らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 2001年6月30日(土)15時開演 |
●会 場 | 神戸学院大学メモリアルホール |
●出 演 | ソプラノ:吉田早夜華 |
ピアノ:外山彩 | |
●曲 目 | 中田喜直/たんぽぽ/サルビア |
小林秀雄/胡蝶花によせて | |
山田耕作/曼珠沙華 | |
團伊玖磨/紫陽花 | |
シューベルト/至福D.433 | |
ガニュメートD.544 | |
R.シュトラウス/万霊節Op.10-8 | |
私の心はただようOp.48-2 | |
ヴォルフ/春だ! | |
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より とうとう楽しい時が来た | |
歌劇「魔笛」より 喜びの時は去りぬ | |
ベルリーニ/歌劇「カプレッティ家とモンテッキ家」より おお幾たびか | |
ドニゼッティ/歌劇「シャモニーのリンダ」より この心の光 | |
團伊玖磨/歌劇「夕鶴」より 私の大事な与ひょう/さよなら |
久しぶりに吉田さんのリサイタルを聴いてきました。しばらく聴かないでいた間に、数々の賞を受賞されたり、お名前も変えられたり、いろいろとあったようですが、でも、その歌声は、以前と同様に、いや、それ以上に素敵なものになっていたように思います。彼女の持ち味って、とってもクリアに音を響かせながら、それでいてしっかりと言葉もしゃべって聞かせてくれる、というところにあると思うのです。それは、今回もはっきりと感じることができました。最初の方は、日本人作曲家の手による、”花”に関する曲を集めています。この日本語が、くっきりと聴いていて伝わってくるのは、さすがです。特に「曼珠沙華」など、しっとりとした情緒をたっぷりと出しながら、同時にそのもの哀しい言葉もちゃんとしゃべってくれるので、その哀しみがより一層、強く伝わってきます。日本語をしゃべるのって、結構、難しいでしょうし、実際、他の方の演奏を聞くと、案外と何を言うてるのか分からないというものが多いだけに、彼女の演奏はやはり、素敵だと思うのです。
と、日本歌曲で聴衆の心をぐっと捉えた後は、ドイツ歌曲です。ここでも、その明るくクリアな響きの中に、言葉をはっきりしゃべろうとしているのが見えて、なかなか素敵です。特に、その明朗な声で歌われるR.シュトラウスは、最高ですね。そして、後半のオペラ・アリアで、彼女の魅力はさらに発揮されてきます。そう、彼女にはオペラ・アリアこそが一番、似合っているという気もします。感情たっぷりに込めながら、台詞とかの言葉もちゃんとしゃべらないといけない、そして、その明朗な響きで、観客にもちゃんと聴かせることができる、そんなオペラ・アリアが彼女には一番、向いているのかもしれません。「フィガロ…」のスザンナや、「魔笛」のパミーナ等の役も、彼女にふさわしいようで、なかなかいい感じで歌っています。が、それよりもベルリーニやドニゼッティのイタリア・オペラの方がより一層、艶やかだったような気もします。何と言うか、以前に聴いた時は、まさに明るく光り輝くような感じだったのですが、色気と言うか、艶っぽさというものも身につけられてきたのですね。その辺の成長を垣間見たような気もします。
そして、最後は、もはや彼女の十八番となった、「夕鶴」のつう。さすがに歌いこなれていますね。感情たっぷりに、つうの寂しげな気持ちを切々と歌いあげていきます。これを作曲した團伊玖磨さんが、先日亡くなられたばかりということで、吉田さんも、何か、これまでの曲以上に強く思いを込めているようにも見えます。特に「さよなら」など、さよならと言うているその向こうに、パイプを加えた團さんの姿が見えるような感じさえします。まさに熱唱でありました。
後半の始まる前には、恒例のインタビューもありました。「練習は毎日、どれくらいなさるんですか?」「…練習はしません。(笑)」可愛らしいような人柄を垣間見るようで、どこかそのほんわかとした雰囲気(失礼…)が、あれだけの素敵な歌唱を引き出しているのかぁ、とますます感心してしまうのでした。今後のご活躍にも期待したいと思います。