らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 2002年5月5日(祝・日)14時開演 |
●会 場 | フェスティバルホール |
●出 演 | 曽我大介指揮大阪シンフォニカー交響楽団 |
サックス:波多江史朗 | |
●曲 目 | ドビュッシー/小組曲 |
ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ | |
ドビュッシー/サクソフォーンと管弦楽のためのラプソディー | |
ラヴェル/「マ・メール・ロワ」組曲 | |
ボレロ |
恒例のシンフォニカーの名曲コンサート、今回はドビュッシーとラヴェルというフランスものがずらりと並んでいます。小品ばかりで、誰にでも、割と聴きやすいのではないでしょうか。ドビュッシーの作品は「小組曲」とサックスとの「ラプソディー」。最初の「小組曲」は5つほどの曲から成る組曲ですが、実にさっくりとうまくまとめているように感じます。曽我さんの指揮を見るのも久しぶりですが、相変わらず、滑らかでダイナミックな指揮をしてはりますね。大振りだけど無駄のない指揮から紡がれていくサウンドは、どこか小じんまりとした感じながら、表情豊かに、密度の濃いまとまりを見せています。2曲目なんかの、気分がぐっと高揚してくるのなど、たまらないものですね。思わず、客席から拍手が湧き起こったのもうなずけます。
一方、「ラプソディー」の方は、波多江さんのサックスとの競演。波多江さんのサックスは、実に朗々とした感じで、音量も豊かにたっぷりとメロディを歌いあげています。それは、大海原を自在に泳ぎ回るイルカか何かのよう。サックスという楽器自体、表情の豊かな楽器だと思うのですが、けれども、それ以上の表情をつけているように聴こえるのですね。もう、彼の思うがままに音が流れていくというのが、たまらなく素敵に響いてきます。いや、素晴らしいものです。オーケストラの方も、とても滑らかに流れるような響きを作り上げていて、しっかりと波多江さんを支えているのですね。非常にバランスのとれた状態であるから、音楽自体がきゅっとしまった感じで、実にまとまりよく聴こえるのでした。
ラヴェルの方はというと、「パヴァーヌ」に「ラ・メール・ロワ」、「ボレロ」という、これまたメジャーなものばかり。最初の「パヴァーヌ」は、どこかしっとりとした趣きの響きになっていて、その前のドビュッシーとの対比が見事です。「マ・メール・ロワ」は、何と、曽我さんの解説付きでの演奏です。これって、いわゆるマザーグースを元にしているものですから、それらのお話の内容というのを、曲ごとに曽我さんが話してくれるのです。これは、初めて聴くような人にとってはいいことですね。聴いて、何のこっちゃ、と思うよりは、こういうものなのかと分かった方が楽しいですしね。曽我さんの説明もなかなかはっきりとしていて分かりやすく、これはいい試みだと思います。
そして、圧巻は何と言うても「ボレロ」です。細かいところを言うと、倍音を出すところがちょっと汚かったとか、ラッパの音が不安定だったとか、スネアが2台になってからはちょっとリズムがぶれるように感じる部分があったとかいうようなことはあるのですが、そういうことは置いておいて。とにかく積極的に音楽に向かうという姿勢だけは、はっきりと感じ取ることができました。各楽器とも、(細かな問題はあるにしても)割と安定した音を出していて、それぞれの奏者の力量もそれなりのものであることをはっきりと実証されています。そして、この「ボレロ」って、各楽器ごとのソロが集まってできているようにも思うのですが、今日の演奏は、そうではなくて、大きな流れの中に各楽器のソロがあるのだということをはっきりと実感させられたように思います。音楽全体が大きくさっくりと1つに見事にまとめあげられているのですね。それは、曽我さんの指揮のせいなのでしょうけれども、ここでこの楽器が加わってこうなって、ここで盛り上がって、ということがくっきりと分かるようにではなくて、極めて自然な流れの中でごく普通に行われているのですね。だから、聴く側も、来るぞ来るぞと意識するようなことなく、気がつけば曲が終わっていた、というような感じなのです。もちろん、気分は最後になってぐっと高揚してきます。けれど、来るぞという興奮とは違うのですね。何だか分からないけれど、じわぁっと心が熱くなってくる、そんな感じです。そういう音楽を聴かせてくれる曽我さんという方は、やはりさすがなものです。また、団員もそれによく応えていると思います。いやぁ、素敵な演奏でした。
次回は9月のオール・モーツァルトのプログラム。どんな演奏をしてくれるのか、また楽しみです。