らいぶらりぃ
PrevNextto the Index

おおさか・元気・クラシック

●日 時2002年7月26日(金)19時開演
●会 場NHK大阪ホール
●出 演西本智実指揮関西フィルハーモニー管弦楽団
●曲 目ベートーヴェン/交響曲第6番へ長調「田園」
ビゼー/歌劇「カルメン」前奏曲
マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
ストラヴィンスキー/舞踏組曲「火の鳥」
(アンコール)
チャイコフスキー/「くるみ割り人形」より

 1998年に京響を指揮してデビューされて以来、注目と人気を集めている西本さん、今年の初めにはロシア・ボリショイの指揮者にも就任されてますます活躍の場を広げていますね。私もデビューの時から注目はしていたのですが、なかなかその演奏を聴く機会に恵まれませんでした。が、今回、この「おおさか・元気・クラシック」のシリーズの中に彼女が登場するというじゃありませんか。こういう場で、彼女の本格的な演奏を聴くことができるのは非常に喜ばしいことですね。

 さて、今回のプログラムはベートーヴェンのシンフォニーに、オペラもの、そしてストラヴィンスキーと実に多彩なものになっています。演奏会の趣旨から言うたら、これは当然のことではありますが、個人的にはやはり、せっかく西本さんが指揮をされるのだから、ロシアものでまとめてほしかったという思いはあります。でも、こういう多彩なプログラムだからこそ見えてくるものもあります。それは、西本さんの音楽づくりの姿勢というものです。どんな曲であれ、彼女の音楽というのは、まずは歌うべきところでは思いっきりたっぷりと歌い上げて、そして盛り上がるところではとにかくパンチを効かせて、切れ味のある演奏をしようとしている、そんなふうに感じます。「田園」では、全体に穏やかな感じをとても上品にまとめあげ、その中に、3楽章の踊りや4楽章の嵐などが実に効果的に盛り込まれているという感じです。穏やかな天気の中、急激に嵐がやってくるなんてことは日本ではそうそうないことだが、外国ではそう珍しいことではない、と西本さんはプログラムにメッセージとして書かれていますが、まさにそれをそのままに音楽として見事に表現しきっています。この激烈なまでの盛り上がりがあるからこそ、5楽章が実に神々しく響いてくるんですね。このコントラストの見事さ、素敵なものでした。

 そしてそれは後半でも一緒です。「カルメン」での狂おしいまでの盛り上がりがあるからこそ、「カヴァレリア」でのこの上ない美しさが至高のものとして描かれる、この”コントラスト”こそが今日の演奏会にキーワードなのではないかと思ってしまいます。「火の鳥」も然りです。ロシアのバレエものという、いかにも西本さん好みという感じのする選曲ですが、これがもう最高!なものです。場面ごとの曲の表情が実に巧みに描き分けられているのですね。不気味さ、華々しさ、ロマンティシズム、神々しさ、そういった表情がくっきりと描き分けられて、ホール中に響き渡っていくのです。ラッパががんがんに鳴り渡ったかと思うと、弦が切々と歌い上げていき、非常に鮮やかに「火の鳥」の世界を描き出しています。私自身、「火の鳥」を聴くのも随分と久しぶりだったので、この曲がこんなにも感動的な曲だったんだぁ、と改めて感じ入ったのでした。

 ところで、関西フィルの演奏も久しぶりに聴いたのですが、西本さんの指揮のせいもあるのでしょうが、随分と歌心に満ちた演奏だったと思います。以前は、ややアンサンブルとしてのまとまりに欠ける面もある、と思ったこともあったのですが、少なくとも今回の演奏ではそのようなことはなかったと思います。ま、ホルンなんかで変な音が出てきたのは気になりましたけど。関西フィルも藤岡さんを指揮者に迎えられて、随分と頑張っているんだなということを実感します。機会があったら、また定期にも足を運びたいものです。

 今までいろいろとメディアで取り上げられている西本さんしか拝見したことがなかったのですが、こうして実際に生の演奏を聴くと、また、彼女の天賦の才能とお人柄の良さとがはっきりと分かり、ますます応援したくなりますね。また、機会があれば、彼女の演奏も聴いてみたいものです。