らいぶらりぃ
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おおさか・元気・クラシック

●日 時2002年10月21日(月)19時開演
●会 場NHK大阪ホール
●出 演円光寺雅彦指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:谷本華子
●曲 目ロッシーニ/歌劇「セビリアの理髪師」序曲
ラロ/スペイン交響曲ニ短調
ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調
(アンコール)
モーツァルト/「フィガロの結婚」序曲

 第2クールの2回目は、谷本さんの登場です。地元兵庫のご出身ということもあり、以前から注目はしていたのですが、なかなかその演奏を聴く機会に恵まれませんでした。が、今回、こうして彼女の演奏を聴くことができたのは嬉しいことです。

 彼女のヴァイオリンは、評判どおりの素敵なものですね。何が素敵なのかというと、豊かなヴォリュームと響き、それに表情でありましょう。ラロのスペイン交響曲は、彼女自身もプログラムに書いているように、各楽章の個性がはっきりと分かれている曲です。これを、それぞれの個性を最大限に引き出すように、彼女のヴァイオリンは見事に歌い上げていくのです。男性的な1楽章や3楽章、女性的な2楽章や4楽章、それもただ単純にそう分けられるというわけでもなく、それぞれの中で更に、泣いたり、喜んだり、怒ったり、と様々な表情を見せるわけです。オペラの世界のように思う、と彼女はこの曲のことを言うていますが、まさにそう。その言葉のとおりに、彼女のヴァイオリンは次から次へと巧みに表情を変えていき、見事に役割を演じ分けながら歌いあげていくのです。実に深くこの曲の世界を読み取り、組み立て上げているのだということを思い知らされます。その洞察力の深さと表現力の豊かさ、これこそが彼女のヴァイオリンの魅力なのでしょう。オケの方も彼女の演奏を更に引き立てるように盛り上げていて、旅行会社のパンフレット風に言うならば、まさに光と影の国スペインの情緒というものを余すところなく描ききっていたと言うていいでしょう。素晴らしい演奏でした。

 オケの曲はベト7。今回の演奏は大フィルですからね、大フィルでこの曲というと、どうしても故朝比奈先生の指揮が思い起こされてしまいます。大フィルの皆さんも、朝比奈先生の指揮でこの曲、何度も演奏したことでしょう。そのことによってオケ自体の身にしみ込んでいる朝比奈先生の魂みたいなものが、何故かはっきりと伝わってくるような、そんな演奏でした。それは、円光寺さんの指揮というのが、とてもスマートで明朗で、その曲自体の持つ魅力というものをストレートに表現するものであるからこそ、団員の思い入れとあいまって、成し得たのだと思うのです。入魂のベト7、そんな言葉がふさわしいような素晴らしい演奏だったのでした。朝比奈先生もこの演奏には、多分、天で満足されたのではないでしょうか…