らいぶらりぃ
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神戸フィルハーモニック第41回定期演奏会

●日 時2000年11月4日(土)18時30分開演
●会 場神戸文化ホール・大ホール
●出 演朝比奈千足指揮神戸フィルハーモニック
●曲 目メンデルスゾーン/フィンガルの洞窟Op.26
ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲Op.56a
ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調Op.88
(アンコール)
ドヴォルザーク/スラヴ舞曲第1番

 神戸フィルの今回の定期は、いつものようなソリストを迎えてのコンチェルトがありません。ソリストがいないだけに、外からの刺激というものを受けることがないわけですから、その意味では損をしすることにもなりましょう。でも、その代わりに、大曲(?)である、ブラームスの変奏曲を持ってきています。これはつまり、今まで培ってきた力を内で見直し、その集大成をする、ということなのでしょうか。確かに、40回目の定期を終えた今、新しい節目を迎えているわけですから、そうした試みはある意味では正解かもしれません。さて、その成果はいかに…

 最初のメンデルスゾーンは、なかなかいい感じで演奏が進んでいきます。弦の響きもさらぁっとしていて、曲の雰囲気をうまく表現しています。管の音色が所々、気にはなるのですが、うん、なかなか素敵な演奏だと思います。

 そして、ブラームス。曲の演奏の前に、団員の木管メンバー5人によるクインテットで、この曲のテーマの原曲を演奏してくれます。選りすぐりのメンバーによる演奏は、息も合っていって、なかなかのものでした。そして、実際の演奏に。主題の部分は悪くないなと思うのです。でも、変奏の部分に入ると、何か、音楽が混沌とした感じになってしまいますね。1人1人(特に管楽器)の出している音も、やや集中力を欠くようで、それがばらばらとした印象を与えるのです。言うてみれば、楽譜にかじりついている状態。練習不足なのでしょうか… 音楽の作り方自体は決して悪くなく、いい方向で音楽ができていたかと思うのですが、それを組み立てる音自体が、完全にまとまりきっていない、そう感じます。惜しいことです…

 ドヴォルザークに入っても、そうしたことを感じます。特に1楽章、やや力任せ的に進めているような感じはします。もうちょっと丁寧にしてもいいのではないかしらん。2楽章も、各楽器がそれぞれ目立って活躍しますが、それらの音自体はなかなかいい音をしているのです。が、それらの音の”間”というものが、何か死んでしまっているような感じがします。結構、緊張感のある音が出ていながらも、それが次の楽器へと引き継がれていく途中の”間”で、その緊張感がなくなってしまい、音のラインがつながらないような感じがしてしまうのです。結構、いい音を出しているのに、残念だと思います。が、3楽章に入ると、ちょっと様子が変わります。この美しいワルツを弦がとても情感込めて歌っているのです。ん?と思っていると、その緊張感のようなものが、音楽全体をも支配していくようで、次第に団員のこの曲に対する集中力が高まってきていることが感じ取れるのです。ロマンティックな演奏に聴き入っていると、次に来るのが終楽章。トランペットのファンファーレが鳴り渡ります。このトランペットがなかなかにいい響きをしていて、曲全体の緊張感を高めていたように思います。(もっとも終楽章冒頭はちょっと緊張したみたいでしたけど…)そして、その緊張感がずっと持続していくこの楽章、団員の集中力も昂ぶってきて、かなり充実したクライマックスを迎えるのです。弦がうねり、管が鳴り響き、その充実さといったら、これまでにこのオケで聴いたことがないくらいのもの。ほぉ、やればできるんじゃないの、という感じですが、いやはや、大したものです。これくらいの実力を発揮できるようになったということは、喜ばしいことです。聴く側にしても、聴きにくるだけの甲斐があるってなもんです。

 でも、アンコールは、ちょっとまたのんべんだらりとした演奏に戻ってしまったみたいで、ちょっと興ざめでしたけどね…(^^;

 ところで、今回の定期は、これまでの定期と違い、事務局がその運営・マネジメントをしていなかったみたいですね。最後の指揮者の挨拶の中でも、今回は団員手作りの演奏会だったというようなことを言われていましたけれども、そうなのでしょう。チラシやチケット、プログラム等も、それまでとは全然違うものでしたし。これは、事務局(神戸市民文化振興財団)に予算がないがために為されたことなのでしょうね。予算がないことは厳しいことではありますが、逆にそれが、団員自身にとっても自分達の手で自分達の演奏会を、という、それまでの事務局サイドに全てお任せという他力本願的な思考とは違う、自らの意志による自立性をもたらした、のかもしれません。それが、ドヴォルザークの最後で聴かせてくれた、あの集中力のある演奏につながったのではないか、そう思えてならないのです。もし、そうだとしたならば、方向としては決して悪くない、状況的には厳しいものがあるのかもしれない中でも、むしろいい方へ向かってきていると言えましょう。これからの展開が楽しみになってきた、そう思える演奏会なのでした。