らいぶらりぃ
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関西学生混声合唱連盟第32回定期演奏会

●日 時2001年6月5日(火)18時開演
●会 場フェスティバルホール
●出演&曲目 I.関西学院大学混声合唱団エゴラド
 木下牧子/混声合唱曲集「うたよ!」より
       もうすんだとすれば/おんがく/きこえてくる
 指揮:西山大智/ピアノ:上野順子
II.大阪大学混声合唱団
 J.Busto作品集  O sacrum convivium/O Magnum Mysterium
          Laudate pueri/Ave Maria
 指揮:梅田秀一
III.立命館大学混声合唱団メディックス
 信長貴富/混声合唱とピアノのための「新しい歌」より
       新しい歌/うたを うたう とき/一詩人の最後の歌
 指揮:渡辺淳仁/ピアノ:清水知子
IV.同志社学生混声合唱団C.C.D.
 V.Holmboe/Liber Canticorum
       Benedic Domino, Anima Mea
       Homnis Dies
       Benedicite Domino
 指揮:山内健司
V.関西大学混声合唱団ひびき
 木下牧子/混声合唱曲集「光と風をつれて」より
       いっしょに/秋のまんなかで/はじまり
 指揮:藤巻武/ピアノ:大平佳央理
VI.神戸大学混声合唱団アポロン
 鈴木輝昭/混声合唱とピアノのための「大地はまだ」より
       冬はあまりに…/五月の風は…
 指揮:小川貴充/ピアノ:西村早加
VII.合同演奏
 佐藤眞/混声合唱のための組曲「蔵王」
 指揮:浅井敬壹/ピアノ:藤澤篤子

 今年もまた、後輩達の演奏会に行ってきました。仕事の関係もあって、ホールの中に入ってちゃんと聴いたのは、3ステージ目のメディックスから。久しぶりに純粋な(?)合唱曲を聴いて、ちょっとほっとします。

 …と思うのも、ほんの一瞬。学生達の演奏は、正直なところ、私をちょっとがっかりとさせてくれます。いちいち書くのも何か、嫌なので、気になったところだけ、簡単に書きます。

 全体を通して、今回は外国曲が2曲と、ややバランスを欠く内容になっています。そんな中、C.C.Dが取り上げたホルンボーという作曲家は、デンマークの作曲家だとか。私としたことが、ちょっとチェックしていなかったので、これは、とっても興味深く聴くことができました。詩編を題材にしての曲ですが、いいですね、これ。私好みのフィンランドものとは違いますが、でも、北欧らしい叙情性というものがよく表れています。それを十分に表現するだけの演奏ができていたかどうかは別問題ですが、こういう曲を探してきて選ぶという、その意欲は買いたいと思います。やはり、アマチュアたるもの、こういう意欲的な選曲をしていただかないと。個人的には、アポロンにこそ、こういう曲を持ってきてほしかったと思うのですが、そういうことはあまり言わないでおきましょう…

 また、もう1つ、いいなと思ったのは、メディックスが取り上げていた信長さんの曲。信長さんって、まだお若い新進気鋭の作曲家ですよね。この曲は、いかにも信長さんらしい明るさや優しさに満ちた曲です。こういう素敵な曲をたくさん書かれている方の作品は、もっともっと多くの人に歌われるべきだと思うのです。そういう意味で、この曲を取り上げた選曲眼というものを誉めたいと思います。(ただし、それと演奏の内容とは別問題です…)

 肝心のアポロンはと言うと、これがちょっと… 私が聴いた中では、一番、声はよく出ていたと思うのです。でも、それだけで、曲としては、ややまとまりを欠く出来だったのではないでしょうか。鈴木さんのこの曲、どれほど難しい曲なのかはよく分かりませんが、日本語の曲であるならば、もっと歌い込みをしてステージに持ってくることができる曲のはず。そういう耳で聴くと、全然、内容的には物足りない、何をしたいのかが分からない演奏でした。毎年、思うことですが、いくら年度当初で、あまり練習ができていないからと言うて、もうちょっと歌い込んできてほしいと思うのですが、実際、どうなんでしょうね… つい、後輩なんで、厳しい耳で聴いてしまいます…

 メインの合同ステージは、浅井先生を迎えて、何と、「蔵王」。正直なところ、案内状が届いた時に、この曲目を見て、何やこれ、と思うてしまったのです。そりゃ、確かに佐藤眞さんのこの曲は名曲で、ずっと歌い継がれていくべき曲だとは思います。けれど、中学生や高校生も当然のように歌うようなこの曲を、改めて大学生が、しかも230人もの大人数でそろって歌うようなものなのかしら、と疑問に思ってしまうのです。歌ってはいけないということはないのですが、何を今さら、と思ってしまうのです。「幹部諸氏といろいろ相談しましたが、結局のところ自分が振れるものにしようと決め、もうおわかりのとおり「蔵王」しか振れない浅井がやっぱり「蔵王」を振ることになりました」と、プログラムの中で浅井先生は書いていらっしゃいますが、意地悪く読めば、何ら新しいものに取り組もうとしない極めて消極的な選曲である、と言われても仕方のないことではないでしょうか。でも、まぁ、浅井先生の「蔵王」は、なかなか定評があるようだから、さぞや素晴らしい「蔵王」なのであろうと、座って聴いていると… 別に何てことはない、ごく普通の「蔵王」なんです。確かに、大人数の迫力はあります。この人数のパワーで聴く「吹雪」は、なかなかすさまじいものでもあります。でも、ただそれだけで、むしろ、その大人数が逆にネックになって、繊細な表情付けとかができていないのではないかと思うのです。言葉の扱い方も、いまひとつ、伝わってこないようなものですし、たいしたことないじゃないか、と思ってしまいます。思うに、単独ステージのレベルでこそ、浅井先生にこの曲を振らせたら、きっと素敵な演奏をしてくれるのではないでしょうか。そういう意味でも、今回のは明らかに選曲ミスとも言えましょう。せっかく、6つの団が集まっての年に1度の演奏会なのだから、そういう大人数の特徴を十分に活かせるような曲をこそ、選んでいただきたいものです。そして、それこそが合唱音楽の発展と継承へとつながっていくのではないでしょうか。…ちょっと行きすぎの言葉がありましたら、すみませんでした。m(__)m

 1点、気になったのは、終曲の「早春」。何か、異様にアップテンポだったような気がするのです。せっかく、静寂の中から光に満ちた神々しい蔵王の山々が姿を表わしてくるかのような光景を描いたような曲なのに、変にテンポが速くて、何か、とてもあっさりとあっけなく終ってしまい、感動のクライマックスも何もなかったように思うのです。もうちょっとタメた演奏の方が個人的には好きだと思うのでした。

 アンコールは、これまた佐藤眞さんの名曲、「大地の歌」から「大地讃称」。何か、案の定という感じで、あまりにも安直な選曲という印象もします。何はともあれ、とっても懐かしい感じで終った演奏会なのでした。