Chapter:6 Darkness Falls

第6章 ダークネス・フォールズ


 オーヴァドライヴされた反射神経が、中や桐原達の体を反応させた。サイバー化した黒人の男が、加速された動きでベレッタ・モデル70の弾をばらまいてくる。 抑 音 器 (サウンド・サプレッサー)特有の静かな銃声。桐原が一瞬前までいた場所の壁に銃弾が撃ち込まれ、コンクリート片が派手に飛び散った。 炸 裂 弾 (エクスプローシヴ・アモ)だろうか?

 二人の横で神薙が動いた。生身のメイジなら考えられない反応速度だ。バースト可能の最強のヘビー・ピストル、サヴィレット・ガーディアンが、魔法使いらしき長髪の男の体を貫く。続いて遮蔽に飛び込んだ桐原が、十分に狙ってサイバー化した黒人に撃ち返した。常人なら即死する所だが、相手はまだ立っていた。桐原や中と同じく、 皮 膚 装 甲 (ダーマル・プレーティング)でも埋め込んでいるようだ。
 ブルネットの女性が撃ってきた。サムライではないようだが、速い。スマートゴーグル接続のアレス・クルセイダー・マシンピストルが火を吹いた。神薙が撃ち抜かれ、軽くのけぞる。
 中がゲル弾装填のブローニング・マックスパワーでメイジらしき男を撃った。相手は腕を振り、何かの呪文を唱えようとする。だが、負傷のせいで集中が鈍ったのだろうか、一瞬だけ空間が揺らめいただけだった。
 物陰に隠れていた眼鏡の男が小型のピストルで援護してきたが、地面を擦っただけだった。腕もよくないようだ。

 エルフの暗視能力――サイバーアイよりも優れた視覚を持つ十六夜が無表情のまま、ブルネットの女性を排気システム付きのアレス・ヴァイパーで狙ってっいた。ようやく、生身の人間が反応できる時間だ。今の一撃で相手は倒れ伏した。
 速くも二射目の神薙が今度は物陰の男を撃つが当たらない。桐原も目標を変更し、物陰の男に傷を負わせた。サイバー化した黒人がブルパップ仕様のモデル70でまた桐原に撃ち返してきたが、皮膚装甲に編み込まれた半金属繊維と対衝撃プラスチックのプレートが弾丸を食い止めた。

「やめろ‥‥撃つな。降伏する」
 反射神経を増強した人間同士の常として、戦いは数瞬で終わった。眼鏡をかけた男性は親指に銃――護身用の小さなアレス・ライトファイア70を掛け、両手を上げながらゆっくりと立ち上がった。ほとんど体も強化していなかったようだ。
「デクスター、やめろ。ここで死ぬことはない」
 そう言われて、サムライ並みに速かった黒人男性もしぶしぶ銃を捨てた。ベレッタが薄汚い路地裏に転がる。
「頼む、仲間を治療させてくれ」
 眼鏡の男性の額のジャック端子が、薄闇の中で鈍く輝いた。


>>>>>[スリリングな銃撃戦! サムライの出番だな。基本は簡単だ。自分の攻撃を命中させ、相手の攻撃を命中させないこと。スマートリンクで確実にヒットさせろ。反動も減らした方がいい。視界も大事だな。あとは遮蔽を取ることだ。魔法使い共にも気をつけろよ。
 一番大事なのは相手より速く動き、速く仕留めることだ! だから俺たちには、サイバーのエッジが必要なのさ。他にも射出武器や爆薬、接近戦闘もあるが、場合に応じてだな。第六世界じゃ、結局は接近戦より銃の方が強いがね]<<<<<

――ストリート・サムライ レイザーエッジ

Shadowrun 3rd

>>>>>[それでもあえて弓を使ったり、素手やいろんな格闘武器にこだわるフィジカル・アデプトもいるんでしょ? 第六世界のクリッターや精霊の中には、銃の効かない相手もいるっていうじゃない。
 舞い踊る刃には銃にはない美しさがあるわ。アタシはだから舞姫になったのよ。そういう気持ちって大事じゃないの?]<<<<<

――シュリーウェバの舞姫 ユリーヴァン

>>>>>[YEAH! 一振りの剣の中にブシの魂を込める‥‥これぞジャパニーズ・サムライ・スピリッツ! いつの時代のサムライにも、このクールでホットなタマシイこそが何よりダイジね!]<<<<<

――居合抜刀術使い 覚醒者チャーリー

While The Earth Sleeps

[神薙]> こっちも治療させてくれ。

[GM]> なんじゃどっちもかい(笑)。ではデッカーのジェフが話をしよう。
「我々はナイト・エラントのエグゼクセク・チームだ。急な任務でね」


>>>>>[正式にはエグゼクティヴ・セキュリティ・チーム。フィジカル・アデプト、メイジ、デッカー、サイバー化したスペシャリストが普通は3人、それにリーダーを加えてチームを組んだ個人警護の専門チームだ。普通はこんなビズには就かないだろう。7人揃っていれば、誰かが死神と会えたかも知れんな]<<<<<

――フリーのカブト “デス・ロード”アレックス


[神薙]> さっき、事故現場にいただろう?

