らいぶらりぃ
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おおさか・元気・クラシック

●日 時2002年7月10日(水)19時開演
●会 場NHK大阪ホール
●出 演本名徹次指揮大阪センチュリー交響楽団
●曲 目メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」
         「夏の夜の夢」から
           序曲/間奏曲/夜想曲/スケルツォ/結婚行進曲
          交響曲第4番イ長調「イタリア」
(アンコール)
メンデルスゾーン/「夏の夜の夢」から 道化役者たちの踊り

 また一つ、新しい企画がスタートしました。「おおさか・元気・クラシック」というこの催しは、低料金で在阪オーケストラの演奏でクラシックに親しんでもらおうというものらしいです。シンフォニカーさんが低料金の名曲コンサートをやっているのと同じような感じもしますが、こちらは行政が主体となってやっているということ。いわば税金の還元の一つとしてこのような演奏会が行われるのです。これはとても素敵なことだと思います。各オーケストラの演奏を聴こうと思ったら、それぞれの定期なり特別演奏会なりのチケットを、それも大抵は3〜5千円くらいのを買って行かないといけないわけですが、この企画だと、通し券を買ってしまえば4回分で5千円、しかも会場は毎回同じNHK大阪ホールというわけです。かなりお得な感じはしますね。それを太田知事以下の行政側のリードで行うというのは、大阪の街の文化振興にとって大いに意義のあることと思います。

 さて、会場は昨年にオープンしたばかりのNHK大阪ホール。私にとりましては初めての会場です。東梅田から谷町線に乗り込み、谷町4丁目で下車、2番の出口を出てそのまままっすぐに歩いていくと、やがて右手にNHKの放送会館が見えてきます。ここが目的の会場なのですね。階段を上がり、いざ、建物の中へ。と、いきなりそこには多くのモニタが並んでいて、ハイビジョン放送とかを映し出しています。「ここで体感!デジタルハイビジョン」ののぼりもあったりして、ここってNHKなんだぁということを改めて実感します。ホールへはエスカレーターで4Fまで上がります。長いエスカレーターを登ると、そこがホールのちょうど最後部。扉を入って、そのまま通路を突っ切れば、もうホールの中というわけです。真新しいホール、その輝きっていいですね。新しいもの見たさでつい、ぶらぶらと用もないのに歩き回ってしまいます。ロビー全体はガラス張りになっているのですね。さっきのエスカレーターで上がってくるところからもう、建物全体がガラス張りになっているようで、外にはちょうど大阪城の天守閣を眺めることができます。なかなかいい眺めです。これは会場内のロビーでもそうです。ちょうど会場へ入って右の方、つまり舞台上手寄りの方へ歩いていくと、喫茶コーナーのあるロビーになるのですが、ここからも大阪城は眺められます。これはなかなかお洒落なビューポイントと言えましょう。神戸で言うなら、ハーバーランドのモザイクガーデンの観覧車が眺められる松方ホールのロビーというところでしょうか。また、逆に左の方、舞台の下手寄りの方へ歩いていくと、ここに階段があり、2階に上がれるようになっています。何故、こちらだけなのか、反対側にも階段があった方が、特に終演時の人の流れを考えると、いいのではないかと思うのですが、どうなんでしょうね。その階段の奥の方にトイレがあります。このトイレもこちらのサイドだけ。これも反対側にもあった方がいいような気がします。それに、このトイレ、狭いんです。狭い入り口のところに両側に洗面所があるから、トイレへ入る人と出る人、手を洗う人とがごちゃごちゃっと交錯するんですね。1,400以上のキャパのあるホールで、トイレがこの程度というのは、どうなんだろう、とも思ってしまいます。

 とホールの外の施設関係で文句ばかり言うてますが、もうちょっとホールの中へ入ってみましょう。いいなと思ったのは、2階席が1階席にかぶる部分が少ないこと。1階席の割と後ろの方でも、2階席の下にもぐってしまうことがないんですね。だから、フェスティバルホールなんかだったら、こういう1階席後部に座ると2階席の下にもぐってしまい、音が全然響いてこないということがあるのですが、そういうことがないのですね、ここでは(たぶん)。つまり、席による当り外れがないということですね(たぶん)。これはいいことだと思います。また、座席が比較的ゆったりとしているのもいいですね。座っている人の前を通って、中の方の席へ動くという時も、あまりぶつからないで移動することができます。やはり、これくらいゆったりした感じで音楽を聴きたいものです。今日の私の席は、2階席のほぼ真ん中の辺り。舞台は割と奥まって見えます。奥行きがそれだけ深くあるような感じなのです。音がどれだけ響いてくるのか、ちょっと不安にも思ってしまいますが、それは演奏を聴いてからの話しです。

 さて、前置きが長くなりました。演奏会の方ですが、今回のシリーズのテーマは「大阪ゆかりの若手指揮者」。若手、と言うておいて、今回の指揮者が本名さんというのはどうなんだろうと、正直、思ってしまいます。(今年、45歳だとご自分でも仰ってましたし。)大阪ゆかりという点でも、大阪シンフォニカーの常任指揮者を務めていたというだけでしょう、別に人選に不満があるわけではないのですが、何か、テーマとそぐわないような感じがしてしまうのは、私だけではないでしょう。(休憩時間中、若手って言うよりは中堅やんなぁ、という会話をしている人がいました。)まぁ、次回以後の指揮者は確かに若手がそろって出てくるようなので、そっちを待つことにしましょう。

 で、本名さんの指揮です。相変わらず、やや独特な感じもさせながら、まぁ無難な演奏をこなしていますね。ただ、センチュリーの演奏も随分と久しぶりに聴いたのですが、こんなもんだったかなぁ、という感じがします。センチュリーの演奏って、もっとシャープでクリアなものだったという印象があるのですが、それに比べると、やや緩慢な感じはします。いや、それなりにいい音はしているのです。4番交響曲の1楽章や終楽章など、結構、大胆なまでの躍動感に満ちていて実に生き生きとはしていましたし、全体にメリハリのよくついた演奏だったとは思うのです。でも、何と言うか、いまひとつ乗り切れていないような感じもしないでもないのです。私の勝手な思い込みかもしれませんが、センチュリーさんの演奏ならば、もっと色彩感豊かにそして躍動感たっぷりのこれ以上ないというくらいの演奏はしてくれるだろうと思っていたのです。その期待していたのに比べると、やや違ったかなという感じなのですね。これはひょっとしたら選曲にも原因があるのかもしれません。オール・メンデルスゾーンなのはいいのですが、「夏の夜の夢」を抜粋であるにしてもあれだけの量をやるというのは、結構なもんでしょう。時間的にも案外と長いもんですし、演奏する側にしてもよほど集中力を持続させないとできないもんでしょう。聴いている側としても、段々とだれてきてしまうもんです。そんなのがあったから、何か足りない結果になってしまったのかもしれませんね。もうちょと違う小品でもよかったのかもしれません。

 でも、「夏の夜の夢」を、本名さんの解説つきで聴くことができたのは、なかなか楽しかったと思います。改めて、どの曲がどんなシーンを描写しているのかということを具体的にイメージしながら聴くことができましたし、こういう解説はやはり必要なのだろうと思います。特に今回の演奏会のような音楽の裾野を広げようという趣旨の場合には、こういうことも必要なのでしょう。次回は西本智実さん指揮の関西フィルでロシアもの。楽しみです。