らいぶらりぃ
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佐渡裕20世紀の交響楽展

                             
●日 時2000年9月5日(火)19時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演佐渡裕指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:山下洋輔
●曲 目バーンスタイン/ミュージカル「キャンディード」序曲
ガーシュウィン/歌劇「ポギーとベス」
        ラプソディー・イン・ブルー
バーンスタイン/ミュージカル「ウェストサイド物語」より ”シンフォニック・ダンス”
(アンコール)
デュークエリントン/スウィングしなけりゃ意味がない

 友人からチケットを譲り受けて、久しぶりにシンフォニーホールの自主公演に出かけてきました。会場に着いて見ると、指揮が佐渡裕さんということで、”サドラー”なる女性の何とも多いこと…(^^;

 さて、この「20世紀の交響楽展」は、一昨年からシンフォニーホールで佐渡さんがシリーズとして取り組んできたもので、今回が最終回なんだそうです。(ちなみに、私が聴きに来たのは今回が初めて…^^;)その最終回に選ばれたのが、アメリカを代表する作曲家のガーシュウィンと、佐渡さんのお師匠にもあたるバーンスタイン。ジャズとクラシックとを融合したともよく言われるこのお2方の曲を、どう”熱演”してくれるかが楽しみです。

 しかも、その”熱演”のお相手が、ピアノの山下洋輔さんともなると、その期待はいやが上にもふくらみます。で、実際、「ラプソディー・イン・ブルー」の演奏ですが、それはそれはもう、この上もなくパワフルで迫力のある”熱演”です。山下さんと言うと、私が子供の頃にTVの「題名のない音楽会」に出演しているのを見て、その途方もないくらいに大胆でパワフルな演奏に唖然とし、とても感動した覚えがあるのですが、実際に、この目で見て、耳で、生で聴くともなると、それ以上の感動が湧いてきます。(山下さんの演奏を生で聴くのは初めてなんです…)最初の方でこそ、普通のピアノ・ソロといった感じではありますが、演奏が進むにつれて、徐々に”山下節”が表れてきて、その大胆なまでの音使いに驚かされます。そして、大きくは2つあるカデンツァの部分、ここが一番の聴かせどころですが、ここではもう、”山下節”が大爆発します。ピアノの鍵盤の隅から隅までを自由自在に指が動きまわり、音が次から次へと流れていき、そして、出ました、驚異の(?)拳打ち&肘打ち。(^^; こうした一見、乱暴そうな演奏でありながら、そこには緻密なまでに組み立てられた音楽が存在しているのです。どこか途方もないところへ行ってしまいそうなくらいに音楽を膨らませていったかと思うと、それでも、ちゃんと佐渡さんの指揮が加わり、オーケストラが入ってきて、音楽の流れを作り上げていくのです。これは、まさに名人芸。佐渡さんのパンチのある個性と、山下さんの自由奔放な個性とが互いにぶつかりあい、見事なまでに迫力のある一つの音楽を作り上げているのが分かります。そして、「ラプソディ・イン・ブルー」って、こんなにまでも興奮させられる音楽だったのだ、と改めて思い知らされるのでした。曲が終わった瞬間、会場がこれ以上もないくらいの大興奮に包まれていたのは言うまでもありません。アンコールのピアノソロの「スウィングしなけりゃ意味がない」でも、独特の”山下節”をたっぷりと聴かせてくれ、ジャズの本骨頂というものを味わうことができたと思います。

 ところで、このシリーズではオーケストラはずっと大フィルが務めてきているそうで、もちろん、今回もそうです。大フィルと言うと、私など、つい朝比奈隆大先生のイメージを抱いてしまって、佐渡さんが指揮をして大丈夫なんだろうか…と思っていたのですが(ごめんなさい)、そんな不安を吹き飛ばすほど、オケの方も燃えていました。1曲目の「キャンディード」から、最後の「ウェスト・サイド物語」まで、ずっとテンションは高く、かなりの気合の入った演奏でありました。特にパーカッションの活躍が素晴らしく、そのリズム感あふれる、パンチの効いた演奏は、朝比奈大先生指揮の時には滅多に聴けないのだろうな、などと思ってしまいます(扱う曲自体が違いますしね…^^;)。特に最後の「シンフォニックダンス」など、もうノリノリの演奏で実に素晴らしかったです。例のマンボのところでは、佐渡さんが客席の方を向いて「マンボ!」と叫べ!と指示してきて、お客さん達も「マンボ!」。会場中が熱気と興奮に包まれ、完全に1つになっていた瞬間だったと言えましょう。そういう、あまりにも素晴らしい演奏であったからか、ラストの部分に突入する直前のところ、一瞬の音がとぎれる所で、「ブラヴォー!」と叫んだ人が約1名。気持ちは分からないでもないけど、でも佐渡さんを見てれば、曲がまだ終わってないことは明らかなはず。そのたった一言の叫びにより、一気に会場の興奮がしらけたものになってしまったことは否めません。許せない、と思うのは私だでしょうか…

 佐渡さんご自身、この3年に渡るシリーズの最終回ということで、また、師匠のバーンスタインが亡くなってもうすぐ10年という時に、師匠の作品を取り上げるということで、かなりの気合が入っていたと思います。そのパワフルで、会場中を興奮の渦の中に引きずり込むような指揮さばきに、改めて感心した演奏会なのでした。