DRAKE SPR-4受信機とDDSを使ったヘテロダイン発信器


 ドレークの通信型受信機SPR-4にDDS(Direct Digital Synthesizer)を利用したヘテロダイン発信器を製作しました。

DRAKE SPR-4と制作したゼネカバ用ヘテロダイン発信器

SPR-4は、0.5KHzから30MHzのバンドを任意のバンド500KHz幅を受信できるゼネラルカバレージの受信機です。ただし水晶は23バンドしか搭載できません。29バンド中23バンドが実装できます。手持ちのSPR-4は、標準で搭載されている20バンドに加え3個の水晶がオプションとして追加されていました。そこで、水晶の追加をしなくても自由に0.5KHzから30MHzのフルバンドを選択できるように外部の局部発信器を製作しました。マニュアルによると、受信周波数+11.09MHzの局発を注入するようになっています。

したがって、BCバンドから30MHzの短波バンドまでカバーするには、11.59MHzから40.59MHzまで0.5MHz単位の局部発信器が必要になります。
約10MHzから40MHzまでの500KHzステップで水晶発信器並に安定に動作させるには、PLL制御のVFOや、DDS(ダイレクト デジタル シンセサイザ)で対応できます。ここでは簡単に製作するためにDDSを採用することにしました。DDSを用いたVFO
では秋月電子のDDSキットを用いたのがポピュラーです。しかし秋月のDDSは、周波数の上限が、17MHz程度とSPR−4の局発をカバーできません。そこで、いくつかのDDSチップを調べた結果、アナログデバイス社のAD9851BPが発振周波数も高く、要求スペックを満たすのでこれを使うことにしました。このDDSは、米国の工作好きハムたちがDDS VFOとして紹介があるAD9850の上位コンパチ品(最高発振周波数が50MHzから90MHzにアップしています)です。アナログデバイス社の代理店に問い合わせたら、取り寄せ可能ということでしたので、即、数個まとめて注文しました。

注文後、1週間くらいして、米国から直接送られてきました。このDDSを制御するマイコンは、PICマイコン(PI16F84A)を使いました。最近はこの1チップマイコンを良く使います。プログラムが作りやすく、一個で用が足りるので非常に便利です。また、DDS VFOなどの製作記事(ホームページ)にも同マイコンが使われており参考にするには情報の不足を感じません。特にこの手の周波数発信器は、米国のQEX誌の7月号に紹介(W2BYがDDS VFOとして製作した記事。WEBでも検索できます。)があり、そのWEBにプログラムソースコードもありましたのでこれを参考にして作りました。このソースは、PARALLAX社のアセンブラ用にコーディングされていたので、秋月電子のアセンブラPA用に修正して行いました。
では、製作手順を紹介していきます。

まず回路図を示します。PI16F84Aで、AD9851BPをシリアルモードで制御します。周波数は、ロータリーエンコーダーで切り替えます。表示は、最もポピュラーな日立のLCDコントローラを用いた16×2の液晶表示モジュールを使っています。
AD9851BPは、0.65mmピッチのシュリンクSOP28ピンパッケージです。これくらい小さいと、プリント基板をつくるのも億劫なので、サンハヤトのIC変換基板を使いました。でも、この変換基板に半田づけするのも非常に細かな作業です。へたをすると
ICのピン間に半田のブリッジが出来てしまいます。

このような狭ピッチICの半田付けは、私は、以下のような方法で行なっています。

(1) 変換基板側のICのリードを接続するパターンに半田コーティングする
   ある程度、熱容量のある半田ごてを使います。0.6mmφ位の細い半田を
   少しだけ、半田を滴下付けします。その後、こての腹で、リード方向にスキャンしながら半田を伸ばします。
   すばやくスキャンしながら何度も繰り返します。パターン間にブリッジが出来ても、そこをスキャンすること
   でブリッジが取れます。大体均一に半田コーティングできたらOKです。デュアルインラインのICの場合は
   半田のコーティングを両サイド行ないます。

