終章
秋の黄昏のドラゴン
熾烈を極めた戦いが終わった。地面は裂け、あちこちでまだ火が燻っている。フェニックスも肩で大きく息をしている。そして――傷付いたノルド将軍がその先で、地面に刺した剣を支えに、じっとうずくまっていた。
いつの間にか回りでの戦闘も終わり、王国軍の面々も固唾を飲んで見守っていた。折しも陽が西に傾き、戦場を赤く染めあげている。
GM◆フェロウが感動判定をするには熱血カードを持っていなければいけません。持ってるのは‥‥サンポール?
サンポール◆じゃあさっきの台詞であげる。
GM◆これで条件は揃いました! では熱血な台詞をどうぞっ!
アルビウス◆「‥‥機械の体になったとて、人の心を忘れた訳ではないはず! 将軍っ!!」
GM◆熱血なセリフで+2、熱血レベルで+5、意志の強さで−7! ロールをどうぞ!
アルビウス◆‥‥1でクリティカル成功!
一同◆おお!
GM◆完全成功! ‥‥将軍は深いため息をつき「私が‥‥間違っていたというのか‥‥」と呟きます。
自分の拳を見つめ、剣がカランと音を立てて地面に転がります。
フェニックス◆「これからは帝国のためではなく、お前自身の正義のために、幸せのために、生きていくんだ!」
GM◆「私に何をしろというのだ‥‥? この体で‥‥」と火花が散る腕に目をやる。
フェニックス◆「必要なのは体ではない! “心”だ! 正義を愛する心なんだッ!!」
一同◆おおおーっ!! 遂にきたぁっ!
GM◆「しかし私は今まで‥‥」
アルビウス◆「将軍、過ちは正せばいい! 今までやってきたことを償えば! 閣下!!」
GM◆「くっ‥‥‥‥」将軍はじっと地面を見つめる。戦いの反動で唇から一筋血が流れています。
フェニックス◆「今まで沢山の命を奪ってきたかもしれないその腕で、これからは同じ数の人の命を救うことを思えばいいんだ!」
GM◆「そうか‥‥‥‥よく解った」将軍はふらりと立ち上がります。
「フッ‥‥。私はこの機械仕掛けの腕の代わりに、一番大切なものを忘れてしまっていたようだ‥‥」
フェニックス◆手を貸します!
GM◆遠くから見ていた兵士たちも歓声を上げます。
アルビウス◆やはりバックは夕陽でしょう(笑)。
GM◆その通り。丁度黄昏時だね。「すまぬな‥‥」将軍は寂しげに笑う。「私の腕は、もう痛みを感じないが」
フェニックス◆こっちも勝ちどきをあげるぜ!
一同◆おおお〜っ!
GM◆「‥‥私に生きろというのか‥‥」将軍は皮肉げに呟きます。
「それも‥‥一興かもしれんな」
サンポール◆おおー。かっこいい。
GM◆横のアルビウスの方を向く。
「お前が帝国を離れた訳が今にして分かった‥‥。今頃になって分かるとはな‥‥」
アルビウス◆「団長‥‥!」
GM◆その時! ノルド将軍は突然頭を抱えて苦しみだします!「ぐ、ぐあああぁぁぁ!!」 皆さん<観察>の汎用判定をどうぞ!
一同◆!?!?!?
GM◆成功した人は将軍の首筋に付けられた何かの装置の一部が点滅しているのが分かる。何か、頭の中に異常があるようだ! そしてパンドゥーラが息を飲む!
「センサー集中モード、X線透視による走査‥‥た、大変です! 将軍の脳内に異物が‥‥! 確率95%で爆弾‥‥強力な脳内爆弾ですっ!!」
一同◆な、なにぃっ!?
アルビウス◆「将軍!」
GM◆「うぅッ‥‥頭が‥‥割れそうだ‥‥ッ!」
マルチェル◆「貴方の剣術の腕なら何とかなります!」
アルビウス◆いやさすがにそれは何とかならんぞ。これは‥‥《熱血非常識》で何とかしてくれと思うのは私だけだろうかッ‥‥!?
サンポール◆じゃあ使うのじゃ!
マルチェル◆5レベルだから何がどうにでもなる!
GM◆使うの? それでは理由を考えてください。
サンポール◆理由か‥‥‥‥‥‥(考えつかない)。
フェニックス◆剣の先でつつくと止まるとか‥‥爆弾は見えてないんですか?
GM◆外に露出しているのはコードと装置の一部だけです。将軍は苦しげに呟く。
「くッ‥‥皇帝陛下にとっては‥‥所詮私も捨て駒の一つだったという訳かッ‥‥!!」
フェニックス◆「死ぬなーっ!」と叫んで‥‥ど、どうしよう??
