Chapter.8::
NITE CITY BLUES
第8章::ナイト・シティ・ブルース
シーン・カード》
“ 月 ” ≒“摩耶蠍”
象徴》“幻影”一行はジャミング・ハウスを脱出すると、住宅街にある《結城外科医院》に向かった。気絶したままのジョンはぴくりとも動かない。
D.E.》では治せるそうなんで戻っておこう。
かすみ》ちゃんと<※スーパードクター>あるよ。でも<理工:メディック>がない。気の力で治すんだ(笑)。
サイファ》あーびっくりした。回りぐるぐる回って<運動:ラン>と組み合わせて治すのかと思った。
RL》ちびくろ○んぼみたいなやつだな。
サイファ》(ぼそっ)おおっと発禁だー。
かすみ》では、<スポーツ:格闘技><※治癒><※スーパードクター>で。
◆治癒は気の力で傷を治すチャクラの特殊技能で、スーパードクターは治療の点数を上乗せするタタラの特殊技能。これを格闘技でやるってことは‥‥拳法の構えから気を放出していきなり傷が回復するのかな?
ちょっとこれは変な組合せ方だけど、こんな風に自分だけの必殺技みたいなのが自由に造れるのも、N◎VAシステムの面白い所です。
なんかカッちゃんに前に聞いたらこれが華山龍星拳奥義・『スーパードクターK』だとか言ってたけど、相変わらず何を馬鹿なことばっかり言ってるんでしょうね〜(笑)。
D.E.》とりあえずあのエグゼクとどういう関係なのか聞いておかないとならん。治った所で俺が<メレー:アームズ>で活を入れよう。
RL》(えらそうに)死んでも知らないぞ? 傷害マトリクスのダメージはいくからな。もう1回制御判定だ。
D.E.》(GMに)ちっ、つまんねえ奴だ。
風人》とりあえず暴れるから縛っておかなくちゃ。
エリー》<メレー:エンタングル>するか。
D.E.》おいおい本当に斬れるぞ!
(↑エリーさんの武器は
自分の置かれた状況に気付くと、ロッカーボーイは脅されるままに話し始めた。
レ・トロン・ド・ルテチアのエグゼク、クリストファー・ヴァイスに頼まれるままにバンドはN◎VAにやってきたという。ついでに、自分たちのことを嗅ぎ回っていた妙なミュージシャンと家族を家ごと爆殺してやったそうだ(そのミュージシャンとは、D.E.の知り合いのカミュのことだった。実はカミュとその家族は逃げていて生きているのだが)。
そして依頼主であるクリストファーがお目付役としてグリフォンズに同行させたのがあの少女アルラウネだという。ジョンはアルラウネについては、詳しいことは全く知らなかった。
RL》今のは自白剤やオラオラ吐けなどのことを含めてのことだと思って下さい。サディスティックなシーンを描写する趣味はないので。
D.E.》別にー、そんないじめてる気ないしー。
かすみ》そこまでやってないぞ〜。
風人》肩をガタガターと揺するくらいはするけど。
RL》うそやー、あなた前の前のアクトの時道端で人の肩掴んでいきなりガーガーやってクグツを殺しかけたことあるくせに‥‥。エグゼクのやることじゃないー。
かすみ》軌道人なんだから常識ないんじゃん?
サイファ》いや常識はあるんだけど別の次元にあるってやつや(笑)。
D.E.》こいつはとどめをさしとくか。
風人》クリストファーにここに来るよう伝えさせるのは?
D.E.》別にこんな奴のためにあいつがここに来るとは思えん。
RL》
風人》どうせ連絡とれないから死んだことは分かるだろうなあ。ジョンはどうしようか? ここで殺すという手もあるし他の手もある。
エリー》(いきなり)ジョォォ〜ン。
サイファ》エリーさん、今のガイジンっぽいんやけど。
かすみ》この人は更生させてもう一回ミュージシャンとして復活してもらおう。ジョニーに改名してもらって。
D.E.》片腕をサイバーアームにするんだな(笑)。
かすみ》新たなロックバンド“サムライ”として復活するんだ!
◆左腕をスーパークロームのサイバーアームにした伝説のロッカーボーイ、ジョニー・シルヴァーハンドは、米国R・タルソリアンゲームズのTRPG『サイバーパンク2.0.2.0.』の有名キャラクター。日本語版はイエローサブマリンから出ています。
世界最初にして唯一の正統派サイバーパンクRPGであるあのゲームは、『シャドウラン』と並んでN◎VAにとっては偉大な先輩ってトコね。PCは死に易いし、アメリカンな部分に馴染めないとこも多いけど、サイバーパンク物が好きなら是非触れておくと参考になるわ。やっぱり合言葉は、
“――どんな時でもエッジまで踏み込むんだ。そいつが、サイバーパンクのやり方さ”でキマリ!
