らいぶらりぃ
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おおさか・元気・クラシック

●日 時2002年8月2日(金)19時開演
●会 場NHK大阪ホール
●出 演曽我大介指揮大阪シンフォニカー交響楽団
●曲 目モーツァルト/アイネ・クライネ・ナハトムジーク
       交響曲第25番ト短調
       歌劇「魔笛」序曲
       交響曲第40番ト短調

 「おおさか・元気・クラシック」の第3夜は、大阪シンフォニカー響の登場です。この企画のような、格安の低料金でクラシックの名曲を楽しんでもらうというコンサートは、このシンフォニカーが始めたと言うてもよく、その先駆者としての力量がまた問われる(?)演奏会でもあります。

 曽我さん指揮のシンフォニカー響は、そんな私の期待を裏切らない、実に素敵な演奏を聴かせてくれました。これまでの本名さん指揮のセンチュリーといい、西本さん指揮の関西フィルといい、それなりの演奏ではあるのだけれども、何かがちょっと足りないような気はしていたのです。ところが、今日の曽我さん指揮のシンフォニカーは、オケの音色そのものが他とはくっきりと違っていたと思うのです。実に鮮明でクリアな音色で、モーツァルトの世界を作り上げていくのです。音色がクリアで、更にアンサンブル自体が精密に組まれていることで、非常に精度の高い音楽が作りあげられていると思うのです。最初のアイクラからして、それははっきりと分かります。明るさの中にも緊迫感が漂い、その緊張感から生まれる構成力のあるアンサンブル、実に心地良く聴こえてくるのです。そして25番の更なる緊迫感ときたら! 非常に澄んだ音色で、しかし切々とした心情を極めてドラマティックに歌い上げています。特に印象的なのは、第1楽章の第1テーマを提示して第2主題へ移る部分、弦の後ろでオーボエが短い旋律を吹いているのですが、このごく短いフレーズに情感がたっぷりと込められているのです。ごく些細なことなのかもしれませんが、こういう細かな部分でも決して疎かにすることなく、その音を大事に扱う、これが曽我さんのモーツァルトなのでしょうね。細かに組み立てられたその音楽の美しさと言うたら、これ以上はないというものです。小人数編成なのもあるのでしょうけれど、とてもシンプルな感じながらも、実に表現力に富んだ演奏でした。

 これは後半も同様で、40番でも同様に豊かな音色をたっぷりと聴かせてくれます。冒頭部分でも思ったのですが、音に無駄がないのですね、今日の演奏というのは。妙に揺らしたりする演奏が割と多いかと思うのですが、曽我さんの演奏はそうではありません。極めてpから始めて、すっとストレートに膨らんでくるという感じでしょうか。無駄なくそつなく、シンプルな響きの中に、実に効果的に音楽を組み立てるための表現力が込められており、それはまたとない美しい演奏なのでした。他のオーケストラもこれくらいのことはしてほしいものですねぇ。

 ところで、あの映画「アマデウス」がリメイクされて上映されているとか。今回の演奏会の趣旨は、プログラムからもはっきりと分かるとおり、モーツァルトの陰の部分を探るというもの。とかく陽気と思われがちなモーツァルトの生涯にも、深い悲しみというものはあったことでしょう。今日の演奏は間違いなくそれをくっきりと描ききっていました。こんな演奏を聴いてから、映画も見てみようかなとちょっと思うのでありました。