らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 2002年2月3日(日)14時開演 |
●会 場 | フェスティバルホール |
●出 演 | アイゼンシュタイン/竹田昌弘 |
ファルケ/田中由也 | |
フランク/片桐直樹 | |
アデーレ/石橋栄実 | |
ロザリンデ/並河寿美 | |
オルロフスキー/三矢直生 | |
牧村邦彦指揮大阪シンフォニカー交響楽団 | |
川西市民合唱団 | |
●曲 目 | J.シュトラウスII/喜歌劇「こうもり」より 第2幕(演奏会形式) |
(オペラ・ガラ・コンサート) | |
ロッシーニ/歌劇「セビリアの理髪師」より 序曲/今の歌声は | |
モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より 奥様、これが恋のカタログです | |
プッチーニ/歌劇「トスカ」より 歌に生き、恋に生き/星は光りぬ | |
ビゼー/歌劇「カルメン」より ハバネラ/闘牛士の歌 | |
J.シュトラウスII/トリッチ・トラッチ・ポルカ | |
ポルカ「狩り」 | |
喜歌劇「こうもり」より 第2幕フィナーレ |
今年のシンフォニカーの名曲コンサートは、華々しくオペラ・ガラでスタートです。演奏会形式による「こうもり」の2幕抜粋です。なかなかに切れ味のいい序曲の後、舞台はオルロフスキー侯の邸宅になり、招待客達がやってくるシーン。このホスト、オルロフスキー侯を演じているのが、元宝塚の男役として人気を誇った三矢さん。オペレッタは初めてとのことですが、いや、なかなかどうして、堂々としたホスト役をこなしています。ぴしっとキメたタキシードも格好よくて、素敵です。元々、オルロフスキー侯の役は女声が務めることが多いわけですが、男役をやられていた方がすると、やはり、何か締まった感じがしますね。歌唱の方も、宝塚の後、芸大へ入られたというだけのことはあって、いい声をしてはります。私がこれまで見たオルロフスキー侯は、どちらかというと、細い線の声の人がやっていることが多かったように思うのですが、三矢さんの声はそれとは何か違い、細くなく、かと言うて太すぎることもなく、ちょうどいいくらいに保たれているように思うのです。ぴんと張り詰めたハリのようなものがあって、それがしゃんとした姿勢とあいまって、実に格好のいいオルロフスキー侯だったように思います。声量的には、他の女声2人にはかないませんが、でも、男声陣も彼女と同じくらいにしか響いてこなかったから、こんなもんなのでしょう。そして、注目は、後半のガラ・コンサートでの「カルメン」です。オルロフスキーの黒いタキシードから、真っ赤なドレスに着替えて気分はすっかりスペイン女。日本語による「ハバネラ」でしたが、こちらもなかなか堂に入ったものですね。そう言えば、昨年の秋に大地真央さんの演じるミュージカル版の「カルメン」を見にいきましたけど、カルメンって、宝塚の男役の人が演じるのにふさわしい役なのかもしれませんね。(これで、後ろの合唱もただ座ってるのでなく、演奏に加われば、もっといいのに、と言うのはやめておこう…)さて、今回の注目は三矢さんだけはありません。久しぶりに聴く並河さんもまた、その美声をたっぷりと響かせていました。ロザリンデとして登場してきて、ジプシー音楽を歌うシーン、実に朗々と歌い上げていきます。声量的にも他の誰よりも抜きんでていて、その実力を見せつけています。しかし、もっと素晴らしかったのは、後半のガラ・コンサートになってから、「トスカ」のアリアを歌うところ。その切々として、哀願を込めて歌う姿は、まさにトスカそのもの。数年前、オペラハウスでの「トスカ」の公演を見た際にも彼女がトスカを演じていたのですが、その時の感動がまざまざとよみがえってきて、もう、涙なしでは聴いていられません。堂々とした歌姫の歌唱に、酔いしれた一瞬でした。
他のメンバーでは、石橋さんんと片桐さんが健闘していた他は、ちょっとあまり響いてこなかったような気がします。このホールだから、ある程度は仕方ないのでしょうね…
ところで、先程から書いているように、今回の公演は「こうもり」の第2幕の場面ということになっています。しかし、後半でのガラ・コンサートというのは、実は、このオルロフスキー侯の邸宅で行われているパーティの中で繰り広げられる喉自慢ショーという位置づけになっているのです。三矢さんもしっかりと、”それではショーをお楽しみください”というようなことをおっしゃっていました。こういう進め方っていいですよね。チラシには「こうもり」だけしか書いていなかったから、ちょっと驚きもしましたけど、何か、1回で2度美味しい、みたいな嬉しさがあります。歌う方は大変でしょうけど、こんな趣向のオペラ公演があってもいいと思います。
今回の指揮は牧村さんでしたが、彼も素敵な指揮者ですよね。オペラを振らせたら彼の右に出る者なんてそうそういないんじゃないでしょうか。普段はあまり目立たないような印象があるのですが、今回、改めて牧村さんの指揮って、いいなぁ、と実感しました。歌いやすそうですし、また、歌手だけでなくて、オケもたっぷりと歌っていました。切れ味よい演奏であったのは、おそらく、牧村さんの指揮のせいなのでしょうね。牧村さんの実力の程も改めて思い知らされたような気もする演奏会なのでした。