らいぶらりぃ
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デュオ・プリマ

●日 時2003年1月28日(火)19時開演
●会 場伊丹アイフォニックホール
●出 演デュオ・プリマ
 ヴァイオリン:神谷未穂/礒絵里子
ピアノ:新垣隆
●曲 目ファリャ/バレエ音楽「恋は魔術師」より 火祭りの踊り
モ−ツァルト/歌劇「魔笛」より 俺は鳥さし/夜の女王のアリア
マルシッチ/映画「昼下りの情事」より 魅惑のワルツ
グノ−/アヴェ・マリア
サラサ−テ/ツィゴイネルワイゼン
ビゼ−/歌劇「カルメン」より ボヘミアの歌
ベルリ−ニ/歌劇「ノルマ」より カスタ・ディ−ヴァ
ボッケリ−ニ/メヌエット
マスネ/タイスの瞑想曲
モーツァルト/トルコ行進曲
モンティ/チャールダーシュ
(アンコ−ル)
主よ、御元に近づかん

 デュオ・プリマ… 以前に何か新聞か何かで見たことがあったなと思っていたのですが、その時はふ〜んというくらいにしか思っていなかったんです。でも、従姉妹同士のデュオという、それもヴァイオリン同士という、ちょっと珍しいデュオということで、どこか記憶の中にはあったのですね。そんな彼女らが初めて関西にやってくるというので、行ってきました。

 さて、彼女らはたった1歳しか違わない従姉妹なんだそうです。それも、ちょうど1年違いの全く同じ日に生れたというんですね。(ちなみに、それはショパンの命日である10月17日なのだそうな。)そして幼稚園から大学までずっと一緒に通ってきたという、何とも珍しいコンビです。だから、息もぴたりと合っていて、なかなか素敵なデュオを聴かせてくれます。でも、2人の性格までは分りませんが、それぞれの音色というのははっきりと違うのですね。何でも、礒 さんのヴァイオリンは150年もの、神谷さんのは260年ものらしいですが、その年代の違いだけでなく、礒さんの方はとてもクリアですぅっと通るような響きをしているのに対して、神谷さんの方はしっとりとふわぁっとした感じの響きなのです。そんな2本のヴァイオリンが一体となっているのですから、ヴァイオリン・ソロで弾くような曲でもとっても音の線が太くなっていて、聴き応えがあるのですね。何故か今回のプログラムではジプシ−音楽が多かったようですが、「ツィゴイネルワイゼン」にしても、「チャ−ルダシュ」にしても、ヴァイオリン1本とは違う迫力のようなものがあるのです。それも、これ、デュオと言うて、どっちが主でどっちが従というのではないのですね。片方がメロディを弾いて片方が伴奏をしていると、次は役割りが逆に入れ替わってやるのです。それも小節単位で。だから、ころころとメロディラインが入れ替わっていくわけで、それが先に書いたような音色のコントラストと相まって、とても味わいのある音楽に仕上がっているのです。これはなかなか聴けないものでしょう。素敵なものです。

 一番印象的なのは、昨年6月に出したCDのタイトルにもなっているという「カスタ・ディ−ヴァ」。静寂の中にすぅっと響く音色は、まさに”清らかな女神”にふさわしいもの。この曲に対する思い入れもあるのでしょうが、なかなか、心にしみこんでくるような演奏でした。また、「トルコ行進曲」は、何とピアノの伴奏なしで、全くのヴァイオリン2本によるアカペラ演奏。ご本人ら曰く、かつての紅白歌合戦で由紀さおりさんと安田祥子さんのデュオがこの曲をスキャットで歌っていたのだとか、それを見て、ヴァイオリンでもやれるのではと思った、のだそうです。聴いてみると、うまい具合になるものですね、とっても自然な感じで違和感のない行進曲になっています。コ−ダ部分で何小節か飛ばしたような気もしたのですが、これはそういうアレンジなのでしょうね、たぶん。ほぉと感心したのでありました。

 でも、「魔笛」のアリアとかはもうちょっと歌ってほしかったと思うのです。パパゲ−ノの鳥笛の音はまぁ良かったのですが、夜の女王の方がちょっと… 実際に歌うとそんな簡単には歌えないだろうというのに、例の高音の部分もさらりと流してしまわれたような感じがして、ちょっと残念な気もしたのです。雰囲気はそれなりに良かったのだけに惜しい気がします。

 演奏会自体は、お2人のお話を交えながら、楽しく和やかな雰囲気に包まれていました。それにしても、ほっておくと、どこまでもしゃべり続けそうなんですね、このお2人。さすが仲のよい従姉妹なだけあります。「では、そろそろソロを聴きたいのではないでしょうか…?」「えっ、それってシャレのつもり?」「…!? やっちゃった!?」なんて会話をしてはるのです。止めなかったら、延々と続きそう。でも、”喋り”として聞いた場合、ちょっと突っ込みが甘いかなという感じもするのですが、これは関西人だからそう思うんでしょうかねぇ。ま、演奏家は演奏で聴かせて何ぼのもんですから、あまり喋りの方はこだわらなくていいとは思うのですけど。しかし、やたらとCDの宣伝の多いト−クではありました。ちょっとしつこかったかも。まぁ、売り出し中だけに、しっかりと名前を覚えてもらうために必死なのでしょうけど、やりすぎはかえって逆効果かもしれません。もうちょっと宣伝は控えてもいいのでは、とも思います。でもまぁ、可愛いからよしということにしましょうか…