華奢な身体 を包んだ少女が、青灰色の瞳をそれこそ星のように輝かせながら連れを呼ぶ。 「ノーラお嬢さん・・・・・空港で月を見た時もそう言ってましたよね？」 連れ−−彼女の「家族」達がつけた、護衛役−−の青年が辟易した様子で言 った。彼女の気まぐれな旅−−ほとんど家出同然であったが−−に付き合わさ れ、生まれて初めて故郷を出て・・・彼がやってることはほとんど変わらない。 「でも・・・こんなにも美しいものだなんて思わなかったのよ・・・・・・あ！そうそ う、ここの噴水は願いを叶えてくれるんですって！これはあなたの分のコイン ね」 「はあ・・・」 ノーラのテンションに押されて逆にさめてしまっている青年は、サングラス 越しに、手の中に飛び込んできたコインを見つめる。 確かに美しいとは思うが、ここの星はホログラフだ。それくらいなら見たこ とがあるはずだ。何故そこまで感激できるのか？そう問いかけると、少女は唇 を尖らせる。 「だって、此処は魔法の遊園地よ？ここにかけられた魔法は、私に“星”を教 えてくれた。それが私の見ているこの“星”と重なって、本当の星になったの よ？」 「はあ・・・？」 アンリには理解しがたい説明でだった。頭をひねっているうちに、ノーラは すでにコインを投げ込み、小さな波紋に向かって手を組み合わせていた。[2001/10/06 18:01:22]
邪摩仁はふっと目を開ける。どうやら眠りかけていたらしい。 「……。」日常的に不機嫌な顔をさらに不機嫌そうにしながら頭を掻く。 そして邪摩仁はまたぼうっとあたりを眺める。目の前を行き交う人の群れ。 「さりとてすることもなし…。」ぽつり、とつぶやく。 ほんのわずか前まで、と邪摩仁は思う。ほんのわずか前まで、ずいぶんとアクティブだったのに、と。 それが今では退屈な日常の中に埋もれている。命を秤にかける生活はそれほどまでに魅力的だったのか？ とはいえ、昔に戻れない事も事実である。守るべきものがあり、維持しなければならないものがある。 ひとりではないという事から得られるさまざまなものは、おそらく代償として充分なはずなのに。 「これが大人なのか…？」心の奥底から湧き上がってくる想いは邪摩仁を混乱させる。[2001/09/28 02:55:04]
【南西エリア《BAIO-PEN2》付近】 とりあえず場繋ぎの名刺を渡し、一通りの自己紹介を行いつつ、 必至に探しているのはタウン情報誌。 手の平サイズのコンパクト設計が災いしたのかどこにあるのかわからない。 手探りで必至に探すも、ぐにゃだったりもにょ、だったりする感触しかない。 鳴瀬の自己紹介に 「ああ」とか「ええ」とか「護衛ですか大変ですね」とか まるで譫言のような相槌を打ちながら必至に捜索。 ややあって懐に差し入れた手に古びた皮の感触。 銃弾を弾くことはできないけれども、後頭部を角で叩くと それなりの効果を得られなくもないタウン情報誌の感触。 ついにやりました…… 高鳴る密かな衝動をおさえ、ぐっとタウン情報誌を握る。 効果音は「じゃっじゃーん」で。 無論、情報誌をもった右手は勝利のガッツポーズで。 堪えきれない笑みが自然と口元に浮かびかけたとき。 >「あ、そうだ。 食べ物屋の場所を探すんでしたっけ？ ちょうどあそこに情報端末がありますよ。 あそこで適当なお店を探すというのはどうでしょうか？」 懐に手を差し入れたまま、ぐらり、と身体が傾き、 どさり、と膝をつく。 敗者。 Σ（゜д゜) 「ふっ……ふふふ…ええ、そうでしょうとも、そうでしょうとも。 情報端末でしょうとも。 便利でしょうとも。 ふふふふふ。ええ、そうしましょう。 ええと、ここから一番手近なトマト専門店はどこでしたっけ。 ああそういうのも検索できるんですよね。 二秒なんですよね。 私など１０分検索簡単膨大タウン辞書くんのお世話でございますとも。 ふふ。 さぁ探しましょう、すぐ探しましょう。今すぐに探しましょう。 トマトはお嫌いですか？ お嫌いでしたら肉料理専門のカフェなんかはいかがでしょうか？ ふ………ふふふ」 がっくりと四つん這いで地面に突っ伏す大の男が一匹。 情報端末を指さす男が１人。 なんとなくちらちら誰かに見られているような気がしないでもない。[2001/09/26 19:26:57]
…入場ゲートにて 「まさか、休暇でこんな所に来ることになるとはね…」 ＮＯＶＡでスナイパ−を仕事として生活して２年になるが、休みは必要ない限り寝て過ごす、 そんな生活を送ってきていた。事実、今日も外で食事を終えてから、コンドミニアムに戻って、 ヒュプノスの訪れを待とうと思っていたのだ。ところが、戻ってみると一通の差出人不明の 手紙が来ており、その中にはここ−twiLite−のチケットと一枚の便箋が入っていた。 普段であれば無視していただろうが、その便箋にはルミナにその習慣を忘れさせる言葉が書かれていた。 それは、『失われた記憶のパズル・ピースをここに来れば見つけられるだろう』 という一文。 「私も、小さい時にこんな所に家族と来たのかしらね。」 ＮＯＶＡでアリス・ローゼンに拾われ、スナイパーとしての技を持っているのを思い出す以前の 記憶は、名前以外全くない。仕事をしているうちに、不思議なことに電気を生み出して操れる 力を持っていることと、それがスナイパーの技と恐ろしいほどに連携してターゲットを処理できる ことも体が知っていた。今では頭でも認識している。また、なぜか自分がその時必要と思うものが、 宛先人不明の小包でその場に届くことも、いつの間にか馴染んでしまった。 しかし、たかが１８歳程度の自分がどのようにしてその力を得たのか、家族はいるのか、そして、 なぜＮＯＶＡで自分が行き倒れていたのか、そのあたりの記憶は未だに戻ってはいないのだ。 「色々歩き回ってみればいいのかしら。それとも…」 我知らず、まるでどの乗り物に乗ろうか迷っている子供のような心境になっているのにルミナは気付いていなかった。[2001/09/25 16:30:47]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 《アルビオン》へ移動中 ――あたしは、どうしてこんなことを知っているのだろう？ 一瞬だけよぎった不安は、しかし次の瞬間には消えてなくなっていた。 おそらくこの言葉を聞いたのはずっと昔のことだから、記憶が曖昧なのは不思議 でもなんでもない。 そのことを知っている理由も、覚えていればきっと何でもないことだと感じる だろう。 世の中には不思議が満ちている。特に偶然という名の不思議は思わぬところで 待ち構えているものだ。 それに、いまは思い悩むよりもするべきことがある。 「ところで…あれ。…見えなくなっちゃいましたが…。斎姫さんの目的が…」 アゼルのその言葉で、斎姫はいますべきことをはっきりと思い出した。 今しかできないこと。 それは、この黄昏の遊園地を楽しむことである（そこ、笑わないように（笑）） 視線でひよこくんの行方を追いながらも、斎姫は目的地、《アルビオン》へと 意識を向けた。[2001/09/17 16:56:26]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 《アルビオン》へ移動中 “魔女の手帖にでも書いてありそうな言葉” “自身の心から出たように聞こえる” 斎姫の問いに対するふたりの答えはどちらも正解だった……ように感じた。 果たして自分はどこでこの言葉を聞いたのだろう。 今更になって思い出せない事実に気付く。 この言葉を教えてくれたのは、彼女にまじないの業を伝えた母親だろうか。 月の世界の入口で出会った“案内人”だろうか。 あの時計塔が見える街で何気なく開いた一冊の本だろうか。 そのすべてであるような気もするし、どれでもないような気もする。 内心では特大の冷や汗をかきながら、だがしかし斎姫が答えに窮することはな かった。 「実はね、それほど珍しい言葉じゃないんだ」 もちろんありふれた言葉ではない。だが、こうした意味の言葉は“災厄”前の （一部の）術者たちがさまざまな表現で残しているのだ。 斎姫は、なぜかそのことを“知っていた”。 「結構有名な――と言っても“災厄”前の話だけど――ファンタジー小説にも これに似た言葉は載っていたらしいよ」 ひと通り“知っている”事を説明しながらも、斎姫は内心首を傾げていた。 星幽界に関わるものとして、確かに斎姫は最低限の知識は持っている。 だが、“災厄”前の事まで知っているほど詳しくはないはずなのだ。 ――あたしは、どうしてこんなことを知っているのだろう？ 漠然とした不安が頭をよぎった。[2001/09/17 01:44:23]
噴水を少し離れた人通りの中で、斎姫、琴音と 「さて、ここで問題です。今の言葉、誰の受け売りでしょう？」 一瞬、アゼルが思っていたのとはほど遠い、深遠で謎めいた雰囲気で “魔法”の話をした斎姫は、その締めくくりの言葉で、いつもの親しみ やすい女の子、という微笑みを取り戻した。 アゼルは彼女の問いに、首を捻ったが、答えは彼の乏しい知識の中には ない。 だが分かったことがある。この少女は、魔法の存在に確信があって、 …たぶん、星幽界の秘密とも接点を持っている。調子に乗って、喋りすぎ た…アゼルは心の中で冷や汗をかいていた。物質界の瞳が捕らえるものが、 世界の真実の姿だったためしはないのに。 しかし、まあ。お互いが術者だと分かっても、彼女から害意は感じない。 力はあっても、それを無闇にひけらかしたりはしない。そういう術者の不 文律を、この少女はきちんとわきまえているのだ。それに比べて、自分の 迂闊なこと。 とはいえ、少年は起こってしまったことに固執する性格ではなかったの で、意識を少女の質問に引き戻した。 「アゼルさんは、答えはなんだと思います？」 琴音は今までの会話に……常識的な大人なら呆気にとられるような文脈が あったような気がするが…とくに気にした様子も見せずに、穏やかに微笑ん でいる（ちなみに、ぽわぽわーん、などと変な言い回しは、少年にとって、 魔法との仲立ちをする「言葉」と「自己」のシンクロ率を上げるための手順 みたいなもので、深い意味はなかったようだ）。 「……うーん」 これが（誰ぞが仕組んだ）試練の質疑応答なんじゃないだろうな、などと …アゼルは心に浮かんできた疑問に翻弄されつつ考える。しかし、答えは出 てこない。降参して、斎姫には思ったままを口にした。 「ぜんぜん…わからない……博学だなあ。誰かの受け売りなの、それ？」 普通人だと、凹んでしまいそうな間。アゼルは真剣なので、耐えた。 「まるで…自身の心から出たように聞こえるんだけど…。俺も、言われて 初めて気付いたよ。魔法は月の世界の力だね。人間が目を覚ましている世界 の力じゃなくて。魔法使いは…世界の境界を知っているもののことかなあ…。 その言葉にあるみたいに、魔法使いって言われる人は、世界の境界線を渡り 歩くものなんじゃないかな」 考えてみると、一朝一夕に収められるほど、魔法使いの稼業は簡単では ない。斎姫の言葉に自分で答えていて、我が家は大げさな家なんだなあ、と 考えを新たにする。 そういえば。 三度の食事のように星霊界の関係者と出会ってきた赤毛の少年は兎も角、 何の逡巡もなく、こんな会話にリアクションを返せるこちらの女性…白金の 髪の受付嬢は何者なんだろう？『きっと、たくさんの術者の方を生んでこら れたんでしょうね』とは、彼女の“魔法使いの家”へ向けたコメント。もし かするとこの人も、twiLiteの神秘的な領域まで含めた“案内人”で…色ん なことを知っているのかも知れないな。 「ところで……あれ。…見えなくなっちゃいましたが…。斎姫さんの目 的が……」 アゼルはここで考えを中断して、先行して人混みの中へ行ってしまった 黄色い物体のほうを指さした。魔法談義と琴音嬢への質問は、腹ごしらえが できる場所に落ち着いてからの方がいいだろう。 夜は始まったばかりで、黄昏の遊園地の秘密はまだ多そうだ。[2001/09/16 22:16:39]
