第5章 フロム・ダスク・ティル・ドーン
“覚醒”により大森林が茂った上野と、秋葉原の電気街の間にある御徒町。ストリートの住民達が見物している先に、ガス-ウィリスの“ノーマッド”4WDトラックが壁に激突、横転していた。様々な積み荷が、路上に散乱している。積み木、ぬいぐるみ、玩具、装身具‥‥この中にデータソフトが隠されているというのだろうか?
[十六夜]> とりあえず [中]> 車はもう運転はできない程に? [GM]> 目茶苦茶になってます。よく見ると、『フォーチュン・プレイシングス』と会社名が書いてある。幸運‥‥シアワセだ。スーツ姿の人間は辺りにはいないようだね。 [神薙]> レンタカーでも持ってきて全部放り込んだ方が良かったか‥‥? でも量もありそうだな‥‥。 |
[ヴィッキー]> これは‥‥くじびきでランダムに(笑)。
[GM]> よく見ると、前に会ったオークの少年達がいるね。何か拾ってるよ。「ホイ、兄ちゃん達! まさか、拾いにきたんじゃないよね?」
牙を生やしたオークの少年が親しげに手を振ってきた。
前に上野のシャーマンの老婆の依頼で非居住地域のクリッターを退治に行った時――道案内をしてくれたのがあの二人だった。オークの少年、
メタヒューマンに人権が認められたとは言え、新日本帝国における差別意識は未だ根強い。この日本には大和民族しか住んでいないと思い込んでいる人間は多いのだ。
二年前に悠に拾われる前の記憶は、エルフの遥にはまだ一切戻っていないという。ストリート育ちの孤児ではあるが、二人は絶望することなく、懸命に生きていた。
[ヴィッキー]> 元の場所に返しなさいー!
[GM]> 「やあヴィッキーの姉ちゃん、見てくれよこれー。すごい珍しいミュージック・チップなんだぜー」とか言ってます。
ティル・タンジェルからやってきたエルフのハープ弾き、ダークヴァインのライブのチップ、日本の“メサイア・メーカー”というバンドの新曲、後は“ダーウィンズ・バスターズ”という伝説のメタルバンド――オークやトロール以外が聞くと煩いだけらしいゴブリン・ロックのチップを持ってるね。
[ヴィッキー]> ぐにゃっと曲げて、代わりに私のをあげる。 [一同]> ヒ、ヒドい(笑)! |
[GM]> なにー! では筋力で対抗テストだ。オークは概して人間より筋力が高い。君は5、オークの少年は6。2個成功だから‥‥こっちが高い。
[ヴィッキー]> ダメか。「チッ」と言います。
[GM]> 「駄目だよー。すごくレアなチップなんだからさぁー」とか言ってる(笑)。
[神薙]> じゃあレアの他にコモンとかアンコモンとかもあるのか? [十六夜]> ‥‥フッ。 |
[GM]> ダークヴァインはホントにいます。(英語版サプリメント『SHADOWBEAT』を見せる)でもロッカー・ステータスが『オープナー』だから『セラー』のヴィッキーの方が上ですね。 [ヴィッキー]> オークのメタルの方は‥‥聞いたら感覚がおかしくなりそうね。 |
[神薙]> ちょっと待ったみんな。音楽はいいんだが仕事だ仕事。大掃除をしなければ。
[GM]> エルフの女の子の遥ちゃんの方は拾ったらしいクマのぬいぐるみを持ってますね。
[神薙]> 怪しい。だがぬいぐるみは山ほどあるに違いない。
[桐原]> しょうがない。スクワッター共を追い払おう。サムライだと分かったら逃げるだろう。
[GM]> ストリートの子供たちはまだ群れてるね。
[中]> でもあの中にもあるかも。手分けして探しましょう。
[GM]> では‥‥全員知力の成功テストをどうぞ。目標値はナントカ的にヒ・ミ・ツとしておこうじゃないか。
‥‥ヴィッキーが9の2個成功か。では、幾つか玩具の中に隠されたデータソフトが見つかります。しかし‥‥中が自分のチップジャックに差し込むか、ポケット・セクレタリーで調べると全部中はエンプティだ!