GM◆「早く私から離れろッ!!」
アルビウス◆「し‥‥しかし!!」
フェニックス◆「あ‥‥あなたの事は絶対に忘れない!」
マルチェル◆でも3、2、1で切れる。
GM◆(がくっ!)何が? 録音テープ?
マルチェル◆熱血非常識ならこれでもう起こるはず。
GM◆(盛り下がるなあ)却下します。理由がないからね。それとも‥‥老師、考えつきますか(笑)?
サンポール◆いや‥‥‥‥‥‥‥‥ダメッス(笑)。
GM◆ダメッスか(笑)。じゃあさっきの打合せ通りにキースを生き返らせるのに使いますかね。
で、将軍の体じゅうに電流のスパークが広がっていきます。あきらかに異常ですね。生き残った機装化歩兵たちも主を失ってオロオロしていますね。
「‥‥楽しかったぞ、フェニックス! お前のような若者ともう少し早く知り合うことができればな‥‥」
フェニックス◆うう‥‥。
GM◆そしてモノブレードの片方をアルビウスに投げてよこす。
アルビウス◆「将軍! 有難く受け取ります!!」
GM◆「いつの日か‥‥双剣騎士団をお前の手で建て直してくれッ! あの団旗が‥‥再び風に翻る日を‥‥!!」
アルビウス◆「分かりました、将軍! 必ず‥‥!!」
GM◆「早く‥‥逃げろッ!」そして将軍は背後の浮遊戦艦の方へよろよろと歩いていきます。
アルビウス◆‥‥しばらく茫然としている。
GM◆そして最後にパンドゥーラの方を振り向くと‥‥
「マルコヴィッチ博士はまだ生きている‥‥望みを捨てないことだ‥‥。早くッ!!」
と言い残す。パンドゥーラはそれを聞いて「ええっ!!」と非常な衝撃を受けたようです。さて‥‥皆さんそろそろ逃げますか?
一同◆さすがに逃げます!
やがて、巨大な爆発が起こった。残った帝国軍の小型艇や兵士を巻き込んで、轟音と共に全てが炎に飲み込まれる。彼方の浮遊戦艦も駆動部に衝撃を受け、煙を上げながら墜落していった。
夕日の淡く照らす中、一行は茫然としたままその光景を見守った。やがて全てが光に包まれ、衝撃波が同心円状に広がっていく‥‥!
GM◆さて。実は強力な爆発なので余波がきてしまいます。各自1d10の熱血ダメージを受けて下さい。
アルビウス◆9! やはり将軍に未練があって逃げ切れなかったようだ(笑)。
GM◆死亡判定に行ってしまいますね。これはちょっと格好悪い。ここで防ぐ術があったはずですが?
マルチェル◆爆発が起こった後でもいいの? ではAタイプ予約シーン《精霊術法【護】》発動!「ビューティー・エンジェルズ・ゾーンッ!」
GM◆では演出をどうぞ。具体的にはどんなイメージなんでしょうか?
マルチェル◆皆さんの目の前で大地がいきなり盛り上がって全ての衝撃を防ぎます! 但し、目の前、何故か見えます! 透明なんです! で6人!
GM◆何とか持ちこたえました。見ると地面に艦首が突き刺さった浮遊戦艦はいつまでも煙を上げ、まるで墓標のように燻り続けています。残った帝国軍は皆無。で見ていた王国騎士団の人々もやってきて「おお! 敵ながら何とあっぱれな死に様!」と感心している。
ファビウスも空からやってきます。「うぅむ、見事な戦い振りじゃった。ワシも空から見ておったぞ」
アルビウス◆‥‥ちょっとブルーになっている。
フェニックス◆「‥‥何故、正義に目覚めた者が死なねばならぬッ!」と涙を流しています。
GM◆パンドゥーラも爆発の方を茫然と眺めています。そして老竜は目をぱちくりすると「おや? おぬし達、1人足りないようじゃが?」
サンポール◆そうじゃ! キースの死体は?
GM◆爆心地の方なんですが(笑)?
サンポール◆Aタイプ予約シーンの《熱血非常識》を使うが‥‥伏せていたから大丈夫だったとか。
マルチェル◆だから《ビューティー・エンジェルズ・ゾーン》があるから肉体が失われてることはない。全部防がれてますから。
GM◆????‥‥死体持ってたの?? (しばし議論)‥‥ああ、じゃあ、ここから遠く離れた場所でも一人分だけ、いきなり大地が伸びて護られるという訳だね。でさぁ、そういうの自分でおかしいとか格好悪いとか思わないかい?
アルビウス◆やはり円形状に障壁が出現するとかいうのが普通なのでは?