Hiruko●,Kage◎,Mayakashi／♀・１９歳／赤い髪の女性 北西ストリート【マジシャン・オヴ・ザ・ウェスト】にて 「──ここが……“ｔｗｉＬｉｔｅ”」 様々な料理店や土産物屋が並ぶ賑やかな通りを、一人の女性が歩いていく。 炎を思わせる赤い髪は乱れることなく艶やかな輝きを宿し、藍玉と同じ色合いの 双眸が周囲の光景にふっと和らぐ。そうすると、愁いを帯びた表情がひどく 幼いものに感じられる。 けれど、どこか彼女からはその若さに相応しくない陰りが見て取れた。それは このニューロエイジにおいては普通の、しかし黄昏の地では滅多に感じられぬ はずのもの──危険なる、死の香りだ。 「追っ手は……来ないようね」 思わず、小さな吐息を洩らす。これまで多くの命を奪ってきたが、それは彼女 の本意ではなく──しかし彼女の意志とは関係無いまま進んでいく事態に、 正直疲れていた。 だからこそ、彼女はこのＮ◎ＶＡへ……そして、魔法が息づく黄昏の地へ足を 向けたのだ。ほんのわずかな休息を求めて。 幸せそうな家族連れや恋人同士の姿を見つめ、彼女──セシリア・ローズは そっと胸の辺りに手を置いた。 （お願い……今日だけは目覚めないで、“ALiCE”） 自らの内に眠る力。『加速する生命』であり、『指令を与える装置』でもある 危険な兵器。この平穏な場所を、壊したくはない。 （……お願い） セシリアは強く、ただそれだけを祈った。[2001/09/13 22:25:06]
【《Ansient Memory》入り口にて】 時間の感覚を失ってふらふら公園を出るとそこはまだ午後の昼下がりだった。 ショッピングに行った友人二人を追っかけるころあいを逃してしまったというわけでもないらしい。 夢も現も今も昔も混沌としているような感覚を振り払うと瑞穂は【マジシャン・オヴ・ザ・ウェスト】 （があると思われる方向）へと歩き始めた。[2001/09/10 22:35:14]
何やら探し物をしているらしい相手をまじまじと観察していると、 彼のポケットから一枚の名詞が現れた。 それを受け取る。 ――管理センター『ワーム』？ 確か人工出産を手掛ける所だと聞いたことがありますが‥‥ またマイナーな会社の人に出会ったものですね―― 「秘書をなさっているんですか？ いやはや、すごいですねぇ。 えっと、上総‥‥ヒカクさん？」 そこまで言って、自分がまだ名乗っていないことに気付く。 「あ、申し遅れました。 わたくし、鳴瀬万（なるせよろず）といいます。 普段は護衛の仕事をやっております。 わたしも名詞なり何なり持っていればいいのですが、 あいにくとそういったものは持っていないものですから‥‥ あ、そうだ。 食べ物屋の場所を探すんでしたっけ？ ちょうどあそこに情報端末がありますよ。」 と指さしたのはデータステーション【タワー・オヴ・アーケイン】。 「あそこで適当なお店を探すというのはどうでしょうか？」 もちろん、上総がマップを探そうとしていたことなど、 鳴瀬が気付くはずもない。[2001/09/10 00:49:54]
(Kabuki,Kugutsu,Mayakashi 22/Female 制服を着たポニーテールの受付嬢) 【アゼルと斎姫と共に噴水を離れながら】 なぜかダッシュして行ってしまったひよこくんを眺めながら話を締めくくる アゼルの思惑にはまったく気付かずに、琴音は彼の話を聞いていた。 「へえ‥‥でもそんなしきたりのあるお家なんて、素敵じゃないですか。きっと、 たくさんの術者の方を生んでこられたのでしょうね」 “今時魔法使いを育てている”という、一般的には物凄く珍しくかつ笑うべき ところには少しも動じず、代わりに力説する少年の様子に微笑む。 「でも、ぽわぽわーんだなんて、なんだか最近の流行りみたいな言い回しをなさいますね」 この紅茶色の髪の少年のことをアルティシオン園長に話したらなんと返事が返って くるかしら、と琴音は思った。彼がいずれ、星々に一番近い街にて天空の民の賢者の もとに集うミリオン・ライトAXYZ有数の術者の一人になろうとは、ケルトの神々の 恩寵の幾ばくかを受けた彼女もまだ知らない。 その神々の恩寵の幾ばくかが琴音に、強い力の存在を教えた。結わえた白金の 髪を揺らし、しばし後にしてきた噴水の方を振り返る。 twiLiteの世界の姉妹園を訪れた者の中で、幾ばくかの霊感を備えたものは魔法の 都に宿る力に気付き、芸術家たちは多くの鮮やかなイメージを心の中に受け取り、 そして職員の多くも、普通の人間が忘れてしまった感覚を取り戻している。 力が教えたのは違う世界に属するものの放つ香りだった。永遠に呪われた世界に 属する、類い稀な美貌の持ち主の放つ危険の香り。 だが、琴音がその香りの主と出会い、魅了その他のさまざまな危険な可能性に 遭遇する前に、危険は一時去ってしまった。中華の都から来た不死者の青年の元へは 属する世界と同じ色の衣を纏った麗人が向かい、twiLiteの受付嬢は少女の謎かけ へと注意を戻す。“二つの世界を自由に行き来出来るものこそ――” 「なんだか、魔女の手帖にでも書いてありそうなことばですね」 斎姫の出した謎めいた問題に、アゼルと二人で考えこむ。 「アゼルさんは、答えはなんだと思います？」[2001/09/10 00:07:57]
駐車場に響く特徴的なＶツインの鼓動。 一台の古めかしいサイドカー＿＿”ゼラバンカ”＿＿が滑り込んでくる。 「…ずいぶん…ひさしぶりだな…。」明るく光る園内をみつめ、男はつぶやいた。 あれからどれほどの年月が流れたか…。 邪摩仁自身も忘れかけるほど昔、彼はここに安息を求めやってきた。 その最初の欲求は満たされなかったものの、彼の人生において少なからず変化をもたらすことがここで起こった。 『…懐かしい、になるのか…？』邪摩仁はひそかにつぶやきながら園内をさ迷うように歩く。 ”クリムゾン・ヒート” …一度だけ立ち寄り、おそらく店の人間（と同行者）をいたく驚かせたであろうあの食事…。 邪摩仁は店の外を眺めるだけで通りすぎる。 『そうさ…いま腹は減ってない…。』 やがて彼は噴水庭園に辿りつく。 『確か…ここだったかな？』邪摩仁はベンチのひとつに腰掛ける。 そして、ゆっくりとジャンパーのポケットに手を突っ込み、煙草を取り出す。 しかしその箱は空っぽで、邪摩仁は少々がっかりする。 「まあ、いいや…。」手近なごみ箱に空箱を放り投げ、邪摩仁はベンチにもたれかかり、そっと目を閉じた。[2001/09/07 09:27:34]
カタナ、チャクラ、イヌ◎●/１９/Ｆ/金髪・碧眼の少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 「きれい・・・」 レイニは、満点の星空を見上げて呟いた。同時に、想いが駆け巡る。 自分の中にある“正義”と、組織の中の“正義”とのギャップに戸惑った入隊 時。そんな時支えになった背中。その背中も、今は届かぬ処に在る。そしてあ の後姿を追う事はもう、許されない。 「せんぱい・・・」 思わず口に出してしまったその言葉に我に還る。思考を断ち切ろうと頭を振っ た次の瞬間、視界が紅く染まった。 顔を上げると、そこには真っ赤な風船を差し出す大きなひよこがいた。 『どうぞなのだ〜』 つぶらな瞳がこちらを見ている。 「あ、ありがとうございます」 ドモり気味にそう云って風船を受け取った瞬間、一つの言葉が脳裏に甦った。 今は亡き母が大好きだった花・・・“ゼラニウム”。ソレを急に思い出したの は、風船が右耳のピアスと同じ色をしていたから。 入隊時に自分で開けた両耳の小さな穴。母が好きだったその花と同じ色を纏う 為に開けた時の、僅かな痛みを思い出す。 “ゼラニウム”。その花言葉は・・・・・ 「強くなる。・・・戦い続けるために」 レイニは拳を握りしめた。 嘗て自分の左耳に在った紅い結晶を託した人物と交わした約束を守る為に。あ の人に恥じない自分である為に。そして・・・・ “己が道を貫く為に”。 頭上には、無数の結晶が瞬いていた。[2001/09/07 00:54:24]
マヤカシ◎●／F／21 【《Ansient Memory》にて】 公園は蝉時雨につつまれていた。 空気は乾いて暑いくらいに暖かく、木と草の香が濃くただよっている。芳香というには多少青臭いかも しれなかったが、軽い爽快感を感じる。 みっしりと葉を茂らせた木々のホロのどこからか適正な構成の有機化合物、酸素が放出されているのだろう。 実際には汗ばむほどでもなかったが、瑞穂は"ムッとくる暑さ"を連想して手袋を外した。 コートの前を開いて帽子で風を送る。 強い陽射しにくっきりと落ちる木の影が揺れ動き、蝉の声に葉ずれの音がくわわった。 少し風が出てきたようだ。 日が翳った。かすかにオゾンの香り。 そしてまったく突然に激しい雨が降り始めた。 大粒の雨粒が音を立ててあらゆるものを打ちつけている。 瑞穂もじっと雨に打たれている。 雨は彼女以外の全てを濡らしている。 気温の低下と、水のにおいは感じるが雨は彼女に触れもしない。 彼女もこの水に触れることは出来ない。 この雨は良く出来た幻だ。 自分の服の上ではじけている水滴が見えるので自分の方が幻というオチはないだろうと推測してみる。 本当に良く出来たホログラフ。 幻の雨がはたとやんだ。 夕暮れの光がぬれた緑とあざやかな夏の花々を照らし出している。いっそう濃い草の香りと 水を含んだひんやりとした空気が流れてくる。 蝉はどこかへ行ってしまったようで何か別の虫の声がする。 この虫の名前を瑞穂は識らなかった。[2001/09/05 06:23:51]
アゼル自身の夢。 空間の演出に関わる仕事をしたいという夢。 そして、そのためにはいくつか条件をクリアしなければいけないこと。 熱心に、しかし最後は少し物憂げに語られたその話からは彼の夢に対する想いが 伝わってくるようだった。 “魔法使い”を育てている――この科学万能のご時世にずいぶんと奇妙な話では あるが、おそらくそれは言葉どおりの意味ではなく、何らかの比喩なのだろう。 「人に何かを与える空間――『想い』を込めた空間が人に影響を与えるなら、 それは本当に“魔法”なのかもね」 斎姫は、心底楽しそうに微笑んだ。 が、次の瞬間、彼女の口調はいつもとは違った雰囲気を帯びる。 「だけど……“魔法使い”を目指すものは気をつけなくてはならない」 斎姫の言う“魔法使い”とは比喩表現なのだろうか。それとも……。 「魔法は夜と月の世界の力だけど、夜と月の世界に住む者は魔法使いではない。 月の力に魅せられた者は魔法に取り込まれ、二度と戻ることは出来ない。 闇から目を背ける者には魔法は力を与えてくれない。 陽と月の狭間、黄昏の時、二つの世界を自由に行き来出来るものこそ――」 そこで言葉を切り、顔を伏せる。 斎姫が再び顔を上げたとき、その瞳には悪戯っぽい輝きが浮かんでいた。 「さて、ここで問題です。今の言葉、誰の受け売りでしょう？」 くすくすと笑う斎姫の表情は、本気とも冗談ともつかなかった。[2001/08/30 00:58:26]
【南西エリア《BAIO-PEN2》付近】 呼びかけようとした相手の動作が止まったので、怪訝な表情を浮かべ、しばし黙考。 ふと、思い当たることがあったのでぽんと手を打ち口を開く。 「大丈夫です。ご心配は無用です。広い園内、迷子になる確率もありましょう。 おいしくて安い穴場スポットを探し当て、次のデートに利用したいと思うのも人情です。 そこはそれ、おまかせ下さい。 なんとここにはですね……」 ニューロエッジならデーターはチップが常識。 しかし、敬愛する司書のアンティーク趣味の影響を受け、彼も古き良き文化を愛好していた。 マニュアルもマップも本で。 それが彼ら懐古マニアの公園の楽しみ方。 今日もきっちりそれを用意してきている。 ごそごそと懐を探り、探り、探り…… いつしかアルカイックスマイルに冷や汗のオプションがつきはじめたころ、馴染んだ手触りを見つける。 恐る恐るとりだしたのは一枚の名刺。 長方形の紙でできた名前と会社と所属、連絡先のはいったクグツ必須アイテム。 昨日なくしたと思いこみ、上司に泣きつき再発行してもらったものだ。 とりあえずそういう些細な事情はおいといて、マップを探す間の繋ぎになればとそれをとりだし、 「よろしければこれをお納め下さい。 万が一何かの役にたったりすることもあるかもしれませんから。 なんとですね、この名刺。超軽量型のナイフにもなるんですね。 この、この脇のところです。薄型に改良に改良を重ねた結果の自信策なんです。 いえ、私がつくったわけではないのですが。 家が倒壊してしばらく缶詰で生きなきゃいけない時、缶きりがなくても大丈夫な優れものです。 あ、人にむけちゃだめですよ。 血が出ますから」 慎重な手つきで渡した。 『管理センターWumb 秘書課 研修中 「上杉ヒカク」 1050- ………』[2001/08/24 00:12:19]
