らいぶらりぃ
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スヴァンホルム・シンガーズ

     エクレーヴ/朝      シベリウス/フィンランディア讃歌      クーラ/森の王へ          ヘンテリ      ルンドヴィーク/お前の両手の上にこうべを垂れた      ミールバーグ/セレナード      パルムグレン/炭窯の側の船乗り      アルヴェーン/夕べ             海辺の夜明け      イスフェルト/盗賊の歌      最愛の兄弟      あやめも咲かず      私たちはとてもゆっくり行く      フラガンシア      ヴァルパライソのワルツ      ルンドヴィーク/美しき水晶      娘は輪に入る      エステルランドへ      山の牧舎の歌/ダーラナの娘の踊り
●日 時2003年6月26日(木)19時開演
●会 場伊丹アイフォニックホール
●出 演ソフィア・ソーダベルク・エーベルハルト指揮スヴァンホルム・シンガーズ
●曲 目グリーグ/歌い手のあいさつ

 スウェーデンの最高峰と言われる男声合唱団、スヴァンホルム・シンガーズがやってきました。北欧もの好きの私もしっかりと行ってきました。

 彼らの演奏は、まさにア・カペラの男声合唱の楽しみというものを存分に発揮していて、実に素晴らしいものです。響きがとってもクリアなんですね。ぱしっと1人1人の声の響きが1つにまとまり上がっていて、それが会場中に響き渡るのです。それは、スウェーデンの冷たく澄んだ空気が会場に満ちてくるような雰囲気で、思わず背筋がぞくっとするような感覚に陥ります。特に、どの曲でもそうなのですが、弱音からじわりとクレッシェンドして強音に盛り上がるような部分は最高!です。何か彼ら独自の発声法があるのでは、とも思ってしまうような、素晴らしい演奏なんですね。また、ごぉっと鳴り響く重低音がすごく印象的で、人間の声ってここまで低い音を出すこともできるんだ、と思わず感心してしまいます。前半は北欧各国の曲を、後半はスウェーデンの民謡を中心としたプログラムで、私達を北欧情緒の世界に誘ってくれるのでした。

 一番印象的なのは、アルヴェーンの曲です。やはりお国元の作曲家ということで、思い入れもあるのでしょう。「夕べ」のまるで絵画を見ているかのような静けさの美しいこと!じぃっとただ1人で夕空を見ているような、そんな風景が広がります。また、「海辺の夜明け」の神々しさと言ったら!静寂の中から、次第に光がさぁっと差し込んできて、やがて輝かしい光が満ちてくる、その神々しい風景には、思わず涙してしまいます。アルヴェーンの合唱曲って初めて聴きましたけど、器楽曲に見られる情緒深さはここでも見事に表現されているのですね。素敵な曲でした。

 前半では、私の好きなフィンランドものもいくつか演奏されました。「フィンランディア」は、随分とゆっくりとしたテンポで、すごく印象的な演奏です。こんなに息が長いと演奏する方も大変だろうとは思うのですが、そのゆったりさがより深い感動を起こさせてくれるのですね。こんなに味わい深い「フィンランディア」はなかなか聴けないでしょう。素敵でした。そして、私の大好きなクーラです! スウェーデンの合唱団だからまさか、クーラの曲が聴けるとは思っていなかったので、私にはとっても嬉しい選曲です。「森の王へ」はとても叙情的な曲。いかにもクーラらしい和声進行もあったりして、これが見事なハーモニーとなって響いてくるので、とても素敵です。「ヘンテリ」は、一転してとても楽しい曲。あまり意味のないような歌詞ですが、そのお茶目さが面白いです。

 後半はスウェーデンの民謡を中心としたプログラム。「盗賊の歌」ではカウンターのソロなど、大音量でホール中に響き渡っていて、いきなりこんなに喉を使って大丈夫なの?ってこっちが心配してしまいます。また、急遽追加された曲目の「フラガンシア」は、その重低音にとっても感動してしまいます。これ、ほんまに人間の声なん? コントラバスが陰でごぉって鳴ってるんちゃうん?と思ってしまいそうなくらいの、ほんまに超低い音が、まるで地鳴りのように響いてくるんです。これには、ほんと感心してしまいます。いやぁ、すごいものです。また、最後の曲も印象的ですね。いや、途中に、いきなり指揮者の方がくるっとこちらを向いて、ソロを歌い出したのです。まさに意表をつかれたようで、ちょっと驚きましたが、なかなか雰囲気があって良かったです。

 個性的な曲を次から次へと演奏してくれて、あっという間にプログラムは終了。割れるような拍手に迎えられてのアンコール1曲目は、何と、意表をつくように「いい湯だな」。スキャットで何か伴奏が始まり、何だろうと思ったら、いきなり「イイユダナ〜」ですから、もう会場中、大爆笑です。そして、アンコール2曲目、何という曲なのかちょっと分かりませんでしたが、これが何とも、まるで音楽劇を見ているかのような面白い曲なのです。妙な音が重なり合っていき、前衛的な音楽かと思いきや、突如、団員の1人がばんっ!と楽譜を床に叩きつけて、やってらんないって感じで客席へ引っ込んでしまいます。と、残された団員達も4つくらいのグループに分かれてごそごそと騒ぎ出し、舞台は喧騒の渦の中へ。指揮者が何とかそれぞれをなだめていき、ようやく落ち着いたと思ったら、指揮に合せて歌うんじゃなくて、体をにょろっと斜めに傾けて静止してみたり。無言の抗議か何かなんでしょうか。まぁ、最後は何とかまとまって無事に終わるんですけれど、とても楽しい曲です。こういう曲、私は大好きです。彼らの演技力もなかなかで、大満足のできた演奏だったのでした。

 それにしても、やはり北欧ものはいいですね。改めて北欧の合唱作品の素晴らしさを実感したのでした。