第9章 ロスト・イン・トキオ
【貴方のボディをブースト‥‥フェニックス・バイオテクノロジーズ】
真っ赤なネオンの中で不死鳥が空しく飛んでいた。ストリートには靄が立ち込め、全ての輪郭をぼやけさせていた。プラスチック片が風に吹かれて舞い上がっている。ゴシック調の柱の上で、ガーゴイルが一行を睨んでいた。
データソフトは何処にあるのだろうか? 現場から誰が奪い、今何処にあるのか。クリスマス前夜に浮かれているこの大都会の陰で、誰が動いているのか。
本物はもうシアワセ本社のある大阪に運ばれたのではないのだろうか? そもそも、今夜の情報は全て攪乱工作で、人間の寿命を延ばす技術など最初から嘘なのではないだろうか? そんな考えさえ浮かんでくる。
誰もいない路地裏。大佐が教えてくれた場所を探すと、黒装束の死体が四体見つかった。鋭い刃物で見事に斬られている。手には短めの日本刀。懐には手裏剣。だが、反撃する間もなく全滅してしまったようだ。
[桐原]> 忍者‥‥? ヤマテツか? [GM]> よくは分かりませんがニンジャのようにも見えますね。一人は息があるようです。 [ヴィッキー]> 「どうしたの!」 |
[GM]> 「不覚を取るとは‥‥無念の極み‥‥ガクッ」と死んでしまいます。手には日本人形を持ってますね。死体の近くにはデータソフトの残骸が落ちてます。
[神薙]> こうまで壊されてると‥‥誰かが故意に壊して回ってるんじゃないのか?
[十六夜]> いえ、腹立ち紛れに壊しただけかも知れないわ。
>>>>>[ウィズ! ジャパニーズ・シノビ! ニンジャというと京都に総本社を持つヤマテツ・コーポレーション辺りが飼ってそうだな。
――エルフ・デッカー メタリック・マウザー
>>>>>[八大企業の一つだね。株主は
――デッカー ネットボーイ
>>>>>[フィジカル・アデプトの持つパワーも新たに多くのものが産み出されている。離れた敵に打撃を与え、知覚を増強し、気の鎧を纏い、足跡をつけずに魔法の浮遊で忍び寄り‥‥果ては神経系の秘孔を突くものまであるそうだ。日本帝国の暗殺者ニンジャは、そうした能力に長けていると聞く。おまけに得物はモノフィラメント・ソードやディコートTM付きの刀‥‥私の国のシノビより性が悪い相手だ]<<<<<
――外法師 峯月斎
[神薙]> 前にも“空牙四人衆”とかいうアヤしいアデプトのニンジャ部隊とは戦ったな‥‥まさか、逃がしてやったあの斬空とかいう奴に顔が似てるとかいうことは(笑)?
[GM]> 似てますが違う顔です。
[ヴィッキー]> アイツはこんなことで死んじゃいけないわ! イワノ・サルを継ぐべきオトコなのよ。
[中]> これもハズレですか。
[GM]> では、少し歩いた所で知覚テストをしてもらおう。
暗い路地裏を進む。鼠か何かの鳴き声に交じり、人間の呻き声が聞こえた。一行は声の方向に走った。
壊れた街灯の下に、セキュアテック・ロングコートを着た二人の男が倒れていた。一人は一刀の元に斬り伏せられており、血溜りができている。
壁を背もたれにしたもう一人は、まだ意識があった。
「だ‥‥誰だ‥‥」
震える手に、ロング・クリップのベレッタ・モデル200ST――バースト可能なライト・ピストルの銃口が光っている。だが、すぐに血まみれの彼の手から、銃は滑り落ちてしまった。そのまま、彼もぐったりと地面に倒れてしまう。
[中]> 大丈夫。ダメージ負ってるから当たらないでしょう。
[ヴィッキー]> 「フチよ〜」と答えます。
[十六夜]> それはダメ!
[神薙]> とりあえず
[GM]> 彼は息を吹き返す。「君たちは‥‥?」 [一同]> ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(答えに困る)。 [神薙]> 「‥‥影に生きる者たちだ」と答えておこう。 |
[十六夜]> ‥‥『隠密同心』みたいでなんかイヤね(笑)。
[桐原]> 回りに人形とか玩具は転がってないか?