【南西エリア《BAIO-PEN2》付近】 ＞「盗み聞かれていたのであれば仕方ありません。これもまた運命です。 ＞ つまりは偉大なる臥龍神ガル＝メガリス様のお導き……」 ――し‥‥宗教関係の方ですか‥‥これはますますヤバい展開になりそうです（汗）―― 青年はああ言っているが、あの状況で引くなという方が無理というものだ。 鳴瀬も乾いた笑いを浮かべ、困っている。 思わず「オイオイ些細な問題か？」とツッコミを入れたくなるのだが、 それは自分のキャラではないのでやめておく。 しかし彼の紳士的な態度には好感が持てた。 その彼が食事に誘っている。 「そうですね、立ち話もなんですし、どこかで座ってゆっくり話すのもいいでしょう。 割り勘という所も小市民っぽくて気に入りました（笑）。 そうと決まればさっそくどこに行くか決めましょう。 えっと‥‥」 呼びかけようとして、自分がまだ彼の名前を知らないことに気付いた。 そういえば自己紹介もしていなかったような気がする。[2001/08/13 01:38:43]
Manikin◎,Talkie●,Myakashi/18歳/♂/紅茶色の髪の少年 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて、歩き出しながら】 琴音がE&Bの出身だと聞いて、アゼルは少し驚いた。琴音って、日本の名前 じゃなかったのだろうか。でも、確かにフェンデルは和名ではないし、それ に日系人にこんな綺麗な白金の髪の持ち主はいそうもない。 とにかく、アゼルは少し気分が高揚するのを感じる。さほど歴史に興味が あるわけじゃないが、自分の遙かな祖先は、今のE&Bの一部だったアイル の大地の出だと聞いたことがあったから…彼女はアゼルの知らない遠いそ の場所の話を聞かせてくれるかも知れなかった。 「将来は、空間演出に関係する仕事につきたいんです」 気分が浮ついていたせいか、その次に琴音が投げかけた質問にも、アゼ ルは何の逡巡もなく答えを返す。ひょいと手を宙にのばし、 「例えばこの公園にあるように…こうやって、ホログラフをどう使うか とか、建物に照明をどう当てるかとか。専門的な勉強もしなくちゃいけない けど…俺が思ってるのは、もっと大がかりなもので」 紅茶色の髪の少年は饒舌になる。指がびっ、と背後の泉を指し、 「昔のヒトは、家相とか、地相とか、縁起をかついでモノを配置したって 言いますよね。今の企業でも、そういうことに気を配っているところは多い …だから、そういう勉強も含めて、“人が集まる空間”“人に何かを与える 空間”を構成する仕事ができれば、最高だなあ、ぽわぽわーん（擬音） なんて…あ」 咳払い一つ。 「すいません。…まあ、ともかくそのためには上の学校にいかなくちゃい けないじゃないですか」 側の少女、斎姫は今どんな学校に通っているのだろう、などと少し視線を 向けながら、アゼルは琴音に言う。 「でも、俺の家は古いしきたりのある家系で…笑っちゃうんですけど、 今時“魔法使い”を育ててるんだそうです。あ、ここは笑うところですけ ど……。だから、いくつか条件があって。それをクリアしないと、好きな進 路を選ばせて貰えない、ってわけなんです」 アゼルはほんの少し物憂げに話を締めくくった。 どういうわけか、アゼルたちを先導するようにダッシュしていく黄色いひ よこのドロイドを見送る。 『…ますます使い魔っぽいな、あいつ…琴音さんは何も知らされていな くて、奴がここの秘密の鍵を握っていると見た。噂ではここの園長は星霊社 交界でも有名な術者だっていうしな……あのひよこからなら、結界の秘密を 聞き出すことができるかもしれない』 心の中でかなり打算的なことを考えながら、アゼルは斎姫や琴音たちと 並んで歩き出した。[2001/08/11 20:34:37]
エグゼグ◎カブト●ヒルコ/♀ ２９歳/スーツに身を包んだ男装の麗人 【ファウンテン・オヴ・スターズ】 〜噴水をぼんやりと眺めつつ〜 太陽が眠りにつき、月が目を覚ます時間。 園内に星々の蒼い光りが降り注ぐ中、メーティスはぼんやりと噴水を眺めていた。 夜になり、心なしか人がまばらな“twiLite”の園内。辺りには、流れる噴水の水音と静かに響く人々の足音。 それらが二つが合わさって、神秘的な雰囲気をかもしだしていた。 ここは『想いの叶う噴水』、そう知り合いの誰かが言っていた事をメーティスはふと思い出す。 「特に何かを…って事は、無いのだけどね…」 そうひとりごちながらも、その手には一枚のコインが握られていた。 土産物屋で何気なく購入した古めかしいコイン。それを掌の上で一回転がしてから、軽く目を閉じる。 「……」 一瞬だけ優しい表情になると、メーティスはコインを噴水へと投げ込んだ。 「さてと、もう少しゆっくりしていたいけど、そろそろ戻らないとな」 社に残して来た仕事を思い出し、苦笑しつつ噴水に背を向ける。 「…おや？」 噴水に背を向け歩き出したメーティスは、視線の先に旧知の人間がいるのに気が付く。 白いシャツに身を包んだ黒髪の青年。メーティスの記憶では、今はオーストラリア・キャンベラ ＡＸＹＺに住んでいるはずなのだが…。[2001/08/11 02:09:14]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 「そういえばアゼルさん、なりたいものがあるって聞きましたけど、何を勉強 なさってるんですか？」 琴音嬢のアゼルに対する問いは、斎姫にとっても興味あるものだったようだ。 期待と好奇心に満ちた瞳は、今はサングラスの奥に隠されている。 だが、この問いが発せられた瞬間、斎姫の耳がぴくりと反応したことまでは さすがに隠し通すことは出来なかった。 斎姫はアゼルに向き直ろうとし……誰かに服の裾を引かれて動きを止めた。 いや、「誰か」というのは正確な表現ではないだろう。 この場でこういうことをするのはたったひとり（？）しかいない。 足元に視線を落とすと、彼女の相棒はたった今歩いてきた道をじっと見つめていた。 誰かが、こちらに向かって歩いて来ていた。[2001/08/11 00:07:00]
カブトワリ◎ アヤカシ カゲ●／Male／外見年齢20代前半 【ファウンテン・オヴ・スターズ】 〜パティオの端に置かれた籐の椅子にて微睡みつつ〜 ルイが今夜目覚めたとき…彼は奇妙なことに気が付いた。 それは、今、自分がいる場所が…成竜門のペントハウスではなく、薄闇の中に噴水の水音が響く 公園だということである。 藤製のカウチは丁度良い弾力で彼の細い身体を支えており、余りの心地良さに違和感を 忘れるほどであったが、警戒心がその身を微睡みから起こさせた。 「ここは…一体？」 昨夜から身につけていた白い絹のシャツには、ベッドを共にした１人の“餌” （彼自身はいまだこうゆう呼び方に不快感を覚えるのだが）の香水の香りが残っている。 夢か現実か…判別しかねる空間に、迷い込んでしまったようだ。 星の蒼い光に目が慣れるにつれ、彼の耳に人々の話し声が届いてきた。 声のする方に視線を向けると、紅茶色の髪の少年に、プラチナブロンドの少女… そしてデフォルメされたひよこと向き合う少女の姿があった。 少し観察すると、紅茶色の髪の少年も自分と同じくこの地へのビジターであることが見てとれた。 対して、少女二人は少し馴れた様子である。 「僕も少し…マドモアゼルにガイドをお願いした方が良さそうだ」 ルイは籐のカウチから名残惜しげに立ち上がった。 歩き出すと腰の重さに気付く。見れば、愛用の…いや腐れ縁とも言うべきアンティーク調の 大型拳銃がホルスターに納まっている。 「『おやすみ』と言ったのに…仕方のない奴だな」 枕元に置いて眠ったはずの銃を撫でながら、優雅な歩調で少年達の方へ歩き出した。[2001/08/07 22:05:56]
(Kabuki,Kugutsu,Mayakashi 22/Female 制服を着たポニーテールの受付嬢) 紅茶色の髪の少年の瞳は不思議な色を湛えていた。彼女と同じもうひとつの 世界に触れた者、見えざるものを感じることのできる素質を備えた特別な種類の―― 『ガゼン行くのだー。腹が減ってはまことの名は見えないのだー』 目をしばたたかせて、琴音は羽(手?)を振っているひよこくんを見下ろした。 その様子は悩める四分の一人前魔法士に、どう見てもこの黄色いものは使い魔 ではないだろうと思わせるものだったかもしれない。 「あ、じゃ、じゃあ行きましょうか？」 困ったように微笑みながら、琴音は身を翻した。その頭の上でリボンで結んだ 白金の髪が、幻獣の尻尾のように揺れた。 彼女の使い魔にあらざる超常(?)生物が短い羽で指差しているのは、果たして 斎姫の希望のひとつであった《アルビオン》だった。昼間は小奇麗な白い建物の 軒先に屋根を張りだし、カフェテラスになっているあの店は、確かに散策のついで にちょっと休むには最適だ。眺めもいい。琴音は時間に拘束される受付のメイン の仕事が終わった後だったので、客と一緒に店に入っても別に問題はない。 「わたしはE&Bの出身なのですけど、店の名前が向こうの古名になっているん ですよね。だから、ちょっと嬉しくて‥‥あら」 一般的な観光客＆案内役の光景を演じていると、肝心のリクエストした本人が ぴょんと地面に飛び降りた。まだ店まではだいぶあるのに、とことこ歩いて行ってしまう。 為す術もなく見守っていた琴音はようやく、あの型のドロイドは食事をしない のではなかったかしらと思い出した。 「そういえばアゼルさん、なりたいものがあるって聞きましたけど、何を勉強 なさってるんですか？」 一般的な観光客＆案内役の光景から外れてしまった。琴音は顔を見合わせて いる二人に振り返り、話題を変えてみることにした。[2001/08/06 22:43:48]
少し困り顔の相手の表情を少しだけ気にはかけてはみたものの。 詮索してもどうにもならないことが世の中にたくさんあるということを 少ない人生経験の中で骨身に染みて教え込まされているので （たとえば給料明細の謎だとか、残業手当の行方だとか） そういうありとあらゆる疑問を一瞬のうちに頭から払い、 柵に気をつけながら勢いよく身を起こした。 「盗み聞かれていたのであれば仕方ありません。これもまた運命です。 つまりは偉大なる臥龍神ガル＝メガリス様のお導き…… あ、その、引かないで下さい（爽） ……おかしいですね。どうして人は皆、ここで笑顔とともに去ってしまうのでしょう ……まぁ、それも小さく些細な話として」 軽く咳払いをしてみる。 話題を逸らすとき、間をおくときにこれをするだけで ほんの少しだけ、理知的な人間に見えなくもない、とやはり師匠から 教わった技のひとつである。 「せっかくですから、一緒に何か食べにいきませんか？ワリカンで。 なんとなくワタクシ、小腹がすいているような気がしてますので。 本音としましてはここで許されるだけＢＡＩＯ−ＰＥＮ２を見ていたいのですが 虜になること間違いなし。 キリのいいところで離れる必要があるんですね。 ……いかがでしょうか 野郎二人、というのが華やかさにかけそうな気もいたしますが、そこはそれ。 どうしても華やかさが欲しいというのであれば不肖ワタクシめが、 この最新のサキ・ニチヤ製品で華麗に彩りをくわえたい、と思います」 真剣な眼差しでお茶に誘ってみた。[2001/07/31 12:41:05]
確かにアゼルは空腹だったので、黒猫を連れた女の子の申し出は魅力的で はあった。ただ、問題はアゼルの試練はまだ何一つ進んでいなかったこと だ。この泉に張り巡らされた複雑な結界方程式の解法を、彼はまだ掴んで いなかった。…それを思い出してから、アゼルは微かに沈んだ声で、残念 ながら誘いを断る旨を、斎姫と黒猫、ひよこのマスコットと琴音に告げよう とした。 …したのだが。 アゼルはそのとき、地面にいる黒猫と、白金の髪の女性の胸のひよこが、 同じように自分を見ているのに気づいた。そのとき、四分の一人前魔法士 の脳裏に、ひとつの考えが閃いた。…この一匹と一羽は、もしかして。 使い魔というものを、少年は長い長い下積み時代に何度か見たことがある。 魔力の才を持つものに仕え、偉大な賢者の知恵を伝達する魔法の血族。 星幽界はユングだかのいうような無意識界に似ている。深い謎めいた泉 の側で迷うものに、時に謎めいた賢者として使いを寄越すこともあるのだ。 この遊園地に、他にも魔法使いがいて、斎姫と琴音に会わせてくれたの なら、どうだ？ここで悩んでいるのは時間の無駄…有袋類だってしないこ とである（←？） 「…っと、それ、いいな。行こうよ。お店は…フェンデルさんのお勧め で。ジツはバイトの給料が入ったトコなんだ」 アゼルは当初の予定にはなかった台詞を言って、斎姫に頷いた。後半は 本当だ。使う宛もなかったが。 「俺、本当はここに…勉強しに来たんだよ。ひとりで。なりたいものが あって…でも最後のステップで行き詰ってた」 少年は休憩にする前に、ほんとうのことを少しだけ言った。視野が狭い のかもしれない。この泉の結界だけを読み解こうとしても。この黄昏の 空間自体に込められたメッセージ、真実の名を探り当てないと、俺は一人 前の魔法士にはなれないのかもしれない。 「だから、どこでもいいや。気分を変えたい…いろんなもの、もっと見に いこう」 晴れ晴れと笑う。 噴水の淵から立ち上がったときから、ずっと引きずっていた靄のような 微かな戸惑いは、アゼルの瞳からは消えていた。[2001/07/27 20:40:14]
