らいぶらりぃ
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第182回神戸学院大学GreenFestival

白石禮子ヴァイオリン・リサイタル

●日 時2002年5月25日(土)15時開演
●会 場神戸学院大学メモリアルホール
●出 演ヴァイオリン:白石禮子
ピアノ:東誠三
●曲 目モーツァルト/ヴァイオリンとピアノのためのソナタト長調K.301
フランク/ヴァイオリンとピアノのためのソナタイ長調
ドビュッシー/美しき夕暮
ラフマニノフ/ヴォカリーズOp.34-14
ブロッホ/「バール・シェム」より ニーグン
メシアン/「世の終わりのための四重奏曲」より イエズスの不滅性への頌歌
ラヴェル/ツィガーヌ
(アンコール)
フォーレ/夢のあとに
マスネ/タイスの瞑想曲

 今年も神戸学院大学のグリーンフェスティバルが始まりました。いつもながら、素敵なアーティストをよくもまぁ、これだけ集めてこられるものだと感心します。今回はヴァイオリンの名手、白石さんの登場です。

 彼女のヴァイオリンはとっても上品で艶のある響きをしていますね。最初のモーツァルトが始まってすぐにそう感じます。それでなくても愛らしいモーツァルトのこの作品を、ほんと、優雅に舞うような雰囲気で軽やかに弾いていかれるのです。しばし雅やかな雰囲気を楽しむのでした。

 しかし、彼女の本領はその後のフランクでいかんなく更に発揮されます。この大曲に対し、彼女はまさに真正面から挑んでいくというふうで、極めて積極的に音楽を作り上げていくのがはっきりと分かります。1楽章はどこか寂しげな感じ。まるでむせび泣くようなふうにさえ彼女のヴァイオリンは聴こえてきます。それが一転しての2楽章。何を思い立ったか、極めて情熱的に盛り上がる部分、一体、どこまで盛り上がるのかと思うほどに、彼女のヴァイオリンが音楽を盛り上げ、気分をぐんぐんと高揚させていきます。そして、3楽章で再び静けさを取り戻し、崇高的なまでに叙情的な旋律を印象的に歌い上げ、最後の4楽章へ。明るいロンド主題を、最初はややおとなしめに歌い始め、しかし次第にどんどんと盛り上がり、やがて喜びも爆発というくらいな勢いで最後を迎えるのです。息をつく間もないくらいに弾き込まれる演奏でした。そして、それは、彼女のヴァイオリンだけではなく、また東さんのピアノの素晴らしさでもあると思うのです。東さんのピアノは極めて大胆なくらいなまでのダイナミクスを聴かせていて、それが積極的に音楽を前へ前へと引っ張っていくのですね。ずっと以前に彼の演奏をソロで聴いたこともあり、その時もなかなか素敵なピアノを弾く人だと感じ入ったのですが、その時の印象そのまま、いや更に表現力も豊かになられたような気もします。そしてそんな彼に負けじと白石さんのヴァイオリンが鳴るのです。まさに丁丁発止のかけひきという感じで、すさまじいくらいに密度の濃い演奏に仕上がっていくのです。それに彼らの演奏は、音楽の流れが極めて自然なのですね。pの部分だったなと思った後、ふっと気がついたらfに盛り上がっているという、こちらが意識しなくても、あくまでも自然な音楽の流れに身を任せていれば自ずと気分も高揚してくる、そんな演奏なのですね。いやぁ、十分に聴き応えのある演奏でした。

 後半は小品が並びます。最も印象的なのは、白石さんご自身が、作曲家本人の前でも演奏したことのあるという、メシアンの曲。息の長いトーンが続く中で、様々に表情が変わっていく曲なのですね。すぅっと響く彼女のヴァイオリンに聴きほれながら、そのどこか不思議な音空間をたっぷりと味わうことができます。そして、最後はラヴェル。自由奔放な感じで狂おしいまでに十二分に盛り上がり、華やかに演奏会は終わるのでした。実に素敵な演奏会でした。

 ところで、前半のフランクの曲、この曲のチェロ版をこの秋に長谷川陽子さんがここ神戸学院大学で弾かれるのだそうです。これもまた興味津々ですね。ぜひ、また来たいと思います。