らいぶらりぃ
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ヘルシンキ・フィルハ−モニ−管弦楽団

●日 時2001年9月29日(土)18時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演レイフ・セ−ゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルハ−モニ−管弦楽団
●曲 目シベリウス/交響詩「フンランディア」
      交響曲第7番ハ長調Op.26
      交響曲第2番ニ長調Op.43
(アンコ−ル)
      「カレリア組曲」より 行進曲曲風に

 久しぶりにシンフォニ−ホ−ルへ、外来オケの演奏を聴きに行ってきました。ヘルシンキフィル、前回の来日公演の際にも聴きに来て、えらく感動したのを覚えています。が、今回はその時と違い、首席指揮者のセ−ゲルスタムさんが指揮をされるのです。これはきっと素晴らしい演奏を聴かせてくれるに違いないと思い、出かけてきました。

 演奏は「フィンランディア」から始まります。いきなり、という感じもするのですが、これが余りにもすごい演奏なのです。何というか、これほどドラマティックな「フィンランディア」は初めて聴いた、という感じなのです。ゆったりとしたテンポにとってもぶ厚い弦の響き、さえわたる金管のクリアな響き、実に堂々とした演奏なのです。これが本場の「フィンランディア」じゃぁ、というかのように、セ−ゲルスタムさんの指揮も貫禄たっぷりで、それがそのまま、音楽になっているのですね。特に印象的なのが、ゆったりとした最初の部分が終り、激しい真中の部分に入っていくところ。低弦がずんずんと鳴るところですが、ここが最初、超スロ−なテンポで入るのです。と思ったら、じわじわっとaccelして、気分を一気に高揚させて、あの激しい部分へとなだれこんでいくのです。この持っていき方は、もう他では聴いたことがないもので、聴く者をいやでも興奮させます。そして、激しい部分が終って出てくる讃歌のテ−マ、非常にクリアにその音色が響き渡り、思わず泣けてしまいます。そう、セ−ゲルスタムさんの音楽というのは、お客に対し、とってもたっぷりと聴かせるものなのですね。どうしたら、お客を感動させることができるか、そのことがよく分っているようなのですね。そういうことをしっかりと計算しながらも、それでいて自在に音を扱い、感動をたっぷり詰め込んでいく、いやぁ、すごいものです。この1曲目からして、もうノックアウトされてしまった、という感じです。

 だからか、というわけでもないのですが、肝心な交響曲の方が、ややインパクトに欠けるようなふうにも聴こえてしまいました。もちろん、こちらの方も非常に素晴しい演奏であったことに違いはありません。7番など、曲自体が非常に内容の濃いものなのですが、これをセ−ゲルスタムさんらの演奏は、さらに密度を高く、濃厚なふうに仕上げています。全体に、非常に歌心のある旋律などをたっぷりと歌わせながら、しかし、音をとっても濃密に集めてくるようで、巨大な音の塊がうねうねとしているかのような、そんなふうに聴こえるのです。私達はその巨大な音のうねりの中にただ身と任せているだけ、そうなってしまいます。最後のクライマックスに至る部分など、実にたっぷりと溜めながら、じわりと盛り上がってくるので、聴く方も思わず興奮して、前のめりになって聴き入ってしまいます。

 そして、2番も同じ。たっぷりと溜めながら堂々とした歩みで、進んでいきます。2楽章など、他の演奏ではやや散漫気味に聴こえることもあるのですが、セーゲルスタムさんの指揮は、音楽全体の緊張感を決して失うことなく、その持続した緊張感の中で、或いは休止を取ったりしながら、淡々と進んでいくのです。そして、それにより、音自体を細かにたくさん聴かせてくれるので、聴く側も飽きることがないのですね。この部分って、この楽器はこういうことをやっていたんだ、という新たな発見もあったりして、それだけ、各楽器の音を大事にして、それらを有効に集めているということでありましょう。3楽章から4楽章へ移行していく部分も、先の「フィンランディア」と同じです。この盛り上げ方には、ほんと、泣かされますね。これ以上ないくらいの気分の高揚をもって、終楽章のテーマを朗々と歌われたら、もう、感動極まりないものです。その感動のまま、最後までずっと行き、実に雄大な演奏は大団円を迎えるのでした。

 …そう、堂々として雄大な演奏であった、この一言に尽きるような気がします。これがセーゲルスタムさんの音楽なのですね。ちょうど、セーゲルスタムさんご自身、舞台の上ではその大きな身体をゆっさゆっさと揺らすかのようにゆっくりと歩いていらっしゃいましたが、音楽にもそういう風貌が反映されているかのようでもありました。でも、それがこれ以上ないくらいの感動を与えてくれたのは間違いありません。真っ白な髪の毛に、豊かに蓄えられた真っ白な髭、ステージコートを赤いコートに替えたら、そのまま、まるでサンタクロースさんになってしまいそうな感じのセーゲルスタムさんですが(^^;、ほんまのサンタさんのように、至福のひとときという幸せを与えてくれた、そんなふうにも思います。

 最後には、団員も舞台袖に引き上げた後、誰もいなくなった舞台上に、再々度、セーゲルスタムさんが登場、会場中に多く居残ったファン達から盛大な拍手を浴びていました。それは、まるで、我が国の御大、朝比奈先生と同じような風格を見るようで、いやはや、やはり恐るべし、セーゲルスタムさん、なのでありました。