らいぶらりぃ
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ラブリーコンサート2001 オペラ「カルメン」ハイライト

                                                                                   
●日 時2001年8月18日(土)18時開演
●会 場神戸新聞松方ホール
●演 目ビゼー/歌劇「カルメン」より
●出 演カルメン:橋爪万里子
ドン・ホセ:松本薫平
ミカエラ:浅井順子
エスカミーリョ:雁木悟
フラスキータ:小西潤子
メルセデス:福島紀子
ダンカイロ:田中龍三
レメンダード:安川忠之
船曳圭一郎指揮大阪第一合唱団
ピアノ:小梶由美子
フルート:今給黎麻紀
パーカッション:奥野敏文
フラメンコ:藤田順子
劇団おもちゃ箱
オペラ案内人:ゆうきじゅん

 このラブリーコンサートというのは、主催が県のこども文化振興協会とかいうところで、意図としては、夏休み中の子供達にも多く見てもらおうというものがあったのでは、と思うのです。だから、日本人にはお馴染みの「カルメン」で、しかもそのハイライト版で、子供達にも分かりやすくして、楽しんでもらおうというわけなのでしょう。が、実際のところ、会場の中はおばちゃんばっかり。子供が大勢いるんだろうな、と思っていただけに、ちょっと意外でした。でも、そんなおばちゃん達の行儀がまた、悪いんですね、これが。ざわざわと何か、騒がしいし、ひどいと思ったのは、後半の3幕への前奏曲が始まったというのに、ぼそぼそと何やらしゃべっている輩がいたこと。あのフルートの美しい旋律が始まっているのですよ、それを全く無視して、しゃべっている、ほんと、てめえら黙りやがれ!と叫びたくなってしまいました。演奏中にも平気で立ち上がって動いているし(ま、これは自由席で、人が多かったために、空いている席を探しているのだということは分かるのですが)、妙に落ち着きのない会場でした。そんな意味から、演奏面以外の点では、ちょっと首を傾げてしまうような演奏会でした。

 と、いきなり文句を言うてしまいましたけど、さて、では演奏の方はどうだったのかと言いますと、これはなかなか素晴らしいものでした。何と言うても、カルメンの橋爪さん、彼女の魅力というものが大いに発揮されていたように思います。もともと声量の大きい方なのでしょうか、この小さめのホールには十分すぎるくらいに、そのふくよかな声が響き渡ります。朗々として他を圧倒するくらいのパワーを持ったその声は、まさに、つねに積極的に前へと突き進んでいこうとするカルメンの性格そのものにぴったりとしています。それに対するホセの松本さんも、若手というよりは、もう実力派と言えるのでしょうね。こちらもまた堂々とした歌唱で、橋爪さんに対抗しています。高音域で多少、音が割れるようなふうにも聴こえたのですが、それが却って、ホセの弱々しさみたいなものを表わしているようで、よかったと思います。

 その他の出演者も、よくもまぁ、これだけのメンバーを集めたなと思うくらいのベテランが揃っていますね。昨年のアーバンオペラでカルメンを演じた福島さんも今回はメルセデスで出ていらっしゃるし、先月の「ドン.ジョヴァンニ」にも出ていた小西さんや雁木さんも出ていらっしゃるし…とまぁ、豪勢なメンバーで、全体にもよくまとめられて、たっぷりと聴かせる演奏になっていたと思います。ただ、仕方のないことなのですが、今回の公演は分かりやすく、という主旨もあってか、日本語公演だったのですね。それが何か、妙に聴こえてしまったような気もするのです。メロディに無理矢理に日本語を乗せているからか、どうもはっきりと言葉も聞こえないし、また、言葉が違うから、変に間延びして聴こえてしまっていたように思うのです。…仕方のない話ですね。

 演奏で他に気になったのは、1つは合唱。大阪第一合唱団の演奏も何度か聴いたことがあるのですが、正直言うて、力で押すようなまとめ方をしているように思うのです。それいい時はいいのですが、悪い時はちょっと… 今回は、どっちかと言うと、ちょっと裏目に出てしまったような気がします。出番が少ないこともあったのでしょうが、どうも全体にハリがなく、やや散漫気味に聴こえてしまったのは、ちょっと残念でした。また、今回はピアノ(+フルート)という楽器編成だったのですが、このピアノがあまり…というふうに感じました。オーケストラの曲の全てのパートをピアノ1台で弾くのって難しいことは分かりますが、どうも… 歌の伴奏になっている部分はいいと思うのですが、そうでなくて、前奏曲とかの部分で、ちょっとボリュームが足りないと感じる部分があったり、逆にフルートとのかけ合いで、ちょっと出過ぎと感じる部分があったりして、アンサンブルの中で見ると、ちょっと難があったような気もしてしまいます。

 でも、全体にはコンパクトながらも、カルメンの魅力をうまく引き出していて、素敵な公演だったと思います。もっと多くの子供達にも聴いてもらいたかったものですね。