らいぶらりぃ
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タリス・スコラーズ

●日 時2001年7月1日(日)18時開演
●会 場いたみホール
●出 演ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズ
 ソプラノ:デボラ・ロバーツ
      テッサ・ボナー
      ジャネット・コックスウェル
      サリー・ダンクリー
 アルト:キャロライン・トレバー
     パトリック・クライグ
 テノール:スティーヴン・ハロルド
     ジュリアン・ポッジャー
 バス:ドナルド・グレイグ
    フランシス・スティール
●曲 目パレストリーナ/教皇マルチェルスのミサ曲
クレメンス・ノン・パパ/マニフィカト
ジョスカン・デ・プレ/御身のしもべへのみ言葉を思い起こしたまえ
           御身のみ、奇跡をなす者
マンシクール/よりよき生活のうちに
ゴンベール/クレド

 タリス・スコラーズを聴きに行くのは、随分と久しぶりな感じがします。前に行ったのは、アルティでやっていた時でしたっけ…?

 さて、今回の私にとってのメインは、前半のパレストリーナです。教皇マルチェルスのミサを聴くのも随分と久しぶりですが、改めて聴いてみると、素敵な曲ですね。ポリフォニー音楽の危機を救ったという伝説があるというのも、頷けます。ミサ曲を聴くこと自体が久しぶりということもあるのかもしれませんが、やはり中心の「Credo」はいいですね。緩急の表情が豊かに彩られていて、祈りの部分では、ぐっとくるものがあります。タリス・スコラーズの皆さんも、相変わらずの美声を聴かせてくれていて、その美しさにぶるっとしてしまいます。中でも印象的なのは、カウンターのクライグさん。結構、目立って見えたのですが、隣のアルトのトレバーさんの声をも消してしまうくらいに、その豊かなアルト声を響かせていました。

 後半はデ・プレなどの小品が続きます。一番印象的なのは、ゴンベールの「Credo」です。8声の曲で、ミサ曲用ではなく、単独の曲として書かれたものらしいですが、なかなか素敵な曲です。各声部が緻密に絡みあい、そのポリフォニックな構成美を堪能することができます。こういう多声部の曲は、やはり、タリス・スコラーズの得意分野でもあるのでしょうね。毎回のように、何かしら、この手の曲を入れてくるというのは、さすがなものです。

 ところで、今回の公演は、いたみホールで行われたのですが、この天上の高いホールで、彼らの演奏がどのように聴こえるのかが、一番の興味でもありました。先日、クロノス・カルテットを聴いた時は、反響板もなかったせいか、いまひとつ音が飛んでこないようにも感じたのですが、今日のタリス・スコラーズは、ちゃんと反響板も降りており、なかなかすぅっと声が前に飛んできていたように思います。でも、声が割と直線的に飛んでくるという感じで、ふわっとホールの空間に漂って響いてくる、というのではなかったような気もするのです。このホールの残響というものがどれくらいのものなのかは知りませんが、かつて、シンフォニーホールなどで公演をした時のような、ホール内の空気が彼らの響きでびりびりと震えるのが、鼓膜にもはっきりと伝わってくる、ということはありませんでした。私など、どうも、かつてシンフォで聴いた、アレグリの「ミゼレーレ」なんかの印象が強くて、そういう期待をして、彼らの演奏を聴きに行くのですが、その意味では、今回の演奏、いまひとつ感動しきれなかった、という感じは否めません。やはり、タリス・スコラーズの演奏は、もっと響きのある会場で聴きたい、と思うのでした。