四章
出会いは嵐の予感
九十九鏡の鋭い視覚にはその神社は奇異に映った‥‥神主がいう程昔に打ち捨てられたままなら、ここの建物自体もとうになくなっているはずだ。
人間の足跡と、鳥の足跡が地面についていた。鳥のものは恐らくカモメ程もある大きな種類のものだろう。ここには、何者かが足を踏み入れていたのだ。
鏡:これこれこういうのがありました、とみんなに言います。
向島教授:「なにー、もっと探せー!」とメガホンで叫びます。
鏡:なんなのよこの人は(笑)!
飛丸:‥‥きょ、教授ぅ‥‥(笑)。
GM:しかも考古学者なのに<探索>技能持ってないんだよな。
君たちが色々やってる間に、表からブロローッと音がします。
鏡:! さては“岐阜やの3845”の男だな。
GM:今度はフルフェイスを脱いでいますね。黒髪で‥‥長さは普通ですね。
向島教授:おお、バイクだ! 私も乗せてくれ!
飛丸:‥‥教授‥‥年甲斐もなく‥‥。
GM:隠れる風もなくずかずかと入ってきます。「なんだ? あんた達は」
向島教授:「旅行の続きです」
鏡:「通りすがりの旅行者です」ところでバイクで登ってきたの? オンロードだったらきつくない‥‥?
GM:そうだな。じゃあ‥‥麓に置いて歩いてきたのかもしれない。ごめん、そうしよう。
‥‥えー、一番おばかそうに見えるのは‥‥こいつだよな(笑)。(と向島教授を指さす)
向島教授:なにー! 私は教授だぞ!
GM:クリティカルだから関係ない‥‥と。妖術の[思考感知]がかかります。知力で抵抗して。(嬉しそうに)マイナス3だよ〜ん。ちなみに。威力3てこと。
●こういう直接攻撃系でない妖術は、能動防御ができない代わりに知力で抵抗できるんだ。妖術の威力レベルがペナルティとして加わるけどね。強い妖術は抵抗しにくいってことだな。しかしこのマスター、ほんとに楽しそうだよな‥‥(笑)。
GM:「なるほど、ここを調べにきた妖怪というわけか」とニヤッと笑います。
鏡:はははっ、ばれてしまってはしょうがない。
GM:そこの二人もか。
鏡:いや私はただの通りすがりで‥‥
GM:今確かに言ったじゃないか!
飛丸:そういうお前さんは誰なんだい? 処刑ライダーさんよ。いいバイク乗ってんじゃないか。
GM:「答える必要はない」
鏡:“岐阜やの3845”の男!
向島教授:帰ったら調べてやるぞ。
GM:「本物のナンバーだと思うか? ならばお前の戸籍は本物か?」
一応名前は名乗っておこう。
「八咫烏(やたがらす)と呼んでもらおう。それが私の名だ」
本体は、三本足の普通より一回り大きい烏だね。「お前たちが何者であるにせよ、私の邪魔はさせん」と、背中からバリバリと黒い羽を生やす。
飛丸:なに〜! パーシャル・ビースト(←クリスタニア)したぞ(笑)!
鏡:「道路の建設に反対してるんですか?」と聞いてみる。
GM:「そこまで知っているなら十分じゃないか。さあもう帰れ。お前たちにできることは何もない。あの裏切り者にもそう言っておけ!」
八咫烏と名乗ったライダーは背中の烏の羽を大きく羽ばたかせると、宙に舞い上がった。力強く黒い翼を動かし、彼の姿はあっという間に虚空に消えていった。
飛丸:(空に叫ぶ真似)“あの裏切り者”って、誰なんだぁぁっー!
向島教授:追いかけてくれ、飛松さん!(一同大爆笑!)
鏡:と、とびまつ‥‥
飛丸:きょ、教授‥‥、僕は、‥‥とびまるっス‥‥
鏡:なんかすごくお間抜けな感じだな。
飛丸:き、気が抜けた‥‥だあぁ、もう八咫烏は行っちゃいましたよ教授。ほら。‥‥はうぅ〜。
●八咫烏も消え、文献も見つからず、三人は来た道を降りて村に戻るけど‥‥
GM:神社の境内では、聞いたことのない男の声と、言い争ってる美鈴さんの声が聞こえる。珍しく感情を激している感じだね。「早く帰ってください!」
飛丸:地上げ屋かな。‥‥うそです。
鏡:分かった。記者ね?