【南西エリア《BAIO-PEN2》付近にて】 突然声をかけられたことによほど驚いたのか、 クグツ風の若者は聞いてもいないことを向こうから勝手に喋り始めた。 ――ハハ‥‥思わず話しかけてしまいましたが、 困りましたねぇ（苦笑）。―― このクグツ風の若者、なんと言うかこう、正直過ぎる部分があるようだ。 人を騙すことが商売の（といっては御幣があるが、似たようなものだ）クグツという職業には、 彼は向いていないと思うのだが。 まあ、それを彼に言ってあげるのは親切かもしれないが、 余計なお世話というものだろう。 それを判断するのは彼の師匠の仕事だ。 「わかりました。 あなたがそう言うのなら単なるエキストラだということにしておきましょう。 ああそれから、あなたのことがクグツだと分かった理由、でしたね。 そんなに大したことではありませんよ。 あなた自身がクグツだと言ったのを聞いていたものですから。 ほら、確か 『これが本当にクグツに必須なんでしょうか』 とね。 いえ、盗み聞きするつもりはなかったのですが‥‥」 確かに独り言を盗み聞きしたのは悪かったが、 聞こえてしまったものはしかたがない。 こういう時には、自分の職業を呪ってみたくなる。 まぁ何にしろ、彼の質問には、これで答えたことになるはずだ。[2001/07/27 14:26:35]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 「あ、じゃあ、案内してさしあげるとしたら、どこがいいですか？」 そう言われて、斎姫は一瞬（かなり真剣に）悩みこんだ。 最初―アゼル達に会う前―は、斎姫は噴水広場で一休みした後、《メモリー・ オヴ・エンプレス》に向かうつもりだった。 ハイテクの粋を集めたようなものよりも、むしろ古風なアトラクションの方が 好きだったし、クローデット工房のサービスセンターや占い小屋など、彼女が 興味を持つものの多くがそこに集まっていたからだ。 だが、隣りにいる少年はどうだろうか。 これくらいの年頃（と言ってもほとんど斎姫と変わらないのだが）の少年には むしろ《ザ・レイヴユニバース》のような華やかなアトラクションの方が人気 があるだろう。 そもそも彼（アゼル）がこの噴水広場で何をしていたのかも斎姫は知らない。 もし誰かと待ち合わせでもしていたのならば、「じゃあ、一緒に」というわけ にはいかないだろう。 「えーと……」 一瞬だけ、アゼルに視線を向ける。 「もし、問題なければだけど……」 そのとき、ふとある考えが斎姫の脳裏をよぎった。 アゼルは長い間ここにいたみたいだから、もしかしたら空腹かもしれない。 もし、そうなら…… 「まずは軽く何か食べながら、この後どうするか決めるってのはどうかな？」 アゼルさんと琴音さんが迷惑じゃなければ、だけど。と短く付け加える。 バー《アルビオン》は昼間はカフェテラスになってるって聞いたけど今の時間 はどうかな？ とか、 《クリムゾン・ヒート》っていう有名なお店があるって聞いたけど…とか、 ここの屋台もいろいろあるけど、とか、 その次の問題―この意見が通ったとしたら、何を食べに行くか―の事も色々と 考えながら、斎姫はふたり（＋ひよこくん）を見た。[2001/07/23 05:14:49]
「……ち…違うみたいですね…」 のんびりとそばを流れてゆくホログラフの霧。平和にさらさらと水の湧き上がる 噴水の音。それは一人前の魔法士になるべく苦難の修行を続けていた少年にとっては 安らかな、異質な時間に違いない。 「‥‥え？」 少しマイペースな琴音は、アゼル少年の顔がこわばりかけているのにようやく気付いた。 「あ、ええ、ウン千万人にでも当選するおみくじは、よくやってますよ。前は ブリテンに開園した姉妹園のtwiLiteロンドン七日間の旅もあったのですけど、 終わってしまいました」 取り繕うように言うと胸のひよこくんの頭を撫でてみる。答えはなかった。 「でも――」 人差し指を顎に当てると小首を傾げる。彼女の頭の上で白金色の髪が揺れた。 「ひよこチェック、もしかしたらあるのかもしれませんよ。何か理由があって 当選したのかも。て、なんだか雑誌の名前みたいですね」 困っている少年とにこにこしている少女の顔を交互に見る。どうやら互いに 知り合いという訳ではないようだ。二人連れのカップルにしてもちょっと違った訳だ。 ――あら？ 力の持ち主‥‥？ 深緑の瞳で10代の客人たちを見ていた琴音は、おやと思った。二人から何かの 力を感じる。 元から霊感の強かった彼女は成長してから、母親に自分が特別な血を引いている のを教えられた。そして一般にはふつうの遊園地と思われているこの場所に勤める ようになり、多くの秘密を知った。彼女自身の力も増し、彼女の故郷に遥かな昔に 存在したケルトの神々に加護を請い願い、秘幽体も操れるようになっている。 この二人もそうなのだろうか？ ありえることだが‥‥ 『ガゼン当選だったのだ〜』 彼女の胸にいた機械仕掛けの黄色いものが、とつぜんひよこチェックの実在を 主張し始めた。 『ボクたちはいろんなチェックをしてるのだ。リクルートもしてるのだ。透明に なって隠れてメーザーライフルの狙撃をしてるのは、ただのうわさなのだ』 運命の天輪に従いここに集った、魔法の世界に近しい若人たちを余計に混乱 させるようなことを言い、 『一緒にどこでも行くのだ〜』 琴音はようやく自分の職務を思い出し、二人に言った。 「あ、じゃあ、案内してさしあげるとしたら、どこがいいですか？」 水晶の歌い手は微笑んだ。「それとも‥‥そこらでお茶にします？」[2001/07/21 23:48:58]
Manikin◎,Talkie●,Myakashi/17歳/♂/紅茶色の髪の少年 「せっかくだから、案内して貰おうか？」 ひよこのマスコットと夢中で見つめあっている（？）と思っていた斎姫が そう言って振り返った。 アゼルはすこし逡巡したが、まぁいいか、といったふうに小さく頷く。 それから、琴音・フェンデルと名乗った白金の髪の女性スタッフに向き直っ て、改めて小さく会釈。 「じゃあ、よろしくお願いします。この子…ええと、斎姫さん…案内し てあげてもらえませんか？俺たちも、今この泉で会ったばかりで…あてが あったわけじゃないんです。……ところで…」 アゼルはここで、また少し訝しげな表情に戻って、琴音の腕に抱かれて いる黄色いひよこを、おそるおそる指し示してみた。 「…なンか、ひよこさんにチェック入れていただいているとは…入場者 ウン千万人にでも当選したんでしょうか、俺たち…」 我ながら間抜けな質問だったが、ひよこくんは何やら考え込んでいるら しく、沈黙している。 「……ち…違うみたいですね…」 沈黙が痛い。ホログラフの霧が、のんびりと三人と二匹のそばを流れて いった。平和である。ここは本当に、昨日までアゼルが修行してきた世界 の一部なのだろうか。…それともこれが、少年が読み解くべき、この場所の 秘密のなせる技なのだろうか？[2001/07/15 14:47:41]
鈍痛を訴える後頭部に手の平をあて、地に伏せたままペンギンとコミニュケーション。 白と黒のハーモニーが世界の理を示す可愛い生き物。 丸々と太ったところもかわいい。 うっとりと、とりあえず為すべき全てのことから逃避し、ただただペンギンを眺めているところに、ふと声をかけられる。 背筋を伝う冷や汗。 一体、いつバレたのだろうか？ 跳ね上がる心臓を宥めつつ、地に伏せたまま、顔だけを後ろにむける。 「……私は決して怪しいモノではありません」 とりあえず、師匠から教わった台詞を云ってみる。 「古今東西、この台詞を云った人間の半数近くは本当に怪しくないどころか、 物語の鍵を握る人物たりえますが、ワタクシはその他大勢のエキストラにすぎません。 ついでに申しあげますと、何か企んでいるくせに、確信をついた質問でないから だから目を逸らすために云ってみたわけでもありません」 お前は喋り過ぎる、と師匠に云われているので、少し言葉少な目に自分の考えを口にすると、 ようやく上総は立ち上がった。 「……つまり私は何にも怪しいところのないクグツ…… Σ（゜д゜)！！！あなたは一体なぜ、私がクグツだとわかったのですか？！」 自分の正体を一発で見破った相手に対して、敬意というよりは畏怖にも似た感情を抱きつつ、尋ねてみた。 その推理の根幹を問いただそうと期待に目を光らせながら。[2001/07/10 20:45:47]
【南西エリア《BAIO-PEN2》付近にて】 ヨレヨレのスーツに、色褪せたコートを羽織った男。 本来高いはずの身長は、猫背のせいで普通の人と同じ程度まで縮んでいた。 今はその背が更に小さく見える。 情けないオーラが目に見えるようだ。 ２４時間ボディーガードとして働いている自分に休暇を、ということで 暇をもらったのはいいが、 常日頃から誰かのために働いてきた人間が、 いざ自分の時間をもらったところで何もする事が見つからない。 適当に街をぶらついていて、辿り着いた先がここ、twiLiteだった というわけだ。 その鳴瀬が静かな南西エリアを歩いていると、突然静寂を破り ＞「すンばらすぃいいいいいーーーーーー！！！ ＞ これぞ、これぞ私の求めていたものぉおおおーーーーーっ！！！」 誰かの奇声が聞こえてきた。 見るといかにもクグツといった格好の男が ペンギンに向かって叫んでいるところだった。 おかしいのはそのクグツ風の格好だ。 パーツパーツを見てみれば確かにクグツっぽいアイテムを身にまとっているのだが、 それが全て組み合わさった時、とてつもない不自然さを醸し出していた。 ちょうど災厄前の間違った日本人のイメージに 七三分けで眼鏡をかけカメラをぶら下げている、というのがあったと思うが、 彼の格好はまさに間違ったクグツのイメージを具現化したといった感じだ。 ――な‥‥なんでしょうね。 まさかよくいるサイコさんでは？（汗）―― 一瞬そう思い、近くの茂みに身を隠す。 が、その後に続いた呟きを聞くに、どうやら違うようだ。 ＞「……師匠……これが、このプレイが本当に ＞ クグツには必須なんですか……」 この言葉から推測するに、修行中のクグツといったところか。 しかも師となる人物からメチャな修行を提示されたらしい。 鳴瀬は苦笑した。 自分の逆らえない人物に無茶をいわれるというのは自分にも経験がある。 その命令がくだらないことな所までそっくりだ。 ――彼とは他人のような気がしませんね。―― ちょっと声をかけてみよう。 そう思い、クグツ風の彼のところに歩み寄る。 「クグツというのも大変ですね。 どんなに自分にとって嫌なことでも、上からの命令なら逆らえない。 まったく、難儀な職業です。 わかりますよ、あなたの気持ち。」 どうせ帰ってもすることなどない。 クグツになって間もない若い彼と、しばらく雑談するのもいいだろう。[2001/07/06 23:26:23]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 「あはは。まぁ、その通りなんだけど……って、えぇぇ！？」 笑いながら（？）語りかけてくるひよこくんの言葉に、斎姫はつられて笑みを返し…… そして、少し遅れて（笑）驚きの声を上げた。 『ボクにまだ会えてないらしいから来たのだ』 『確かに、クジ運がガゼン悪いのだ〜』 まるで先程の会話を聞いていたような台詞である。 もちろん、たった今来たばかりのひよこくんが知っているはずもないのだが……。 「な、なんで知ってるの！？」 『それくらいガゼンお見通しなのだ〜』 全然説明になっていない返答だが、とにかく凄そうなことだけは確かだ（笑） 勢いに押され、おもわず納得しそうになってしまう。 いや、そもそも「どうして」なんてことはこの場合たいした問題じゃないかもしれない。 変わった言葉遣いの少し不思議なひよこくん。 それはそれで面白そうな感じだし、「不思議さ」を解明するの必要などどこにもない。 今はこの「出会い」を楽しむ方がきっと面白いのだ。 「うん、確かに『ガゼン大当たり』なのかもしれないね」 先程までの驚きはどこへやら、斎姫は“２秒”で機嫌をよくして微笑んだ。 「さて、どうしようか。せっかくだから案内してもらおうか……？？」 そう言いながらも、斎姫はすっかり無口になっていたアゼルの事が気になってそちらに視線を向けた。[2001/07/06 21:11:44]
