らいぶらりぃ
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神戸フィルハーモニック第44回定期演奏会

●日 時2002年6月22日(土)18時30分開演
●会 場神戸文化ホール・大ホール
●出 演朝比奈千足指揮神戸フィルハーモニック
ヴァイオリン:幸田聡子
●曲 目ルトスワフスキ/小組曲
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲二長調Op.35
         交響曲第6番ロ短調Op.74「悲愴」
(アンコール)
チャイコフスキー/バレエ「白鳥の湖」より 情景

 久しぶりに神戸フィルの演奏を聴いてきました。お目当ては幸田さんの弾くチャイコのコンチェルトです。

 幸田さんというと、美空ひばりの曲を集めたアルバムで有名ですが、また同時に神戸市室内合奏団のメンバーとしても、神戸では親しまれる存在であります。その彼女が神戸フィルとの競演です。彼女ご自身も、神戸フィルの定期等に賛助出演されたこともあるようで、そんなお互いよく知り合っているとも言える仲で、どんな演奏を聴かせてくれるのか、楽しみでした。で、実際、聴いてみると… 彼女のヴァイオリンって、非常に繊細な感じで叙情性に富んでいるのですね。だから美空ひばり等の曲でたっぷりと歌いあげることができるのでしょうけれど、このチャイコに関してはどうなのでしょう。確かにチャイコの曲にはロシアの民族性が根底に流れており、そこにはある種、演歌にも通じるようなものがあるのかもしれません。2楽章のような、割と静かにしっとりと歌い上げていく部分では、彼女の持ち味が存分に発揮されていたと思います。時にこぶしを震わせて歌うかのような(んなことは実際、ないけど)歌い回しは、やはり彼女ならではのものですね。けれど、1楽章なんかでは細いだけでは表現しきれないようなものがあるように思うのです。個人的には、どっちかというと、この曲は太い線でたっぷりと響かせながら朗々と歌ってほしいなという思いがあって、そういう耳で聴いていると、彼女の演奏にやや難を感じてしまいます。いや、これはこれで十分に素敵な演奏だとは思うのです。歌い回し自体はとても素敵なものなのです。でも、私個人的な感性で聴くと、どうももうちょっとず太さみたいなのが欲しいなと。カデンツァの部分なども、繊細な感じできりりと鳴るのよりは、おおらかにたっぷりと朗々と響く方が、好きなのですね。個人の好みの問題ですけど、私はそう感じました。

 でも、このチャイコンの後、会場からの拍手に応えての彼女のアンコールは、お約束の(?)美空ひばりの「悲しい酒」。舞台も暗転して彼女だけにスポットライトが。とってもしんみりとした感じで、切々と歌われるその歌は、実に味わい深いものです。いやぁ、いいものです。

 一方で、オーケストラの方はどうかというと、う〜む、どうなんでしょうね。周りではうまくなったというような声もあるようなのですが、以前からずっと聴いている者としては、ちょっと… プログラム・パンフレットの中で、響敏也さんは「今、神戸フィルは一人の人間としてどんな時期にあるのか。それは多分、「青春」だ。前方を見詰め、限りない夢を抱いていい資格を持っている。それだけの颯爽とした力を備えてきた。演奏会への姿勢も清々しい。」と書いていらっしゃいますが、何か素直にそう受け取れないような… だって、メインのチャイコの6番ですが、個人的には不満の残る演奏だったのですね。終楽章こそ、訴えかけてくるものも多少は感じられたのですが、そこに至るまでがちょっと。1楽章ではメリハリも乏しく、表情のつけ方も不自然なもの。クレッシェンドをして盛り上がってくるようなところを、唐突にfにするというのはどうかなと。2楽章は2+3という変拍子ながらも舞踏風の軽やかな曲。が、楽器間のバランスも極めて悪く、音がごそっと塊になって飛んできているだけ、という感じです。3楽章はどうしてというくらいにゆったりとしたテンポ。でも、ゆっくりにすることで、ただでさえ持続しない緊張感がさらにぶつ切りになってしまっているような感じなのです。大体、全体的にフレーズの扱い方に難があると思うのです。細かいフレーズごとで、緊張感が切れてしまっていて、もっと長いフレージングというものを考えて、緊張感をずっと保つということができていないのですね。3楽章のマーチにしても、じわぁ〜っとくる気分の高揚感というものがなく、数小節くらいの短いフレーズごとに、ブレスが切れてしまっているから、全然緊張感が感じられないのですね。ま、最後の楽章だけは、それなりに聴けたのが唯一の救いではありますが(それでも雑な印象は否めないです)、まだまだだなという印象はします。

 そう言えば、今年は、もしも朝比奈隆さんがご存命だったら、シンフォニーホールでの軌跡シリーズで、モーツァルトとチャイコの3大交響曲を演奏される予定だったはず。ひょっとしたら、今回の選曲はそういうことも考えて、チャイコを取り上げたのかもしれない、そんなふうにも考えてしまいます。天上の隆先生は、今宵の演奏を聴いてどのように思われたのでしょうか…