らいぶらりぃ
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神戸大学混声合唱団アポロン第40回記念定期演奏会

●日 時2002年12月15日(日)17時開演
●会 場アルカイックホール
●出演&曲目木下牧子/混声合唱曲集「うたよ!」
 指揮:大須賀孝周/ピアノ:田村真祐子
ヴォーン・ウィリアムズ/ミサ曲ト短調
 指揮:武田次郎
バーンスタイン/ウェスト・サイド・ストーリー(40回記念ステージ)
 演出・指揮:斉田好男
 ピアノ:細見真理子
 シンセサイザー:須増容子/冨田万理子
 パーカッション:今津咲子
 振付:望月康恵

 今年の後輩達の演奏会は、第40回の記念演奏会。思えば、前の30回の記念の時には荻久保和明さんに曲を委嘱してその初演をしてのけたのですが、あれから10年、人も時代も変わって、今回は何と、ダンスに挑戦!なのだそうです。私達の時代には舞台上でちょっとその場でぐるっと回るだけの動作でも、どん臭いと言われたものですが(^^;、ダンスを踊るなんて、できるの?と最初はちょっと疑問でもありました。でも、時代は変わったんですね、見事な出来でした。

 その「ウェスト・サイド・ストーリー」、まさにコーラス・ミュージカルと言うにふさわしいもので、”マリア”や”トゥナイト”、”アメリカ”などの有名なナンバーはコーラスで歌いながら、後はひたすらダンスでそれぞれの場面を描写していくというものなのです。台詞は一切なし。コーラス・ミュージカルというと、神戸では合唱団TERAさんが独自のミュージカル路線を走っていますが、その本格的なものともちょっと違って、舞台美術とかは非常にシンプルでありながら(というか、舞台美術らしきものは何もないんですけど…)、照明や団員達の立ち位置の変化とかで、場面場面を見事に描き分けており、本格的とも言えるダンスで非常に明朗で分かりやすい舞台に仕上がっていたと思います。そう、ダンスは本当に本格的なもので、もう飛ぶは回るは走るは、舞台上を所狭しと動き回っているのですね。それもとても自然な動きで、全然ぎこちなく、実に慣れたもののように見えます。よほどの練習を積まれたのでしょうけど、ちょっとやそっとではここまでのものはできないでしょう。宝塚歌劇のように全員が見事にそろっての動きなど、ほんと見ていて、ため息が出てしまいます。すごいもんやなぁ、って。素人が一から練習を積んできたものとは思えないほどの出来であったと言うてよいでしょう。特に印象的だったのは、「アメリカ」を歌うシーン。ここは全員がぱしっとそろった動きで、見応えがありました。それに、ラストのトニーが倒れるシーン、「トニー|」と叫んで駆け寄るマリアの、この舞台中唯一の台詞が、この物語の悲劇性をより一層、くっきりと表現しているようで、心に残ります。実に素敵な、完成度の高い舞台でありました。アポロンのイメージもだいぶ変わったような気がします。

 「ウェスト・サイド・ストーリー」がこんなにも見事であったから、どうもその影に隠れてしまいがちですが、ヴォーン・ウィリアムズのミサ曲も、それなりに整った演奏ではありました。ただ、やはりこういう曲はもっと響きを一つにまとめて演奏してほしいなという感じはします。ちょっと響きの足りなさを感じてしまったのでした。また、たくさんあるソロが、いちいち人を変えて、その度にごそごそと前へ出てきて歌うというのも、何か邪魔なようにも感じました。ま、これは演奏者のスタイルだから、別に構わないとは思うのですけど。でも、合唱とソロとでピッチが合ってない部分があったのは、ちょっと気になりました。

 それにしても、アポロンの歴史の中に大きく残ろうであろう素晴らしい演奏会であったことには違いないと思います。また5年後、10年後とこの合唱団が成長していくことを期待したいと思うのでした。