五章
ダンス・ウィズ・レイヴン
向島教授は悲鳴が聞こえた方へと超絶的な速度で走った。九十九鏡もその視力で現場の様子を見据えた。
二人は烏の群れに襲われていた。リムジンに乗ろうとした所に、何十羽もの烏が殺到したのだ。
黒光りする羽毛が辺りに散り、烏たちのわめき声が木霊する。彼らはあたかも一体の生き物のように見えた――夕暮れの空に蠢く、不吉な、黒く巨大な塊に。
向島教授は背後に何者かの気配を感じて凍りついた。
「動くな。斬るぞ」
声の主はあの黒ずくめのライダー――八咫烏だった。
鏡&飛丸:おお! ヒッチコックの『鳥』だ!
向島教授:「君かい?」と後ろに聞いてみる。
GM:「その通り」と後ろの影は答える。
鏡:“岐阜やの3845”の男だな。
GM:「あいつらはああなって当然の男たちだ。あんたには特に恨みはないが、工事を止めてもらいたいだけだ」
鏡:近づいていい?
GM:言っとくけどガープスの1ターン1秒だからね。台詞言ってる間に近づけるとも言うし、逆に言えば戦闘が始まったらもうたどり着けないとも言える。
さて、烏たちにやられている二人はだんだん動きが鈍くなっている。
向島教授:おー、鳥創だ。
「トラックや工事現場の事故も、君のせいかい?」
GM:「その通り。さあ、はっきりと返答が聞きたい。帰らないというならこの場で斬る」
向島教授:「勿論帰る」と言う。でも神社に帰るんだよ。
飛丸:おー、さすが教授。論理で突破するとは‥‥ってホントか?(笑)
向島教授:説得できた? (←できるワケねーよ)
GM:いや全然。からかわれたのかと思うよ。
向島教授:<言いくるめ>。失敗。
GM:じゃあ「馬鹿にしてるのか〜!」と、後ろでばっと風を切る音がする。で、「う、何をする〜!」と叫ぶのが聞こえた。
向島教授:振り向きます。
GM:美鈴さんが人間の姿のまま、彼に飛びかかってるね。逆にやられてるけど。
後の二人も、ちょっとご都合っぽいけどあと2ターンしたら着いていいです。じゃあまず1ターン目。
向島教授:接近してないのか。じゃあ[風撃(かまいたち)]。幾つ投げるの? (とダイスを四つ持っている)
GM:三つだ三つー! 三つ振るの!
飛丸:教授‥‥投げてどうするんスか?
●遂に戦闘開始だぜ! 『GURPS』の戦闘ルールは細かく設定されてて、上級ルールを使えばヘックスを使った精密戦闘も再現できる。戦闘中の時間単位となるターンもわずか1秒! 『サイバーパンク2.0.2.0.』の3・3秒、『シャドウラン』の約3秒にも勝る速さだ! (まぁ、『ルーンクエスト』の1ストライク・ランクも1・2秒だけどな‥‥)
精度レベル16を目標値としたロールには成功。「切りダメージ(防護点を抜けたダメージが1.5倍)」「瞬間(1ターン集中しなくても妖術が使える)」に増強された、威力レベル8(ダメージ8D6)の[風撃]が鋭い音と共に八咫烏に襲いかかるぜ!
GM:(ころころ)相手はばっと翼を広げると、そこからバババッと毛針みたいのが飛び出した。それで少し減殺された感じ。でもダメージはいってます。二つ分。7なら‥‥防護点で止めた。
●しか〜し、妖術の中には精度レベルの半分が目標値で、剣や盾みたいに「止め」「受け」に使えるものもあるんだ! (例えば向島教授の[衝撃波]は「止め」だな。)
「止め」に成功すると相手の妖術はまったく効果を現さない。「受け」ると、威力レベル分だけ相手の妖術の威力が減る。「受け」た方の威力レベルが高いと、攻撃した方に逆に押し返されちゃうんだ。
今の場合は教授の[風撃]8レベルが八咫烏の[毛針]6レベルで2レベルまで減殺されたわけだね。
妖術がバシバシぶつかりあう派手なシチュエーション! 『ガープス・妖魔夜行』の戦闘はばりばり派手だぜ!
