らいぶらりぃ
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America's New Year Concert〜Salute to Vienna

●日 時2001年1月1日(月)14時30分開演
●会 場Avery Fisher Hall
●出 演The Strauss Symphony of America
Conductor:Klaus Arp
Soprano:Eszter Sumegi
Tenor:Mehrzad Montazeri
Hungarian State Opera Ballet
●曲 目F.Suppe/Pique Dame Overture
J.Strauss,Jr./"Als flotter Geist" from "Gypsy Baron"
        "Wer uns getraut" from "Gypsy Baron"
        Viennese Bonbons Waltz
        Pizzicato Polka
        Fata Morgana, Polka-Mazurka
        Perpetuum Mobile
        "Klage der Heimat - Csardas" from "Die Fledermaus"
F.Suppe/Poet and Paeasant Overture
Josef Strauss/Music of the Spheres Waltz
        Plappermaulchen, Pola Schnell
F.Lehar/Gold and Silver Waltz
     "Liebe du Himmel auf Erden" from "Paganini"
     "Wer hat die Liebe uns ins Herz gesenkt?" from "Land of Smiles"
     "Dein ist mein ganzes Herz" from "Land of Smiles"
J.Strauss Jr./The Beatiful Blue Danube Waltz
J.Strauss.Sr./Radetzky March

 ”年末年始をNYのエンタテイメントで楽しもう!ツアー”の第3弾は、アメリカでのニューイヤーコンサートです。タイトルも、「Salute to Vienna」となっていて、明らかにあのウィーン・フィルのニューイヤーを意識しているかのようです。

 さて、会場は、昨日の「MET」のお隣にある「Avery Fisher Hall」。こちらもなかなか奇麗なホールですね。ニューヨーク・フィルが本拠としているそうですが、会場内にもニューヨーク・フィルの年間スケジュールのパンフが置いてあったりして、ニューヨーク・フィル一色、という感じもします。でも、今日の演奏会のオーケストラは、「The Strauss Symphony of America」。今回のために結成された(というか寄せ集められた?)オーケストラです。1つしかない狭い入り口を通って、いざ、会場の中に入ると、何とも素敵なホールじゃないですか。全体的に、やや縦に長いようで、音がすぅっと響いてきそうな感じがします。ステージには花飾りなどが施されていて、新年気分が盛り上がります。

 演奏の方はお馴染みのシュトラウス一家の作品がずらりと並んでいます。演奏自体は、特に取り立てるほどでもなく、ま、普通の演奏。(^^; でも、曲間に指揮者のArpさんがいろいろと、曲の解説などを話してくれるのが、いいですね。誰にでも親しみやすく聴けるように、ということなのでしょうか。実際、会場にはご家族連れで、という方も多いようで、ファミリー向けなのかな、という気もします。しかし、演奏をさらに盛り立てていたのは、ソロのお2人。ソプラノのSumegiさんは、すぅっとした美しい響きが印象的です。とっても素直な感じで響いてくるのですね。また、テノールのMontazeriさん、彼の声が実に凛々しいんです。客席の一番後ろにまで、かぁん!と鳴り響いてきそうなそのたくましい歌唱は実に印象的です。そんなお2人のデュオともなると、もう大変。お屠蘇気分も吹っ飛んでしまいそうなくらいに(って、アメリカにお屠蘇はないって。^^;)見事なもので、迫真のものなんです。「Gypsy Baron」にしても、「Land of Smile」にしても、完全にそれぞれのオペレッタの世界に完全に浸ってしまって、こんな演奏会の中で聴くのがもったいないくらいです。素晴らしいデュオでした。

 そして、もう1つ、演奏会を盛り立てていたのはバレエです。ハンガリーの国立オペラのバレエ団を呼んでいるのですね。レハールの「金と銀」とかでは、ちゃんとストーリー立った内容のバレエを見せてくれるから、なかなか楽しいです。ウィーンのニューイヤーでは、TVでしかこういうバレエは見れませんが、それも一緒に楽しめるというのは、素敵なことです。

 演奏を聴きながら思ったのですが、ウィーンのオーケストラって、この時期、何故か日本にたくさん来ていません? ウィーン・フィルのニューイヤーは確かに現地でちゃんと行われてはいますが、それ以外の、フォルクスオーパーとかは、確か、サントリーホールの辺りでニューイヤーをやっていたような… アメリカのニューヨークで、何故にウィーンのオケが来ないで、日本の東京でウィーンのオケが演奏をしているのか、そう考えると、結局、オケにとって日本の方が儲かるから、日本での公演を優先して、文化的には日本以上に成熟しているはずのアメリカとかは素通りしてしまう、ということになっているのでは、と勘ぐってしまうのです。演奏自体を聴いたら、確かにウィーン本場の人らが演奏しているサントリーホールで聴いた方がずっと素晴らしいのかもしれません。でも、今回のこの公演は、日本でのそれと違って、会場にいる人達皆が心から演奏を楽しんでいるのです。それがはっきりと伝わってくるのです。大晦日のカウントダウンで夜遅く(朝早く?)まで盛り上がって、一眠りした後、ゆっくりと起き出してきて、そして、ホールへ来て、友人達とカフェでも飲みながら、新年の挨拶をして、そして演奏を楽しみ、帰っていく…何か、そういうふうに演奏会が完全に生活の中に入り切っているような風景を垣間見たような気がするのです。日本では、まだまだこうはいかないでしょう。いくらいいオケを持ってきても、それをありがたく拝聴する、という感じで、心から楽しんでいる人ってどれくらいなのでしょうね。それに入場者自体も少ないですし(実際、2年前のサントリーホールはあまり、お客が入ってなかったし、その直後の同じオケの大阪公演はさらに少なかったという話を聴いたことがあります)、やはり、いくらニューイヤーと言うても日本ではまだ馴染みがないのでしょうか…

 などと、新年早々、日米の違いなどというつまらぬことを考えたりしながら、この素敵な演奏を聴いていたのでした。演奏は普通、と先に書きましたが、逆に、それが手作りの演奏会というような感じを出しており、アメリカのオリジナルのニューイヤーコンサートを作り出すんだ、みたいな感じで、素敵でした。最後は会場も一緒になっての、お馴染みのラデツキー。全員一緒になって、温かい拍手をしながら非常に和やかな雰囲気で演奏会は終わったのでした。

 3日間、ニューヨークの公演を存分に堪能させていただきました。もちろん、これがニューヨークの全てではありません。まだまだ、もっと見たい、聴きたいと思うものはたくさんあります。だから、機会があればまた来たい、と思うのでした…(^^;