         サンハヤトの変換基板                      半田をコーティングした後
  

(2) 半田ブリッジによるパターン間ショートがないか、テスターでチェックします。
   もし、ショートしている部分があれば、再度、半田ごてでスキャンしながらブリッジを取り去ります。最初の
   半田が多く盛られていると、ブリッジが取れないかもしれません。そのときは、半田吸い取り線で、余分な
   半田を吸い取ります。
   そして、再度スキャンします。その後、アルコールで半田吸い取り線からにじみ出た汚いフラックスをふき
   取っておきます。
(3) 変換基板の半田コーティングしたところにフラックスを麺棒などで、塗布します。
   このフラックスを塗布することで、ICの半田付けが綺麗に仕上がります。
   逆にフラックスを塗らないでICを完全につけるのは不可能といってもいいでしょう。

 半田付けしたところにフラックスを塗布する

(4) ICを半田付けする
   まず、ICを変換基板に乗せてみます。端子とパターンのずれがないようにします。
   そして、まず端のピンを半田付けします。この時に、決して追加の半田を盛らないことです。パターン側に
   コーティングしている半田は先ほど塗布したフラックスが濡れを良くしてくれますので、ただ加熱するのみで
   OKです。対角の端子も同様に行ないます。次に、残りの端子を、半田ごての腹でスキャンするように半田
   付けしていきます。このときも、追加の半田盛りは要りません。もう片側のサイドも同様に行ないます。もし、
   端子間でブリッジが出来たら、こての先を端子間において、すばやく、IC側から、リードの方向にスキャンし
   て、ブリッジをとります。

 DDSチップを半田付けしたところ

(5) 最後に、テスターでオープン、ショートをチェックします。

多少、なれないと難しい部分がありますが、ワット数の小さな半田ごてでは役不足です。
熱容量に余裕のある半田ごてで、行なうのがコツです。

こうしてAD9851BPを半田付けした変換基板を通常の2.54mmピッチのユニバーサル基板にのせて、回路を組みました。
本回路は、アナログ、デジタル混載ですので、
特にアース線、電源線は、錫メッキ線できちんと太い目に配線します。また、IC側の電源、グランド間は、バイパスコンデンサを
必ず入れておきます。
AD9851BPの発振出力は、LCフィルタで高調波を除去します。Lはトロイダルコアに巻き線を施したものを製作しました。fcは
42MHzに設計しました。
国内では、秋月のDDSキットがポピュラーですが、アメリカではAD9850を使うのがポピュラーなようです。

組立が完成した発信器

プログラムをPICに書き込んで、基板に搭載した所です。
規定の周波数で発振しているか、無線機(KENWOOD TS−850)で受信してみました。周波数もばっちりです。
ケースに入れた所です。

最後に、SPR−4の局発信号を注入するために、SPR−4の第一ミクサに若干追加改造(引き出し線を出す)を施す必要があります。Q5の第2ゲートにバッファアンプを介して注入部を作ります。1.5D2Vで、信号線を引き出します。信号線の先をRCAピンプラグのメスにしておきます。あとは、同軸で局発とつなぎます。こSPR-4の追加部分の回路図はこちら

SPR4本体のPREMIXへ接続するための引き出し部

裏面にRCAピンジャックを取り付けて信号を注入します

本DDS局発を使う時は、SPR−4内蔵のXTAL発信器がないチャネルにあわせておきます。
これで、0.5MHZ〜30MHzまで、ゼネラルカバレージが可能となりました。バンドも、ロータリーエンコーダーを回して簡単にチェンジできます。今後、短波放送は徐々に少なくなっていくのでしょうけれど、当面は、海外の放送を楽しむことが出来そうです

コリンズの無線機の局発にもプログラムの書き換えで、対応できそうです。KWM2や75S3などのリグのWARCバンド
対応化、さらにゼネカバ化して短波放送受信が楽しめそうです。なお、今回作成したPICのオブジェクトを近々アップさせて
いただきます。まだ、若干BUGがあるので、これを修正してから掲載します


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