らいぶらりぃ
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おおさか・元気・クラシック

●日 時2002年12月2日(月)19時開演
●会 場NHK大阪ホール
●出 演藤岡幸夫指揮関西フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:玉井菜採
●曲 目ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲二長調Op.61
チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調Op.64
(アンコール)
エルガー/夕べの歌

 前回、11月の公演は、急に仕事が入ってしまっために、行けずじまいに終わり、涙を飲んだ”おおさか・元気・クラシック”、第2クールの最後の今回こそは、と気合を入れて行ってきました。

 さて、今回は重量級のプログラムですね。玉井さんを迎えてのコンチェルトはベートーヴェン。実は私、この曲ってあまり好きじゃないんですよね。長いし、何か複雑な感じもするし。(^^; でも、今回は玉井さんの演奏だから、としっかり耳を立てて聴いていました。でも、玉井さんのヴァイオリン、どこかこなれていないような感じがしてならないのです。退屈するくらいに長い序奏の後にようやく出てくるヴァイオリンですが、この高音域からして、何かテンションが違うような気がしてならないのです。何と言うか、ノってないと言うのでしょうか、オケの後を受けてうまい具合にテーマを高音域で歌い始める、というのでないのですね。いまひとつ凛とした響きがないようで、あれ?と思ってしまいます。それに音もやや不安定ですね。1楽章だけでなく、3楽章でもそうなのですが、微妙にピッチがずれた音が出ているのですね。ん?と思ってしまいます。体調でも悪かったのでしょうか、どうも演奏にいまひとつノリが感じられないように思います。カデンツァにしても、どうも音を丁寧にたどっているだけというふうで、そこから更に踏み込んだ何か、がないのですね。ひたすらに長い1楽章をようやく終えた時には、すっかり息切れしてしまってはるようにも見受けられました。そりゃ、ベートーヴェンの曲なんて、体力勝負だと思うのですが、こんなにもノらない玉井さんを見るのは、何か辛いような気がします。2楽章でこそ、美しいメロディをたっぷりに歌い上げようとしていて、素敵でしたが、それでも、フレージングに甘さが残るようにも聴こえて、あれ?という思いは更に強くなってしまいます。3楽章に入っても、ノリの悪さは相変わらずで、何度もしつこいくらいに繰り返されるテーマにしても、低音域と高音域とそれぞれのやりとりが何か違うような感じがしてなりません。”音楽的な芯の部分で勝負しなくてはならない曲”と玉井さんご自身、プログラムの中に書いてはるのですが、まさにそうなのですね。この曲って、そうそう生半可では演奏できない難曲だと思うのです。だからこそ、どれだけ、”音楽的な芯”をしっかりと持つことができるかが、勝負になると思うのです。でも、少なくとも、今日の玉井さんの演奏からは、失礼ながら、そうしたものを感じとることはできなかったと言わざるを得ません。何とか最後まで演奏しきって、ブラボー!も出るほどの拍手を浴びていらっしゃいましたけど、私にはそう良いようには思えず、素直に拍手できませんでした。でも、体調の悪い中を頑張っての演奏なのでしたら、よくぞ、と思います。んー、それにしても、何か口惜しい感じが残ります。今度は万全な状態での玉井さんの演奏を聴いてみたいものです。

 さて、後半は前半とは違って、私の大好きなチャイ5。大好きなだけにいろいろと注文もうるさくなってしまいますが、今回初めて聴かせていただいた藤岡さんの演奏は、実に若々しいパワーに満ちたものでありました。全体に口あたりはどちらかというと軽い感じですね。必ずしもどっかりとした、ずんずんと響き渡るというようなものではなかったのですが、非常に明るく輝いた音色で、とても華々しい感じがします。テンションは異様に高いようで、それが燃えるような情熱を感じさせて、まるで口当りのいいスパークリング・ワインを味わうような、そんな印象がします。特に、終楽章、GPの後にメジャーに転じて運命の動機を高らかに歌い上げていく部分ですが、ここに入る瞬間、ふんっ!という彼の唸り声を聞いてしまうと、いやでも彼の演奏にのめり込んでいってしまいます。気合十分で力強く、一気加勢にクライマックスまで登り詰めようという、その一途な意気込みがかえって、すがすがしさのようなものを感じさせます。もっとも、本当は個人的にはもっと渋くて深い味わいのある演奏の方が好きなんです。けれども、何故か彼の演奏には引き込まれてしまうんです。…何か、不思議な魅力がありますね。オケの方もよくノっていて、まぁ、所々、他のパートを聴いてるんやろか、と思わせるような部分もあったのではありますが、藤岡さんの若々しさにノせられて、何とかごまかしているような感じもします。でも、2楽章のHrはなかなか素敵な音色でしたし、全体にはいい演奏だったのでしょう

 演奏後、アンコールに入る前に藤岡さんがマイクをとって少しだけお話をされましたが、”関西フィルが大好きです。…もっともっとたくさん、私達の演奏会を聴きに来てください!”という言葉がとてもさわやかで、好印象でした。なるほど人気を集めるのも何となく分かります。確かな技術を持ちながら、若々しさとさわやかさで人を魅了する、素敵な指揮者に、今後も期待したいと思うのでした