らいぶらりぃ
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ロドリーゴ室内管弦楽団

●日 時2002年5月11日(土)15時開演
●会 場神戸国際会館こくさいホール
●出 演ロドリーゴ室内管弦楽団
コンサート・ディレクター:アグスティン・レオン・アラ
ギター:村治佳織
●曲 目ロドリーゴ/遥かなるサラバンドとビリャンシーコ
      カンソネータ
      アンダルシアの2つの細密画
      ソレリアーナ
      3つの古い舞曲の調べ
      ある貴神のための幻想曲
(アンコール)
ロドリーゴ/あかつきの鐘
      サラバンダ・デ・アモール

 今や押しも押されぬギターの第一人者として実力を発揮、人気を集めている村治佳織さん、彼女が神戸へやって来るとあれば、行かないわけにはいきません。ゴールデンウィークも明けて、仕事も一段落した週末、出かけてきました。

 村治さんが登場されたのは、最後の曲です。「ある貴神のための幻想曲」、かの「アランフェス協奏曲」に次いで、ロドリーゴが作曲をしたという、ギターのための協奏曲なのですね。私も初めて聴く曲でしたが(と言うか、ロドリーゴの作品自体、あまり知らないから、今日の曲は全部、お初ものばかり…)、何か、懐かしい感じのする曲です。ギターがもちろん、主役でメロディーを奏でていき、オケが伴奏となるのですが、村治さんのギターはやはり素敵です。彼女の演奏を生で聴くのも随分と久しぶりのことですが、やはり、その表現力は一段と豊かになっているようです。1音1音をとても大事に扱うようで、実に丁寧に弾いていきながら、そこに彼女自身の思いのようなものが込められているような気がするのです。それは、最晩年のロドリーゴ本人に直に会われて、彼の人柄に直に触れられた彼女ならではの思いというものであり、或はロドリーゴ自身の思いであるのかもしれません。特に2楽章の美しいメロディーにはそういうものを強く感じます。それでなくても叙情的で印象深いこの楽章ですが、彼女の奏でるギターの音色はそれをさらにぐっと奥深いものに仕立てているようでした。でも、この曲、どこかで聴いたような感じがしてならないのです。何だろう?と思っていると、この曲、実は17世紀後半に活躍したというバロック・ギターの名手、ガスパール・サンスの残した作品をベースにして作られているのですね。その古風な、リュートの曲のような雰囲気があふれているのが、懐かしさにつながってくるのです。つのだたかしさんの演奏で広く知られる「シチリアーノ」のような、というかほとんどそのパクリ(?)ような部分もあったりして、妙にうなずいてしまいます。でも、だからと言うて、この曲が決して模倣ばかりの曲であるということはなくて、確かに昔の曲の題材を使っているけれども、その中にロドリーゴ自身のオリジナリティというものを多分に織り混ぜながら曲を書き上げているのですね。なかなか魅力的な曲だと思います。「アランフェス」同様、もっと広く知られてもいいのではないでしょうか。

 前半の方はオーケストラだけの演奏です。このロドリーゴ室内管の皆さんの演奏は、さすが、ロドリーゴの名を冠しているだけのことはあって、彼の音楽を忠実に再現しているようです。特に弦の響きがなかなか美しく、その艶やかな音色はまさにスペインらしい(?)ものでもあります。(だから、この弦の上に乗って、村治さんのギターが更に冴え渡ったのですな。)でも、管楽器にはやや難を感じてしまいます。入りの音がぶれたり、音量のコントロールができなかったり、シメがすぱっとできなかったりで、おいおい、と思うことしばしば。せっかく、弦楽器が素敵に響いてきても、管がそれを壊してしまっているようにすら思えて、何だかな…と思ってしまいます。長旅のお疲れでも出ていたのですかねぇ。

 それにしても、ロドリーゴの曲って、ぱっと聴いた感じには古典派とかバロックとか勘違いしてしまいそうな古風な曲ばかりですね。でも、それが彼の音楽の魅力であり、美しさなのでしょう。そうした魅力は、村治さんという逸材によって、確実に次世代へと語り継がれていくであろうと思います。演奏会の冒頭で、ロドリーゴの娘さんのセシリアさんとも、きちんと自分の言葉でお話をされていましたが、その堂々とした姿からも、彼女の中にロドリーゴが生きていることを感じ取ることができます。さて、新しいアルバムも買って、今日の復習でもしましょうかねぇ。