[GM]> 「君たちと同じだよ」と彼は玩具を見せる。奇しくもアレス“ドラゴン”という輸送用の大型ヘリの模型ですね。
「今、会社と連絡をとった。メモリーチップが入っていたが偽物だったよ」

[中]> こっちが医療キットで応急手当しときましょう。

Ares Macrotechnology

[神薙]> じゃあお互い骨折り損かい! どうして個人セキュリティのチームがこんな仕事に?

[GM]> 「本物がどれか分からないのが痛かったな。たまたま近くにいてね。急な任務だったのさ」

[ヴィッキー]> 人数も足りなくてチームワークが乱れてたのね( 笑) 。

[神薙]> 現場でスーツ姿の人間を‥‥?

[GM]> 「何者かがいたらしいな‥‥。我々は見なかった。どの勢力の誰なのか、見当もつかんよ」

[桐原]> やはりそいつらか‥‥。

[GM]> ちなみに、黒人のデクスターはサムライ並みにサイバーウェアを埋め込んでる。治療を受けているブルネットのマリリンはアストラル知覚もできるフィジカル・アデプトでした。
 メイジのハリーは《 障 壁 》(バリアー)の限定型の、《 弾 丸 障 壁 》(ブレット・バリアー)《 呪 文 障 壁 》(スペル・バリアー)等の防御用呪文を色々揃えてる。君が話してるジェフはデッカーです。
「頭だけは撃たないでくれよ」と彼は言ってます。
「私のサイバーデッキはこの中に入ってるんでね」脳内に埋め込む最新型のクラニアル・サイバーデッキ(C2デッキ)ですね。

[中]> 新しいのはそんなに小さいのか‥‥。しかも速いと。

[十六夜]> それより神薙、呪文を使って欲しいんだけど。

[神薙]> ああ、《 真 実 看 破 》(アナライズ・トゥルース)か! いかん、ドレインしたらSまで行ってしまうぞ。フォース5で1個成功。

[GM]> こっちは0個成功。これからの会話は嘘を付いたか分かります。
 こっちのメイジのハリーは、アデプトに《安定化》(スタビライズ)という過剰ダメージを受けなくなる呪文を使ってるね。
 彼はちょっと反抗的だ。「俺はお前等とは違う。人を生かすための仕事をしてるんだ」とか神薙に言ってる。

[神薙]> ケッ。頭でっかちはこれだからな。

[十六夜]> 彼らは軽く無視して《敵探知》を。ちょっと連続戦闘がトラウマになってるわ。

[中]> 応急処置も5分の1/2と‥‥10分で終わり。

[GM]> 辺りには誰もいないようです。さて、色々と話をしてもデッカーのジェフは嘘はまったくついていません。
「あんたたちと会ったことは忘れるよ。別れようじゃないか。お互い骨折り損だっただけだからな」

[十六夜]> とりあえず御徒町に戻りましょう。

While The Earth Sleeps

 車とバイクで事故現場へ戻る。もうすっかり日は暮れ、東京スプロールの夜景が広がっていた。
 ようやくECPのレッカー車が到着し、横転したトラックを運ぼうとしている。近くには手持ち式のポータカム――フチVX2200やソニーHB500を構えたメディアのカメラマンや、サイバーの“眼”に 内蔵カメラ (スマートカム)を仕込んだサイバースヌープが取材に当たっている。
 近くのストリートの住人はまだ現場にたむろっていた。一行の知り合いの子供達の姿も見える。
 よく見ると、レッカー車を手伝っているのはヴィッキーの知り合いの私服警官だった。ECPも人手が足りないのだろうか?
 スキャンダルやスクープが得意なトリデオ放送局、DT1の女性レポーターがマイクを持って喋っていた。

【‥‥事故のせいで玩具が一部散乱、近隣の住民には一日早いクリスマス・プレゼントとなりました。貴方のニーズにマッチした放送を。DT1が御徒町から‥‥】


>>>>>[ECPは東京を守る企業警察。UCASにはローン・スターという優秀な企業警察があるな。もっとも連中も企業だ。わざとパトロールしない区域もあるし、汚職だって進行しとるだろうよ。それに何より人手が足りんだろう。世の中は、バカなギャングや犯罪者共で溢れ返っとるからな。わしにはその苦労はよく分かるよ‥‥]<<<<<

――ナイトシティ市警察 マック巡査


[中]> ドミノさんがいるんですか? (注:日本版のドラゴンマガジン記事や文庫『TOKYO EYE-SHOT』に登場する)

[GM]> (へいへい)いやどっちでも構わないんだが、いてほしいなら勝手に会っててくれ。

[神薙]> ここで《負傷治療》(ヒール)の呪文を使う。キリー、捜索を進めてくれ。

[十六夜]> 《敵探知》は今度はたった18m。という訳で切る。でもう一回掛けるわ(笑)。

[GM]> 近くにはまだオークの悠くんとエルフの遥ちゃんがいる。ついでによく見るとヴィッキーのコンタクト、ECP特別捜査課の宮ノ下 (みやのした)巡査までいるぞ。

Runners

[桐原]> 悠に聞いてみよう。「あれからどうだ?」

[GM]> 「いや〜、兄ちゃんたちが行った後はスーツ野郎はこなかったよ。兄ちゃんたちが最後だったみたいだね」

[桐原]> 俺たちが一番出遅れたのか‥‥!