RL》で、どうしますか?
D.E.》俺はそこらへんは任せるよ。
エリー》私も任せる。
サイファ》だからエリーさん、企業のあんた方に判断が任されてるんだけど(笑)。
RL》決断するのは君(風人)だ。
一同》そうだエグゼク〜。
D.E.》ここは、アクトの最初でルーラーが『《VIVAはらいそ》』と言い間違えた『夜の《新宿インペリアル・パーク》』というのはどうだろう。
RL》許せん! (一同笑)
エリー》今は午後5時か。面倒くさいから明日でいいんじゃないですか?
風人》いや夜に仕掛けてくるという確率がある。
D.E.》ところでここは何処なの?
RL》結城外科医院。他に捕虜を捕らえて尋問できる場所ないよ。
D.E.》なんだてっきり霞の家かと思った。そうか、医療器具は関係ない治し方だったんだな。
かすみ》そうだー。こっちもできるぞ〜って冴香さんの前で見せつけてやったんだぞー。
D.E.》それ見て冴香さんは「けったいな治し方やね〜」とか言ってるわけだな。ちなみにここのDAKを使うのは冴香さんに危害が及ぶから俺としてはやめてほしい。
RL》では公衆DAK端末で上司を呼び出すんですね。
風人》でも顔合わせたくないな‥‥。
サイファ》そんなこと言ったってもうバレバレやんか! 今更って気もするんやけど(笑)。
風人》じゃメールを残してもらうか。でも明日にすると自分が攻撃受ける確率が高い。
エリー》それは何とか自分で切り抜けてくれ。
サイファ》はーはっはっは!
RL》(声がでかい)だって朝一番に攻撃仕掛けるんだったら向こうがやってくる余地ないじゃん? 今5人いるんだから攻撃受けるなら5人一緒だよ。
サイファ》部長わいが守ってやるよ。かっこウソ(笑)。
エリー》早朝で、クリストファーのよく行く研究所にしよう。
D.E.》研究所に朝5時? 相手の陣営のセキュリティーがあるところでドンパチするのか?
サイファ》やっぱり《新宿インペリアル・パーク》朝5時にするのが一番では?
風人》いいですね、いいですね?
RL》だから確認とる必要ないんだよ。あんたエグゼクなんだからもっと傍若無人にやりなよ。
風人》いや、そうエグゼクじゃないんだあんまり。
RL》にしては普段の行動があまりにも‥‥。じゃ新宿インペリアルパークに朝五時に呼び出したということで。
エリー》木の上から近づくか。
サイファ》アヤしい‥‥。
RL》じゃあ広場みたいなとこに呼び出したことにしましょう。
深夜まで時間を潰し、拘束したジョンを乗せると、一行は車に分乗して住宅街を後にした。
N◎VA南東部のN◎VAアサクサは、かつての東京の一部――特に浅草を再現した区域だ。日本情緒を好む外国人や昔を懐かしがる日本人のための観光スポットとして、開発には多くの企業が参加している。
有名な歓楽街アンモニア・アヴェニューやトーキョー・タワー、ショッピング・モールのウェンズデイ・マーケットに、本物のせんべいで有名な浅草屋、寺社エリアの浅草寺に墨田川まで流れ、正に浅草そのものだ。
《新宿インペリアル・パーク》は千早俊之記念美術館や動物園などの文化施設が多く、災厄を生き延びた本物のパンダまでいる。開門は朝9時だが、別にそれより早く入っても咎めはない場所だった‥‥この街には数少ない、本物の自然を味わいたい人間は多いのだ。深夜となった今でも、アヴェニューから人が消えることはなかった。店は一晩じゅう開いているし、歓楽街ではけばけばしいネオンのホロサインが客を招いている。
上空にはマリオネットの“天狗”ヘリと宣伝用飛行船がゆっくりと飛んでいた――今夜のホットなニュースが、大型ディスプレイに映し出されている。街頭のホロの中では千早の新製品のガンが光っていた。立ち並ぶショップの中からはアマデウスの新曲が流れてくる。
通りには様々な種類の人間が溢れていた‥‥深夜まで飲んだくれたどこかの“さらりまん”。揃いのジャケットで“色”を纏ったギャング気取りのパンクたち。ピンク・ダイアモンズ製の液晶皮膚できらびやかなタトゥーを浮かび上がらせた女たち。最高級のブランドスーツに身を包んだエグゼクが歩けば、重そうなフェイト・コートを着込んだ目付きの険しい一団が回りを固める。
路地裏に寝そべる汚い人間たちはそれを興味なさそうに見つめている‥‥違法ドラッグで神経を焼き切った彼らの眼には、もう何も映らないのだ。
大通りではモホークの走り屋が改造済みのゴーストライダーイダーを唸らせ、サキ・ニチヤのスーパーチルドのファッションに身を固めたストリートガールが回りで群れている。
興味を示さずに歩き去る人間もいた。クロームの眼やチタンの腕を誇らしげに見せて歩く、危険な男女たち。
アンモニア・アヴェニューは光の洪水に包まれていた。どちらを見ても音と光のストリーム。目を転ずれば遠くにはビル街の輝きに、夜空を照らす様々な色のレーザー・ライト。街全体がぼうっと光っていた。空よりも、地上の方が明るくなっている‥‥そう、ここは超新星の街。災厄後の暗い世界に輝く、新たな日本の象徴なのだ。
まるで、科学の進歩が世界から夜を打ち払ったかのように見えた‥‥だが、そんなことはない。
世界から、人間の心から、闇は消えていない。むしろ、闇は深まった。ネオンの輝きが増せば、それだけ摩天楼の影は濃くなっているのだ――なぜなら今はニューロエイジなのだから。
東の空が僅かに白み、夜明けが近づいてきた。約束の時間だ。
一行は拘束したジョンを立たせ、まだ暗いインペリアル・パークでアークエンジェルを待った。
RL》では朝5時前、まだ吐く息が白い頃、広場に着いた‥‥ああ温帯だから白くはないか。一応12月だけど。
風人》吐く息白いか?
