らいぶらりぃ
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三室尭追悼演奏会

●日 時2001年9月24日(休・月)14時開演
●会 場神戸文化ホール・中ホール
●出 演ソプラノ:安芸榮子/浅井潤子/芦原昌子/安保淑子/坂本環
     田中潤子/西垣千賀子/濱崎加代子/水澤節子/溝口真知子/笠置雅子
アルト:荒田祐子/永井和子
テノール:伊藤正/井上敏典/西垣俊朗/林剛一/山本裕之/岡田征士郎
     田原祥一郎/松本幸三
バリトン:澤井宏仁/清水光彦/青木耕平/井原秀人
ピアノ:小梶由美子/坂本朋子/沢田真智子/角南優子
    伊藤勝/江頭義之/田淵幸三
斉田好男指揮三室業追悼演奏会オーケストラ(神戸市室内合奏団有志)
三室尭追悼演奏会合唱団(神戸市混声合唱団有志他)
●曲 目【第1部】神戸・アーバンオペラハウス公演より
モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より
ヴェルディ/歌劇「椿姫」より
ビゼー/歌劇「カルメン」より
プッチーニ/歌劇「ラ・ボエーム」より
      歌劇「蝶々夫人」より
【第2部】日本歌曲・オペラアリア
歌をください
誰もいない海
悲しくなった時は
團伊玖磨/歌劇「夕鶴」より
ワーグナー/楽劇「タンホイザー」より
プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」より
【第3部】
フォーレ/レクイエム

 神戸の音楽界の重鎮、三室先生が急逝されたのは昨年の10月3日のこと。余りにも急なことに誰もが言葉を失ったものでした。あれからもう1年になるのですね。1周忌を前に、先生の追悼演奏会が実現しました。私もかつて、仕事の関係でお世話になったこともあるので、会場へ出向いてきました。

 さて、舞台の上には、在りし日の三室先生のお写真が掲げられています。白い花で縁取りされたそのお写真の中の先生は、あのトレードマーク(?)のお髭を豊かにたくわえ、朗々と何かを歌っていらっしゃる、そのようなお姿です。…何故か、今でもそのお姿のままに舞台の上に実際に出てこられるような、そんな感じもしてしまうのですが、そうではないのですね… そう思うと、とても切なくなってきます。開演に先だっての黙祷が、そういう気持ちをさらに深めます。

 三室先生というと、まっ先に思い浮かぶのは、アーバン・オペラハウス。当初、神戸シティ・オペラと言うていた頃から、常にその先導役として、神戸でも上質の素晴らしいオペラを作り出そうとご尽力してくださっていたのでした。もう、今から10年も前のことです。そして、またちょうどその頃、1991年には、先生の演奏活動が30周年を迎えられ、その記念のコンサートも、この文化ホールで盛大に行われたのでした。もし、ご存命でしたら、今年はまさに40周年の年。更に盛大な記念コンサートが催されたであろうに違いありません。なのに、その40周年の年を目前にされてのご逝去… 返す返すも残念でなりません。演奏会は、そんな三室先生を偲びながら、粛々とした感じで進んでいきます。第1部は、いろいろなオペラからのアリア集。舞台の上手側には小さなスクリーンが掲げられ、そこにかつて三室先生がアーバンオペラの舞台に立たれていた時の写真を投影して、その時の演目であるオペラからのアリアを歌い手達が次々に歌っていきます。10年間全ての演目を振り返るには時間が足りないというもので(もちろん、三室先生ご自身、全ての演目に出演されたというわけでもないでしょうし)、端折りながらの演奏です。私自身は残念ながら、アーバンオペラの舞台では三室先生がご出演してはるのを見たことがなかったのですが、それでも在りし日の先生のお姿が目に浮かぶようでした。

 第2部は、6人の歌い手達が、それぞれの想いを胸に、自分で選んだ曲を歌うというもの。そのタイトルからして、それぞれの歌い手達の、三室先生に対する想いというものが伝わってくるようです。そして、一番、印象的だったのが、松本幸三さんの歌われた「誰もいない海」。松本さんと言うと、どうしても、どちらかというと元気で明るい感じの曲が似合うような印象がするのですが、意外にも静かな感じのこの曲。これが実に素敵だったんです。天の三室先生に優しく語りかけるように、切々と歌っていくのですね。それは、イタリア・オペラ等でアリアを朗々と歌う、いつもの松本さんの印象とは全然違います。そこには、同じ声楽家として、三室先生を亡くした悔しさみたいなものも、そのどこか震えた感じの声から感じ取れます。そう、歌う人、皆が同じ想いなのでしょう。あの優しいお人柄に触れた人ならば、誰でも、同様にやるせなさ、悔しさ、無念さを感じるに違いありません。歌う人達の全員、どれもが熱唱で素晴らしかったのですが、松本さんの歌唱は、その象徴的な演奏だったと思うのです。そして、それは聴いている私達にも同様の想いを喚起させるのでした。…思わず、ほろりと泣いてしまったのは、私だけではないでしょう、きっと。

 そして、第3部は、フォーレのレクイエム。こちらも、合唱は三室先生がお世話していた合唱団の有志によるもの。神戸高校合唱部のOB有志や芦屋高校コーラス部のOB有志、神戸女子大学コーラス部のOG有志、甲南大学グリークラブのOB有志など、まさに門下生ばかりで、必然的に演奏にも熱が入ります。その高らかに響く歌声は、きっと、天上の三室先生にも届いたことでしょう。…しみじみした想いにかられる演奏会なのでした。

 長々と続く追悼は、終ってみれば3時間30分以上にも及ぶものとなっていました。これだけ多くの人から、今でもこんなに慕われている三室先生、その偉業と功績を改めて偲びたいと思うのでした。(あまり、演奏の内容についてまで、細々と書く気にならないので、文章がまとまらず、すみません…)