[桐原]> くそ‥‥。しかし横で見てるとすごい光景だろうな(笑)。
[GM]> エルフの遥君は顔を見合わせて「お姉ちゃんたち‥‥ぬいぐるみ好きなの?」と不思議そうにしてるよ。
[神薙]> 二人に聞く。「君達、ここに来たのは最初の方?」
[GM]> オークの悠君が答える。「いや、さっきだよ。そういえばスーツ野郎がいたって誰かが言ってたなぁ」
[神薙]> やっぱりそうか! 先を越された!
[GM]> 「それになんかの制服を来た連中もさっきまでいたなぁ。どっかの警備会社かな? 秋葉原の方に行っちゃったよ」
[中]> 制服と言ったけどどんな? [GM]> 「ああ、アメリカ人みたいだったね。胸に『KE』と書いてあったよ」さて、[礼儀作法/企業]のある人は目標値4で振ってみよう! [中]> カルマを使って‥‥3個成功! |
[GM]> では全部分かります。この世にKEのつく会社は一つ。八大企業の一つ、アレス・マクロテクノロジー重工業の有力部門、ナイト・エラント・セキュリティ・サービスだ。日本語にすると『漂泊騎士団』。率いてるのはロジャー・ソアリング・アウル、全米二位の警備会社。こういう場所に来るのは普通ありえないはずだ。
まったくの余談ですが、『パラダイス・フリートRPG』にも出てきます。
>>>>>[この第六世界で
――エルフ・デッカー メタリック・マウザー
>>>>>[ナイト・エラント? 何処かで聞いたような]<<<<<
――金華帝国 “半鳥のパイロット”楊飛燕
>>>>>[ベスティンスタイン公国の強襲揚陸部隊では? 後で大門課長に聞いてみます]<<<<<
――しきがみおえど保安部後方処理課 “シタッパー1”田中
[十六夜]> まずアレスか。フチは私たちだからあと6つ‥‥。アズテクとか?
[神薙]> いや、他にもフチは雇ってるかもな。こっちを囮にしてね。ランナーの方が派手に動くからな。まあでも、お嬢の個人的な知り合いなんだから可能性は低いが。
[GM]> いきなり随分ダークなこと考えてますね。ヴィッキーみたいにウェットな人はいないんですかね〜。残念っスね〜。
[神薙]> ええ、一応シャドウランナーですから。
[GM]> (‥‥その割に今日は随分軽いなァ〜‥‥)
[ヴィッキー]> アズテクは制服の人使うのかな。でなかったら裸の社員とか(笑)。 [GM]> それは気持ち悪いだけです。で、悠君たちも「そういうことなら、オレ達も探しておくよ。ああ、ヴィッキーの姉ちゃん、明日のギグ楽しみにしてるよ! じゃあね!」と二人で手を振ってる。 |
秋葉原へ急ぐ。治安は悪くなったが、この巨大なショッピング・モールの全景は20世紀とさして変わっていなかった。世界最高の技術力を有する日本のエレクトロニクス産業を讃えるネオンがまたたき、派手なトリデオスクリーンの中からサンタが新製品を紹介している。
フチ製の最新鋭サイバーデッキにミツハマの新型アルゴリズム、レンラクのデータ処理プログラム。裏通りに行けばは、非合法のブツもかなり手に入ることだろう。
広告に引き寄せられるように、通りには様々な人間――そして人間以外の存在が溢れていた。首筋やこめかみのデータジャックから誇らしげにコードを伸ばしたまま練り歩く、人間やエルフのデッカー達。新作のシムセンス・チップで偽りの世界に酔いしれるデッキヘッドの少年少女。派手な広告が頭上で光っている。
【安さ放電! クニサカ家電‥‥】
【貴方のデッキを頭脳とワイヤード――フチ・テクノワンダーズのクラニアル・サイバーデッキ‥‥】
>>>>>[20世紀末のリアルスペースの日本にも、NECやらFUJITSU、SONYとか、いろんな優れた会社があったんってね。僕らの第六世界のフチの元になったのは、その辺の企業なのかな?]<<<<< ――デッカー ネットボーイ >>>>>[ソニーならまだあるぜ。シムセンス・デッキの『ビューティフル・ドリーマーII』はソニー製だ。フチの『ドリームライナー』やトルーマン『パラディソ』の方が性能はいいけどな]<<<<< ――エルフ・デッカー メタリック・マウザー |
>>>>>[わしは息子にセガタリのゲームを買いたいんだが、ここじゃ売っとらんのかな?]<<<<<
