らいぶらりぃ
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ザルツブルク・モーツァルテウム弦楽四重奏団

●日 時2002年1月10日(木)19時15分開演
●会 場神戸新聞松方ホール
●出 演ザルツブルク・モーツァルテウム弦楽四重奏団
  ヴァイオリン:マルクス・トマシ
        ゲザ・ロンベルグ
 ヴィオラ:ヘーベルト・リンツベルガー
 チェロ:マルクス・ブジェ
フルート:萩原貴子
●曲 目モーツァルト/弦楽四重奏曲第4番ハ長調K.157
       フルート四重奏曲イ長調K.331
       弦楽四重奏曲第6番変ロ長調K.159
       弦楽四重奏曲第17番変ロ長調K.148「狩」
(アンコール)
ヴェルディ/弦楽四重奏曲より スケルツォ
ヒンデミット/コンチェルト・ワルツ
ハイドン/南国のインスピレーション をアレンジしたもの

 2002年最初の演奏会は、モーツァルトです。本場ザルツブルクの名手達による演奏を堪能してきました。

 この”モーツァルテウム”という栄えある名称が、彼らのアンサンブルの素晴らしさを語っていますね。その名に恥じないどころか、モーツァルトの音楽の魅力を余すところなく表現しきっているようでもあります。それは、最初の4番の出だしから、いきなり現われます。とっても上品で美しい音色を出すのですね。その美しさは、まるでモーツァルトの当時の宮廷の華やかさのよう。その華やかさは、この明るい雰囲気に包まれたこの曲にとってもよく合っていて、会場中を明るく華やいだ雰囲気に包み込んでいきます。いやぁ、いいものです。ファーストのトマシさんのヴァイオリンは、とっても表情豊かで、ごく細い線から太い線まで巧みに表現し分けています。この艶やかな音色が、このアンサンブル全体をも表情豊かにしているのでしょう。セカンドのロンベルグさんは、対照的に、渋い演奏をしていますね。最も印象的なのがヴィオラのリンツベルガーさん。何というか、とても攻めの姿勢の演奏なのですね。攻めの勢いある彼の演奏が、ヴァイオリンやチェロをも刺激して、全体がきりっとまとまっている、そんな感じにも聴こえます。そして、チェロのブジェさん、彼は忠実な演奏家という感じ。低音域をどっかりと響かせながら、常に全体の調和を考えているというふうに見えます。この4人がアンサンブルを織り成して、モーツァルトの華やかな世界を創り上げているのです。まさに芸達者な4人と言うことができるでしょう。

 全体に明るい雰囲気に包まれたのが4番なら、緊張感に満ちているのが6番でしょう。1楽章がいきなりの穏徐楽章であるのも意表をつかれますが、2楽章の実に緊迫感あること。アップテンポな曲を、彼らは前へ前へとのめり込んでいくように演奏していくので、否応なくこちらも引込まれてしまいます。3楽章の舞曲もリズミカルでいいですね。この辺になると、上品な、と言うよりは、とっても勢いのある演奏と言った方がいいのでしょう。その積極的な演奏がとても新鮮にも聴こえました。

 後半は、17番の「狩り」です。この曲の中で最も印象的なのは3楽章。ゆったりとしたとても美しいメロディーが流れてきます。これを、ファーストのトマシさんのヴァイオリンが実に切々と歌い上げてくるのは、たまらないくらいに美しいです。と思いきや、4楽章では、実に快活なはつらつとした演奏に変わり、この表情の切り替えが見事です。ほんと、曲の中などでも、ふっと瞬時に明から暗へ、暗から明へと表情が変わるので、それが演奏を実に色彩感あふれるものに仕立てているのですね。見事なものです。

 ところで、今回の演奏会のソロには、フルートの萩原貴子さんが登場です。美空ひばりの曲をフューチャーしたアルバムを先に出されて以来、注目を集めているフルーティストですね。その笑顔がたまらなく可愛らしかったのですが、演奏の方もなかなかのものです。あの有名なピアノソナタをフルート四重奏曲にアレンジしたものなのですが、ピアノで言う右手の部分はほとんどをフルートが受け持つのですね。1楽章の変奏曲のテーマに始まり、第1変奏ではヴァイオリンがテーマを受け持つものの、その他の第2変奏以降は大体、フルートがテーマを受け持ちます。第5変奏のゆったりとしたところなど、なかなか情緒たっぷりとしていて素敵でしたし、最終変奏の小気味のいいアップテンポなところも、音がころころと転がるように流れていて、とってもいい感じでした。そして、圧巻はやはり3楽章のトルコ行進曲でしょう。お馴染みのあのメロディーをリズミカルにころころと音をつないでいくのです。何処でブレスをしているの?と言いたくなるほど、切れ目もなく、音がつながっていくのは、見事です。最初からこの編成のために書かれた曲であるかのような、そんな感じすらする演奏でした。楽章の合間とかに萩原さんと他のお3方とが笑顔で見つめあっている光景がまた何とも素敵で、とても明るい雰囲気に包まれたひとときなのでした。

 そんな明るさに終始、包まれた演奏会なのですが、それはアンコールに至っても変わることはありません。むしろ、アンコールになると彼らはより一層、ノリノリになって、次から次へと何と3曲もアンコールを披露してくれました。新年早々、何とも威勢のいいことですね。ヒンデミットのワルツなど、ちょっとウィンナ・ワルツっぽい感じもして、お洒落でした。こんなニューイヤーのコンサートも楽しいなと思った演奏会なのでした。