GM:当たり。村上です。と、君たちの方に気付く。
向島教授:私も握手しよう。「こんにちわ〜」
GM:「ん、あんたは」
向島教授:「ん、旅の‥‥旅の教授です(笑)」
GM:「おおこれはこれは。お偉い先生に会えて光栄ですなぁ」とニヤニヤ笑っている。
飛丸:名刺出します。「ちわ〜っす。フジヤマ書房の者です」
GM:「ああ、出版社の方ですか。いやいやこれはご同業ですな」
向島教授:あなたの記事は読ませてもらいましたよ。
GM:「それはそれは、是非ご感想を聞きたいものですなぁ。それはそうと、あなた方からも説得して下さいよ。あの記事を見て来たんでしょう?
地図は載せなかったはずですが。いや実はこの村の秘密を探っているんですよ」
向島教授:「何ですか、それは?」と興味深げに聞く。
GM:「私が調べた所ですねえ、ここの玉静神社には奥の院があるそうなんですよ。それを観光スポットにすれば‥‥」
向島教授:今行ってきたばっかりですよ。
鏡&飛丸:(人差し指を当てて)シーッ。
GM:(声がでかい)それ言う? 言ったな? 人間としての特徴は?
向島教授:「けちんぼ」「誇大妄想」「グルメ」。
GM:ちっ、口を滑らせる特徴があるかと思ったら全然関係ねえや。喋らないでおくならいいよ。
向島教授:言いかけますけど、「うっ」とか言って止めます。
GM:「は、何かおっしゃりたいことでも?」
鏡:この人は自分をナポレオンだと信じているんですよ。
飛丸:だーっはっは、ガープスだ〜(笑)。
GM:「はははっ、これは面白い冗談を言うお嬢さんだ」
●正確には、向島教授の「誇大妄想」は−10CPで、「ひどい妄想:私はナポレオンである/機械はアイスクリームを垂らすとよく動く」−15CPとはちょっと違う。
自分は何か大いなる使命に選ばれた者であるとか、世界を征服すべき運命の人物だと信じているわけだね。
キャラクターに個性を与えるこうした特徴がはっきりルール化されてるのはいいんだけど、考えようによっては『GURPS』世界はかなりイヤな所だよな。
なんてったって「残忍」「サディスト」「放火魔」「虚言癖」「酒乱」「軽い妄想:リスは神からの使者だ/秘密結社が私を見張っている」その他諸々の特徴のあるヤツが世界じゅうにウヨウヨしてるんだから‥‥(笑)。
ちなみにオレも「相当な妄想:2011年12月24日に世界が変わる」「義務感:仲間とメキシコ人」とか、癖に「サイコロを一度にたくさんふる」「『はう〜』を聞くとみがまえる」「アステカのピラミッドが好き」とかがある。う〜、明らかにウケねらいだ。何とかしてくれ〜。
飛丸:それで、そちらさんはどこまで真実に近づいているのかな?
(↑←ちょっとXな物言い)
GM:「いや、もし本当だとしたら観光客が集まると思いませんか? ただでさえ隠された神社なのだから‥‥」
美鈴さんは「あれはだいぶ昔に廃棄された建物なんです」、「いやいやそれならとっくになくなってるはずです」なんて具合だね。
鏡:「世の中大変なんだなあ‥‥」と訳のわからないことを言う。
GM:神主さんも加わって大声で議論した後、「また来ますよ」と言って村上は帰ってしまう。
鏡:塩を撒いてあげよう。
飛丸:あの三流週刊誌めが。(←もう決めつけている)
鏡:そういうフジヤマ書房は何をやってるんですか?
飛丸:ウチの会社は、若者に夢と、勇気と、それから‥‥あとはファンタジー・センセーションを与えているんだ(笑)! 出してる雑誌はね、‥‥『月刊ドラグゥーン・マガジン』だから(笑)。
GM:てわけで、村をかき回して色々言った挙句行ってしまった訳です。
村にいる人たちは「村が繁栄するならいいけれど、あんな人が来るならもうごめん」みたいな感じだね。彼は取材する時の態度が悪いんだよ。
●三人は工事中の道路まで足を運んだ。造りかけの道路の脇にはトラックや資材が並び、人夫たちが一休みしていた。
鏡:壊れた地蔵とか、要石とか、そういうのを探します。
GM:知力判定は‥‥6が二つ出て成功? ホントかよ?目標値は16か‥‥。(←注:彼女は知力16の天才レベルなのだ!)
