らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 2001年9月2日(日)14時開演 |
●会 場 | 神戸文化ホール・中ホール |
●出 演 | 宇野功芳指揮神戸市混声合唱団 |
ピアノ:宮下恵美/沢田真智子 | |
●曲 目 | モーツァルト/ミサブレヴィスK.259 |
大中恩/秋の女よ | |
池辺晋一郎/いつもの子守歌 | |
想い出の子守歌 | |
清瀬保二/蛇祭り行進 | |
新実徳英/ヒロシマにかける虹 | |
細川潤一/マロニエの木蔭 | |
黎錦光/夜来香 | |
服部良一/山のかなたに | |
古関裕而/三日月娘 | |
長崎の鐘 | |
高田三郎/心の四季 | |
(アンコール) | |
池辺晋一郎/風の子守歌 |
神戸市混声合唱団を宇野さんが指揮をするのは、3年ぶりなんだそうです。私は前回の時は聴いていませんので、今回は初めて。宇野さんの創る音楽がどのようなものか、とても楽しみに、行ってきました。プログラムは、4部に分かれていて、1部は、宇野さんのお好きなモーツァルト、2部は、いわゆる合唱作品の名曲の選集、3部は女声合唱による、なつメロ特集、4部はメインの高田三郎、という構成です。一番、印象的なのは、3部でしょうか。女声合唱で、昭和10年代から20年代にかけてのヒット曲を並べているのですが、これがまた、実にしっとりと歌い上げていて、むしろ、(私は原曲を聴いたことがないので、よくは分かりませんが)原曲よりもぐっと味わい深いものになっているのでは、というくらいなのです。特にpの部分の扱いが素敵ですね。息の音なんかを半分混ぜたりしながら、ひそひそっとした感じで歌う部分なんて、たまらないくらい色気のようなものも感じられて、聴きほれてしまいます。これが宇野さんの音楽かぁ、ということを思い知らされたような気がします。この3部はほんと、素晴らしかったようで、会場からも、いちいち曲ごとに拍手がわき起こっていました。高齢者の方には、ほんと、受けたんでしょうね。
4部のメインは、宇野さんの師匠でもあり、昨年亡くなられた高田三郎さんの代表作の1つ。私もずいぶんと久しぶりにこの曲を聴きましたが、宇野さんの指揮は、なかなか緻密にこの曲を組み上げています。ダイナミクスのつけ方など、大胆なまでにしていて、曲の表情がとっても豊かなのですね。曲ごとに変わる、その表情の変化が、曲全体を非常に彩り豊かなものにしていて、それはまさに、「心の四季」、さまざまな表情を見せてくれました。これが、宇野さんの音楽というものなのでしょう。聴く者に強く訴えかけてくる、表現力の豊かな音楽、いやぁ、いいものです。そして、その要求にきっちりと応えている団員の皆さんの力というものも、改めて思い知らされたような気もします。ただ単に奇麗に歌うだけというのでない、説得力のある合唱、これが見事に完成していたと言うていいでしょう。
このことは、もちろん、他の部でも同じです。最初のモーツァルトこそ、やや平板な感じにも聴こえなくもなかったのですが、でも、これは逆に、あまりコテコテにするのでなく、さらりとおしゃれな感じに仕上げようということなのでしょう。2部の曲もまた、どれも素敵な演奏でした。特に池辺さんの子守唄2つなど、ここまでしっとりした感じに歌うこともできるのか、とこの曲自体の魅力というものを思い知らされるような、素敵な演奏でした。そして、2部最後の「ヒロシマにかける虹」。…この曲、私も10年前、学生の時に歌った曲なのですよね。だから、思い入れは誰よりも強いのですが、なかなか力の入った、熱演だったと思います。でも、思い入れが強いということで、1つ言えば、導入部が終って、明るい曲調に転じる部分や、最後のコーダへ向かう部分など、もっともっと明るい響きで歌った方がよいのでは、とも思うのですが。でも、なかなか迫力のある演奏でした。ぜひ、機会があれば、この組曲全体を、通して演奏してほしいものです。きっと、迫力のある、説得力たっぷりの見事な演奏ができるのでは、と期待してしまいます。
前回の定期の時にも、何か一皮剥けたような感じで、非常にいい感じに団全体がまとまっているような雰囲気があったのですが、今回も、さらにそれを上回る良さがありました。今回、宇野さんに指揮をしてもらったことは、今後の活動にも非常にいい影響をもたらすものと思います。更に素晴らしい演奏をして、まさに神戸を代表する合唱団へと成長していってほしいものです。今後も期待していきましょう。