[GM]> 見当たりません。彼はダークブルーのサングラスを掛けてる。その辺の俸給奴隷には見えないね。震える声で「‥‥どこの勢力の者だ?‥‥」と聞いてきますが。
[中]> どこでもない。強いて言えばな。
[GM]> 「‥‥そうか」と彼は立ち上がろうとするがよろめいて倒れてしまう。拍子に懐から無線機が落ちてしまいます。
[十六夜]> ないと思うけど、社員証とか何か持ってない?
[GM]> おっと、無線機には星型のマークがついてる。あの五芒星は‥‥もしかしてフチのマークじゃないかな?
[十六夜]> 「フチの社員なのですか?」
[GM]> しばらく黙ってるが「‥‥‥‥そうだ」
[神薙]> 出羽さんの名前を出せば信用してくれるかもしれないぞ。行けお嬢!
[十六夜]> 「我々もフチの依頼で動いている者なのですが。出羽弥生という方に問い合わせれば保証はしてくれるはずです」
[GM]> 「‥‥なに? 本当か?」
[十六夜]> 「咄嗟の嘘でそのような名が出てくるとも思えませんが。貴方に嘘をついても致し方ありません」
[GM]> 「‥‥考えてみればそれもそうだな」と言って彼は苦笑します。「私はフチ日本の者だ。連絡をさせてくれないか?」 [ヴィッキー]> 『連絡』というコトバにピクッと反応します(笑)。「レンラクの手先なの?」 |
中が医療キットを持ち出し、応急処置を行う。フチ日本の工作員らしい彼は
明かりの下で見ると、意外と整った顔立ちをしている。首筋には新型のスキルワイヤ・プラスと直結したソフトリンク――各種のスキルソフトが同時に4つ使えるチップジャックのアップデート版だ――やデータ入出力速度の速い新式データジャックの端子が光っている。
コートの内側には、高性能の超小型エレクトロニクス機器を潜ませていた。ベルトの予備のクリップには、APDS弾と高性能炸裂弾が込められている。彼も一流のようだ。
[GM]> 「一応は味方という訳だな。‥‥そこで死んでいる男も何処かの同業者だろう」彼は近くに落ちていたSCKモデル100という日本製のSMGを拾います。
[神薙]> それほどサイバー化していながら、誰に殺られたんだ?
[GM]> 彼も例の黒装束の方で物音を聞いて近付こうとした所で、何者かに斬られたそうです。
「私もサイバーウェアの
東新宿のストリートには闇クリニックも多い。神薙が彼に肩を貸し、闇深い路地裏を警戒しながら進んだ。
彼も上からの指令で今夜の件で動き回り、一度は玩具のお絵かきソフトの中に隠されたデータチップを入手したという‥‥だが、やはり偽物だったそうだ。
遠くの大通りからは、クリスマス・ソングと鈴の音が微かに聞こえてくる。
[十六夜]> 《敵探知》を掛け直しましょう。今度は48m!
[桐原]> やっぱりヤツか‥‥。“陽炎”か?
[GM]> 「心当たりでもあるのか?」
[神薙]> 「一つだけな」前に会った時もかなり速かったからな。タチバナにはオレが肩を貸そう。キリー、サムライはいざという時自由に動けた方がいいからな。
[GM]> 彼は魅力が4だ。平均的な工作員よりも男前ですね。出羽さんの上司とは違う系統の命令で動いていたようだ。でもフチ日本だから一応は味方という事になるけど。
「すまんな‥‥君たちも今夜は大分苦労してるようだね」
[神薙]> ああ。幾つも偽物を掴まされたからな。
[桐原]> この東京じゅうを走り回ったよ。
[GM]> 「世間はクリスマスに浮かれてるというのに、お互い大変だな‥‥。こっちはあるかも分からないデータを巡って、オモチャの争奪戦だ」彼も苦笑しています。
[ヴィッキー]> それは言わないで〜! 因果な商売なのよ。
[神薙]> それよりヴィッキー‥‥ギグだろう? 明日‥‥というよりもう今日になってるんじゃないか?
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