――ナイトシティ市警察 マック巡査
[GM]> 後はIN◎UEコーポレーションの新作ゲームソフト『キング・オブ・ときめきハザード大戦’56』が明日のクリスマスに発売だとか、RI財団の新作シムセンス・ノベルだとかの宣伝がありますね。 [神薙]> この中で制服姿なら目立たないか? [GM]> では全員、知力で知覚テストをどうぞ。 |
>>>>>[IN◎UEコーポ? 中堅のエンターテイメント系の会社だっけ? 優秀なプログラマーが多くて、社長自らもソフト製作を手がけるとか]<<<<<
――デッカー ネットボーイ
>>>>>[マトリックスの噂じゃ、あの会社のソフトにはワイヤヘッドを洗脳するプログラムが組み込まれてるそうだ。ハ、ハ、ハ、シアワセみたいだな]<<<<<
――エルフ・デッカー メタリック・マウザー
>>>>>[芝浦の本社は実はダミーで、総本社は東京湾の何処かにあるって妙な噂があるよ。社長は声はデカいがボディはウェット、ブレインはニューロで、エッジの向こう側にいるはうぅ〜な人なんだってさ]<<<<<
――チャクラ “幻龍”明月寺霞
>>>>>[ベイビー、今のは新手のスラングかい?]<<<<<
――エルフ・デッカー メタリック・マウザー
[GM]> 6以上の人はみんな分かります。それらしい人はいなかったけど、髪の毛をメタリックに染めてるエルフのデッカーがいたね。桐原の友人のマウザー君ですね。
「ホイ(やあ)、キリー。どうしたんだ?」
[桐原]> それが実は‥‥。
[GM]> 「それより見てくれよ、
と横文字の多い意味不明な会話を(笑)。
[桐原]> 今用事があるんだ。この辺でスーツ姿とか制服姿の奴を見かけなかったか?
[GM]> 「ああ、でっかいバッジを付けた奴らを見かけたぞ。アメリカ系の四人組だったな。あっちの店に入ってった」
[桐原]> そうか。じゃあ!
[GM]> 「ヘイ、
[ヴィッキー]> かかわんない方がいいかもよ。
[GM]> おおー、後ろで言うんですか。ダークですねー。
「おおっと、ランの途中かい? せいぜい気をつけな」といって彼は笑うと行ってしまいます。では目標値6の[礼儀作法/ストリート]をどうぞ。
ジャンクショップの並ぶエレクトロ・モールを抜け、地下にあるそれらしいバーに着く。まだ夕方過ぎの店には、あまり人が入っていなかった。中がバーテンに尋ねると、アメリカ人の四人組がついさっきまでいたという。
何処かへテレコムで電話をかけた後、電気街を抜けて東の方へすぐ出ていったしまったと。一行はすぐに後を追った。もう日はすっかり沈んでいる。
[ヴィッキー]> 東にそのナイト何とかの支社でもあるの?
[GM]> 治安評価C相当の街が広がってるだけです。夜になればDか。もうそろそろ夜ですね。
と、電気街の雑踏の向こうにそれらしい四人組が歩いています。男が三人、女が一人。回りに警戒を払いつつ、足早に歩いている。
[十六夜]> ‥‥まだ、《敵探知》の30Mより遠い訳ね。
[神薙]> 尾行に一票。
[中]> 二手に別れるという手もありまするが?
[桐原]> 一人は後ろから、もう一人は屋根の上を飛びつつ尾行とか。
[GM]> ‥‥は、はぁ? JoJoっスか。全然分からなかった。さて。ほっとくと行っちゃうよ。
電気街の雑踏を後ろに、ストリートを進む。と、四人組の一人が他の人間に耳打ちをした。四人は足早に、人のいない暗い路地裏へと入っていく。入り組んだ路地裏は視界が悪く、唐突に彼らの姿は消えた。
[ヴィッキー]> 誘ってるのかな。それとも向こうの方が《敵探知》で距離が長かったとか(笑)?
[GM]> さあ? では追うんですね。
[十六夜]> ミラーシェードを掛けてヴァイパーを抜く。 [中]> ブローニング・マックスパワーを構えておきます。 [GM]> では狭い角を曲がった所で! ゴミ箱等で+4の遮蔽を取って、彼らは銃を抜いて待ち構えています! |
[十六夜]> なにっ! 勿論《敵探知》に反応?
[GM]> 残念。距離はまだ40mほどある。種を明かそう。
敵のメイジは
[十六夜]> ひ、ひどいわ‥‥!
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