GM:八咫烏は背中から翼、手は鉤爪という格好に戻してるから。
鏡:ガギソンみたい‥‥。(←メガテンのOVAに出てくる悪魔の名前)
再び、向島教授はかまいたちを放った。八咫烏は軽捷な動きでそれをかわすと、まとわりつく美鈴を振り払った。小さな呻き声をもらすと、白蛇の妖怪は近くの地面に叩きつけられた。
そこへようやく、九十九鏡が駆けつけてきた。地上すれすれを飛行してきた九尾飛丸も合流する。
GM:次ターンです。我こそはと思う人はダイスを振って。‥‥1? じゃあこっちが速い。
●ルールブックには「1D6の目の一番高かった人から、時計回りに行動する」「基本移動力の一番高いキャラクターから順に行動する」など、行動順についていろんな方法が書いてある。
今回は、「GM/プレイヤー側で1D6し、高かったほうから」としてるんだな。なんか懐かしのD&D®を思い出すなぁ。で、八咫烏の[毛針](ダメージ6D−6)が、鏡さんに襲いかかるけど‥‥。
鏡:21点で「刺し(防護点を引いてから2倍)」? 16点の、32点‥‥追加HPがあと8しかない‥‥。
飛丸:羽根針か‥‥強いぞ!
向島教授:全部撃ったらハゲで焼き鳥だ! いえ〜い!
GM:うー、ひでー!
鏡:(PCターン)相手は地面の上? では[重力増加]行きま〜す。成功!
GM:威力レベルは?
鏡:10。
GM:じゅ、10? どうやって抵抗しろと‥‥
(↑注:抵抗は−10ペナルティ!)
鏡:当社比200%体重が重くなるらしいのよ。(注:威力レベル1毎に20%増し!) 体重3倍!
GM:一番痛いのは敏捷力−10だぁ‥‥。
鏡:これで回避はできないでしょう。
(↑注:敏捷力が減れば、正確には「移動力」「よけ」それに<敏捷力が基準の技能>のレベルが減少してしまう。)
向島教授:そこへ[風撃(かまいたち)]。成功。ダメージは‥‥14点。
一同:普通そんな目出るか(笑)? (←8D6の期待値は28)
GM:はい、次の人。
飛丸:いくぞぉ! 吸血破壊光線じゃっ(笑)! 命中! 威力レベルだけ振ればいいんだね? (ゴロゴロ)36点。
●パワフリャァ〜! 『アッサー・シーン』は週刊/季刊ジャンプに連載された漫画『BAS●ARD!!』に登場するDSの部下、鬼道三人衆の一人、吸血鬼のダイ・アモン伯爵の必殺技だっ!
『D&D』や『ウィザードリィ』等の影響を(一部だけ)モロに受けたやたら派手な呪文や必殺技の飛びかう戦闘シーン、破綻した登場人物の性格やストーリー、海外アーチストから取られた固有名詞その他諸々で知られるこの漫画は、TRPGファンの間では伝説と化した禁断のネタである‥‥って最近復活したみたいだな。オレはもう読んでないけど。
GM:今のは「瞬間」? なら妖術と別にもう一回行動できるよ。(向島教授に)ああ、あなたも[加速]があるなら最後にもう一回行動できる。
ああ、でも国会議員たちが見てるかも知れないよ。重くなるのはまあ分からないかも知れないけど。かまいたちも説明がつくかも知れない。でも首が飛んでいったら絶対説明がつかない。
鏡:眼鏡がキラッと光ると重くなるんだ。でも目から怪光線が出るのも言い訳がたたないと思う(笑)。
●[破壊光線]に追い打ちをかけて[加速]で向島教授の二回目の[風撃]。次は[牙]10レベルを持つ飛丸先生が本性を現し、飛びかかって噛み付きだ!
飛丸:首が飛んでいって噛み付く‥‥うぅ〜、格好悪いよぉ〜。<格闘>がない時は?
