らいぶらりぃ
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諏訪内晶子&ボリス・ベレゾフスキー デュオ・リサイタル

●日 時2002年2月4日(月)19時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演ヴァイオリン:諏訪内晶子
ピアノ:ボリス・ベレゾフスキー
●曲 目ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番へ長調Op.24「春」
シマノフスキ/「神話」Op.30 アレトゥーザの泉
バルトーク/ヴァイオリン・ソナタ第1番
(アンコール)
バルトーク/ルーマニア舞曲
ラフマニノフ/ヴォカリーズ
ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
ヴィアニフスキー/スケルツォ・タランテラ

 チャイコフスキーコンクールの優勝者同士という何とも素敵なデュオの演奏を聴いてきました。諏訪内さんのヴァイオリンを聴くのも久しぶりです。

 最初はベートーヴェン。当初は5番の「春」を予定していたらしいですが、実際は9番の「クロイツェル」。いきなり大物から始まるというので、これだけで、その意気込みが伝わってくるようです。曲は、諏訪内さんのヴァイオリンによる序奏により始まります。やがて、ベレゾフスキーさんのピアノが加わり、劇的な展開の中へと突入していきます。ベレゾフスキーさんのピアノは実に力強くてダイナミックですね。出るところはぱしっと出てきて、と思えば、ヴァイオリンを立てるところではさっとひいて出しゃばらない、このダイナミクスのつけようは見事なものです。そして、力強いから、ひくところでもへなっとなるようなことは決してなく、音の粒はきっちりとそろっているのですね。どっしりとした響きは、さすがなものです。と、ここで思い出すのは、神戸文化ホールでシリーズものをやっている久保田巧さんとヴァディム・サハロフさんのデュオ。彼らもこの「クロイツェル」を演奏していましたが、彼らとの違いは何だろう、と考えてしまいます。サハロフさんのピアノはほんとに、どっかりと地に足をつけるようずっしりとした響きがあるのですが、それに比べると、ベレゾフスキーさんのピアノは、確かにどっしりとはしていますが、やや華がありますね。どこかきらびやかさのようなものが感じられるのです。まぁ、年齢のこともあるでしょうから、簡単に比較するのもどうかとは思うのですが。それにしても、ロシアのピアニストというのはどうして、こうダイナミックな演奏を聴かせてくれるのでしょうね。ほんと、たまらないです。そして、そのずっしりとした響きの上に諏訪内さんのヴァイオリンがすぅっと乗ってくるのです。その音色はとても冷静で知的な感じに聴こえます。あの激情を、感情を前面に押し出してくるのでなく、表面は冷静でありながら、そこから内なるものがじわっとにじみ出てくるような、そんな含みのある音なのですね。それが緊張感をより高めていて、実に引き締まった演奏になっている、そんなふうに感じます。1楽章の激情を一気に駆け抜けると、次は2楽章の美しいテーマ。これがまた実に美しいんです。 凛とした響きを保ちながら、伸びやかに音がふわぁっと響いていくのは、この上なく美しいものです。演奏しているお姿は極めて冷静な感じなのですが、そこからこんなにも美しい音が紡ぎ出されていくというのは、不思議、或いは神秘的な感じすらします。計算して緻密に音楽を練り上げている、というだけでない、何かしら彼女の天性の力があるようなふうにも聴こえてくるのですね。ほんと、素敵な演奏でした。

 後半は、まずはシマノフスキ。これ、実に綺麗な曲ですね。ピアノが絶えずざわざわとした水の動きを描写しているようで、その上にヴァイオリンが風が吹き抜けるような感じで流れていく、という感じがします。神秘的な感じが全般に漂う曲ですが、その神秘さをお2人の演奏は見事に表現していると思います。そして、バルトーク。1楽章や3楽章など、先のベートーヴェンに負けないくらい、ピアノとヴァイオリンが丁々発止の掛け合いを繰り広げる曲ですが、まさにそのとおりの演奏です。ただならぬ集中力を持って、緊張感たっぷりに展開していく演奏は、ほんと、迫力あります。諏訪内さんも、やや冷静だけではいられず、どこか気持ちがぐっと昂っているかのようにも見てとれるようで、それが更にこの曲への想いというものを伝えてくるようです。圧倒的な力強さと感動を伴って、一気にフィナーレへとなだれこんでいくのでした。

 素晴らしい演奏に、会場の拍手もなかなか鳴りやまず、それに応えてのアンコールも何と、4曲も演奏してくれました。さすがに最後の方は疲れも見えましたが、それでも、さすがまだまだお若いお2人です。パワフルで優雅な、素敵な演奏で最後まで魅せてくれたのでした。