らいぶらりぃ
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関西フィルハーモニー管弦楽団
ベートーヴェン交響曲・協奏曲チクルス第5回

●日 時2001年6月3日(日)15時開演
●会 場いずみホール
●出 演飯守泰次郎指揮関西フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:児玉桃
●曲 目ベートーヴェン/「レオノーレ第3番」序曲
        ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op.15
        交響曲第7番イ短調Op.92

 昨年から関西フィルが取り組んでいる、ベートーヴェン・チクルス。今回、何故、私が行ってきたかと言いますと、…ピアノの児玉桃さんが出られるから、それだけなのです。(おいおい…)久しぶりに聴く桃さんのピアノを楽しみに、出かけてきました。

 さて、私が前に桃さんのピアノを聴いたのはいつだったでしょう…? 手元の資料を見ると、1998年の4月のリサイタル(atイシハラホール)を聴いて以来、のようです。…随分と久しく聴いていませんでした。でも、その清楚な感じでいながら、芯のあるしっかりした演奏は、ずっと印象に残っていて、ぜひともまた聴きたい、そう思っていたのでした。そして、今回、その思いをようやくにかなえることができました。桃さんのピアノ… 何だか、前以上に1回りも2回りも3回りも大きくなられたような気がします。より一層、音に磨きがかかったというか、実が熟れてきたというか、そんな感じがするのです。特に、このベートーヴェンの1番はハ長調ということもあってか、何かとてもシンプルな感じにも聴こえてしまうと思うのです。でも、そのシンプルさを桃さんのピアノは、実に丁寧に、細やかに表現していくのです。1楽章でも、テーマは割と素朴なものですが、これに装飾音などがついてくるのを、1つ1つの音をとっても大事にしながら歌っているのがはっきりと分かります。丁寧でありながら、また、かつ実に伸びやかで素直な響きがするのも印象的です。それは、清純な乙女が舞っているかのような、純粋な美しさというものを出しています。そして、何よりもカデンツァの部分が素敵です。短い中に実に様々な表情を、ベートーヴェンは突っ込んでいるのですが、それらを桃さんのピアノは非常に的確に表現していくのです。喜びや悲しみ、ころころと曲の表情が変わるのを、その通りに、ご自分の心の表情として捉えているかのように、わざとらしくなく、ごく自然に歌っていくのです。何と素敵なカデンツアなんだろう、改めて思います。2楽章になると、曲は一段と優しい雰囲気に包まれます。桃さんのピアノも、深いタッチで、この印象的なメロディをしっとりと歌い上げていきます。ゆったりとしたテンポで、しみじみと歌い上げていくのを聴いているだけで、この上なく幸せな気分になってきます。3楽章もその軽快な感じをうまく表現しています。結構、力で押すような感じで弾く人も多いのではないかと思うのですが、桃さんのピアノは、しっかりしたタッチながらもふわぁっと音を浮かばせるような感じに響かせるのですね。それがとても上品な感じになり、この楽章の軽快さを引き立たせています。随所に出てくる技巧的な部分も難なくこなされ、ほんと、素敵な演奏でした。

 ところで、関フィルも久しぶりに聴いたのですが、オケの方は、ちょっと…と思ってしまいます。何だか、音が汚いですね。前に聴いた時って、こんなんだったかしらん、とちょっと耳を疑ってしまいます。もっと緻密にアンサンブルを作ることができるはずだと思うのですが、どうしたのでしょう… 特に、7番シンフォニーはもっともっと華麗に聴かせることもできるでしょうに、ちょっと重ったるい感じの演奏でした。特に、4楽章は、飯守さんの指揮がそうさせているのでしょうけれども、テンポもゆっくりめで、何か引きずるような感じ。ちょっと私の好みには合わないような気がします。何でも、今日の演奏はベーレンライター版というものを使用しているのだそうで、こういう演奏になるのがその版の指定によるものなのかどうかは分かりませんが、この4楽章だけは、私の好みには合いませんでした。でも、1楽章など、明らかにいつも聴くのとは違う部分もあったりして、ちょっと新たな発見をしたようで、嬉しかったりするのでした。

 何はともあれ、久しぶりの桃さんの演奏に十分満足できた演奏会でした。