GM:えーと‥‥敏捷力−3でやって下さい。
鏡:<空手>なんかもある。でも空手で噛むっていうのもすごく気色悪いな(笑)。
飛丸:当たり。ダメージは「突き−2」‥‥2D−1の、牙レベル10を足して2D+9か。「切り」で17点。
GM:「刺し」でなくてよかった‥‥では次のターン。
八咫烏は「なんたること‥‥」といって地面に倒れ伏してハァハァ言ってる。もう傷だらけで羽根も折れてるね。
で物陰にいる美鈴に向かって「この裏切り者! 我らの使命を忘れたかっ!」と叫ぶ。で「何の事だかわかんない〜」みたいな返事が返ってくる。「一体なんの事?」「うううぅぅ〜」で気を失ってしまいます。
鏡:なんか裏がありそうだからとどめを刺すのはよそう、と思う。
向島教授:体を調べてみよう。
GM:ライダースーツです。免許証はあるがどうせ偽造。あなた方と同じ。はい。
向島教授:写真を見てみよう。変な顔かな(笑)。
操っていた人物が気を失い、烏の群れは夕陽の方角へと鳴きながら飛び去っていった。背中から翼を生やしたままの八咫烏を見られてはまずい。彼に上着を被せると、一番力のある九尾飛丸が森の茂みへと引きずっていった。
やがて国会議員たちが近づいてくる。烏の群れに精一杯で、幸い妖怪たちの能力には気付かなかったようだ。
GM:「おお、あなた方が助けて下さったのかね」
向島教授:「私たちが来たら烏は驚いて逃げましたよ」なんつって。
GM:「それはありがたい。一体どうしてあんなことになったのか」ぱんぱん。(服の埃を払う真似)
鏡:この土地は、呪われているんですよ〜。
飛丸:早々に、帰った方がいいんじゃないですか。
GM:「助けて貰ったのには礼を言うが、君たちがそんな非科学的なことを言うとは‥‥」
鏡:あんな烏たちに襲われるのが、普通だと思うのですか〜? あなたが開通させた道路で人死にが出たら、名前に傷がつきますよ〜。というわけで<言いくるめ>。−5成功。
GM:言っときますけど言いくるめられても時間が経てば気がつきますからね。
じゃあ「そうかもしれんの」とその場は引き下がるでしょう。で車に乗って行ってしまいます。
鏡:二度と来るなよ〜と塩を撒きます。
GM:近くでは美鈴さんが驚いたようにしてます。
向島教授:さっき言ってたことは何なんだい?
GM:「ほんとにわかんないんですけど〜」
鏡:あなたには昔の記憶があるのですか〜? と聞く。
飛丸:おお。『輪廻』ですか。(←ちょっとX−ファイル)
向島教授:もう覚醒して異能者になったんスね。(←ちょっとメガテン)
鏡:じゃあ美鈴さんに何か聞いてみてから[思考感知]して、嘘をついてないか調べる。成功。
GM:ふむふむ。本当に覚えていないようだ。
鏡:「使命とやらのことも本当に覚えてないようですよ〜」と倒れてる人間に言う。
●八咫烏は気絶したまま。鏡さんたちは御堂まで戻って、彼が回復するのを待った。やがて彼が気がつき、「うっ、ここは‥‥」と呟いた‥‥。
鏡:ふっ、ここは地獄の一丁目よ。
GM:「‥‥その方がなんぼか救いようがあるような気がするが‥‥」
鏡:かくかくしかじかで「彼女は本当に昔の記憶を失っているようなの」と言う。
GM:「そんなはずはない。俺が覚えているのに」
鏡:ないったらないの! ‥‥転生する時に18を出したとか(笑)。
GM:「第一ここに道路を通すなど正気の沙汰とは思えないぞ」
鏡:「通すと何かよくないことがあるの?」と一応聞く。注連縄(しめなわ)を付けた岩がなんか関係あるの?
GM:「ここまで来てしまった以上、さらに俺がこの怪我では奴を止めきれんかもしれない。仕方ない。あんたたちを信じて真実を話すしかなさそうだ」
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