マルチェル◆(ぶつぶつ)だけど6という数字が出た以上なぜか防がれる‥‥
フェニックス◆数字にはこだわらないで。演出演出。
GM◆さて気を取り直して。賢者様、考えつきましたか?
サンポール◆‥‥実は地割れにちょっと落ちていて無事だったとか(笑)。
一同◆おお〜。
GM◆ノルド将軍は実は急所を全て外していたとかね。
アルビウス◆《まもる君》が護ってくれたとか。後は‥‥親の形見のペンダントがあったとか(笑)。
フェニックス◆必殺技を受けた瞬間に《まもる君》が暴走して全部防いでしまったとか。
GM◆それではそんなところで。GMから言わせてもらいますと将軍が実は手加減していたというのは是非使って頂きたいところです。
一同◆では、熱血非常識〜っ!
GM◆キース君。君は目を覚まします。見ると傷は急所を全て外しているね。しかも今いるのは今にも落ちそうな崖っぷち(笑)。
キース◆じゃあ、地割れから何とか脱出してとぼとぼと歩いてきます。
GM◆では逆光の中に君たちが手をかざすと! 歩いてくる人影が! さあみんなびっくりするんだ!
一同◆「おおおっ!? あ、あれは(笑)!?」
フェニックス◆「生きていたのかキース(笑)!!」
サンポール◆「良かった良かった〜!」
アルビウス◆「心配させやがって‥‥」
サンポール◆「お前が死ぬはずはないと思っておった!」
フェニックス◆「将軍は‥‥手加減をしていたのか‥‥」
キース◆「あの時将軍は‥‥将軍の目は何かを訴えていた‥‥」
一同◆おお〜。
GM◆では。まだ浮遊戦艦の残骸はメラメラと燃えています。戦場は静かで、もうすぐ陽が沈もうとしています。
アルビウス◆「もしかしたら将軍は、死に場所を求めていたのかもしれない‥‥」とぼそりと呟きます。
GM◆なるほど。やがてファビウスが君たちの側にやってくる。
「さてさて、しみったれた話は終わりにしようではないか。ワシらは勝ったんじゃ。勝利の凱旋といこう」
フェニックス◆勝ちどきだ! 「えい、えい、おぉー!」
サンポール◆「正義は勝つんじゃ(笑)!」
王国軍は王都へ凱旋した。街の人々が大歓声で迎えてくれる。善戦した王国騎士団も一番の功労者を立てて、先頭を一行に譲ってくれた。頭上には老竜、途中から王子も加わり、行列は一路王城を目指す。
GM◆フェニックス達にサイン貰った女の子たちもキャーキャー言ってます(笑)。で、しばらくすると城につきました。病気を押して出てきた王様も感激して迎えてくれる。「おお‥‥英雄達の帰還じゃ‥‥」
サンポール◆「王様、無理をしては駄目じゃ(笑)!」
GM◆「いや、これくらいは国を代表して余がやらねば‥‥う、ゴホゴホ」
フェニックス◆でも、ちょっと顔色が良くなっている、と(笑)。
GM◆心労が多かったんだね。で、中庭には王国の軍勢が勢揃いしてます。民衆たちもすぐ外で騒いでいますね。フェニックスの後ろにはフェロウの一行が。パンドゥーラもいつになく嬉しそうにしています。
で‥‥前に立った君が何か言うのを待ってますが? 最後にキメたいことがあればどうぞ!
フェニックス◆「‥‥ここにいる皆さんと、何よりも正義を愛する心を持つ多くの人々のお陰で、この国を護ることができました! これからも、正義の心を忘れずに、悪と戦っていきましょうッ!!」
GM◆それを聞くと、集まった人たちから割れんばかりの喝采が上がります。そこで剣を抜くと、バッと刀身に炎が宿る訳だね。
一同◆おおお〜っ!!