(Kabuki,Kugutsu,Mayakashi 22/Female 制服を着た受付嬢) 【星々の泉にて】 黒猫はまだ何か言いたそうだったが、女の子に抱かれると黙って主人のなすが ままにしていた。主人が好きのようだ。琴音は強い想いを感じ取る力を備えて いるが、猫の言葉まではあまり分からない。 「ええ。ここのスタッフをしています。受付業務が、メインですね」 琴音は左胸の社章の表と裏を見せた。左右対称にデザインされたtwiLiteのロゴと 自分の名前。裏には、黄金の獅子の紋章のあしらわれたミリオン・ライト社のマーク。 「琴音=フェンデルといいます。園内の案内も、してさしあげますよ？」 何度となく客に言ってきた台詞。彼女は緊張すると少し上がってしまうことが あったが、今はそんな様子は微塵も感じさせない。 女の子の方から目を転ずると、紅茶色の髪の男の子と目が合った。数瞬経ってから、 男の子は困ったように目をそらしている。そんなにひよこくんが珍しいかしら、 と琴音は思った。それとも制服？ そして、少年が自分を見つめていたことには気付かなかった。 出遅れた少年はさておき、にこにこしながら問い掛けて来る女の子に応える。 「ええ、そうですよね。実は、このひよこくんが大事なお客様が来たから、連れて 行ってくれって頼んできたんです。よく考えたら確かに不思議ですよね。 で、でも、私もよく分からなくて‥‥(^^; もしかしたら、これも星々の力の 導きかもしれませんよ。誰か願い事をしたのかな？」 答えながら自分でも困ってしまう。そういえば、どうしてひよこくんはガゼン なんて言葉を使ったのだろう。琴音は、ある知り合いの姉弟の姉――彼女からは どこから見ても闊達なキャリアウーアンに思える年上の女性が、その言い回しを 使っていた時のことを思い出した。なんだかとても、可笑しな場面だった。 『ガゼン大当たりはキミたちなのだ』 場でただ一人(一羽?)、琴音の手の上で堂々としているひよこくんがまた唐突に口を開いた。 『ボクにまだ会えてないらしいから来たのだ』 いきなり高性能ドロイドは笑いらしき身振りを始めた。 『確かに、クジ運がガゼン悪いのだ〜』[2001/07/04 22:54:04]
Manikin◎,Talkie●,Myakashi/17歳/♂/紅茶色の髪の少年 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 サザンウッドが見つけたものは…彼の主人が見たかったらしい、あの黄色い ひよこだった。それはそれで、彼女ら主従はなかなかラッキーだったと、 アゼルは思う。だが、ひよこを連れてきたのが、この遊園地の制服を着た 年若い女性のスタッフだったのには少し驚いた。泉にコインを投げ込んだら、 2秒でその願い通り、見たかったものが霧の中から現れるだって？まるで、 災厄前のお話のようじゃないか？ …あなたが落としたのは、この黄色いひよこくんですか、それとも… それは、とりあえずいい。 アミューズメントパークの、胸にリボンをあしらった、可憐さと、 凛とした雰囲気を併せ持つ制服は、その女性に良く似合っていた。この事件 の少し後、紅茶色の髪の少年が、忘れられない縁を持つことになる、この 黄昏の遊園地のカラーを持つユニフォーム。ともかく、目の前にいる、 どこか遠いところから来た旅人のような女の子…斎姫…が、この場所のこと を尋ねるに相応しいガイドが来てくれた、ということになる。 とは言え、白金の髪を持つ若い女性スタッフが、何かお探しですか、と 彼らに問うたとき、アゼルは不覚にもちょっとどきまぎしてしまい、あっけ にとられたように彼女とひよこを見つめ返すだけだった。 かなり第一印象がカック悪Eぞ俺、とアゼルは後になって思ったものだ。 それは、彼女の伸びやかで美しい声に秘められた魔法の力に、魂の真の名 を探し出す力を秘めた少年の秘幽体が惹かれたからだったかも知れないし、 その女性が、アゼルが普段目にするようなタイプの女の子とは、ちょっと 違うものを持っていそうだったからと言う（年若い男の子としてはシンプ ルな）理由だったから、かもしれないが。 「…えーと」 出遅れたアゼルとは裏腹に、斎姫はスタッフの彼女の元に歩いていき、 話し掛けていた。 「…で、『ガゼン大当たり』って、何か珍しいものでもあったんですか ？」 斎姫の台詞に、アゼルも同意の表情を浮かべながら、場でただひとり堂々 としている、奇妙なひよこのマスコットの目を…ちょっと睨むくらいの勢い で…覗き込んだ。少し落ち着きが戻り、好奇心が顔を出す。 ……どうせなら、面白いことが始まるといい。[2001/07/02 05:00:20]
南西エリア、BAIO-PEN２の柵の前。 柵に身を乗り出しぺんぎんのシャワーを見ている人影がひとつ。 「すンばらすぃいいいいいーーーーーー！！！ これぞ、これぞ私の求めていたものぉおおおーーーーーっ！！！」 静寂。 辺りにはツッコム人影もなく。 ぺんぎん達の視線もまた冷たい。 充分な間を置き、上総は自分の首の後ろに手をまわした。 ぺっと吐き出される人格カード。 柵に両手をかけたまま、ずるずると崩れ落ちる。 「……師匠……これが、このプレイが本当に クグツには必須なんですか……」 柵に頬ずりをしながらぽつり。 「……人格カードなしでこれぐらいはこなさないといけないんですよね… 私に本当にできるのでしょうか……？ いえ、疑問なんてもってはいけません。 突き進むはサムライウェイ。見事こなしてみせましょうっ！！」 掴んでいた柵をはなし、勢いよく立ち上がる。 鈍い痛みが後頭部を襲う。 地に伏せ、痛む後頭部を片手で押さえ、めそめととしながら、ぺんぎん達に手を振ってみた。[2001/07/01 09:55:15]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 事実は小説よりも奇なり。 そうした言葉が示すように、ときには信じられないような偶然が訪れることもある。 いままさに目の前で起きた事態は、ある意味その典型と言えるだろう。 星の泉を前にひよこくんの話をしていたらひよこくんが来た。 それも園内を歩いているのを見つけたのではなく、霧の中から現れたのだ。 完全に予想外の事態に一瞬思考が停止する。 そして、次に感じたのはまるでボタンを掛け違えたような違和感。 いや、違う。 違和感を感じたのは「信じられないような偶然」が起きたからではない。 その意味を理解するよりも早く、本能的な危険を感じた斎姫の身体が動いた。 身体をしならせ、既に獲物を狙う体勢に入ったサザンウッドを両腕で捕える。 そう。 好奇心の強いこの黒猫があれだけの「観察」であっさり戻ってくることはほとんどないのだ。 頭のいい猫だからひよこくんやひよこくんを抱いたお姉さんに怪我をさせることはないだろうが、 それでもいきなり飛びつかれたら誰だって驚くだろう。 油断も隙もあったものではない。 「ちょっと触ってみたかっただけじゃないか〜」とばかりに抗議の声を上げる黒猫はとりあえず 無視して（笑）斎姫は今しがたやってきたお姉さんの方へと顔を向けた。 「あ‥‥その‥‥よ、ようこそ黄昏の遊園地へ。なにか、お探しですか？」 ひよこくんを抱いた琴音嬢とサザンウッドを抱いた斎姫。 奇しくも、困惑を隠しきれていない微笑まで同じであった。 「はじめまして。ここの遊園地のひとですか？」 琴音嬢がtwiLiteの従業員であることは明らかだが、最初の挨拶としては無難なところであろう。 この挨拶でいつもの余裕を取り戻した斎姫は、ふと気になったことを聞いてみることにした。 「ところで…『ガゼン大当たり』って、なにか珍しいものでもあったんですか？」 よもや自分達のことを言われているとも思わず、斎姫はにこにこしながら訊ねた。[2001/06/30 00:47:20]
ナヌークはしばらく”紫翼の砦”でゲームを楽しんでいた。 忌むべき過去も、懐かしい過去もそこにあった。 「振り返るほどのことは何もないが…。」筐体の中でナヌークは呟く。 その筐体の外はちょっとした人だかり。ただでさえ癖のあるゲームでかつてないスコアをたたき出しているのだから。 『うむ、君の戦果は想像以上だ。そこで君に特別ミッションを与える。』画面の中で灰色ウサギ＿＿＿かつて彼の上官だった男、ノースロップ＿＿＿が告げる。 そのミッションは異様なものだった。ゲームとはまったく違う印象を彼に与えていた。 「これは…まさか…。」彼の操縦桿を握る手に力がこもる。その手ごたえは実機に非常に近かった。 グラフィックで巧妙に隠されてはいるがその背景は実在のもの。機体に伝わる対空砲火の振動は彼の身体に染み込んでいる感触。 「コンツェルンも酷い事をする…。」ナヌークは穏やかな表情を崩す。 敵が模擬的なドロイドであるのがまださいわいであろうが。 なまる身体でどうにか”特別ミッション”をこなして行くナヌーク。 「やれやれ…。」彼の頭部の柔らかい毛は汗で濡れ、まるで海から上がった白熊そのものであった。 全てのステージをクリアし、筐体から出てくるナヌーク。汗で濡れた白熊頭の巨漢は人目をひいた。 『大尉殿も厄介な仕事を押しつけられたようだ…。』上着を肩にかけ、顎のあたりを撫でながらナヌークは思った。 「さて…しばらく休むとするか…。」ナヌークは”紫翼の砦”を出て歩き出した。[2001/06/28 04:03:23]
(Kabuki,Kugutsu,Mayakashi 22/Female) この遊園地特有の黄色いものを抱えて歩いていると、客でなくとも少し目立つ。 琴音もその例外ではなく、制服に鮮やかに映える黄色い羽毛(?)を撫でながら、 彼女は歩いていた。 制服の胸にはリボン、左胸にはこの遊園地の従業員であり、ミリオン・ライト社の 社員であることを示す社章。白金の髪を結わえたポニーテールが頭の上で揺れている せいで、小柄な彼女の身長は少し埋め合わされている。E&B連合王国の夏の草原を 思わす深い緑色の瞳は、彼女がエール地方の出身であることを物語り、そして―― 彼女の体の他の部分と同じく、完全非サイバーの本物であることを示していた。 『ガゼンこっちなのだ〜』 「はいはい‥‥でも、どうしたんですか？」 両手の中のマスコットに尋ねても、短い手で先を示すだけで何も教えてくれない。 北米のある企業やネオ・フランス行政圏のあるメーカーの技術を用いて創られている このドロイドたちは、もちろん有事の際には簡潔明瞭に人間に言いたいことを伝え られるだけの知能を有している。だが、客たちが親しみ易いようにとの計らいなのか、 ふだんは一見真意が計りかねる言動を取ることが多い。従業員である琴音さえも、 このひよこくんたちに内蔵されているAIはなんて不思議なのだろうと思う日が多かった。 頭の後ろで揺れていた白金のかがやきが停止した時、目の前には中央噴水庭園が 広がっていた。モニュメントの中で自動制御の噴水が天高く水を吹き上げ、きらきらと 散っていく飛沫があたりにうっすらと霧を漂わせている。 黄金の紋章のもと、世界を百万の灯火で照らすミリオン・ライト社の一員となった 琴音は、この星々の泉が力ある場所であることを既に知っている。常人には理解 できない門であることを既に知っている。 服の裾を引っ張る小さなひよこくんに急かされ、琴音が近付いた先で霧が分かたれた 先にあったのは、ベンチの側に集う少年と少女の図だった。一足先に来訪者を見つけ たのか、琴音の足元で黒猫が見上げていた。 怪訝な顔で振り返る少年は淡い灰色のパーカーを着ており、背後の水面には さざなみが広がっている。コインでも投げ入れたのだろうか。 前にハーブガーデンに行った時、ペンギンに勧められて試したハーブティーの色を 琴音は思い出した。香り豊かなカップの中の紅茶の色と同じ、柔らかい髪の色だった。 少女と共に、星の力満ちる泉に願いを託す少年の図‥‥は、琴音のような若い娘には ロマンチックと感じて差し支えないもの‥‥ではあったが、振り返った少年の顔には 大人や世の中に反抗する年相応のものが満ちている。 『ガゼン大当たりなのだー。ようこそtwiLiteへなのだ〜』 何の前触れもなく、手の中のひよこくんが口を開いた。二人は少し驚いたように している。彼女のスカートの周りを回っていた黒猫は、主らしき少女の方へ駆け戻る とみゃ〜と鳴いた。 「あ‥‥その‥‥よ、ようこそ黄昏の遊園地へ。なにか、お探しですか？」 琴音は取り繕うように、まだ驚いている二人に微笑みかけた。その声は水晶の 歌い手に相応しく美しいものだったが、その顔に浮かぶ若干の困惑は、二人の少年少女に 浮かんでいるものとさして変わっていなかった。[2001/06/27 23:41:07]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 『北の魔法の国のお姫様と猫の姿の従者』 アゼルのその言葉に、斎姫は正直びっくりしていた。 お姫様、というのはともかくとして、斎姫の出身地はかつての北海道、魔法と精霊の力に満ちた国、 クリルタイだからだ。 が、むしろその反応に驚いたのはアゼルの方だったらしい。 予想外の反応に冷や汗をかいているアゼルを見る限り、斎姫の驚きは考えすぎだったと言えるだろう。 己の勘違いがどこか可笑しく、自然と笑みが浮かぶ。 ふとアゼルを見上げると、彼の視線は少し離れた所でたゆたう霧に向けられていた。 ここ、twiLiteでは比較的よく見かけるホログラフの霧。 だが、生まれつき“見通す力”をもつ斎姫の瞳でもその霧の先を見通すことは出来なかった。 ……もっともここＮ◎ＶＡに来て以来、普段はその力を封印しているのだが（笑） みゃ〜〜。 足元にいたはずのサザンウッドがなにか見つけたらしく、一声鳴くと霧の中に姿を消していく。 まったく、こういう時だけは目聡いんだから。 そう思って斎姫が追いかけようとした矢先、柔らかい風が吹いて霧がわずかに揺らいだ。[2001/06/26 01:15:38]