向島教授:さすが妖怪。スーパーパワーだ。
GM:見当たる所にはないね。働いてる人に聞くと、あったと言う。
鏡:「どこに捨てたんですか? 道路の脇とか?」
GM:「捨てたもなにも、アスファルトの中に埋めちまったよ。第一こっちにもあっちにもあったぞ? ところであんたたち一体誰なんだい?」
リーダー格の男が一行と話す。ここから先に行くと祟られるというもっぱらの噂で、この間もパワーショベルに乗ったリキという作業員がやられたと。彼の班でも二人、別の所でも何人か被害に遭ったと言うが‥‥!?
GM:「いやあ、あいつも死ななかったのが不思議なくらいだ」
鏡:パワーショベルはバランスが悪いからなあ。
向島教授:じゃあ、ここで待ってれば事件が起こる訳ですね。
飛丸:教授‥‥気が長いですね(笑)。
鏡:気が長いのか短いのかよく分かんない‥‥。
向島教授:精神分裂症の一歩手前なんですよ(笑)。
GM:またか〜! どうしてそう好きなの? しかもガープスには「精神分裂症」あるよ。キャラクターシート入れ替わり立ち替わりで二枚使うやつ。しかし妖怪で二重人格って‥‥。
●確かに、ガープスならそれも可能だ。めんどくさいけどね。コンプRPG誌上のルナル・サーガのリプレイ第三部にもそんなキャラがいたような気がしたけど‥‥途中で散ったんだっけ?
鏡:どんな妖怪なんだろうね。二口女とか。
向島教授:キレると走り出すんです。[超跳躍]で跳びはねて、走って(笑)。
GM:さて、どうする?
鏡:[透視]も30cmしか効かないからなあ‥‥。
GM:アスファルトの下は土だから駄目だね。回りのものと一緒に放り込んでしまったんだ。
向島教授:俺は工事が始まるまで待ちます。
GM:「いや本社の指示待ちで今困ってるんだ。いつ始まるかも分からないんだよ」
向島教授:なにー! じゃあ工事するふりをしてくれ。その間に犯人を見つけるから。
GM:「ごめんだぜー! あんたたちが自分でやってくれよ〜!」
向島教授:勝手にやっていいですか?
GM:「いいわけないだろう!」
向島教授:じゃあツルハシ持って歩いてます。
飛丸:韋駄天がツルハシ持ってピューッと‥‥。
GM:何も起こりませんねえ。
向島教授:「うー、こんな重いもの持ってられっか〜」と放り出します。
鏡:なんだかやっぱり変‥‥(笑)。
向島教授:叫びます。「幽霊早くでてこーい! カモーン!」
飛丸:(木霊する真似)「出てこーい‥‥出てこーい‥‥出てこーい」
GM:「そんな滅多なこと言うんじゃねえ!」と言われます。
美鈴の手紙にあった通り、最初は軽傷、次は重傷と来てるから、次は自分の番だとみんな思ってるわけ。
向島教授:次はゴー・トゥー・ヘルっスね。
飛丸:教授、過激ですね(笑)。
鏡:次はバラバラ死体‥‥。
飛丸:次は血液が抜かれてて‥‥。
GM:次は皮剥ぎとか。
飛丸:後は肝臓を抜かれてるとか。(←やっぱりXファイルな感じ)
●一行はしばらく沈黙したまま考える。
GM:(声がでかい)ちょっとまて思考モードなのか? これは長考モードに入ってるわけ?
鏡:とりあえず戻って村長の話を聞くか‥‥。
飛丸:(突然、人差し指を掲げるとゆっくりと円を描き出す)
一同:‥‥‥‥?
飛丸:長考モード‥‥これは彰●モード。
GM:(うるさい)ぐ、ぐおお! それはいやだ!
(以下しばらく危険なあの歌が合唱される)
●遂にヤッちまったこの危険なネタ! こんな事件も昔はあったよなぁ‥‥ゲーム業界各紙もそのネタで汚染されてたらしいし‥‥実際にTRPGの集まりが親族に問いただされた例もあったらしいけど、本当かな?
しかしリプレイで時事ネタは良くないよな。この話が電脳世界に復活した頃には風化してるんだし。オレが作者に文句を言ってやろう。
収穫もなく、三人は村に戻った。九尾飛丸は村の入口、自分の車を止めている辺りに、見慣れぬ車があるのに気付いた。高級そうな黒塗りのリムジンだ。
鏡:ナンバーを確認する。
向島教授:品川かな?
