らいぶらりぃ
PrevNextto the Index

村田隆子ヴァイオリンリサイタル

●日 時2001年12月2日(日)14時30分開演
●会 場東灘区民センター・うはらホール
●出 演ヴァイオリン:村田隆子
ピアノ:前田和美
●曲 目ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第1番Op.12-1
ブラームス/ヴァイオリンソナタ第3番Op.108
ドヴォルザーク/4つのロマンティックな小品Op.75
ラヴェル/ハバネラ形式の小品
シューマン/ロマンスイ長調
ヴィニアフスキー/モスクワの想い出

 神戸を中心に活動をされている村田さんのリサイタルに行ってきました。割とコンスタントにリサイタルも開かれているようで、その熱心な活動ぶりには好感が持てます。

 さて、最初はいきなりのベートーヴェンの1番。どうも個人的には、ベートーヴェンと言うと、昨年秋から文化ホールでシリーズでされている久保田巧さん&ヴァディム・サハロフさんのデュオによる演奏の印象が強くて、あまり冷静に聴けません。いけないと分かってはいるのですが、ついつい、彼らと比べてしまいます。そりゃ、ダイナミクスや音の切れ等々、どれを取っても彼らの方がずっといいのに違いありません。なので、この曲については、ちょっとコメントすることができません…(すみません)

 で、ブラームスからちゃんと聴き出したのですが、村田さんのヴァイオリン、とても丁寧に弾いているのがよく分かって、なかなかいい感じですね。ただ、所々、音が不安定になるのがやや気になります。緊張もされているのでしょうけれども、ブラームスのこの曲のような、内なる力強さというものを表現するには、やや力みすぎなような感じもします。もっと太い線で歌えばいいのにとも思うのですが、どうもか細い印象で、それが変に力が入ってしまい、かえって不安定になってしまっている、そんな感じがします。高音なんかも、もう1枚、響きを上に乗せてあげることができたら、もっとクリアに鳴って、さらに良くなるのでは、と思うのですが、どうでしょうね。そして、そういう村田さんの不安定さを更に助長するものが、ピアノだったりします。ピアノの音に深みがないのですね。やや力任せに、ただ弾いているだけという感じの演奏なのです。フォルテなんかにしても、内なるパワーを秘めたようなものではなくて、力任せの薄っ平いもので、ブラームスの音とは違うのでは、と思ってしまいます。そんなふうに、曲想とかはあまり関係がなさそうに弾かれるものですから、演奏全体が、とてもごつごつとした、やや乱暴な感じに聴こえてしまいます。そういう意味で、このブラームスはちょっと不満の残る演奏でした。

 後半は小品が続きます。いずれもメロディラインの美しいものばかりですね。こういう、どちらかというと、しっとりとした曲調で、ゆるやかに歌うような曲が、村田さんはお得意なのでしょうね。前半とは違い、なかなか情感たっぷりと歌い上げていきます。ドヴォルザークのエレジーや、シューマンのロマンスなどは、なかなか素敵な演奏だったのはないでしょうか。ピアノが相変わらず無思慮な演奏をしているのは、やや気にはなりますが、結構、いい感じに演奏を仕上げているように思います。そして、最後はヴィニアフスキーの曲。民謡「赤いサラファン」をベースにしたパラフレーズなのですね。馴染みのメロディが切々と歌われていくのは、素敵です。が、この曲も結構、技巧的な曲なのですね。細かなパッセージで高音まで駆け上がっていくようなところなど、ちょっと悪戦苦闘しているようにも聴こえました。最高音もかすれてしまったりして、ちょっと消化不足な感じに聴こえてしまったのは、残念でなりません。

 全体に、なかなか健闘していたとは思うのですが、技巧的な面での物足りなさがちょっと目についてしまった演奏会でした。でも、これからも更に研鑽を積まれたら、もっと素敵な演奏をされるようになるでしょうね。これからも楽しみです。