Manikin◎,Talkie●,Myakashi/17歳/♂/紅茶色の髪の少年 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 「ははっ。味方が増えて何だか幸先がいいな。…よろしく、斎姫。それから サザンウッド」 自己紹介めいた会話を一段落、アゼルはふと気付いて首を傾げた。 「そういえば…ほら。少し前まで、“celestia-Lite”ってライブ、やって いただろ？その会場の周りに、ちらほらいたよ」 黄色いひよこのマスコットのことだ。 斎姫はちょっときょとんとした表情を浮かべたように見える。あのライブ が目的で来たお客ではないのかなあ、と紅茶色の髪の少年は思った。 「そうだな、ここで待っていても会えるかも知れないけど、どこかへ 探しにいけば…」 アゼルはちょっと空を見上げた。とても大きなイベントだったから、ひよ このぬいぐるみを被ったアルバイトのスタッフもいるだろうし、ドロイドの ひよこも、この辺りに大勢いるだろう。 「…っと、それともあんまり目立っちゃ行けないとか、あるのかな？ …北の魔法の国のお姫様がお忍びで、猫の姿の従者と一緒に来てるとか… ははっ何で真面目な顔してるの（（汗）ここは笑うところなんだけど…」 アゼルはちょっと喋りすぎた自分に恥ずかしくなって、近くに彼女の 探しているものがいないか、視線を巡らした。ちょっと離れたところに、 このテーマパークの名物の、ホログラフのロマンティックな霧がたゆたって いる。…あれが晴れたら、意外にあの影にでも黄色い人気者がいるかも 知れない。[2001/06/25 22:43:41]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 「ありがと（＾＾） てへへ……なんだか本当に叶いそうな気がするよ」 斎姫たちのために祈ってくれるというアゼルの言葉に斎姫は礼を述べた。 社交辞令でもなんでもない、本心からの思い。 自分たちを応援してくれる人がいるというだけで、どうしてこんなにも心強く感じるのだろうか。 もちろんtwiLiteまで来てひよこくんに会えない可能性はゼロに近いのだが、まあそれは別の問題である（笑） 「あ、そだ。あたしは斎姫（いつき）っていうの。で、この子（黒猫）がサザンウッドだよ。 呼びにくかったらこの子のことは『みゃあ』でいいから」 えらく豪快な略しかたにサザンウッドが（一応）抗議の声を上げるが、自己紹介のたびに繰り返される “いつものこと”に本気で抗議するつもりはなさそうだ。 「で、せっかくだからあたしからもお返し♪」 くすりと笑うと、ごく自然な動きで古き、力ある印を宙に描き出す。 「アゼルさんの『願い』が無事果たされますように。そして…良き『新しい願い』が見つかりますように」 生きることは願いつづけることだからね。斎姫はそう言って小さく微笑んだ。[2001/06/22 23:58:35]
Manikin◎,Talkie●,Myakashi/18歳/♂/紅茶色の髪の少年 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 アイスの一件が段落すると、女の子は泉の由来について、少しだけ口に した。強い想いは、世界に波紋を投げかける、と、女の子は魔法使いたち の世界観の根本のようなことをアゼルに言った。 最初の印象よりずっと、落ち着いたものの見方ができる娘なのだな、と アゼルは思う。照れがなく、世界について口に出来るのは、確信か、信念 があるからだろう。 しかし、そんなことはどうでもよく。 「そりゃまぁ、ここに来るまでに一度もひよこくんに会えなかったのは かなりクジ運わる……」 女の子は猫の突っ込みに（何か言ったようだ。おいおいマジですか、と アゼルは思ったが）そう答えている。なるほど、彼女はこの遊園地の、 有名なあのちょっととぼけたマスコットを探しているらしい。 twiLiteに深い縁があるアゼルには、あまり珍しいものではないが、 小さい女の子に（この子はそんな年じゃない気はするが？）人気がある のは知っていたし、あのマスコットの行動は個性的で、会いたいと思って 探すと、なかなか見つからなかったりするものだ。 アゼルは猫に突っ込まれて真っ赤になっている女の子に、笑いをこらえ ながら話し掛けた。 「おっけーおっけー。まさか、ひよこくんに会いたい、ってお願いした わけじゃないだろうけど、あれは一見の価値アリだよ。 俺、アゼルって言います。うーん…そうだな、俺の願い事はもう、 自力でかなう一歩手前だから、さっきのコインはふたりの」 アゼルがいうもう一人は、地面で澄ましている、猫。 「あの黄色いやつに会いたいとゆーお願いが叶うように、祈っておくよ」 なんだか訳の分らない願いだと、泉の意識体は思っているに違いない が、彼女が純粋に願っているならそれは叶うだろう、と、未熟な魔法使い は思った。[2001/06/19 22:36:45]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 「溶けるぞ、それ。呆然と見てると」 「ほえ？？………はぅっ Σ（￣□￣）」 一瞬、呆然とした表情を見せるがすぐにその意味に気付き、大慌てでアイスクリームに口をつける斎姫。 その慌てぶりは口の周りにアイスがくっついている（斎姫は気付いていないようだ）ことからもよく分る。 「みゃ〜〜」 そんな斎姫に対し、誰よりも早く黒猫が一声鳴き、顔を洗う仕草をする。 長年の付き合いらしい絶妙のツッコミのタイミング。 真っ赤な顔で口を拭く斎姫の視線が宙をさまよっているのは、おそらく話題を変えるための「なにか」を 探しているためだろう。 「と、ところで、こんな話知ってる？」 かなり無理のある話の切り出しだが、気にしてはいけない。 「強い『想い』は世界に『波紋』を投げかけるんだって。ちょうど泉にコインを投げ込んだみたいにね。 だから、どんなに無理に見えたとしても、願い事はきっと叶うんだよ」 夢見がちな少女のような台詞だが、一瞬だけ見せたその表情はむしろ世界の理を垣間見た智慧者のそれに近い。 が………。 「ぅにゃ〜〜〜」 「む〜〜、そんなこと言うのはどの口かなぁ〜〜？？」 猫の入れた茶々（と思われる）であっさりとその表情は一転する。 ……いや、むしろ先程の表情は目の錯覚であったような気さえする。 今、目の前で猫の頬を「むにっ」と引っ張っている少女はどう見ても「智慧者」などとは程遠いのだから。 「そりゃまぁ、ここに来るまでに一度もひよこくんに会えなかったのはかなりクジ運わる……あ（////）」 唐突に我に返り真っ赤になる斎姫。その瞬間を猫が見逃すはずもなかった。 斎姫の顔に蹴りを入れるとその勢いで彼女の手から逃れ、見事な宙返りを見せて着地する。 着地の瞬間に勝ち誇った鳴き声を上げることも当然忘れない（笑） 一方の斎姫は恥ずかしさで真っ赤になりながら硬直していた。 「え、あ、あぅ……（////）」 フォロー不可能な状況に戸惑うその様は、なぜか妙に可笑しかった。[2001/06/13 23:11:52]
Manikin◎,Talkie●,Myakashi/18歳/♂/紅茶色の髪の少年 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 ちょっと大げさに驚きすぎたみたいだ。コインを投げた女の子が、本当に 申し訳なさそうに詫びたので、アゼルは自分の軽い性格が逆に恨めしくなっ たりした…一瞬だけだが。 照れ隠しに歯を見せて笑い、噴水の淵から立ち上がって背伸びをひとつ。 「あ、いや邪魔なんてことはないよ。…どっかというと…俺がこんなトコ で座ってるのが邪魔なんだよな…ここ…みんながこうやって」 アゼルもポケットから、コインを取り出すと、指先で弾いた。 コインは放物線を描いて、澄み切った泉に落ちる。 「願い事をするんだもんな…」 コインの奇跡を目で追う、女の子のツレの猫の仕草が妙におかしくて、 アゼルはにこにこした。少し気分が変った、と思う。 あんまり調子が出なかったのは、ここへ来てほとんど誰とも話さず、 何も食べなかったせいだろうか…女の子の、空いた片手に持っている、 twiLiteのアイスクリームスタンドの包装がされたチョコチップ・アイス クリームを見て、アゼルは思う。 で…。 「溶けるぞ、それ。呆然と見てると」 おせっかいかとは思ったのだが、アゼルは自分のほうをぼんやり不思議 そうに見ている女の子に、ぽそりと忠告してやった。 俺もアイスと、何かお腹に溜まるものを買おう、と思いながら。[2001/06/10 21:51:35]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 「おわっと」 「ほえっ！？」 アゼルが水音に驚きの声を上げたそのとき、斎姫もまた予想外の声に驚きの声を上げていた。 反射的にそちらを向くと、“星の泉”をはさんで向かい側、噴水の淵に小柄な少年が座っている。 少年は慌てたような表情でこちらを向き…どうやら先程投げたコインの音が彼を驚かしてしまった らしい…そして、なぜか首を傾げた。 はっきりと覚えているわけではないが、確かあの少年はずっとあの場所に座っていたはずだ。 一見すると誰かを待っているような風情だったが、時間を気にする様子も落胆した様子もなかった から、あるいは考え事をしていたのかもしれない。 彼が首を傾げた理由が少し気になったが、とりあえずそれを意識の片隅に追いやることにする。 まずは驚かせてしまったことを詫びるのが先だから。 「驚かせてごめんなさい。もしかして、邪魔…しちゃった？」[2001/06/09 23:33:38]