GM:またぁ? ‥‥千代田ナンバーってある? じゃあ‥‥“千代田この1348”だ。
鏡:オーロラ何とか‥‥オーロラプランニングの上役が来ていると見た。というわけで村長の家にお邪魔しよう。
GM:耳のいい人は?
(↑注:『ガープス』には「鋭敏聴覚」等の特徴、『妖魔夜行』には[指向性聴覚][超音波聴覚]などの妖力が設定されている。)
三人:普通です。
GM:じゃあ[望遠視力]で、庭に三人の男が見えます。
鏡:黒ずくめのスーツにグラサン?
GM:いや、黒いスーツを着た恰幅のいい男が二人に村長だ。何か話してる。
鏡:<読唇術>はないしな‥‥技能なし値もきっとないだろう。
GM:読唇の唇の字が違うだろ! (注:彼が言いたいのは“読心術”か?)
第一このゲーム<読唇(心?)術>ないよ。それを言うなら<嘘発見>。
●実際には<読唇術(技能なし値:視覚−10)>技能はある。それに相手の心を読むのと嘘を発見するのは違うはずだよな。それに、鏡さんなら「思考感知][感情感知]の妖力が100m先まで使えるはずだけど‥‥ま、いっか。
GM:さて、どうします? 近づくなら<隠密>‥‥いや<忍び>が必要ですが。
向島教授:神社に帰ります。
飛丸:僕たちは何もできませんし。
向島教授:帰ってトランプの続きやろうぜ〜。
飛丸:ギャズにしましょうよ。
鏡:(<忍び>に知力−5で挑戦)−2成功。
GM:ふーん。すごい値だな。じゃあ
「村長、工事の件はどうなったんですか」「早くしてくれないとこまるよ」というお約束通りの声が聞こえる。
村長さんは「もう少し待って下さい。助っ人も来たことですし、すぐにでも‥‥」
鏡:助っ人って、うちらなんやろかと思う。じゃあ終わったらカサカサカサッとこっちも逃げる。
GM:カサカサカサッと逃げました。神社に戻ると、二人がカードゲームをしています。
鏡:かくかくしかじか。来ていたのはオーロラプランニングの上役だった、と言います。
GM:一人はね。
鏡:‥‥?
GM:もう一人は国会議員だ! 千代田ナンバーで気付けよ! (←ホントにそうだろうか?)
向島教授:永田ナンバーじゃないの? ああ、千代田区永田町か。なんでリムジンなんか買うんだよ。シーマかセンチュリーじゃないの?
GM:リムジンじゃないの?
飛丸:日本車かも知れないぞ。
向島教授:貿易摩擦で買わなくちゃいけないのか。やっぱりゼネコンだ〜(笑)。
飛丸:さて。
GM:さてここで整理しましょう。今まで分かったことは?
鏡:ヤタガラスという人がいて工事に反対している。被害が続出しているらしい。でもヤタガラスがやったかどうかは不明。で村長は色々あって道路建設を誘致したわけ。国会議員の後押しがあったのかもしれないし、国会議員は後で土地を売ろうと思っているのかも知れない。という訳で国会議員は工事が遅くなって怒っている。
GM:で、君たちはこれからどうしようと思うわけ?
鏡:‥‥むう。
向島教授:‥‥行き詰まった。
鏡:自然保護の立場から環境テロに手を貸す?
向島教授:それより事件解決の方が先だ。でも闇の妖怪の方が気になるなあ。
GM:さて。結論が出なかった所で。国会議員たちは帰っていきました。と、リムジンの方で、「ギャーッ」という叫び声が聞こえてきます。
向島教授:走ります。
GM:走られて下さい。[高速走行]は「妖怪時のみ」の限定をしてないのでそのまま走って大丈夫です。
鏡:加速装置(笑)! (←009はだいぶ古いぞ)
GM:あなた(向島教授)は妖怪の姿に戻っても人間とあまり変わりませんね。格好が弥生人になるだけです。あの白い服と髪型の。では32倍速で走って下さい。
向島教授:白い服‥‥やだなあ、何かに似てるよ(笑)。
鏡:あの髪の紐を解くと何かに似てる(笑)。
(↑やっぱりそうなる時期だった)
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