らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 2002年2月10日(日)14時開演 |
●会 場 | シンフォニーホール |
●出 演 | ピアノ:仲道郁代/仲道祐子 |
●曲 目 | アンダーソン/トランペット吹きの休日 |
ペニー・ウィッスル | |
そり滑り | |
タイプライター | |
フィドル・ファドル | |
舞踏会の美女 | |
シンコペイテッド・クロック | |
ワルツィング・キャット | |
プリンク・プランク・プランク | |
ドビュッシー/小組曲より | |
チャイコフスキー/「くるみ割り人形」組曲 | |
(アンコール) | |
モーツァルト/キラキラ星変奏曲(?) |
ヴァレンタイン、と言うて思い出すのは、3年前、結婚前の妻と2人で、東京のサントリーホールへ仲道郁代さんとクラリネットのストルツマンさんとのデュオを聴きに行ったこと。時節柄、その温かい演奏がとても心に和み、妻との逢瀬を楽しませてくれたのでした。ということで、私達夫婦にとりましては、この季節はどうも、仲道さんのピアノを聴きたい、というわけなのです。今回は、妹さんの祐子さんとのデュオ。姉妹ならではのおしゃべりなども交えての楽しい演奏会でした。前半はアンダーソンの曲が並びます。オーケストラの曲ですよね。これを2台のピアノで演奏してしまおうというのですから、すごいものです。舞台の上には、普通の2台ピアノの配置ではなくて、プリモとゼコンドをそのままに平行移動させて、演奏者が舞台中央でちょうど背中合わせになるような配置になっています。即ち、舞台中央部で、郁代さんは上手を向いてピアノを弾き、祐子さんは下手を向いてピアノを弾く、という形です。背中合わせの形でちゃんと合わせて演奏できるのかな、とも思うのですが、そこはさすが姉妹なのでしょうか。実にぴたりと息が合っています。そして、この編曲もなかなかお洒落でいいですね。「トランペット吹きの休日」にしても全然違和感のない感じに仕上がっています。「そり滑り」では譜めくりさんにも鈴を鳴らしてもらい、かつ下手からどなたなのか、紳士が登場して、ぱちん、と板を鳴らしていきます。(妙におっかなびっくりという感じでされていたのが、ちょっとおかしかったですが。)「タイプライター」でのチン!という音などがないのは仕方ないでしょう。でも「シンコペイドクロック」では、郁代さんがウッドブロックを叩くという趣向。更に「ワルツィング・キャット」では、郁代さんがまたまた何やらびよ〜んと伸びる笛を吹かれるという趣向も。何でも来い!といわんばかりの姿勢がまたいいですね。ちなみに、「ワルツィング・キャット」の最後の「わんわん!」も、下手の袖からどなたか(先程の紳士?)が声を発していました。そして、「プリンク・プランク・プランク」では、さすがにコントラバスがくるっと回るということはありませんが、郁代さんがピアノを弾きながらその合間に合わせて両手を宙で大きくぱん!と鳴らすという、まさに全身を使っての演奏。曲ごとの合間にもお2人で、幼少の頃の思い出話などをされて、互いに言い合ったりするなど、とても和やかで楽しい演奏です。
後半は、ピアノの配置も普通どおりになり、割と真面目な(?)曲です。ドビュッシーもいいのですが、チャイコの「くるみ割り人形」というのが、また凄いですね。オーケストラにも負けないくらいの迫力あるサウンドが鳴り渡ります。特に印象的なのは、「花のワルツ」。冒頭部分の、ハープが効果的に音を鳴らす箇所など、ハープよりもこっちの方がいいというくらいにピアノがまた効果的に音を鳴らすのです。また、ホルンが鳴ったり、木管が鳴ったり、というオーケストラの音をそのままに再現するかのように、ピアノがそういう楽器のような音を鳴らすのですね。優雅に華麗に、この曲の持つ魅力というものを、ピアノ2台であるにも関わらず、最大限に引き出していたと思います。そして、オーケストラにも負けないくらいの色彩豊かさをピアノが持っているのだということを、改めて思い知らされたのでした。
ところで、演奏の始まる前の舞台の上には、お2人のお写真を引き延ばしたものが展示されています。前半の前は、お2人の幼少の頃のお写真で、後半の前はお2人が留学をされていた頃のお写真。思わず、ほぉ、と見とれてしまいますな。また、演奏中には、照明が様々に色を変えたりして、結構、視覚的な効果というものも取り入れていました。パイプオルガンが赤い光に包まれた時は、おぉぉっ!と見入ってしまいました。と、このような演出もあったりして、とても楽しめた演奏会でした。「このコンサートは、ただただもう…、楽しくて心あたたまるものにしたいのです」というお2人の言葉はそのまま、見事に実現していたと思います。素敵なヴァレンタインの贈物でした。