Kabuto-Wari,Fate●,Inu◎/Female/31 【《アルビオン》にて】 「あの頃は若かった」、ふと、そんな言葉が脳裏を過る。いま、自分はそんな年齢なのだろうか？ と彼女は自問自答した。 昔の無茶のせいで、彼女の身体には11発もの銃弾の痕がある。この姿はもう誰にも見せられはしないだろう。……そう、愛した男にさえも。 「遅いな」 呟く。 『魂の器』という意味でもある彼女のブラック・ハウンド署内での愛称は、自覚的な恋愛感情を持たない心にまさにしっくりとくる物。それに加えて“灰 の乙女”――硬い金属で出来た心と灰色の髪、瞳を持つ処女――の二つ名。 「お嬢さん？」 奴だ。 「もうそんな年じゃない」 カウンタに腰掛けたまま、彼女は振り返った。 黒いスーツ、ゆったりとしたガウン。絵に描いたようなレッガーだ。 「サクラバ、久しぶりだ。突然呼んで済まなかったな」 彼女は彼を右側に促す。 「いや、大丈夫さ。それより……ヤマ以外で会うのって初めてだな」 「確かにそうだな……」 思えば八年前、初めて会った時から、彼はずっとフェイト・コート姿の彼女しか見ていない事になる。その時の事件で、彼女は彼に初めて会い、そして初 めて銃弾が打ち込まれる瞬間の痛みを知った。 「そんな服持ってたのか」 サクラバと呼ばれた男性は、促された通り右側に腰掛け、そして彼女の灰色のナイトドレスをまじまじと見つめた。 「いや……買った」 しかしさらりと彼女は答え、カクテルグラスを傾ける。 「え？ わざわざ今日のために？」 「馬鹿を言え。今日のためじゃない。そういった服を私は一着も持っていなかったからな」 かちん、と勢い良くグラスをテーブルに置く。 「で、レーゼ、話って、何だ？」 彼は前のバーテンにオーダーを任せ、彼女に向き直る。 「ＬＵ＄Ｔに行く事になった」 「え？」 もう一度、彼女は口元でグラスを傾けた。 「異動か？」 「いや、異動もあるが、バウンティ・ハンターの試験を受けにな」 そこでようやく、彼女は彼の瞳に視線を合わせた。 と、彼はバーテンから水割りを受け取る。 「これまで数々のヤマでお前を見つけたが、結局捕まえられず終いだ。ただ追いかけるのみではなく、法的にも物理的にもお前を捕まえるために少々Ｎ◎Ｖ Ａを離れる。まあ、これは上も承認している事だから、試験が終わったらまたここに戻ってまたお前を追いかけるさ」 不器用に、彼女が微笑んだ。やっぱり笑う事には慣れていないな、と彼女は心の内で思う。 「そうか……そんなに俺を捕まえたいか」 そう言って、彼女以上の、しかも悪ぶった笑顔を彼は彼女に返す。 「当たり前だ。イワサキの非合法工作員桜葉蓮十郎、お前はすでに十数個の罪名を持ち歩いているんだからな」 それ以上に、何か別の感情が、彼女を駆り立てている。 何故彼を追ってしまうのか。 未だに明確な答えは出ない。 「何で、俺を追っかけるんだ？」 「さあ……自分でもいつも答えは出せないままだ。私にも詳しい事は分からない。上から言われている訳でもない。ただ、これだけは言える」 「何だ？」 「会いたい、それだけなんだ」 沈黙。 そして。 「はははっ……」 突然笑い出したのは彼の方だった。 「それさー、恋ってやつじゃないか？」 変ににやけながら、彼は彼女のグラスを取って口につける。 「はぁ？ 私はもう31だぞ？ 恋とは無縁だとは自分では思っているがな」 「でも、会いたいからってのは立派に恋だぞ。そうか……そんなに俺に会いたいか……こういう飲みだったらいつでも誘えよ。何なら全額俺のオゴリでもい いしな。それに、別の意味でお前に捕まっても俺は構わないぜ？ 今までのオンナは全部清算してな」 少年のような、しかし大人である彼の笑顔。 八年前とそれは全く変わらない。 何故か、胸が痛い。 「その別の意味ってどういう事だ？」 「気にしないの。ま、そうだな、今夜はずっと一緒に居るから、よた話でもしようぜ」 『ずっと一緒に』。 その言葉が、さらに彼女の胸に刺さる。 これが恋なんだろうか？ やはり、答えは出なかったし、出せなかった。[2001/06/07 20:49:58]
Manikin◎,Talkie●,Myakashi/18歳/♂/紅茶色の髪の少年 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 アゼル・フリンは試練に挑んでいた。 とはいっても、ここは戦場でもなければ、歴史的大事件の場でもない。 大きなイベントが一区切りついた後の、黄昏と幻像のテーマパーク。 その中心エリアにある噴水系モニュメントの側に、紅茶色の髪に、ライトグレーのパーカーを 羽織った小柄な少年…アゼルはいる。ここは、試練と名の付くものよりは、 子供たちの無制限の快活さや、平和な憩いの時を満喫する家族の風景や、 恋人たちの密やかで甘い語らいが似合う場所。 しかし、アゼルはここでそれらのどれにも抵触しない…あくまで自分の試練に挑んでいた。 アストラル界、六統十二元の血、妖の掟…そういった単語と無縁の人生を歩む人間なら… ニューロエイジの人口の大半はそうだ…噴水の淵に腰掛けて膝を折り、顔を伏せて何かに 聞き入っているアゼルの姿は…ストリートによくいる物憂げで刹那的なニューロキッズに見えることだろう。 遊園地で楽しい時を過ごすような人々は、そういうチョット“浮いた”若者には干渉しないで 放って置いてくれる。アゼルはここで、来ない恋人をまちぼうけている男の子…のようなフリをしつつ、 魔術の師匠から出された山積みの課題の、最後の一つを消化しようと頑張っていた （一応真剣に頑張ってはいた。他人からは、ただ眠そうなだけに見えても）。 この“星の泉”に、設立者たちによって複雑に張り巡らされた結界構造。 その呪文方程式…その一つでも捕らえて師匠の前で再構成してみせることができれば、 アゼルの秘幽体魔術師としての卒業試験は終わりだった。胸を張って、面倒くさい 魔術の教練を終え、自分の好きな世界に出ていくことができる。 だが、今のところ、若き少年魔法士の調子は、あまりいいとは言えなかった。 あのロマンティックな星祭りの後なせいか、泉の周りにはやけに甘いムードのカップルが 目立ち、遊びたい盛りのアゼルの軟弱な部分をかき乱す。 「…っつーか…。じーさん…。これは若さへの当てつけなんだろうか…？ 何もこんな日にここで最後の試験しなくても…」 紅茶色の髪の少年が、ついに集中を乱して溜息を付いたとき…背後から、 何かが泉に飛んできて、軽やかな音を立てた。コインが投げ込まれて、水面に波紋を作ったのだ。 「おわっと」 慌てて、泉の淵に置いてあったアイスココアのカップをどける。 振り返るアゼルは、泉から少し離れたところにぽつねんと立っている小柄な女の子を見た。 彼女は、願掛けのためにここで皆がやることを、すこし張り切ってやっただけのようだった。 …しかし、そんなことをしにきただけにしては、サングラスまで決めて、あの気合いの入りようはなんなのだろう？ ともかく、…彼女の足下に、ニューロエイジでは非常に珍しいもの…本物らしき、猫…を見て、 アゼルは首を傾げた。[2001/06/03 21:52:51]
【南西エリア《Forgotten Beasts》にて】 twiLiteの一角にあるサファリパーク。今日のツインテールはそこにいた。 平日の動物園である。人は少ない。もっとも、今の彼女にとってはそのほうが 都合がいいのだが。 彼女がこの公園に来る時は、１人になりたい時が多いのだ。 彼女は今、庭内に配置されているベンチに腰掛け、どことはなしに動物達を見 つめていた。もちろん本物ではない。精巧なドロイド技術と、人格（？）カー ドで制御されたフェイクである。 確かあのドロイド達を作ったクローデット工房というところは…… とたんに思考が働き、かの企業のデータを集め始めている自分に気付く。 いつもの癖で、興味が湧くとすぐにいろいろ調べてみたくなる。それが仕事の ようなものだからだ。 仕事をしに来たわけじゃないのにね…… ツインテールは苦笑した。 そのクローデット製ドロイドと目が合う。 作り物のはずのその瞳に、なぜかツインテールは吸い込まれそうになった。 すべてを見透かされているような感覚。 「そんな目で見ないでよ。別に悲しくはないんだから。 …… 分かったわよ。今度来る時には、もう少し幸せそうな顔をしてくるわ。」 向こうが喋りかけてきたわけではないが、ツインテールはその動物型ドロイド と会話した気になっていた。 「チャオ、またね。」 笑顔を作り、ドロイドに別れを告げると、ツインテールはその場を去っていっ た。[2001/06/01 14:41:41]
【北東エリア、ザ・レイヴユニバースにて】 一人の男がｔｗｉＬｉｔｅにやってきた。 旅客機の機長か、客船の船長か。そんなイメージを抱かせる制服姿の男。そんな彼の頭は白熊であった。 その頭部はリアルなものであるにも関わらず、彼の穏やかな眼差しもあってかどこか絵本の中から 出てきたかのような印象を与えていた。結果、彼を見た子供達は驚きの笑みを浮かべる。 「ここか…。」”ナヌーク”が立ち止まったのは『紫翼の砦』の前。きらびやかな電飾と堅固な建物が アンバランスな派手さを演出している。 彼は中に入り、１台のゲーム機に向かう。”Ｌａｓｔ ＤｒａｇｏｎＲｉｄｅｒ”ガンシップの フライトシミュレータとシューティングを兼ねたゲームである。 「これだな、大尉の言っていたものは…。」彼は上着を脱いでシートにつく。 コインを投入し、結線する。リアルなコクピットのイメージが彼の目の前に展開される。 「…懐かしいな…。」”ナヌーク”はぽつりと呟く。 かつて搭乗した機体−−−−ＭＡＫ”アンドラス”ガンシップ。双発輸送機をベースに９０ｍｍ砲と ３０ｍｍ機関砲を搭載した対地攻撃機。 その性能は作られた当時からやや時代遅れで、その戦歴は決して輝かしいものではなかったのだが。 『さて…。君は”ＤＲ小隊”の一員として作戦に参加してもらう。任務は決して容易なものではない。 心してかかるように。』ウサギ頭の指揮官が彼に告げる。 「…大尉もなかなかの役者であられる…。」”ナヌーク”は思わず吹き出す。 その指揮官はかつて彼の上官でもあった『大尉』…”ノースロップ”だったのだから。 『ではまず、基本的な操縦を憶えてもらう………』ゲームは続く。 ”ナヌーク”はいつの間にか昔を懐かしんでいた。[2001/06/01 06:58:16]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《ファウンテン・オヴ・スターズ》にて】 人生に於いて、何らかの選択を迫られることは珍しいことではない。 ささいな選択が結果として人生を左右することも決してあり得ないことではないだろう。 そして、斎姫は今まさに難しい選択をつきつけられていた―― 手のなかの固い感触。その感触で斎姫は、自分が無意識に手を握り締めていることに気がついた。 手に握ったそれは、まるで早く選べとばかりに存在を主張する。 ゆっくりと辺りを見回す少女の表情は真剣そのものだ。 やがて、決心したのかある一点に向かって歩き出す。そして、ゆっくりと握った手を差し出し…… 「――チョコチップのアイスクリームください」 「お待たせ♪」 噴水のほとりでは、相方の黒猫がじっと水面を眺めていた。 面倒くさそうに首を巡らし短くにゃあ、とだけ鳴く。 「ここってホントにたくさん屋台があるよね。ポップコーンもクレープも捨てがたくて悩んじゃった。 ――え？ ダメダメ。全部買ったらお小遣い足りなくなっちゃうよ」 いつも通りの会話、いつも通りの日常。ただひとつ違うのは、ここが魔法の遊園地だということ。 相方の視線につられて噴水をのぞきこむと、まるで小さな星々のようなコインの煌き。 そのひとつひとつが誰かの「願い星」だと思うとすべての輝きがより美しく感じられるから不思議なものだ。 もっとも、隣りの黒猫は「金魚も鯉もいない泉に用はない」とばかりに早くも興味を失っているようだが。 「ああもう、わかったよぉ」 相方にせかされるようにして噴水を離れる斎姫。 だが、ニ、三歩離れたところで思い出したかのように振り返るとおもむろにコインを噴水に投げ込んだ。 ぽちゃん 新たな「星」が心地よい音を立てて流れていった。[2001/05/25 04:10:07]
Kabuto-Wari,Kage◎,Ayakashi● 「御主人様？」 小走りで、彼の歩幅に合わせるように、少女が付いて来る。 いや、少女ではないかも知れない。そう思えるのは、黒いナイトドレスのせいだろうか。 「レイリス、どうかしたのか？」 黒いコート、中から見えるレースのワイシャツ、白いスカーフ、プラチナブロンド、 そして……深紅の瞳。その瞳の妖しく強い輝きは宵闇に呑まれる事は 無い。 「いえ、まだ……慣れていないので」 うろたえながら、彼女は答える。 「まあ、仕方ないさ。ここに連れて来るのは初めてだし、何よりも、 私と出会ってからはまだ外界を教えてはいないしな」 「いえ……違うのです、御主人様」 かぶりを振り、彼女は彼を見上げる。 「わたくしは、貴方に仕える身だからこそ、外の世界を知るのが怖いのです。いつわたくしが 貴方以外の何かに惹かれてしまうのか……それが怖いのです」 そう言って、彼女は彼から目を反らした。その視線の先には遠い夜景。 （そうだったのか） 確かに、ドレスを買い与え、彼女をtwiliteへ連れて行くと言い渡した時の彼女の顔といったら…… それは今でも思い出せる。まるで何処か見知らぬ国へとかどわかされるかのような顔だった。 確かに……彼女は彼のために生きるメイドであり、彼のために生きる処女……つまり食糧である。 そんな存在だという事は彼も彼女も頭では判ってはいた。 「それは大丈夫さ、レイリス。私は、君の側から離れない。何故なら、 君は私の『花嫁』候補なのだから」 その彼の白く長い指がゆっくりとレイリスの首筋を撫でる。爪は何故か彼女を傷付ける事は無い。 「私は君が居ないと生きていけないんだ。精神的にも……物理的にも。でも、レイリス、 君を縛り続ける事に君が疑いを覚え、外の世界に輝きを感じたら、 いつでも君は私の元を去っていい」 「そんな！ わたくしは、貴方を、」 捨てられる前に子猫は最大限の声で泣く。 そんな彼女の叫びを、彼は唇で封じた。 そして暫くして、唇は離れる。 「レイリス、これからも、私の元に居てくれるね？」 やっと、シェルンは微笑んだ。 「あ……はい、勿論です、御主人様。わたくしは、貴方の『花嫁』候補として、これからも生き続けます」 「良かった。レイリス、じゃあ、いいかい？」 彼は、ゆっくりと彼女の細い肩に手を掛けた。 「ここで……？」 宵闇に紛れ、彼女の疑問に答える事無く、彼は彼女の首筋に唇を近づけ、そして牙を立てた――[2001/05/24 17:15:15]