アルビウス◆居並ぶ騎士団も全員抜剣して、剣に夕日が反射する訳だな。
フェニックス◆夕日の中、例のカラスが帰ってきたりして(笑)。
GM◆ダンカン大臣がそれを見て「な、なんと! 烏が帰ってきた! 予言は本当だったのですかな(笑)!?」
烏は隅に控える老竜ファビウスの鼻先に止まってカァカァ鳴いてます。
サンポール◆「伝説の鳥じゃ! わしの予言が当たったのじゃ(笑)!」
歓声はいつまでも途切れることがなかった。沈みゆく夕陽の最後の光を反射して、掲げられた幾多の剣がきらめく。満足そうな表情で民達を見守るマーカス王と、その横に寄り添うフラヴィア王妃。凛々しく立つクローヴィス王子の横では、ダンカン大臣がそっと涙を拭っている。居並ぶ面々の若い騎士達の目にも、涙が光っていた。
しばらく鳴いていた烏がちょこんと振り向くと、老竜の大きな鼻づらの上で不思議そうに首を傾げる。ファビウスは烏と目が合うと片目をつむって目配せした。
やがて陽が沈み、薄闇のヴェールが世界を覆う。だがフェニックスの持つ魔法の剣《フレームファング》の刀身からは、いつまでも炎が立ち昇っていた。
正義の心がある限り、希望は消えることはない――この先、魔導帝国の侵略がどんな激しいものになろうとも。どんな運命が待ち構えていようとも。心のなかに燃え盛る、この炎のある限り。
人々を奮い立たせる希望のともしびのように、魔剣の放つ炎の輝きは、いつまでも、いつまでも、中庭を煌々と照らし続けていた。
★これで大団円じゃ! 物語はここで終わるが、いかがじゃったかな? ワシの活躍にワクワクしたじゃろう? ああああ、ワクワクしたのは主人公達の大活躍にか。こりゃすまんすまん。
この『熱血専用!』は、ドラマチックなプレイ、ヒロイックなプレイ、リプレイみたいなロールプレイ重視の熱いセッションの再現を目指した、愛と勇気と情熱の超熱血ハイパードラマチックRPGじゃ。う〜む長い宣伝文句じゃの(笑)。
どんなプレイが可能になるかは今まで御覧の通り。今回は実はGMを含め全員がこのゲームは初めて(!)じゃったからこのリプレイ中には至らない部分も目につくとは思うが、このゲームはお前さんにTRPGの新たな新地平を見せてくれること請合いじゃ。
お前さんも単調極まりないダイスの振り合いや不毛なルール論争、盛り下がるセコイ戦略や雰囲気ブチ壊しのルール面追求などが横行するダサダサなセッションが気になったら、ワシらの住んどる熱血世界の扉を開いてみてはどうじゃ?
何と言うかこう、終わった後に実に新鮮な、スカッと爽やかで朗らかな気分になれるぞい。
なに、なんでドラゴンがそんなこと知ってるのかじゃと? う、ううううるさい(笑)! 細かいことは気にするな! 竜族というのは古来より物知りと決まっておるんじゃ!
ワシらはこうした知的な遊戯を好むんでの。そのうちワシらのような竜が主人公のRPGも造って欲しいのう。はっはっはってカンジじゃ。
さて、強大な軍事力と恐るべき魔導科学を武器に侵略を続ける魔導帝国との戦いは長く続く。このケインドリック王国は辺境地方の反乱軍集結拠点の一つとして長く栄えた。
魔導皇帝その人が倒されて世界に真の平和が訪れるまでには非常に長い年月が掛かったが、その間も世界各地で様々な英雄達が大活躍し、様々な物語が生まれておる。
お前さん達だけの超熱血な英雄物語が生まれたら、是非ワシらにも教えてくれ! 反乱軍の志気を高めることにもなるからのう。
勿論、反乱軍に協力を考えている志に燃えた若者はいつでも大歓迎じゃ。ワシと共に戦ってくれる竜の同胞も募っておる。ワシ一匹ではちと寂しいからのう。ついでにワシのファンになってくれる若いギャルも募集中じゃ!
‥‥なに、ワシら竜族の体には炎が宿っているとよく言われるが、お前さん達人間にも炎は宿っておる。熱い魂の炎がな。ただ、お前さん達はそれに気がつい
ていないだけじゃよ。
りあるすぺ〜すの諸君、これでお別れじゃ。年寄りの戯言に付き合わせてしまって悪かったのう。ではまたどこかで会おう! さらばじゃ!
‥‥かくして、辺境のケインドリック王国を巡る魔導帝国との攻防の物語は幕を閉じる。
この後、老竜ファビウスは自分の同族の竜たちを探し出し、反乱軍の貴重な戦力となったという。
王国はその後も幾度となく帝国軍の侵略を退け、辺境地方におけるレジスタンス勢力の拠点の一つとして栄えた。
この国に協力した、“不死鳥”の仇名を持つ若き英雄のその後の行方、数々の冒険譚については、残念ながら伝説は語っていない。
また、彼と同行した幾人かの仲間達のそれぞれの目的が果たされたのかどうかも、伝わってはいない。
だが、魔導帝国の野望を打ち破った幾多の英雄達の中の一人として、彼らの物語は現在でも語り継がれている。
英雄の持つ熱い心の炎は、この先いつまでも伝えられていくだろう――死してなお灰から蘇る、伝説の不死鳥のように。
『熱血専用!』リプレイ
飛び翔る不死鳥
-The Soaring Phoenix-
――了――
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