らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 2003年3月12日(水)19時15分開演 |
●会 場 | 神戸新聞松方ホ−ル |
●出 演 | 藤岡幸夫指揮関西フィルハ−モニ−管弦楽団 |
ヴァイオリン:瀧村依里 | |
●曲 目 | ブルッフ/スコットランド幻想曲 |
チャイコフスキ−/交響曲第6番ロ短調「悲愴」 |
昨年から始まったという、関西フィルの神戸公演。2回目の今回は、神戸市東灘区出身の瀧村さんが登場ということで、これは是非にも聴いておかないと、と出かけてきました。さて、その瀧村さん、実はまだ高校生なのですね。昨年、中学生として関西フィルと共演を果し、大変好評だったようですが、それに続いての共演なのです。指揮の藤岡さんも彼女のことを「伸びやかな歌と、自身の中に音楽が流れている素晴らしい才能」と評価していらっしゃるようですが、なるほど確かにそのとおりと頷ける演奏でした。そう、とにかく素晴らしいです。彼女のヴァイオリンって、音がとっても素直な感じで、まさに純粋さそのままという感じなのですね。それでいて歌心というものが非常に満ちていて、表情もとっても豊か。高校生と言うたら、若さからくるパワーとか瑞々しさとかいうようなものを感じるようなものですが、それとはまた違う、音楽そのものを芯で捉えている純粋さというようなものを強く感じるのです。変に飾ることのない、純度の高い歌心というものが、音楽をそのまま素直に受けとめて、それをまさに自分の歌として歌い上げていく、それが瀧村さんの素晴らしさなのだと思うのです。その才能が体中に満ちていて、音楽を表現する喜びというものを体全体で表わしているような、そんなふうにも見えます。とってもチャーミングで可愛らしい彼女ですが、そのどこかあどけなさの残るお顔からは想像できないほどの、深い音楽性というものを内に秘めているのでしょうね。
このブルッフの「スコットランド幻想曲」も瀧村さんご自身が希望されての選曲となったそうですが、思い入れというものも強いのでしょうね。序奏の部分の響きからして、彼女の並々ならぬ才能と思い入れとがはっきりと伝わってくるようです。暗い感じで切々と歌い上げていく、渋い響きが何とも印象的です。1楽章はやや明るい感じになります。メロディラインの美しいスコットランド民謡のテーマを、実に伸びやかに歌い上げていきます。2楽章になると更に軽快な感じが出てきます。決してはしゃぎすぎるようなことのないようにしながらも、とてもリズミカルな感じで歌っているのが素敵です。オケとの掛け合いを楽しむかのようが笑顔がまた印象的ですね。そして3楽章、何とも素朴な叙情性溢れるテーマが印象的な曲ですが、これを彼女のヴァイオリンは更に魅惑的に歌い上げていきます。切々と、まるで宗教的な雰囲気を漂わせ、或いは天へと昇りつめていくかのような感じさえします。純粋無垢な天使が舞い降りてきた、そんなふうにも聴こえて、思わず涙してしまいます。そして4楽章、勇壮なテーマですが、むしろ彼女の演奏は喜びの歌というふうで、表情も明るく、全身で喜びをいっぱいに表現しています。変に力んだりすることがないので、とても自然な感じで、喜びがダイナミックに描かれていたように思います。
いやぁ、瀧村さんのヴァイオリンはほんと、素晴らしいものでした。初めて聴いてこんなに感動したのって、そうそうないような気がします。むっちゃ可愛らしくって(私の後ろの席に座っていた女子高生2人組も、むっちゃ可愛いやん!としきりに言うてました…)、技量も音楽性も抜群という彼女に、すっかり魅せられてしまったのでした。そして、そんな彼女が神戸市の(しかも私の住んでいる東灘区の)ご出身というのは、まさに私達の誇るべきことだとも思うのです。今は東京の芸大付属高校で学んでいらっしゃるとのことですが、これからまさに世界に羽ばたいていかれることでしょう。私達もずっと応援していきたいものです。
後半は、チャイコであります。そういえば、昨年の「おおさか・元気・クラシック」でもチャイコの5番を聴かせていただきましたが、あの時も感じたことは、藤岡さんのチャイコって、結構、私の好みに合うのかも、ということ。今回もそれは強く感じました。藤岡さんの作る「悲愴」って、私がこうあってほしい、と思う通りに音楽を作り上げてくれるのです。オケがそのとおりに演奏しているかどうかは別問題として、藤岡さんの指揮ぶりからはそれがはっきりと分かるのです。テンポの揺らし方とか、音のバランスとか、何か、彼とは波長が合うみたいなんですね。だから、3楽章から4楽章へほとんど間髪を置かないで入ったりしても、4楽章の最後の方の静かな部分からオケが入り直すところとかで「ふんっ!」といううなり声が聞こえてきても、違和感を覚えないんです。気合十二分の彼の思いははっきりと伝わってきました。まさに情熱的な「悲愴」でした。
けど、オケの方はちょっとだけ問題ありとも感じます。特に前半のブルッフの方で感じたのですが、音が所々ぶれたりしますね。ホルンなんかソロ・ヴァイオリンの足を引っ張るんじゃないかというくらいだったりして、おいおい、と思ってしまいます。もっとクリアな音を出してほしいものです。
この関西フィルの神戸公演は年に2回ずつやっていくことになったそうで、次回もまた、来れるものならば来てみようと思います。(まぁ、関西フィルの演奏を聴くだけなら、シンンフォでの定期に出向いていけばいいのですけどね…)