Kabuki◎,Mistress,Mayakashi●/F/AJ17（自称）/黒猫を連れた少女 【《エインシェント・メモリー》にて】 「わぁ……」 ゲートをくぐった途端、目の前に広がる光景に斎姫は歓声を上げた。 それに対して隣りの黒猫は呆れ顔。 それもそのはずである。当初、愚者の門をくぐった彼女は南西エリア、《メモリー・オヴ・ エンプレス》を目指して歩いていたのだ。 それがなぜこんな所にいるのか……おそらく皆様が想像した通りである（笑） 「懐かしいな……Ｎ◎ＶＡで生活してたら四季の光景なんてぜんぜん縁がないもんね」 彼女の出身地、クリルタイもＮ◎ＶＡと同じく赤道直下である。当然四季は存在しない。 「う〜〜、なんだかさっきから横槍入れられてるような気がするよ」 それは気のせいだ、斎姫（笑） 「桜の時期は過ぎちゃったけどさ、新緑ってのも悪くないよね。梅雨の時期になったら ここも雨が降ったりするのかな？」 紫陽花のなかを傘さして歩くのもいいよね、という斎姫の言葉に“雨は嫌い”とばかりに そっぽを向く猫。 その猫に対して不満の声を上げる斎姫。 ゆっくりと流れる時間のなか、ただ緑の木々だけがふたり（？）を見下ろしていた。[2001/05/10 04:53:47]
【「皇帝の門」にて】 ＞「お迎えに上がりました。 篁 沙羅さん」 ＞「帰宅されるまで護衛するように仰せつかっております」 青いフェイトコートをまとった女性は、微笑みながらそう言った。 確か名前は……星川由水。 警備局でもトップクラスの腕利きカブトと聞いている。 あたしは微笑み返した。 「ごきげんよう、由水さん。よろしくお願いしますわ」 ＞「それに、”あなた達”の話しも・・・ ＞ 聴いてみたいと思っていましたから」 毅然なカブトとしての雰囲気と対照的なウィンクは、ミスマッチながら不思議な魅力を持っている。 「まぁ、でもよろしくてよ。 そうですわね……ここだけの話、という事ならばですけど」 そう言いつつ右腕を伸ばし、由水さんの左腕に絡めて抱きついた。 「さあ、帰りましょう。 帰り道で、お話ししますわ」 これで、少し寂しさも紛れるかも知れない。 でもこれって露羽部長の意趣返しかしら……？[2001/04/26 22:45:49]
【「皇帝の門」にて】 「お迎えに上がりました。 篁 沙羅さん」 青いフェイトコート。銀糸の刺繍の入った”深夜の蒼”のジェントリー。 色の抜け落ちた黒髪に灰色の瞳。 優しそうな口元に厳しい瞳の女性。 フェイトコートの背中に縫い取られたイワサキのロゴと、楯のマーク。 「あの方を困らせることは、なかなか出来るモノでは無いのに。私たち一同驚いていましたよ」 優しい笑みの雰囲気。 それだけでふっと、世界が優しく成った感じがする。 「帰宅されるまで護衛するように仰せつかっております」 ゆっくりと洗練された動作で一礼をする。 「それに、”あなた達”の話しも・・・聴いてみたいと思っていましたから」 悪戯っぽくウィンクする。[2001/04/24 00:40:28]
【コンサートの終了直後の《ステージ・オヴ・ドーン》にて】 夜は終わった。 永く熱い星々の夜は……。 潮が引く様に人々は、ホールを後にしていく。 満ちていた最高潮の熱気は消え失せ、残るは 心地よい疲労とわずかの寂寥感。 （一人で帰るのは、つまらないわね……） あたしは、露羽部長を捜した。 いない。 どうやら先に出てしまったらしい。 （しょうがないわね。清泉さんもいないし、 面白くないけど、一人で帰りますか……） かすかに苦笑してから、 あたしは「皇帝の門」へ向けて、 ゆっくりと歩き出した。[2001/04/22 21:39:44]
いつの間にかステージは終わってしまったらしい。耳の中の楽器の音と歌声がやみ、足音や話し声が流れこんでくる。 「結局ステージは見ずじまいだったなあ」 龍三がぽつ、と口を開く。エアハートは彼の右眼に光が戻っていることに気づいた。 「そ、そうだね…。」エアハートは口を開く。まだぎこちない面持ちと口調で。 もともとライブが目的で来たわけではなかったし、龍三とここで会うことも予想外だった。 彼女はきょときょとと視線を泳がせる。 そんな中、龍三がどことなく格好をつけた風に口を開いた。 「あのさ。ここでもいいけど、どこか行かないかい？ あっちの方に、アルビオンっていうバーがある。悪くない店だぜ」 『……！？』エアハートは内心非常に驚いた。龍三にはその表情がひどくおかしなものに映ったかもしれない。 口を開かず、頬を赤くしたまま眼だけで驚いているのだ。 しばしの沈黙。そして彼女は口を開く。 「うん…。いいよ…。」 嬉しそうな、気恥ずかしそうな、そんな表情と声で龍三にそう告げた。[2001/04/18 01:25:59]
長い長い夢の後のように、園内は柔らかな静けさを取り戻していた。 音が途切れるのと同時に、龍三は少しづつ自分を取り戻し始めていた。 右目は光を取り戻していた。 「結局ステージは見ずじまいだったなあ」 そんなことを言いながら、ちら、とエアハートの方に視線を向ける。 彼女はまだ少しだけぎこちない表情で、こちらを見ている。 もう少し、さっきの雰囲気を味わっていてもよかったのかもしれない。 龍三は心の片隅で後悔した。 久しぶりの感覚だった。あの感覚を楽しむ余裕がなかった自分が、逆に嬉しかった。 しかしそれはそれとして、このままというのもいただけない。 龍三は少し考えて、口を開いた。 「あのさ。ここでもいいけど、どこか行かないかい？ あっちの方に、アルビオンっていうバーがある。悪くない店だぜ」 格好をつけて言うことでもあるまい。[2001/04/18 00:49:24]
【《ステージ・オヴ・ドーン》近くの木陰にて・・・】 地べたに足を投げ出した格好で座り悠々と煙草を吸うロッカーボーイ。 側には派手な髪型でスーツを着ているフィクサーが直立不動で立っている。 いや、正確に言うとロッカボーイがフィクサーであり、 フィクサーはその影でしかない。 「・・・お疲れさまです」影が口を開く。 フィクサーニヤリと笑みを浮かべる。 「久々にKOOLでEDGEなステージを楽しめたよ。お前さんのお陰だね。」 「いえ、私は忠実に仕事をこなしただけです。」 「じょーできだよ。人嫌いのお前にしちゃーね。」 フィクサーの口から、ゆっくりとゆっくりと紫煙が立ちこめる。 しばしの沈黙の後、影が自分の主人に質問を投げかける。 「最後の曲の前にステージから降りられて本当に満足でしたか？」 フィクサーは、ゆっくりと上を見上げながら話し始める。 「元々その予定さ。老兵がいつまでも美味しいところを喰ってたら不味いだろ。」 フィクサーはそう言いつつゆっくり立ち上がる。 「俺が居なくても、Ｓ◎ＵＮＤ ＴＹＰＨ○●Ｎは大丈夫だ。全く問題はないさ。 現に最後の曲。客は全員満足していたろ？ あれだけ、ロックな奴らがいれば俺は安心して自分の道を歩けるさ。」 完全に立ち上がり、パンパンと着いたゴミ等を払う。 「さーて、今夜の今後の予定はどうなっているんだい？」フィクサーが聞く。 「この後、三合会の食事会の予定があります。」影は冷静に回答する。 「ふーん。」フィクサーは懐から何かを取り出す。 それは黄色い色をしていた。 「・・・清泉様。スーツの用意はしていますが？」影の声に動揺が少し走る。 「影（エイ）・・・。今晩はお前が行け。」 振り返ったフィクサーの顔は、無邪気な笑みを浮かべていた。 「はっ？」 「いや、ほらさ。お偉いさんのジィさま相手に話しているとさダルくてさ・・・。 こんなに今日は気分がいいんだからよ、お前に俺の替わりに行って欲しくてさ。」 と、言いつつ服装をてきぱきと着替えていく。 今までブラックレザースーツに身を包んでいたフィクサーはそこには居なく、 其処にはひよこクンの着ぐるみが立っていた。 「んじゃ、そーいう事で。又な。チューマ」 そう言い放つと、ひよこクンの着ぐるみは何処かは解らぬ所に向かって爆走をし始めた。 直ぐにその姿は、点となり追うのは不可能であった。 ため息を一つ。影はフィクサーの脱ぎ捨てた服装を拾っていく。 服装とギターをケースに納め、影がその場を立ち去る。 「・・・貴方はやはり、自由が一番似合っていますね。」 そう、言い残して。[2001/04/17 17:51:47]
【ライブ会場を一望する高みから】 魔法の夜の終わりを告げる光が、空を踊っていく。集まった人々が天を仰ぎ、 歓声を上げていた。様々な形を取った幻影のひとつひとつが光の粒子となり、 天へと昇っていく。天上の光は地上に降り、そしてまた天へと還る。だが人々の 目には焼き付き、その心には永遠に残るだろう。 アルティシオンはオリュンポスの錫杖をそっと振った。新しい幻が生まれ、 羽ばたく鳥の群れの姿を取ると、ステージの方へ飛び立ってゆく。この魔法の 遊園地に満ちる霧と幻の正体は各社のホログラフ発生装置、そして彼女の魔法と、 黄昏の遊園地に集った力によるものだ。 地球は傾き、世界は歪んだ。時はニューロエイジ、多くのものが失われた世界。 だが人々の心に光は消えていない。彼女の率いるミリオン・ライト社は百万の 灯火で昏い世界を照らし、夢を守る最後の砦たらねばならない。だがその証しは 今宵も成された。今夜この魔法の夜に、これだけの人々が集ったではないか。 これだけの想いが集い、ひとつになったではないか。それは見えない力、誰にも 遮ることのできない力となって、暗闇を照らすだろう。 「あー、理事長。どうやら無事に終わりそうですね」 側に控えていた金色の狼が振り返る先から、おずおずと声が掛かった。腹心の 部下である黒髪の青年が立っていた。花火が頭上で弾け、彼の丸眼鏡を照らす。 その奥の銀色の瞳が、彼が見た目通りの――穏やかな青年エグゼクでないことを 伝えている。 琳 叡貴運営広報部長はちょこんと眼鏡を直すと、飛んでいった鳥たちを見上げた。 「期間中にチケットにつけるくじのことですが。一等はtwiLiteロンドンへの ツアーにすることにしました。H@ZE一週間の旅ともあれば、なかなかの価値が 出るでしょう」 「それでいいわ」魔法の遊園地の主は微笑んだ。「レヴリシオン達も喜ぶでしょうね。 一番最近に開園したのだから、もっと広めていかないと」 空中に広がっていく幻の中に、彼女は金色の瞳を細めた。真の魔術師である 彼女には、常人には見えないものも見える。 「それから琳部長。ニュクス様の神託です。北方に災いありと。あの氷の国で 何かが起こるかもしれません。心に留めておかねば」 琳部長は眉を顰めて理事長を見やった。「本当ですか？ 手配中のあの件とも 関連するでしょうか。くじの賞品は中止した方がいいかな‥‥」 「それには及ばないわ。神々の預言は絶対ではないし、未来はそれを想う人の 手によるもの。銀の腕のヌァザのお戯れかもしれません。とにかく、何か起こる かもしれないわ。旅人を送り出す用意をしておかないとね」 “孤月”の名を持つ古の者は主のその言葉を聞くと、何とも言えない表情をした。 「理事長。‥‥まさか、またあの門が必要になるとでも言うのですか？」 アルティシオンは聞こえないふりをすると、終わろうとしている舞台の方に 目を戻した。琳部長は観念したように頭を振ると、不思議そうに見上げる金狼 リュシオーンの頭を撫で、ライブの終幕を見守ることにした。ドロイドの一団が 踊りながら広場の方へ練り歩いてゆく。ヌーヴのクローデット工房製の小さな 竜たちも一緒だ。その中に一匹、彼の親戚が混じっていた。 二人が見上げると天上に光は還ろうとしていた。様々な幻影が夜空を踊っていた。 ステージを彩った少女の笑顔。飛翔する天使たちと、そこから零れ落ちる純白の 羽根。とぼけた顔のひよこ。様々なもの。 それら全てが、百万の灯火となって、宴の終わる魔法の夜を照らしていた。[2001/04/16 23:28:05]open-air live "celestia-Lite"
powered by MiLion-Lite. Thanks 4 koming.
And, see U next, Neuro Dansers ....