[GM]> 「オレ達が来る前にもスーツ姿がけっこういたらしいからなぁ。‥‥ごめんね、力になれなくて」

[桐原]> いやいや、いいんだ。

[中]> こっちが出遅れたのも悪いですからね。

[GM]> さて。例のモヒカン頭の宮ノ下巡査はレッカー車を「オーライ、オーライ」とやってます。
「ん? おお、ヴィッキーじゃないか。こんな所で何やってるんだ?」

[ヴィッキー]> アタシも仕事なのよ。

[GM]> 「俺も仕事なんだ。たまんないよな、特別捜査課の腕利き 私 服 警 官 (プレインクロース・コップ)がこんな仕事だもんなぁ」

[ヴィッキー]> その様子じゃ大した情報は知らない様子ね。

[GM]> 「何が言いたいんだヴィッキー!? 俺はなぁ、この東京の法と治安を守る最後の砦、ECP特別捜査課渋谷方面担当の宮さんなんだぞ(笑)!」

[ヴィッキー]> あああ、立派な仕事ね。ゴメンなさい。

[GM]> 「そうだろうそうだろう。ああヴィッキー、年末はヘンな奴が多いから気をつけろよ。パレードは警戒が厳しいからな。車は使わん方がいいぞ。ECPもかなり人員を割いてる」

[中]> パレードでなんかありそうだな。と思った。

[ヴィッキー]> ところで、アヤしいヤツを見なかった?

[GM]> 「怪しい奴? お前さんたちだって十分怪しいぞ。そういう俺もこのアタマだけどな(モヒカンを指さす)。どうかしたのか? 少しぐらいなら力になってやるぞ」

[ヴィッキー]> そうね。容疑者ナンバー1はアナタね。え〜と、アナタだから教えるけど、ちょっと企業がらみの抗争に巻き込まれてるんだけど‥‥。でぬいぐるみの中に‥‥。

[GM]> なるほど。今からECPが車を運んでいく所だけど、もしぬいぐるみ類の中に何か入っていたら、連絡すると彼は約束してくれます。
「で、何かお礼くれよお礼。この日本じゃなぁ、歳末にはお歳暮を贈るのが通例なんだぜヴィッキー」

[十六夜]> ‥‥もう遅いわよ。

[GM]> 「明日がギグなんだろ? 〈シェイQダウン〉には入場料がタダになるスゴいチケットがあるっていうじゃないか? 俺はストリートの噂には詳しいからな」

[ヴィッキー]> じゃあメモ帳にババッて書いてちぎって渡します。「はい、これよ」

[GM]> 「うおぉ、これが噂のプラチナチケットかッ! (感動する)じゃあなヴィッキー、後で連絡するよ」

Fashion Slave

[ヴィッキー]> アナタも仕事ちゃんとやりなさ〜い。

[十六夜]> そろそろ、出羽さんに定時連絡しましょう。

[GM]> はい。『もしもし?』

[十六夜]> 「一通り捜査しましたが、現在それらしいものは見つかっていません。現場にスーツ姿の人間がいたそうです。ナイト・エラントの人間とは接触しましたが、向こうもダミーを掴まされていたようです」

[GM]> 『‥‥そう。また情報が入り次第連絡するわ』

[桐原]> さて。手元にあるのは偽物と空っぽのデータソフトか。どうしたもんか‥‥?

While The Earth Sleeps

 桐原はサイバーアイの視野の右下を見遣った。最近インストールしたばかりの網膜時計は現在20:05:28JST。いたずらに時間だけが過ぎていく。
 そのうち、十六夜の携帯電話が震えた。フチ日本の出羽弥生からだ。
『十六夜? たった今新しい情報が掴めたわ。神 明 院 (じんみょういん)新化学を知ってる?』


>>>>>[知ってる〜! 仙台本拠の中堅企業で、化学や魔法関係に強いんでしょ。RPGドラゴンのリプレイ第3部に出てきたも〜ん]<<<<<

――ハーフエルフの冒険者 エリーシャ・フィオレット

>>>>>[信用できん! 新日本帝国にはくそったれのビッグ8の内5つが集まってるんだ。他の企業の伸びる余地なんぞあるわけがないぜ!]<<<<<

――ストリート・サムライ レイザーエッジ

>>>>>[ハ・ハ・ハ、テイクイット・イージー、サム。細かいことは気にするなよ]<<<<<

――エルフ・デッカー メタリック・マウザー


[GM]> 『品川の倉庫街で何かあるらしいの。恐らくチップを手に入れた後、リガーと接触して高飛びするか‥‥中堅企業と思って油断したわね』

[十六夜]> 「分かりました。すぐ行きます」

Shadows Of Asia
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