D.E.》(いちいちうるさいヤツだ)‥‥かわんないぞ。あんまり。
エリー》で、待ち惚け?
RL》彼らは10分前くらいにきます。
かすみ》おお、殊勝な心掛けだ。
風人》だろうな。4時半くらいに来て隠れてよう。
サイファ》何人かは話できないといけないぞ?
エリー》「待っていたよ明知君」「誰だ〜!」とか言ったりして。
かすみ》は〜はっはっは!
エリー》でも<忍び:隠密>もないし、待ってるか。
RL》じゃあ全員待ってるんですね。
かすみ》おう。堂々と待ってるぜ!
D.E.》ちなみに俺は御苑の方を見て後方も警戒しておくぞ。
RL》やがてリムジンがやってきます。クリストファーは傲然としてる。
D.E.》他に人は?
風人》いるわけないでしょ、午前5時に?
D.E.&サイファ》違う。乗ってる人だ。
RL》では<知覚:視覚>で8。成功? 秘書が乗ってますが戦闘系サイバーウェアは入ってません。
でクリストファーが「来たぞ。ジョンを渡せ」
エリー》(ボケている)ジョン連れてきたっけ?
RL》ちょっと待てそれじゃどういう取引なんだよ! 彼がここに来るメリット全然ないじゃないか!(←いちいちむきになって非常にうるさい)
サイファ》で‥‥マンちゃんと交換やないの?
エリー》そうだマンドリア(爆笑)。彼女はどこ?
RL》「さあな」彼も養女の行動をいちいちチェックしてるわけじゃない。
D.E.》俺はサイバーアイの赤外線を入れて向こうを警戒している。
RL》「こっちは情報の取引に来たんじゃない」
エリー》こっちは情報の取引なんだよな。
RL》「じゃ喋るつもりもない。義理もない。さっさと渡せ」
かすみ》なに〜。じゃ、や〜めた。
風人》ここで渡すべきか渡さぬべきか‥‥渡したほうがいいんだよな。
D.E.》一言呟かせてくれ。「あんたは敵か?」
RL》「敵だ」ニヤリ。「私はそう認識した」
サイファ》そりゃそうだわな‥‥。
D.E.》「では殺す」そうなる人間なんだよな俺は。
RL》という訳でアクセスカード配りましょう。
“アークエンジェル”はリムジンの側で尊大な口調でそう告げた。交渉決裂――だが一行にとっては半ば予期していたことではあった。彼を呼び寄せて決着をつけるためにも、このインペリアル・パークに赴いたのだから。
戦闘を予期した夢野部長は、しばらく迷っていたがジョンを拘束していた縄から手を放した。
その瞬間、“アークエンジェル”の手から閃光が飛び出した。まだ暗い公園広場を煌々と照らし、4本もの白色のレーザー光が放たれたのだ。一行が茫然と見守る一瞬で、レーザーはジョンの胸を貫いた。
「‥‥スラム・オンだゼ、アーク‥‥エンジェル‥‥。W、WHY‥‥」
ジャケットとデモンズ・スキンを易々と貫通し、ロッカーボーイの胸に4つの穴が穿たれる。薄い煙が立ち上り、ジョンは絶命した。
風人は身構えた。サディスティックな微笑を浮かべているあのアークエンジェルも自分と同じ元力使い‥‥光学 の“表” を操る“光の運び手” なのは分かっている。
だが‥‥彼はかなりのバサラ能力の使い手のようだ。同時に4本もの光の束を操作するとは!
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